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美人格闘家の道場破り
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麗子の道場は、住宅街から少し離れた商業地の一角にあった。この日は、道場も休日で、麗子は、1人でこの道場の掃除をしていた。女性が師範の総合格闘技道場ということで、競技のほかにも護身やダイエット目的の女性からも人気があり、多くの生徒を抱えている。
佳奈は、その道場の前まで来ていた。
佳奈「すみませーん」
大声を出した佳奈に気づいた麗子は「はーい」と返事して入口まで走ってきた。そして、ドアが開き、ジャージ姿の麗子が顔を出した。
佳奈「お久しぶりね」
麗子「はあ……。あっ」
佳奈「気づいてくれたみたいね」
麗子は、必死に思い出していた。目の前にいるのは、一か月前、この地域で行われた女性総合格闘技大会の決勝を戦った相手なのだ。
麗子「入門のお申し込みですか?」
麗子は、佳奈が持っているオープンフィンガーグローブを見ながら尋ねた。
佳奈「まさか。私があなたに教わることなんて何もないわ。私も、隣の街で格闘技道場を開いているの」
麗子「そうですか?では、いったい何の御用で?」
佳奈「決着をつけたいのよ。あなたと」
麗子「えっ?」
佳奈は、驚いて目を丸くした麗子をにらみつける。
麗子「決着は、この前の試合でついたはずでは?」
佳奈「いいえ。判定であなたが勝ったことになっているけど、私は、納得できないわ。完全に決着をつけたいの。ここであなたに勝って、私の方が強いということを証明したいのよ」
麗子「つまり……。道場破りってわけね」
佳奈「そうよ。まさか逃げたりしないわよね」
話には聞いたことがあるが、まさか自分の身に起こるとは……。
麗子は、身震いした。
麗子「ええ。強いのは私の方ですからね。あなたも、生徒さんたちの目の前で負けて悔しいのは分かるけど、こんなところに乗り込んでくるなんて、ほんとに怖いもの知らずね」
佳奈「そう言っていられるのも、今のうちだけよ。私は長期戦に強いの。あのときは時間が足りなかったのよ」
麗子「時間があれば、あなたは、KOされてたのよ」
佳奈「KOされてたのはあなたよ。私は、ギブアップしたことないのよ」
麗子「へえ、すごい自信ね。それじゃあ、中に入って準備をして」
麗子は、佳奈を誘い入れた。
対峙し合った2人は、互いにビキニのようなユニフォームだ。女性の選手は、魅せることを意識するのも必要だ。佳奈は、ミニスカートのようなデザインになっている。
2人とも均整のとれた細身で筋肉質な体である。背の高さも同じくらいで、体格も同じくらい。2人とも瞳のぱっちりした美女である。
大会の準決勝では、2人とも自分より体重のある相手に圧勝している。
違うのは、麗子は、色白でロングの髪を後ろで束ねているのに対し、佳奈は、日に焼けた褐色の肌でショートヘアである。
佳奈「時間無制限の一本勝負よ。その他のルールはあの大会と同じ。あなたがギブアップか落ちたら終わりね」
麗子「それは、あなたの方でしょ」
佳奈「じゃあ、いくわよ」
佳奈が突進する。そして、鋭いパンチを連発する。秒殺KOを狙っているのだ。
麗子は、その迫力に押されて後退するが、自らもカウンターのパンチや前蹴りを駆使して中には入らせない。
佳奈も、そう簡単に倒せないと見たのか、開始後2分ほどでパンチのラッシュはやめ、様子見でジャブとローキックの出し合いになった。
佳奈の勢いが止まったので、今度は、麗子が攻勢に出る。顔とボディーにパンチを打ち分けていく。距離が離れれば、ミドルキックやハイキックも繰り出す。
