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お嬢様とエピローグ①
しおりを挟む「全く見覚えの無い天井だ」
目が覚めた俺は、どこかの台詞を思わず言いたくなったが、なんとなく理性が働き、少し改変した物が漏れ出た。
実際、見たことの無い天井で、暖かな布団に寝かされていたのだから、間違いない。
しかし、このようなシチュエーション、最近色々な方面で見受けられる。
ひょっとしたら、俺は異世界に転移してしまったのか?! それとも異世界転生かっ!? と一瞬喜んでしまった。
だが、右腕を自分の視界に持ってくると、かなり見慣れた物であったため、その淡い希望と未知への探求が出来ないと言うことがわかり、そう考えてしまった自分が少し恥ずかしくなった。
しかし、右腕を動かしたときに気づいたが、体の左半身、主に腰辺りが酷く痛い。と言うことは、俺はあのとき死んでなかったのだと理解できた。
警察のサイレンが聞こえた為、金本と太った先輩は逃げ出したのだろう。
もし、あのまま俺の意識が残っていて、力の限り金本の足を握りしめていたら殺されていたかも知れない。そう思うと、背筋が寒くなった。
しかし、今は生きている。それだけで良かったと思えた。
「あ! 知佳子!?」
脳がはっきりとしてきた時に思い出したこと。彼女の事だった。彼女は無事なのか、怪我は無いのか、生きているのか……。それらが知りたくなり、痛い体を無理して起こす。
すると、ようやく現状が自分の視界に入ってきた。
天井は白かったが、病院のような白さでは無かったなと頭の片隅に思っていたのだが、やはり間違いなかった。
ここはどこかの家の一室。右手には広くて大きい窓があり、そこから日本庭園と言うような形では無いが、綺麗で俺が住んでいた地域にしては少し広めの庭が見えた。
壁もモノトーンかと思いきや、薄くベージュの様な色が付いた物であり、暖かさを感じた。
太陽の高さから見て、今は昼過ぎだろうか。6月中頃で、梅雨になりかける時期だが、綺麗な晴れであり、その暖かな光がこの部屋にも差し込んでいた。
その光景に思わず見入ってしまっていた所に、突然左側にある扉が開いた。
「ヒトシ?!」
「よう……」
なんとなく間抜けな顔で入ってくる女性は知佳子だった。
無事なのか知りたかった人にすぐ出会えたことは非常に良かったのだが、知佳子は釈然としない顔のまま俺が寝ているベッドの隣にある椅子に座る。
後で聞いてわかったのだが、俺が目を覚ますときにベッドの横に居たかったそうなのだ。そして、たまたまトイレに行っていた間に俺が目を覚ましてしまったと言うことだった。
「無事だったんだな」
「心配させすぎですわ……」
彼女はむくれていた顔のままそう言ってくる。正直自分でも生きてるとは思っていなかった為、この再会は驚いているのだが、彼女の怒りっぷりが自分の驚きよりご機嫌取りの方が優先されてしまった。
しばらく彼女の機嫌を取った後、事の顛末を聞いた。
俺が気を失ってすぐ、二人は逃げ出したそうだ。そして、1分も経たない間に警察車両と警備会社の車がいくつもたどり着き、会社一帯を制圧したそうだ。
そして、唯一の負傷者である俺が病院に担ぎ込まれ、治療を行ったと。
背中から打たれた銃弾は体の中に残っており、緊急手術で摘出されたと言っていた。弾は7.62mmらしい。日本で一番不法所持されやすい系統の拳銃の可能性が高いと言っていた。
正直、何がそれに当てはまるのか全くわからないし、知っていても欲しいわけでもないし、手に持ちたくも無い。
もう二度と会いたくない物だと思っただけだ。
そしてもう一つ、あれから出血と力を使い果たした事で、昏々と眠り続け、2日が経っていると言うことだった。
その2日の間に、俺の元いた会社は捜索を受けたそうだ。そして、監禁されていた建物だが、突入準備が整わず、翌日行くことになってしまい、結局誰一人として逮捕は出来ていないとのことだった。
お役所仕事ここに極めりと言うことだろうか。
ただ、その中の一つ朗報として、監禁されていた建物の中から、3人の女性が救助された。一人は性的暴行を受けていたが、一人は無事、最後の一人は突入日の前日に連れてこられたばかりだそうだ。
そして、知佳子の立てた予測は正しいと思えることが一つ。
あの地域の幾つかの店、現状わかっているだけで8つの店が、あの日を境に開けなくなった。と言うか、もぬけの殻になっていると言っていた。
やはり、協力者が居て、地域全体で見張っていたと言うことなのだろう。
綿密な計画とは言えなかったが、無差別に逃げなくて良かったと心から思えた。
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