人違いです。

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学びの庭にて

34.

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『悪い。巻き込まれた会議が長引きそうだから先に寮に戻っていてくれ』


 意気揚々と俺が署名した書類を持って去っていったラルム先輩を見送り、通信魔具を起動すると、10分ほど前にノアからのメッセージが入っていた。最近はこういったことが多いので、俺も特に気にせずに『了解』と声を吹き込んで魔具を切断する。
 数か月後に学園の闘技場で年に一度開催される『闘技大会』に向けて、早くも綿密な会議が行われているらしい。学生の親族や有力貴族、王族も訪れるそうだから、風紀騎士は大変だろう。ヒラとはいえノアは優秀だから、よく書類提出の流れで会議に入らされている。

 正直、今は何となくノアに会いたくなかったから、良かったのかもしれない。

 ベンチから立ち上がり、風紀塔とほど近い所にある翡翠階級の校舎内へと入る。教室に向かうにもまだ昼休憩終了までには時間があるし、かといって図書塔に行くには少し時間が足りない。

 というか、最早歩くのも面倒になってきた。


 ーーぐらり。

 あ、れ、これなんかやばいかも。

 唐突に歪んだ視界に、口を押えて立ち止まる。
 そして、突然しゃがみこんだ俺に、周囲を歩いていた生徒たちから驚きの声が上がった。そりゃぁ、突然廊下で人がしゃがみこんだら吃驚するだろう。すまんな。
 恐る恐る近寄ってきた生徒達が「大丈夫ですか」「シトリン様に連絡を」なんて口々に言っているのを思考の端に留めながら、襲ってきた眩暈と吐き気に耐える。俺と同じようにしゃがみこんだ生徒が、不自然に震えだした俺の身体に気付いたのか、慌てた様に「オズ先生呼んで来い」と叫んだ。



「聞こえるか。フォーサイス。俺の研究室に連れていくぞ」


 サファイア教授の少し掠れた声が耳元で聞こえたときには、既に俺の意識は朦朧としてしまっていた。俺を介抱してくれていた生徒がこれまた上ずった声で俺が突然しゃがみこんだ旨を教授に説明しているのを聞きながら、何とか頷いて応える。ちょっと恥ずかしいからもうちょい声落としてくれると助かる。
 ズキズキと脳を締め付けるような頭痛に眉を顰めた。吐き気と眩暈は益々酷くなるばかりだ。冷や汗が頬を伝っていく感覚が異常なほど敏感に伝わってきて、それにまたぶるりと震えた。

 近寄ってきたサファイア教授が、俺の身体をぐいっと抱き上げる。その細い体の何処にそんな力があるのかは謎だが、「よいしょ」と声を上げて俺を背負うとゆっくりと何処かへ向かって歩き出した。


「――うぉ"ぇ」
「ちょ、今吐くな待て待てあと10分待ってください!!!」


 情けない声を上げる教授の声の振動を感じながら、俺はふつりと糸が切れたように意識を失ったのだった。


 





『団長。王族の不当な課税で民は苦しんでいます。殿下も豪遊に豪遊を重ねて……こんなことはおかしいです』


 まだ幼い、声変わりを丁度終えつつあるくらいの少年の声が、廊下に響く。正義感と民への忠義だけで突っ走っていた少年が、王城の廊下に立っている。
 呼びかけられた相手は、颯爽と歩いていた足を止め、くるりと振り返って少年を見下ろした。その温度のない目を見つめ、少年は再度言い募る。


『何故、咎めないのです。騎士は王族を護り、同時に権力を暴走させないよう牽制する存在だと副団長は言いました。団長こそが止めるべきではないのですか』
『必要が無い』
『いいえ。この国は、おかしい。民を愚弄した殿下を注意したら、不敬だと言われました。俺はフィオーレ王国の将来の為に、民の心に寄り添う殿下になって欲しいだけで』


 必死に訴える少年を、俺は冷たい目で見つめる。馬鹿だなぁ。そんな綺麗事、通用するわけがない。
 団長と呼ばれた男は、小さく息を吐いて少年に近づくと、彼の頭を撫でる。そして、ゾッとする程冷たい目で、少年を馬鹿にしたように嘲笑するのだ。