そんな中で麗子の的確な右フックが佳奈のアゴにヒットした。
佳奈が尻もちをつく。
麗子「もう終わり?」
佳奈「スリップよ」
そう言いながら麗子の追撃に警戒して寝ころびながら防御の体勢をとる。
麗子は、佳奈の太ももにローキックを何度も打ち込む。佳奈も、寝ころびながら同じように麗子の太ももにローキックを繰り出す。
立っているだけに、麗子の威力の方が圧倒的だ。麗子は、顔や腹への踏みつけ攻撃もしようとするが、そこは、佳奈もうまく体を回し、足や腕でガードする。
麗子「いつまで寝てるのよ。立ちなさいよ」
そう言って少し距離をとる。佳奈が立ち上った瞬間、麗子の膝蹴りが佳奈のボディに入った。
佳奈は、再びダウンする。
しかし、佳奈は、寝技が得意なだけに、麗子も、うかつには寝技に持ち込めない。
麗子は、小刻みに蹴りを佳奈の太ももに打ち込み、ボディーや顔の踏みつけを狙っていく。佳奈は、タイミングを見計らって、麗子の蹴った右足を狙って組みついた。
麗子も、足を抜こうとしたが、佳奈は、素早くからみついていく。麗子は、バランスを崩して尻餅をついた。佳奈は、麗子に乗りかかろうとする。麗子も、必死で、佳奈のボディーに蹴りを入れて突き放す。
佳奈「今度は、こっちの番よ」
立ち上がった佳奈は、麗子の太ももに蹴りを入れていく。佳奈の褐色の太ももは、目立たないながらも赤くなっているが、麗子の太ももは白いだけに次第に赤くなっていく様子が分かる。
佳奈は、麗子の体力をある程度消耗させたところで、上からとびかかるように、かがんで顔やボディーへパンチを放っては、また立ち上がる。
それを何度か繰り返すと、佳奈の動きを読んだ麗子は、佳奈がかがんだ一瞬の隙にボディーを両足で挟み込んだ。佳奈は、構わず麗子のボディーにパンチを打ち込んでくるが、麗子は、両足で佳奈を絞め上げる。
佳奈の攻勢がゆるんで、麗子が佳奈の左腕を取り、佳奈の首に足をかけ、三角絞めを狙っていく。
麗子「苦しいでしょ。ギブアップしたら?」
佳奈「こんなもの、すぐ外してあげるわ」
佳奈は、力づくで麗子の体を持ち上げ、マットに叩きつける。それが不発に終わると、もう一度持ち上げ、麗子の脳天から叩きつけた。
それには、さすがの麗子も手を緩めてしまい、佳奈が手を抜いた。
佳奈の首に足を絡めてぶら下がった状態の麗子は、そのまま太ももで佳奈の首を絞める。しかし佳奈も、麗子のボディーにパンチを打ち込み、外そうとする。
両者ともに全身に疲れと痛みを感じながらも、気力に衰えはない。
佳奈「早く放しなさいよ。この汚い足を」
麗子「あなたこそ、もうあきらめなさいよ」
佳奈は、何度か麗子をマットに叩きつけるが、麗子もうまく受け身をとって、足だけは放さない。佳奈の息遣いは激しさを増す。
佳奈は、今度は、体を前に倒し、麗子の腹や脇腹へパンチを打ち込んでいく。ただ、麗子は、顔面へのパンチだけは食らわないように防御している。
止める者もいないので、なかなか体勢を変えることもできない。一瞬の隙が勝負を分けるから。
麗子は、佳奈の動きが止まったのを見計らって、腹筋を使って体を起こし、足を抜いて佳奈の首に手を回した。上から右脇で佳奈の首を押さえつけ、左手も下から回してフロントチョークの状態である。佳奈は、何とか手を挟みいれて、麗子の腕をほどこうとする。
そこから麗子は、右膝を佳奈のボディに打ち込んでいく。佳奈は、必死にこらえながら、麗子の右膝蹴りを両手で受け止めることに成功し、テイクダウンを決めた。
佳奈は、首を押さえつけられながらも、右腕を振り回し、麗子の顔面をパンチが何度かとらえる。麗子もさすがに左手を離してそれを防がざるをえない。
