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7 勇者と魔界国

7ー10 大乱

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 7ー10 大乱

 俺とリリウス、エディット、それにロナードとルウシエの5人は、トカゲの谷へと移動した。
 トカゲの谷では、勇者の起こした大乱から逃れてきたライドウたちマリージアの人々が保護されていた。
 俺は、話をきくためにライドウのもとを訪れた。
 ライドウとその妻子であるマリーナさんとララちゃんは、クローディア母さんの工房である村の外れの小屋にいた。
 小屋といっても普通に家ぐらいの大きさはあるんだがな。
 そこでクローディア母さんは、傷ついたマリーナさんの手当てをし、療養させていた。
 だが、勇者の聖剣の炎で焼かれた傷は、ポーションでも癒せない。
 俺と一緒にライドウのもとに行ったエディットは、マリーナさんの傷に触れるとその聖なる光でマリーナさんの傷を癒した。
 マジでこれは、うちのエディット聖女じゃね?
 傷の癒えたマリーナさんを抱き締めてライドウは涙ぐんだ。
 「よかった!マリーナ、ほんとに」
 ライドウは、エディットの手をとり何度も何度も頭を下げた。
 「ありがとうな、エディット嬢ちゃん。ありがとう」
 「いいえ、これぐらいのこと」
 エディットは、にっこりと微笑んだ。
 俺は、ライドウに訊ねた。
 「それで?マリージアのこときかせてくれるか?あそこでいったい何があったんだ?」
 「ああ」
 ライドウは、遠い目をして話し始めた。
 「あいつが、勇者が戻ってきたという噂をきいたとき、俺たちマリージアの連中は、みなざまあねぇと思っていた。奴は、最低の男だったからな。当然、ラダクリフ辺境伯の手で捕らえられ首都へと連行されるもんだと思っていた」
 ライドウが話したことによるとラダクリフ辺境伯のもとに連れていかれた勇者は、すでに聖剣を奪われていたのだという。
 だが、ラダクリフ辺境伯の前に連れていかれた勇者は、自分を引き立てていった騎士から聖剣を奪い取ると突然ラダクリフ辺境伯に切りつけた。
 そして、倒れたラダクリフ辺境伯を人質にとると勇者は、そのままマリージアの街へと攻撃を開始した。
 魔法と剣技によって騎士団の面々を切り伏せると勇者は、逃げ惑うマリージアの人々を襲い出した。
 家々を聖剣のまとう炎で焼き、女子供も容赦なく切り捨てた。
 「俺たちは、なんとか街から逃れることができたんだが、多くの住人たちは、逃げることもできずに取り残されている」
 
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