黒ウサギ世界を廻る異世界奇譚 ~食いしん坊ウサギと世話焼き狼の絆は深い~

鴻霧

文字の大きさ
20 / 67
魔王死神編

19話 真の魔王

しおりを挟む
ラビリスと合流するために宿に向かう

「その ラビリスとやらが我を召喚したと」

「あぁ タイミングの悪いことにレゼとぶつかっちまったが」

「ごめんなさい」

「よいよい 我は細かいことは気にしないのだ
そのラビリスはどこにいるのだ?」

「確か猫水屋で宿を取るって言ってたな」

「この先にある」

「よし!行くのだ」
走り出す

「俺たちを置いてくなよ」

「早くするのだー!」
振り返り催促する

ドンっ!

「はうっ」

「なんだ このガキ 痛ぇじゃねーか」
ガラの悪そうな男が大袈裟に痛がる素振りをする
「どおしてくれるんだ? こりゃあ治療費貰わねーといけねーな ひひひ」

「えらそーに 不愉快なのだ!・・・失せろ!」
男を睨みつける 男は背筋に寒気が走り青ざめる

「ひぃっ!・・・お 覚えてろよー」
男は尻餅を付き 怯えた顔をして逃げていった
さすが魔王と言うだけはある

「全く、我にぶつかるとは失礼なやつなのだ」

「お前が前をちゃんと見てなかったからだろ」

「ふん! 我は悪くない」

「あれ?皆さんこんなところでどうしたんですか?」
男が出てきた所から今度はラビリスが出てくる

「それはこっちの台詞だ」

「私はここで情報収集をしてました!」
乾杯が描かれた看板を指差す
イラストからして酒場のようだ

「情報?」

「はい!山越えしようと思っていたんですけど山頂を天魔が占領したみたいで・・・迂回しかないですね・・・奴らは高い所が好きですからね、ぺっ」
この世界の悪魔は天魔を毛嫌いしている こっちからしたらどっちも変わらない種族の気がするが

「このガキんちょは誰ですか?」
頭をなでなで

「やめろい 我は魔王なのだー!」

「魔王? なに言ってんですか この方こそ魔王様です!」
レゼを差し出す

「違うのだー!我こそが真の魔王ファルチェなのだー!」

「違います! ここに証拠があります!」
古めかし魔導書を取り出し、挿絵のページを開き見せる

「ほら、ここにしっかり魔王様の姿が載っています!瓜二つでしょう!」

「いや、ファルチェに似てないか?」

「えぇー 色だって違います!」

「この挿絵モノクロなのだ」

「え え えー! 私間違ってないですよね?」

「最初に僕は違うって言った・・・(たぶん)」

「そんなー じゃあ何者なんですかー!?」

「それは・・・えーと」

「我の眷属なのだ!」

「なに勝手に眷属にしてんだよ」

「その方が誤魔化せるのだ」

「うぅ 魔王様が魔王様じゃなくて眷属で・・・」

「こんがらがってんな」

「しょうがないちょっとじっとしておるのだ」
ラビリスの頭に手を置くとファルチェの手元は紅色の炎に覆われ、ラビリスは急におとなしくなり瞳は虚ろでどこを見ているか分からない

「これで大丈夫なのだ!かーかかか!」
頭から手を離し両手を腰に当て高笑いをする

「あれ?私はいったい・・・あ!魔王様とレゼとディーじゃないですか! こんなところでどうしたんですか?」
さっきまでの会話が無かったことに!そして初めて名前を呼ばれた気がする・・・なんか魔王様怖い・・・

「ラビリスの所に行こうと思ってな・・・」

「そうだったんですね!私は少し用事があるので、夕食には戻りますからー」
そう言って宿とは反対の道を走って行ってしまった

酒場の道をずっと真っ直ぐ行くとラビリスが宿を取った猫水屋が見えてくる
雨と猫のイラストが描かれた看板が下がっている
中に入ると、呼び鈴が置いてあるカウンターから声がかかる

「いらっしゃい 泊まりかい?」
膝に猫を乗せた魔女のような女性が顔を出す
店内は薄暗くあちらこちらから光る眼がレゼ達を見ている
何とも言えない雰囲気で宿より魔女の家か猫屋敷の方がしっくりくる

「ラビリスってのが予約していると思うが」

「ラビリス・・・あぁ入っているよ 二階の突き当りだね」
台帳の様なものをめくり目当ての名前を見つけると鍵をポイっと投げてよこす
「ごゆっくり」

ディーがキャッチするのを割り込みファルチェが鍵を受け取る
「我が一番乗りなのだ!」

「こらっ! 走るんじゃねぇ!」
バタバタと階段を駆け上がる
部屋に入りベッドにダイブしようとしたところを首根っこを掴み阻止する

「汚れたままベッドに入るな」

「むむぅ・・・分かったのだ」
服をポイッポイッと脱ぎ捨て部屋についているシャワー室に向かう

「騒がしいやつだなぁ」

ファルチェがシャワーから上がる頃ようやくラビリスが戻ってくる

「遅くなりましたぁ いやぁ疲れた疲れた」
沢山の紙袋を抱えながら部屋に入ってくる

「そんなに沢山何買ったんだ?」

「フフフ・・・これですか?」
紙袋に入った物を広げる

「じゃーん!新しい服ですー!今の服はかなりぼろくなってきましたからね!いい機会ですし新調しようかと思いまして」

広げられた服は可愛らしいデザインの服ばかりだ

「ディーのはこれなんで」
無造作に渡される

「今のとそんなに変わらねぇな」

「我、綺麗になったのだ!」
素っ裸のままディーの目の前で仁王立ちしている

服から目線を上げ、チラッと見てまた目線を戻す
「綺麗になったんならさっさと服を着ろ」

「きゃあ! 魔王様!何か着てくださいー!」
鼻血を出して倒れる まったくいい顔してやがる

鼻血からすぐに復活し、ファルチェを着せ替え始めている
「魔王様にはこの服が似合います!あぁ こっちもいい! これもいい!」

もともと魔王の事を崇拝していたがここまでだっただろうか?

「フフフ・・・」
ファルチェを見ると悪い顔をしている
さっきのことを思いだし背筋が寒くなる・・・恐ろしい子・・・

「やっぱり魔王様は和装が似合いますねぇ」
黒色のレオタード風のインナーに和装のワンピースと白のニーハイが絶対領域を作り出している

「レゼはこれを着てください 絶対似合いますから!」
渡されたのは水色の丈の短いサロペットスカートで後ろにリボンがついている

「かわいい・・・」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

処理中です...