佳奈が首を抜いた。麗子は、それに合わせて体を起こそうとするが、佳奈は、麗子の首に右手を回して抱え込み、そのまま押し倒す。
今度は、逆に佳奈がギロチンチョークをかける格好になった。しかし、麗子も、黙ってはおらず、下から佳奈の顔にジャブを叩きこみ、自分の右腕を佳奈の首に回して、体勢を逆転させようとする。
麗子は、力を振り絞って佳奈を裏返して上になる。しかし、しばらくすると今度は、佳奈の方が力を振り絞って麗子を裏返して上になる。そして、また麗子が佳奈を裏返して上になれば、佳奈も躍起になって上になる。
結局、壁際まで返し合いが続いた。佳奈が上になって麗子を押さえつける。麗子は、裏返そうとするが佳奈の体は壁で跳ね返され、体勢を変えられない。
佳奈「あなたも、これが運の尽きね。ギブアップしかないわよ」
麗子「たまたま上になっただけでしょ。痛くもかゆくもないわ」
麗子も、下になっていると体力の消耗が激しいので体勢を入れ替えたいが、佳奈の体は逆には返せないような体勢になっているので動かない。
佳奈は、2人の体の間に自分の右ひざを入れた。膝とすねで麗子のボディを圧迫する。
佳奈「いくら我慢強いあなたでも、もう限界でしょ」
佳奈は、不敵な笑みをうかべる。麗子も、大汗をかきながら痛みに耐えている。
麗子は、下から佳奈をのど輪で押し上げる。佳奈は、麗子の手を払いのけようとするが、その佳奈の体が少し浮いた隙に、2人の体の間に麗子は、足を入れ、佳奈のボディーを後ろに跳ね上げて投げ飛ばした。佳奈は、背中から床に落ちる。
麗子は、すぐに立ち上がる。佳奈も、一瞬何が起こったか理解できなかったが、すぐに立ち上がる。
2人は、肩で息をしながらにらみあう。2人とも、張りのある体から汗がしたたり落ちる。
佳奈「あなたも、往生際がわるいわね」
麗子「減らず口をたたいて休んでないで、かかってきなさいよ」
佳奈「あなたこそ、かかってくるのが怖いんでしょ」
麗子「怖いわけないでしょ」
麗子が佳奈の顔面にパンチのラッシュをしかける。佳奈も、防御しながら応戦する。
2人とも、疲れからかラッシュは長く続かない。次第に単調なパンチとローキック、前蹴りの応戦となる。
それでも、防御する反応も落ちているため、ヒットする確率は高い。消耗戦である。
佳奈「もう倒れなさいよ。楽になるわよ」
麗子「あなたこそね」
麗子のミドルキックが佳奈の脇腹に食い込む。佳奈は、苦悶の表情を浮かべた。麗子がパンチのラッシュをする。顔を腫らした佳奈は、たまらずクリンチで逃げる。
麗子「クリンチなんて弱い人がすることよ。離れなさいよ」
佳奈「いいわよ」
佳奈は、離れ際に麗子に膝蹴りを叩きこむ。今度は、佳奈が麗子のボディを中心にパンチと膝を入れていく。麗子は、たまらずクリンチで逃げる。
佳奈「さっきの言葉をそのままお返しするわ」
麗子「あなたを投げ飛ばすためよ」
麗子は、佳奈の後ろに手を回し、体を持ち上げて投げようとする。しかし、佳奈も踏ん張って投げさせない。
今度は佳奈が麗子の首に手を回し、投げようとする。しかし、それも、麗子が巧みに首を抜いて防ぐ。離れ際に佳奈は、麗子に大ぶりのフックを振るうが麗子は、何とかよける。
2人は、再び距離を置いてにらみ合う。顔面へのパンチの打ち合いから両者の右膝蹴りがボディーに相打ちとなる。2人とも、前かがみになりながら、ノーガードの打ち合いの様相だ。
蹴りの数は麗子の方が多いが、パンチの数は佳奈の方が多い。両者ともに顔が赤く腫れて疲労が見える。
