【第一部完結】保健室におっさんは似合わない!

ウサギテイマーTK

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夏休み特別編

中学3年生の夏休み

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 中学最後の夏休みだから、冒険みたいなことをしたいって、最初に言い出したのは誰だったろう。
 
 透琉とうる祥真しょうまか、あるいは佳月かづきか。
 きっかけは古い映画。
 少年が死体を探しに行くってヤツ。

「死体とかは、俺マジ無理」

 透琉は髪を後ろに流しながら言う。 
 いくら校則が緩いウチの学校でも、肩よりも長い透琉の髪は反則じゃね?

「いや、ないから。日本で放置された死体とか」

 僕は苦笑する。
 でも、死体から抜け出たモノは、いるかもね。

「昆虫のいっぱいいそうなトコが良いな」

 僕は昆虫好きだ。
 昆虫全般、節足や環形にも詳しい。
 あんまり、女子ウケは良くない趣味だけど……。

「じゃあ、どっかの山の麓でキャンプ」

 祥真はアウトドアが好きな奴。
 ていうか、川原でのバーベキューが好きなのだ。

「不思議な封印とか解いて、異世界行っちゃったりして」

 一まわり体がデカい佳月は、ムードメーカー。
 短髪で日焼けしている、元野球少年だ。

 四人とも同じ中高一貫生。
 現在中三だけど、一貫だから受験の心配はない。
 だからこそ、中学時代の最後の夏を、目一杯楽しみたい。

 でも、自慢じゃないけどみんな非リア。男四人でバカやって、夏の想い出を作りたかった。女子がいたら、それはそれで嬉しいけど。

「まずは場所を決めよう」

 リーダー格の透琉が言い出した。
 彼女いないグループだけど、透琉のことを好きな女子は結構いる。
 オーガニック派の透琉は、さらさらの髪と整った顔立ちしていて、ちょっと羨ましい。

「北海道! 涼しそう」
「交通費、高くつくよ」

 佳月の提案は、遠いので却下。

「海は?」
「あ、俺パス」

 泳げない祥真が首を振る。

「そうだな、あのさ、ちょっとした心霊スポットみたいなところ、どう?」

 コワイ系話の好きな透琉が悪戯っぽく笑う。
 僕も結構コワイの好きだから、つい話に乗る。

「動物の首系?」

 佳月がちょっとキョどりながら言う。そう言えば、最近コワイ映画見たとか言ってたっけ。

「限界集落みたいな?」

 都会で生活している僕たちは、「ナントカ村」のタイトルには弱い。

「限界、じゃないけど、最近、割と近い県でコワイ噂を見た気がする」

 僕が言うと、透琉は食いついてくる。

「へえ、何それ、何処の話?」
「S県の山地。麓の村に出る、吸血少女だって」

「「おお!」」

 祥真も佳月も目が輝く。
 少女ってとこがキモだな、きっと。

 吸血少女の噂はこんな感じだ。
 中学に通っている少女は、仲の良かった友だちから、無視されるようになった。
 所謂イジメの第一歩。

 学校に行きたくないけど、行かないと親が心配する。
 少女は毎日家を出て、学校へは行かずに近くの神社や森で過ごしていた。

 ある日の夜。彼女は、月の光を頼りにトボトボと歩いていた。

「どうしたの?」

 少女に声をかけて来たのは、とんでもなく綺麗な女性だった。
 少女はイジメが辛いと泣いた。だから夜遅くまで、友だちに会わないようにしているのだと。

 話を聞いた女性は言う。

「わたしの仲間におなりなさい。嫌な相手なら、消してしまえば良いのよ」

 以後、少女の姿は消えた。家からも。学校からも。
 ただ、彼女をイジメていた者たちは、高熱を出したり、顔中に赤い斑点が浮き出たりして、次々と死んでいった。
 死んだ者たちの首筋には、赤い点が二つ……。

 今も、月の光の下で、少女は遊んでいるという。
 本当の友だちを見つけたくて……。


「ナニソレコワイ」
「可愛いコなら許す」

 祥真と佳月の漫才に、吹き出しそうになりながら、透琉が言った。

「ソコにしようぜ!」

 結局リーダーなんだよね、透琉が。

「じゃあ決まり。噂の場所近くで、キャンプしたり山歩きしたり」
「釣りできるかな」
「肝試しやろう」

 男四人は盛り上がり、計画を立て始めた。
 早く夏休みになあれ!


「えっ! 中学生だけで泊まるって、出来ないんだ」

 僕たちは「少年の家」とか「青年の家」みたいなトコに泊まって、翌日からキャンプ場へ移動する予定でいた。
 でも、引率者が必要とかで、それじゃあ僕たちだけの冒険にならない。

「手を出さないで見守ってくれる、誰かを見つけないと」

 親や親戚じゃない人が良い。
 だって必ず余計なことを言ってくるから。
 中学生なのでお金はないから、ボランティアでやってくれる人、いないかな。

「そうだ! ボランティアしてくれる人、募集してみようよ。大学生とか」

 透琉はそういうと、地元向けのSNSで募集をかけた。

「大学生って、自分たちが遊ぶので忙しいんじゃないか?」

 佳月はそう言い、祥真も頷いた。

 数日後、一人だけ連絡して来た人がいた。

「ボランティアで構わないって! やった!」

 大学生じゃない大人の男性だった。
 その人は変わった条件を付けていた。

「何々……。『君たちが冒険している間は、昆虫採集させてくれ』だって」
「良いんじゃない。こっちも自由に出来るし」

「なんて人?」

「加藤、さん」


 梅雨が明け、通知表貰って夏休みが来た。
 僕たちはそれぞれ、衣類やお菓子、自分用の薬などを買って、旅の準備をした。

「どこか行くのか?」

 珍しく家に居る父さんが、僕の荷物を見て訊いてきた。
 父さんは農業関係の仕事をしていて、夏は休みが少ない。

 小さい頃は父さんと一緒に、夏休みは昆虫採集に行ってたから、きっと虫好きになったんだろう。まあ、父さんは害虫対策が専門だけど。

「うん。友だちとね。ちょっと泊ってくる」
「気をつけてな」
「はあい」

 こうして僕の、いや僕たちの夏が動き始めた。
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