『――いいか、レーネ。この世には、理想論だけではままならないことが沢山あるんだ。このまま俺たちはただ陛下にお仕えさえすれば、金も手に入る。いい飯が食える。いい職に就いていられる』
『その背後にどれほど民が犠牲になって――』
『レーネ。俺たちは努力してこの地位を手に入れたんだ。だから、いい思いができる。だが、多くの国民はただ、税を納めてのうのうと生きているだけだ。そんな彼らが国のために戦う俺たちの犠牲になるのは当たり前のことだ』


 そんなこと、と少年は呟き、俯く。ーー分かるよ。国民だって必死に生きて、王家の為に税を納めて、忠誠を誓って生きている。そこに順位なんてないって、そう思っているんだろう。

 だけど、反発しようとしたら、振ってくるのは鞭の雨。誰も助けてくれない。誰も。なのに、俺には護るものがある。第3部隊の皆も、家族も、俺が護らなければならないのだ。ーーどれだけ自分の矜恃と国民を犠牲にしてでも。
 騎士団長の言っていることがのだと、いずれ気付く日が来る。騎士団長や第1部隊隊長のように、無難に王族の言葉のままに生きることが、最適解なのだと。


『――本当に?』


 息が詰まる。
 少年がぎらぎらと輝く翡翠の目で、俺を見つめていた。








「――――」


 倦怠感が残る上半身を起こし、周囲を見渡す。俺が寝そべっていた仮設の寝具の周りには、これでもかという程蔵書や魔法研究に関する雑誌論文集、参考書などがドサドサ積まれている。天井からは恐らく試作であろう魔具が吊り下げられていて、壁には魔法の命令式が殴り書きされている。良く言えば、生活感のある部屋。悪く言えば汚部屋。

 人の気配がして扉を見つめる。トン、トン、トンと3回の静かなノックと共に扉を開けて入ってきたオズワルド・サファイア教授は、俺が目覚めていることに気付くと、小さく息を吐いて、積み上がった本の上に腰掛けた。


「倒れる前のこと、覚えてるか」
「えぇ、ご迷惑おかけしました」
「それ、あとでニカ達にも言ってやれよ。大慌てで涙目だったぞ」


 ニカ、とは誰だろう。首を傾げた俺にサファイア教授は大きく溜息を吐くと、「同級生だよ」と言って俺の頭をぺしりと叩く。彼は持ってきていた俺の薬瓶と水差しを机に置くと、俺の目を歪んだ眼鏡越しにじっと見つめた。
 

「眩暈は大丈夫そうだな。頭痛や吐き気は?」
「今のところは」
「勝手に持ち物を調べさせてもらったが――お前、この薬、もう飲むのやめろ」


 ユズ特性の薬が入った瓶の蓋をコンコンと叩く教授の目は、非常に厳しい。苦笑する俺に誤魔化すなと少し声を荒げた彼は、瓶から1粒の錠剤を取り出し、顔を顰めた。

 ーーユズは天才だ。

 「こんなものが欲しい」と言えば、どんな薬だって作ってくれる。一瞬で人を死に至らしめる毒薬でも、天にも昇るような幸せな夢を見るような薬でも、なんでもござれ。奴隷としてフィオーレ王国にやってきたユズを引き取った俺は、「辛いことを忘れさせてくれる薬」を願った。そして作ってもらったのが、教授が持つ安定剤の第1段階。それも効かなくなって、効能を強めてもらってそれも効かなくなって、効かなくなって、繰り返したその結果。


「通常の安定剤の10倍の効果なんざ頭おかしいぞ。いいか、効果が10倍ってことは10ってことだ。しかもお前が初めて教室に来た日、1粒以上飲んでただろ。1粒でも異常な副作用のもんを――今回何粒飲んだ」
「……さぁ。手に取れるだけ取って飲みました」
「――こッんの、馬鹿が……」


 基本的に安定剤を飲む直前の記憶って曖昧なんですよね。そう呟いた俺に、教授は「記憶障害も有り」といつの間にか持っていた書類に記載していた。事情聴取されてる。
 ちなみに、ユズには頼むたびに大いに嫌がられているし、3回目くらいの時には号泣された。5回目くらいでビンタされて、一週間くらい無視された。無視がつらすぎたのでこれ以上の効能は頼まなかったが、効きが悪いので大量に摂取してしまっているのが現状。
 ユズの名誉のためにも彼女の意思で作っていないことを明記しておく。