そんな佳奈の右フックがヒットし、追い打ちをかけようと前に出たところを、麗子が下がりながらの右のハイキックが佳奈の顔面にヒットした。
さすがに佳奈は、こらえきれず膝から崩れる。麗子は、追い打ちをかけ、マウントポジションを奪ってパウントを落とす。佳奈は、腕で必死に防ぎなながらも、防戦一方だ。
完全に佳奈の攻撃意欲が失せたところで、麗子は、佳奈の右腕をとって、腕ひしぎ十字固めに入った。完璧に極められた佳奈が悲鳴を上げる。
麗子「これで勝負ありね」
佳奈「まだまだ」
佳奈は、何とか体をねじって外そうとするが、もはや体が思うように動かない。
しばらく耐えていた佳奈も、観念してタップした。
麗子は、安心したように腕を離して、佳奈から離れ、大の字になった。佳奈もそのまま大の字になっている。火照った体が汗で光を反射させ、まばゆい美しさを放つ。
麗子「これで、どちらが強いか分かったでしょ。あなたの道場破りは、失敗よ」
佳奈「……今日はね。あなたがラッキーだった……、それだけよ。まぐれのハイがたまたま入ってしまったんだから」
佳奈は、うつろな表情のまま答える。
麗子「ふふ、素直じゃないわね。でも、あなたの強さは、認めるわ。私が今まで戦ってきた相手の中であなたが一番よ」
佳奈「私も、あなたより強い人と戦ったことはなかった。私、今まで一度も負けたことがなかったから、ほんとに悔しいわ。喧嘩でも無敗だったのに」
麗子「私も、もしかしたら負けるかもしれないって、途中で何度も思ったわ。まあ、ゆっくり休んでちょうだい」
佳奈「ええ……」
佳奈は、体力が回復するのを待って、荷物をまとめ、帰り支度を整えた。
麗子「じゃあ、また今度、試合で会うのを楽しみにしてるわ」
佳奈「今度会うときは、もっと強くなってあなたをKOしてみせるから」
麗子「楽しみにしてるわ。私は、それ以上に強くなっているからね」
2人はがっちりと握手を交わした。全力を尽くして戦ったからこそ、認め合えるのだった。
佳奈は、その道場の前まで来ていた。
佳奈「すみませーん」
大声を出した佳奈に気づいた麗子は「はーい」と返事して入口まで走ってきた。そして、ドアが開き、ジャージ姿の麗子が顔を出した。
佳奈「お久しぶりね」
麗子「はあ……。あっ」
佳奈「気づいてくれたみたいね」
麗子は、必死に思い出していた。目の前にいるのは、一か月前、この地域で行われた女性総合格闘技大会の決勝を戦った相手なのだ。
麗子「入門のお申し込みですか?」
麗子は、佳奈が持っているオープンフィンガーグローブを見ながら尋ねた。
佳奈「まさか。私があなたに教わることなんて何もないわ。私も、隣の街で格闘技道場を開いているの」
麗子「そうですか?では、いったい何の御用で?」
佳奈「決着をつけたいのよ。あなたと」
麗子「えっ?」
佳奈は、驚いて目を丸くした麗子をにらみつける。
麗子「決着は、この前の試合でついたはずでは?」
佳奈「いいえ。判定であなたが勝ったことになっているけど、私は、納得できないわ。完全に決着をつけたいの。ここであなたに勝って、私の方が強いということを証明したいのよ」
麗子「つまり……。道場破りってわけね」
佳奈「そうよ。まさか逃げたりしないわよね」
話には聞いたことがあるが、まさか自分の身に起こるとは……。
麗子は、身震いした。
麗子「ええ。強いのは私の方ですからね。あなたも、生徒さんたちの目の前で負けて悔しいのは分かるけど、こんなところに乗り込んでくるなんて、ほんとに怖いもの知らずね」
佳奈「そう言っていられるのも、今のうちだけよ。私は長期戦に強いの。あのときは時間が足りなかったのよ」
麗子「時間があれば、あなたは、KOされてたのよ」
