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1 不憫王子、贄になる。
1ー9 口づけ
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1ー9 口づけ
僕の乗った馬車が御祓の神殿に入ったのは王都を追われてから1週間後のことだった。
夜の闇に紛れるようにして馬車は、神殿に入った。
馬車の鍵が神官の手で開けられ僕は、やっと外に出ることができた。
「よくおいでくださいました、マクシア殿下」
神官たちが僕にひれ伏すのを見て僕の胸が冷えた。
無言の僕に神官が1人歩み出て声をかけた。
「マクシア殿下、こちらへ」
神官に案内されて僕は、神殿の奥の豪奢な部屋へ通された。
重厚な家具や見事な美しい絨毯。
だが、その部屋が奇妙なのは、部屋の中央に置かれた大きなベッドのせいだった。
青い絹のシーツをかけられたその大きなベッドでこれまでも生け贄にされるオメガたちが邪神に捧げられる恐怖から逃れるために発情促進剤を飲んで乱交を繰り広げてきたのか。
僕は、顔を背けた。
部屋のソファに腰かけた僕に神官が美しい瓶に入れられた液体をグラスに注いで差し出した。
「どうぞ、お飲みくださいませ、マクシア殿下」
「いらない!」
僕は、グラスを持つ神官の手をはね除けた。
グラスが床に落ち、中身の青い液体が飛び散る。
呆然としていた神官の表情が固くなる。
「しかし」
「どうせ、発情促進剤だろう?僕には、必要ない」
神官は、まじまじと僕を見つめていたが、やがてにっと笑った。
「仰せのままに」
それから。
神官たちによる歓待が始まった。
食べきれないほどのご馳走の山やら、美酒が用意されたが僕は、それに手をつけようとはしなかった。
「少しは召し上がらなくては」
神官たちが僕を諭した。
「あなた様は、尊きお方の花嫁として異界に赴かれるのですから」
「それに」
神官がにやっと笑う。
「そろそろお辛いのではないですか?」
「何が、だ?」
僕が聞くと神官たちが意味深に見つめ会う。
「それは・・オメガのお体がお辛いのでは、ということでございます」
数人の神官たちが僕の前に進み出ると僕の体を押さえつけ、無理矢理に青い液体が入ったグラスを僕の口に押し付けて飲ませようとする。
「や、めろっ!」
「無理は、いけません、マクシア様」
神官たちは笑っていた。
「体が疼くのでしょう?大丈夫です。我らが誠心誠意尽くしてお慰めいたします」
僕は、なんとか液体を飲むのを拒もうとしたが、焦れた1人の神官がグラスをあおいで液体を口に含むと僕に口づけした。
僕の乗った馬車が御祓の神殿に入ったのは王都を追われてから1週間後のことだった。
夜の闇に紛れるようにして馬車は、神殿に入った。
馬車の鍵が神官の手で開けられ僕は、やっと外に出ることができた。
「よくおいでくださいました、マクシア殿下」
神官たちが僕にひれ伏すのを見て僕の胸が冷えた。
無言の僕に神官が1人歩み出て声をかけた。
「マクシア殿下、こちらへ」
神官に案内されて僕は、神殿の奥の豪奢な部屋へ通された。
重厚な家具や見事な美しい絨毯。
だが、その部屋が奇妙なのは、部屋の中央に置かれた大きなベッドのせいだった。
青い絹のシーツをかけられたその大きなベッドでこれまでも生け贄にされるオメガたちが邪神に捧げられる恐怖から逃れるために発情促進剤を飲んで乱交を繰り広げてきたのか。
僕は、顔を背けた。
部屋のソファに腰かけた僕に神官が美しい瓶に入れられた液体をグラスに注いで差し出した。
「どうぞ、お飲みくださいませ、マクシア殿下」
「いらない!」
僕は、グラスを持つ神官の手をはね除けた。
グラスが床に落ち、中身の青い液体が飛び散る。
呆然としていた神官の表情が固くなる。
「しかし」
「どうせ、発情促進剤だろう?僕には、必要ない」
神官は、まじまじと僕を見つめていたが、やがてにっと笑った。
「仰せのままに」
それから。
神官たちによる歓待が始まった。
食べきれないほどのご馳走の山やら、美酒が用意されたが僕は、それに手をつけようとはしなかった。
「少しは召し上がらなくては」
神官たちが僕を諭した。
「あなた様は、尊きお方の花嫁として異界に赴かれるのですから」
「それに」
神官がにやっと笑う。
「そろそろお辛いのではないですか?」
「何が、だ?」
僕が聞くと神官たちが意味深に見つめ会う。
「それは・・オメガのお体がお辛いのでは、ということでございます」
数人の神官たちが僕の前に進み出ると僕の体を押さえつけ、無理矢理に青い液体が入ったグラスを僕の口に押し付けて飲ませようとする。
「や、めろっ!」
「無理は、いけません、マクシア様」
神官たちは笑っていた。
「体が疼くのでしょう?大丈夫です。我らが誠心誠意尽くしてお慰めいたします」
僕は、なんとか液体を飲むのを拒もうとしたが、焦れた1人の神官がグラスをあおいで液体を口に含むと僕に口づけした。
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