 心配してくれているのが何となく面白くて、クスリと笑う。すると、何故か教授は心底嫌そうに顔を顰めた。


「ヘイデル王国の人って面白いですね。俺だったら、敵国のそこそこ強い騎士が薬漬けで身体壊しつつあるってわかったらむしろ推奨して飲ませますけど……平和ボケしてるというか、なんというか。戦争中ですよ?俺達」
「……」
「誰も彼も、俺の心配ばかりして、幸せかだの護るだの――俺は十分幸せですよ。皆さん俺を悲劇の騎士のように思ってるのかもしれませんが、俺には王がいて、第3部隊の仲間がいて、ノアみたいな――違う。ノアはいずれ敵になるから、」


 まだ副作用が続いているようだ。なんだか思考がまとまらなくてグシャリと髪を搔き乱す俺を、教授は口を出すわけでもなく見つめている。焦点の定まらない目をあちこちへと移動させながら、必死に言葉を紡ぎ出す。


「そう、俺は幸せで、これ以上ないくらい幸せ者で、えっと、そう、王家の言われるままに生きるのが正しいことで――」
「そう、言われたのか?」


 ひゅ、と喉から息だけが零れる。がりがりと頭を掻いていた俺の腕を握った教授が、真剣な目で俺を見つめていた。普段からだったら、もっと生徒に尊敬されるだろうに。
 握られた俺の手が、細かく痙攣していることを漸く自覚した。教授は身を乗り出して俺に近づく。そして、もう1度「そう言われたのか。誰かに」と繰り返した。頷くと「誰に」と問われたので、首を振る。騎士団の内部情報を聞き出そうったってそうはいかない。嘲笑した俺に、教授は一瞬動きを止め、大きく溜息を吐いた。


「お前は生徒だ。生徒が自滅するのを止めようとするのは当然だろう」
「俺はフィオーレ王国の騎士です。それに、俺達は死なない。フィオーレ王国は最強の国だから」
「フィオーレ王国は関係ない。助けようとしてるんだ」


 こんなものは水掛け論でしかない。俺はレーネ・フォーサイスである前に、フィオーレ王国の騎士なのだから。そう、なったのだから。
 教授の手を振り払い、立ち上がる。引き止める教授の声を無視してふらつく足で扉に向かった俺は、取っ手を掴んで――



 足を止めた。


「教授」
「!――なんだ」


 ゆっくりと、息を吐く。


「教授は、教授以外になりたいものがありましたか」
「……うちは学者一家だから、研究に没頭しつつ家督を継ぎたかった」
「そう、ですか。今の生活は不満ですか」
「不満もある。だが、研究は出来るし生徒達の成長を見るのは楽しいな。『恩師』と言って貰えるのは嬉しい」


 楽しい。嬉しい。ーー恩師、か。
 サファイア教授の方へと振り返り、ヘラりと笑う。思ったより力は入らなかった。


「ーーーー」
「ッッ!!!!フォーサイス!待て、」
「失礼します」


 小さく呟いて、俺は今度こそ教授が引き止める間もなく外に出た。
 聞こえたかどうかは知らない。知る必要もない。


 泡沫の夢。

 




『誰か助けて』


 少年の小さな身勝手な声を踏み潰す。


 胸がびきりと痛んだ。









 俺はね、本当は魔物を沢山倒して人々の生活を護る、物語の中の『英雄』になりたかったんです。


 そう呟いたフォーサイスの表情は、今にも泣いてしまいそうなほど悲哀と憧憬に満ちていた。
 オズワルド・サファイアは眉間に腕を当て、息を吐く。理事長に「頼むよ」と言われた時は軽く引き受けた。なんなら『魔法詠み』を完全に習得しているという彼の力を借りたいなんて打算的な考えすら持っていた。

 だけど、彼はもうオズワルドの生徒だ。幸せを手に入れて、未来を与えて見送ってやるがある。それが教師としての矜恃だ。


「……よく言ったぞ。フォーサイス」


 は、聞こえた。あとは此方の役目だ。



 
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