佳奈「KOされてたのはあなたよ。私は、ギブアップしたことないのよ」
麗子「へえ、すごい自信ね。それじゃあ、中に入って準備をして」
麗子は、佳奈を誘い入れた。
対峙し合った2人は、互いにビキニのようなユニフォームだ。女性の選手は、魅せることを意識するのも必要だ。佳奈は、ミニスカートのようなデザインになっている。
2人とも均整のとれた細身で筋肉質な体である。背の高さも同じくらいで、体格も同じくらい。2人とも瞳のぱっちりした美女である。
大会の準決勝では、2人とも自分より体重のある相手に圧勝している。
違うのは、麗子は、色白でロングの髪を後ろで束ねているのに対し、佳奈は、日に焼けた褐色の肌でショートヘアである。
佳奈「時間無制限の一本勝負よ。その他のルールはあの大会と同じ。あなたがギブアップか落ちたら終わりね」
麗子「それは、あなたの方でしょ」
佳奈「じゃあ、いくわよ」
佳奈が突進する。そして、鋭いパンチを連発する。秒殺KOを狙っているのだ。
麗子は、その迫力に押されて後退するが、自らもカウンターのパンチや前蹴りを駆使して中には入らせない。
佳奈も、そう簡単に倒せないと見たのか、開始後2分ほどでパンチのラッシュはやめ、様子見でジャブとローキックの出し合いになった。
佳奈の勢いが止まったので、今度は、麗子が攻勢に出る。顔とボディーにパンチを打ち分けていく。距離が離れれば、ミドルキックやハイキックも繰り出す。
そんな中で麗子の的確な右フックが佳奈のアゴにヒットした。
佳奈が尻もちをつく。
麗子「もう終わり?」
佳奈「スリップよ」
そう言いながら麗子の追撃に警戒して寝ころびながら防御の体勢をとる。
麗子は、佳奈の太ももにローキックを何度も打ち込む。佳奈も、寝ころびながら同じように麗子の太ももにローキックを繰り出す。
立っているだけに、麗子の威力の方が圧倒的だ。麗子は、顔や腹への踏みつけ攻撃もしようとするが、そこは、佳奈もうまく体を回し、足や腕でガードする。
麗子「いつまで寝てるのよ。立ちなさいよ」
そう言って少し距離をとる。佳奈が立ち上った瞬間、麗子の膝蹴りが佳奈のボディに入った。
佳奈は、再びダウンする。
しかし、佳奈は、寝技が得意なだけに、麗子も、うかつには寝技に持ち込めない。
麗子は、小刻みに蹴りを佳奈の太ももに打ち込み、ボディーや顔の踏みつけを狙っていく。佳奈は、タイミングを見計らって、麗子の蹴った右足を狙って組みついた。
麗子も、足を抜こうとしたが、佳奈は、素早くからみついていく。麗子は、バランスを崩して尻餅をついた。佳奈は、麗子に乗りかかろうとする。麗子も、必死で、佳奈のボディーに蹴りを入れて突き放す。
佳奈「今度は、こっちの番よ」
立ち上がった佳奈は、麗子の太ももに蹴りを入れていく。佳奈の褐色の太ももは、目立たないながらも赤くなっているが、麗子の太ももは白いだけに次第に赤くなっていく様子が分かる。
佳奈は、麗子の体力をある程度消耗させたところで、上からとびかかるように、かがんで顔やボディーへパンチを放っては、また立ち上がる。
それを何度か繰り返すと、佳奈の動きを読んだ麗子は、佳奈がかがんだ一瞬の隙にボディーを両足で挟み込んだ。佳奈は、構わず麗子のボディーにパンチを打ち込んでくるが、麗子は、両足で佳奈を絞め上げる。
佳奈の攻勢がゆるんで、麗子が佳奈の左腕を取り、佳奈の首に足をかけ、三角絞めを狙っていく。
麗子「苦しいでしょ。ギブアップしたら?」
佳奈「こんなもの、すぐ外してあげるわ」
佳奈は、力づくで麗子の体を持ち上げ、マットに叩きつける。それが不発に終わると、もう一度持ち上げ、麗子の脳天から叩きつけた。
それには、さすがの麗子も手を緩めてしまい、佳奈が手を抜いた。
佳奈の首に足を絡めてぶら下がった状態の麗子は、そのまま太ももで佳奈の首を絞める。しかし佳奈も、麗子のボディーにパンチを打ち込み、外そうとする。
両者ともに全身に疲れと痛みを感じながらも、気力に衰えはない。
佳奈「早く放しなさいよ。この汚い足を」
麗子「あなたこそ、もうあきらめなさいよ」
佳奈は、何度か麗子をマットに叩きつけるが、麗子もうまく受け身をとって、足だけは放さない。佳奈の息遣いは激しさを増す。
佳奈は、今度は、体を前に倒し、麗子の腹や脇腹へパンチを打ち込んでいく。ただ、麗子は、顔面へのパンチだけは食らわないように防御している。
止める者もいないので、なかなか体勢を変えることもできない。一瞬の隙が勝負を分けるから。
麗子は、佳奈の動きが止まったのを見計らって、腹筋を使って体を起こし、足を抜いて佳奈の首に手を回した。上から右脇で佳奈の首を押さえつけ、左手も下から回してフロントチョークの状態である。佳奈は、何とか手を挟みいれて、麗子の腕をほどこうとする。
そこから麗子は、右膝を佳奈のボディに打ち込んでいく。佳奈は、必死にこらえながら、麗子の右膝蹴りを両手で受け止めることに成功し、テイクダウンを決めた。
佳奈は、首を押さえつけられながらも、右腕を振り回し、麗子の顔面をパンチが何度かとらえる。麗子もさすがに左手を離してそれを防がざるをえない。
佳奈が首を抜いた。麗子は、それに合わせて体を起こそうとするが、佳奈は、麗子の首に右手を回して抱え込み、そのまま押し倒す。
今度は、逆に佳奈がギロチンチョークをかける格好になった。しかし、麗子も、黙ってはおらず、下から佳奈の顔にジャブを叩きこみ、自分の右腕を佳奈の首に回して、体勢を逆転させようとする。
麗子は、力を振り絞って佳奈を裏返して上になる。しかし、しばらくすると今度は、佳奈の方が力を振り絞って麗子を裏返して上になる。そして、また麗子が佳奈を裏返して上になれば、佳奈も躍起になって上になる。
結局、壁際まで返し合いが続いた。佳奈が上になって麗子を押さえつける。麗子は、裏返そうとするが佳奈の体は壁で跳ね返され、体勢を変えられない。
佳奈「あなたも、これが運の尽きね。ギブアップしかないわよ」
麗子「たまたま上になっただけでしょ。痛くもかゆくもないわ」
麗子も、下になっていると体力の消耗が激しいので体勢を入れ替えたいが、佳奈の体は逆には返せないような体勢になっているので動かない。
佳奈は、2人の体の間に自分の右ひざを入れた。膝とすねで麗子のボディを圧迫する。
佳奈「いくら我慢強いあなたでも、もう限界でしょ」
佳奈は、不敵な笑みをうかべる。麗子も、大汗をかきながら痛みに耐えている。
麗子は、下から佳奈をのど輪で押し上げる。佳奈は、麗子の手を払いのけようとするが、その佳奈の体が少し浮いた隙に、2人の体の間に麗子は、足を入れ、佳奈のボディーを後ろに跳ね上げて投げ飛ばした。佳奈は、背中から床に落ちる。
麗子は、すぐに立ち上がる。佳奈も、一瞬何が起こったか理解できなかったが、すぐに立ち上がる。
2人は、肩で息をしながらにらみあう。2人とも、張りのある体から汗がしたたり落ちる。
佳奈「あなたも、往生際がわるいわね」
麗子「減らず口をたたいて休んでないで、かかってきなさいよ」
佳奈「あなたこそ、かかってくるのが怖いんでしょ」
麗子「怖いわけないでしょ」
麗子が佳奈の顔面にパンチのラッシュをしかける。佳奈も、防御しながら応戦する。
2人とも、疲れからかラッシュは長く続かない。次第に単調なパンチとローキック、前蹴りの応戦となる。
それでも、防御する反応も落ちているため、ヒットする確率は高い。消耗戦である。
佳奈「もう倒れなさいよ。楽になるわよ」
麗子「あなたこそね」
麗子のミドルキックが佳奈の脇腹に食い込む。佳奈は、苦悶の表情を浮かべた。麗子がパンチのラッシュをする。顔を腫らした佳奈は、たまらずクリンチで逃げる。
麗子「クリンチなんて弱い人がすることよ。離れなさいよ」
佳奈「いいわよ」
佳奈は、離れ際に麗子に膝蹴りを叩きこむ。今度は、佳奈が麗子のボディを中心にパンチと膝を入れていく。麗子は、たまらずクリンチで逃げる。
佳奈「さっきの言葉をそのままお返しするわ」
麗子「あなたを投げ飛ばすためよ」
麗子は、佳奈の後ろに手を回し、体を持ち上げて投げようとする。しかし、佳奈も踏ん張って投げさせない。
今度は佳奈が麗子の首に手を回し、投げようとする。しかし、それも、麗子が巧みに首を抜いて防ぐ。離れ際に佳奈は、麗子に大ぶりのフックを振るうが麗子は、何とかよける。
2人は、再び距離を置いてにらみ合う。顔面へのパンチの打ち合いから両者の右膝蹴りがボディーに相打ちとなる。2人とも、前かがみになりながら、ノーガードの打ち合いの様相だ。
蹴りの数は麗子の方が多いが、パンチの数は佳奈の方が多い。両者ともに顔が赤く腫れて疲労が見える。
そんな佳奈の右フックがヒットし、追い打ちをかけようと前に出たところを、麗子が下がりながらの右のハイキックが佳奈の顔面にヒットした。
さすがに佳奈は、こらえきれず膝から崩れる。麗子は、追い打ちをかけ、マウントポジションを奪ってパウントを落とす。佳奈は、腕で必死に防ぎなながらも、防戦一方だ。
完全に佳奈の攻撃意欲が失せたところで、麗子は、佳奈の右腕をとって、腕ひしぎ十字固めに入った。完璧に極められた佳奈が悲鳴を上げる。
麗子「これで勝負ありね」
佳奈「まだまだ」
佳奈は、何とか体をねじって外そうとするが、もはや体が思うように動かない。
しばらく耐えていた佳奈も、観念してタップした。
麗子は、安心したように腕を離して、佳奈から離れ、大の字になった。佳奈もそのまま大の字になっている。火照った体が汗で光を反射させ、まばゆい美しさを放つ。
麗子「これで、どちらが強いか分かったでしょ。あなたの道場破りは、失敗よ」
佳奈「……今日はね。あなたがラッキーだった……、それだけよ。まぐれのハイがたまたま入ってしまったんだから」
佳奈は、うつろな表情のまま答える。
麗子「ふふ、素直じゃないわね。でも、あなたの強さは、認めるわ。私が今まで戦ってきた相手の中であなたが一番よ」
佳奈「私も、あなたより強い人と戦ったことはなかった。私、今まで一度も負けたことがなかったから、ほんとに悔しいわ。喧嘩でも無敗だったのに」
麗子「私も、もしかしたら負けるかもしれないって、途中で何度も思ったわ。まあ、ゆっくり休んでちょうだい」
佳奈「ええ……」
佳奈は、体力が回復するのを待って、荷物をまとめ、帰り支度を整えた。
麗子「じゃあ、また今度、試合で会うのを楽しみにしてるわ」
佳奈「今度会うときは、もっと強くなってあなたをKOしてみせるから」
麗子「楽しみにしてるわ。私は、それ以上に強くなっているからね」
2人はがっちりと握手を交わした。全力を尽くして戦ったからこそ、認め合えるのだった。
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※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
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