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十一章 東京に、特許許可局はないみたいだ
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連絡をもらった翌日の午後。
加藤は、東京の郊外にある、氷沼の勤務先の大学に向かった。
結局、明け方近くまで、ネットで検索を続けていたので、加藤は殆ど寝ていない。
まあ、これなら、氷沼の睡眠時の脳波研究に、協力しやすいであろう。
研究棟の前で、氷沼が待っていた。
相変わらず、イケメンである。
無駄に……。
パリっとした白衣を着た氷沼は、片手を上げる姿が妙にさまになっていて、加藤はちょっとムカついた。
「よお、せいさく! 相変わらず、アンキロサウルスみたいな目してんな」
『アンキロサウルス』は草食恐竜で、氷沼のお気に入りの一種である。
「ほっとけ! だいたい、本物のアンキロサウルスを、見たことあんのか、お前は」
「まあまあ、アンキロサウルスは、肉食恐竜に負けない防御力をもってる、スゴイ奴なんだぜ」
「知るか!」
「ああ、俺の研究室はこっちだ」
午後の日差しのなか、トレーニングウエアの学生たちが、構内を走り抜けていく。
現在、氷沼が所属している大学は、スポーツ推薦の学生が多数おり、世界選手権やオリンピックの代表に選ばれる者も多い。
アスリートたちのパフォーマンス向上には、質の良い睡眠が不可欠であり、そのために専門家として氷沼が招聘されたらしい。
この大学の英断、か?
それとも……愚断か。
「しかし、無呼吸症候群対策の枕なんぞ、いくらでも手に入るがな」
ぶつぶつ言いながら、加藤は氷沼の研究室の隣の、実験室に入る。
実験室にもあちこちに、恐竜のイラストが貼ってある。
何の研究をやっている教員か、分からないほどだ。
「ふふふ、甘いな加藤君。俺の開発中のツールは、そんな簡単なもんじゃない」
薄暗くなった実験室で、加藤は頭に電極を装着させられて、用意されたマットレスに横になる。
三秒後、加藤は眠りに落ちた。
夢を見ていた。
ガキの頃の加藤と氷沼。
互いに図鑑を持っている。
加藤は昆虫図鑑。
氷沼はもちろん恐竜図鑑。
――すげえ、コエロフィシス! さすが肉食、共食いするんだ。自分の子どもも、食ってるみたいだ!
――自分の子ども、食うの? なんか、やな恐竜……。
嫌だなと、口に出していた。
加藤の上半身が、勝手に起き上がっていた。
加藤は、マットレスが盛り上がり、彼の上体を起こしているのに気付く。マットレスは、端からくるくると、巻きずしのように巻かれていた。
なんだろう。
起きた感触が、いつもより気持ち悪い。
睡眠を中断されたからか。
それとも……
「あれ、もう目覚めたの? 相変わらず、せいさくの睡眠時の脳波は読めないな。ああ、一応レム睡眠だね、夢でも見たか?」
「俺、どの位寝てた?」
「三十分も寝てないよ」
加藤は呼吸を整えた。
「これは、どんなからくりなんだ?」
氷沼の話によると、時間ごとにマットレスの形態が変化し、睡眠を中断させるものだという。
脳が睡眠の中断を察知すると、呼吸が回復するらしいのだ。
いちいち中断なんかしたら、余計睡眠不足になりそうだが。
「従来のタイプだと、お前みたいな奴には、完全覚醒を促す、っと」
氷沼は何やら記録をつけていた。そんな姿は、研究者っぽい。
加藤は氷沼に訊く。
「従来型って、これはお前が作ったもんじゃないのか?」
「うん。俺が開発したのは、こんな低レベルじゃないよ。これを作ったのは、脳神経系の医者らしい。ただ、特許云々で揉めて、丸ごと外国の企業に売ったみたいだ」
加藤のアンキロサウルスの様な瞳が光る。
「これ作った医者ってさ、四の五の、何だっけ……」
