43 / 86
5 辺境スローライフ(陰謀編)
5ー3 伝承
しおりを挟む
5ー3 伝承
僕は、ヴェルデの言葉を思い出してルーデニア兄上の顔をまともに見ることができなかった。
僕は。
ヴェルデがいうようにルーデニア兄上のこと、そういう意味で好きだったのかな?
「どうしたんだ?マクシア」
うつ向いている僕にルーデニア兄上が心配して声をかけてくれる。
僕は、顔を上げるとルーデニア兄上のことを見つめた。
神々しい金色の髪を後ろに流している兄上は、まさに未来の王の器といえた。
ルーデニア兄上の青い瞳が僕をうつしている。
それだけで僕の胸は高鳴る。
「なんでもありません」
僕は、頬が熱くなるのを隠せなかった。
「その獣は、なんでもないことはないようだがな」
ルーデニア兄上とヴェルデがばちばちと睨みあう。
僕は、ヴェルデが余計なことを言い出さないかと思って気が気じゃない。
「お前は、なぜ、マクシアを選んだ?」
ルーデニア兄上がヴェルデに問いかける。
「オメガなら今までに何人も送り込まれただろう。なぜ、今までの誰かではなくマクシアを・・私の弟を選んだ?」
「マクシア・・俺の運命だから」
隣に腰かけているヴェルデが僕をぎゅっと抱き締める。
「運命、マクシアだけ」
「ふん」
ルーデニア兄上が不服そうに眉をひそめる。
「どうだかな。私の姿をしていたり、怪しいものだ。ところでマクシア。手紙でお前が言ってたことなんだが」
「はい」
僕は、顔を上げて頷く。
「クーリアスは、確かに僕を王妃にすると言っていました」
「クーリアスの派閥が最近騒がしいことはわかっていたが、まさか、お前を狙っているとは思いもしなかった」
ルーデニア兄上が顎に手をあてて考え込んだ。
「このところ『古き魔女』たちと親しくしていたようだったが何か吹き込まれているのかもしれないな」
僕は、びくり、と体を震わせる。
『古き魔女』
あの老婆が何を考えているのかは、僕にはわからない。
なんでも前国王との間に子を成すまでは絶世の美女だったらしいが子を成したとたんに年老いていったのだとか。
僕は、クーリアスが僕に使おうとした丸薬のことをルーデニア兄上に話した。
「番持ちのオメガは、番との間にしか子は成せない」
ルーデニア兄上が僕とヴェルデを見つめて告げた。
「だが。『古き魔女』の力を持ってすればその理も覆せるということか。我が王家には伝承がある。もし男オメガが生まれたらそのオメガの子は世界を手に入れるであろう、というものだ。おそらくクーリアスは、マクシアとの間に子を成し、なしくずしにお前を妃にするつもりだったのだろう」
ルーデニア兄上は、しばらくこのフェイルの村に滞在することになった。
それは、あくまでも僕は、ルーデニア兄上の庇護下にあるということを示すため、そして、ルーデニア兄上のもとにヴェルデがあることを国の内外に知らしめるためでもあった。
僕は、ヴェルデの言葉を思い出してルーデニア兄上の顔をまともに見ることができなかった。
僕は。
ヴェルデがいうようにルーデニア兄上のこと、そういう意味で好きだったのかな?
「どうしたんだ?マクシア」
うつ向いている僕にルーデニア兄上が心配して声をかけてくれる。
僕は、顔を上げるとルーデニア兄上のことを見つめた。
神々しい金色の髪を後ろに流している兄上は、まさに未来の王の器といえた。
ルーデニア兄上の青い瞳が僕をうつしている。
それだけで僕の胸は高鳴る。
「なんでもありません」
僕は、頬が熱くなるのを隠せなかった。
「その獣は、なんでもないことはないようだがな」
ルーデニア兄上とヴェルデがばちばちと睨みあう。
僕は、ヴェルデが余計なことを言い出さないかと思って気が気じゃない。
「お前は、なぜ、マクシアを選んだ?」
ルーデニア兄上がヴェルデに問いかける。
「オメガなら今までに何人も送り込まれただろう。なぜ、今までの誰かではなくマクシアを・・私の弟を選んだ?」
「マクシア・・俺の運命だから」
隣に腰かけているヴェルデが僕をぎゅっと抱き締める。
「運命、マクシアだけ」
「ふん」
ルーデニア兄上が不服そうに眉をひそめる。
「どうだかな。私の姿をしていたり、怪しいものだ。ところでマクシア。手紙でお前が言ってたことなんだが」
「はい」
僕は、顔を上げて頷く。
「クーリアスは、確かに僕を王妃にすると言っていました」
「クーリアスの派閥が最近騒がしいことはわかっていたが、まさか、お前を狙っているとは思いもしなかった」
ルーデニア兄上が顎に手をあてて考え込んだ。
「このところ『古き魔女』たちと親しくしていたようだったが何か吹き込まれているのかもしれないな」
僕は、びくり、と体を震わせる。
『古き魔女』
あの老婆が何を考えているのかは、僕にはわからない。
なんでも前国王との間に子を成すまでは絶世の美女だったらしいが子を成したとたんに年老いていったのだとか。
僕は、クーリアスが僕に使おうとした丸薬のことをルーデニア兄上に話した。
「番持ちのオメガは、番との間にしか子は成せない」
ルーデニア兄上が僕とヴェルデを見つめて告げた。
「だが。『古き魔女』の力を持ってすればその理も覆せるということか。我が王家には伝承がある。もし男オメガが生まれたらそのオメガの子は世界を手に入れるであろう、というものだ。おそらくクーリアスは、マクシアとの間に子を成し、なしくずしにお前を妃にするつもりだったのだろう」
ルーデニア兄上は、しばらくこのフェイルの村に滞在することになった。
それは、あくまでも僕は、ルーデニア兄上の庇護下にあるということを示すため、そして、ルーデニア兄上のもとにヴェルデがあることを国の内外に知らしめるためでもあった。
21
あなたにおすすめの小説
【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました
ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。
タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。
貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話
タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。
叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……?
エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。
学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました
こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。
魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!
松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。
15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。
その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。
そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。
だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。
そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。
「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。
前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。
だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!?
「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」
初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!?
銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる