じゅるり

じゅるり

  じゅるり じゅるり・・・・
  じゅるり じゅるり・・・・ 

  男は、異様な感覚で目を覚ます。
  「ここは何処だ？」
  辺りを見渡す、何も見えない 果てしない闇の世界
  それはかつて映像で見た深海の様だ 。

  じゅるり じゅるり・・・・
  じゅるり じゅるり・・・・

  「誰・・・・」
   声がつまる・・・
   本能か直感か、声を発する事が出来ない。
   その時だ。
  「誰か、誰か居るのか？」
   暗闇に声が響く・・・・
  「俺以外に・・・誰か居るのか？」
   
  じゅるり じゅるり・・・・
  じゅるり じゅるり・・・・

   「奇妙な音、いや声かも知れない、 頭の奥底に響く奇妙な感覚だ。」

  じゅるり じゅるり・・・・
  じゅるり じゅるり・・・・

  また、頭の奥底に響く・・・
  その時だ。
  彼方の方から声が聞こえる。

  「止めて！ 止めて！ 止めて止めて！ 止めてくれッ!!」

  じゅるり じゅるり・・・・
  じゅるり じゅるり・・・・

  「一体何が？」

  人の気配が消えた・・・
  考えている場合ではない
  「早く逃げなければ、次は俺かもしれない。」
  男は立ち上がる  そして一歩  二歩と後退り男は勢いよく駆け出す
  「いったいどのぐらい進んだんだろうか、暗闇の中では、わからない？」
  「本当は、さっきの場所から進んでいないんではないのか？」
  「実は、ただ足踏みをしているだけなのかも知れない。」
  「ただ言えるのは、この場から直ぐに離れなくてはならないという事だ。」
  本能がそう叫んでいる・・・
   
   じゅるり じゅるり・・・・
   じゅるり じゅるり・・・・

   頭の中に響く、奥底に・・・
   男はその場に立ちすくむ。
   動かない・・・どうしても指一本すら動かせない。
  「恐怖」
  「これが恐怖なのか？」  
   汗が頬を伝わり滴り落ちる。
  
   ぴちゃぁ・・・・

   ゾワゾワ、身体中に鳥肌が立つ。

   じゅるり じゅるり・・・・
   じゅるり じゅるり・・・・

   「何故だ？ どうしてなんだ？」
  どうして気づかれたんだろうか  わからない？
  「あっ!!」
  汗が落ちた時か。
  「そうか、解ったぞ 音だ 音で反応するだ？」
  とっさに男は汗を拭う。

  例の声は、聞こえない・・・
 安心したのか、男は唾を飲み込んだ・・・
   「ごくッ!!」
  次の瞬間・・・
 
   じゅるり じゅるり・・・・
   じゅるり じゅるり・・・・

 気づかれた!!
  「やばい！ やばい！  殺される  逃げなければ・・・」
 何処に？
 そんな時だった・・・
  「あれは・・・」
 微かに見える白い点・・・
  「光だ!!」
 思った瞬間、靴を脱ぎ捨て一気に駆け出た！    
  「あそこだ！ あそこにさえたどり着ければきっと抜け出せる。」
 
 あの声は聞こえない。

   じゅるり じゅるり・・・・
   じゅるり じゅるり・・・・ 

  「聞こえる、あの声だ!! 何故気づかれた・・・」
  「どうしてだ？ 」
  「どっくん!! どっくん!!」 
  「心臓の鼓動？ 」

   じゅるり じゅるり・・・・
   じゅるり じゅるり・・・・

 奴が 近づいてくる・・・
  「やはり、心臓か？」

 このまま進むしかない・・・
  「あと少しだ もう少しだ・・・」
  「光」
 男は光を抜ける  
  「やった！ やったぞ!!」
 男は喜び、そして振り替える。

  「ぼとり」 
  
   じゅるり  じゅるり・・・・
   じゅるり  じゅるり・・・・