「よく知ってるな。篠宮って医者だ」
加藤は、東京の郊外にある、氷沼の勤務先の大学に向かった。
結局、明け方近くまで、ネットで検索を続けていたので、加藤は殆ど寝ていない。
まあ、これなら、氷沼の睡眠時の脳波研究に、協力しやすいであろう。
研究棟の前で、氷沼が待っていた。
相変わらず、イケメンである。
無駄に……。
パリっとした白衣を着た氷沼は、片手を上げる姿が妙にさまになっていて、加藤はちょっとムカついた。
「よお、せいさく! 相変わらず、アンキロサウルスみたいな目してんな」
『アンキロサウルス』は草食恐竜で、氷沼のお気に入りの一種である。
「ほっとけ! だいたい、本物のアンキロサウルスを、見たことあんのか、お前は」
「まあまあ、アンキロサウルスは、肉食恐竜に負けない防御力をもってる、スゴイ奴なんだぜ」
「知るか!」
「ああ、俺の研究室はこっちだ」
午後の日差しのなか、トレーニングウエアの学生たちが、構内を走り抜けていく。
現在、氷沼が所属している大学は、スポーツ推薦の学生が多数おり、世界選手権やオリンピックの代表に選ばれる者も多い。
アスリートたちのパフォーマンス向上には、質の良い睡眠が不可欠であり、そのために専門家として氷沼が招聘されたらしい。
この大学の英断、か?
それとも……愚断か。
「しかし、無呼吸症候群対策の枕なんぞ、いくらでも手に入るがな」
ぶつぶつ言いながら、加藤は氷沼の研究室の隣の、実験室に入る。
実験室にもあちこちに、恐竜のイラストが貼ってある。
何の研究をやっている教員か、分からないほどだ。
「ふふふ、甘いな加藤君。俺の開発中のツールは、そんな簡単なもんじゃない」
薄暗くなった実験室で、加藤は頭に電極を装着させられて、用意されたマットレスに横になる。
三秒後、加藤は眠りに落ちた。
夢を見ていた。
ガキの頃の加藤と氷沼。
互いに図鑑を持っている。
加藤は昆虫図鑑。
氷沼はもちろん恐竜図鑑。
――すげえ、コエロフィシス! さすが肉食、共食いするんだ。自分の子どもも、食ってるみたいだ!
――自分の子ども、食うの? なんか、やな恐竜……。
嫌だなと、口に出していた。
加藤の上半身が、勝手に起き上がっていた。
加藤は、マットレスが盛り上がり、彼の上体を起こしているのに気付く。マットレスは、端からくるくると、巻きずしのように巻かれていた。
なんだろう。
起きた感触が、いつもより気持ち悪い。
睡眠を中断されたからか。
それとも……
「あれ、もう目覚めたの? 相変わらず、せいさくの睡眠時の脳波は読めないな。ああ、一応レム睡眠だね、夢でも見たか?」
「俺、どの位寝てた?」
「三十分も寝てないよ」
加藤は呼吸を整えた。
「これは、どんなからくりなんだ?」
氷沼の話によると、時間ごとにマットレスの形態が変化し、睡眠を中断させるものだという。
脳が睡眠の中断を察知すると、呼吸が回復するらしいのだ。
いちいち中断なんかしたら、余計睡眠不足になりそうだが。
「従来のタイプだと、お前みたいな奴には、完全覚醒を促す、っと」
氷沼は何やら記録をつけていた。そんな姿は、研究者っぽい。
加藤は氷沼に訊く。
「従来型って、これはお前が作ったもんじゃないのか?」
「うん。俺が開発したのは、こんな低レベルじゃないよ。これを作ったのは、脳神経系の医者らしい。ただ、特許云々で揉めて、丸ごと外国の企業に売ったみたいだ」
加藤のアンキロサウルスの様な瞳が光る。
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「よく知ってるな。篠宮って医者だ」
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