シュヴァール国競馬伝~平民生まれの少年騎手は、貴族社会の競馬界で旋風を巻き起こす~

華世良せら

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一章:出会い

7.夢から覚めて二年

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 懐かしい夢を見た。僕がシルヴァン様と出会った時の夢。

 多少、今の僕の考えも混じっていたけど、あんな感じのなにも知らない子供だったな。と、起き抜けの頭で考えながら笑った。

 あれから二年。僕は十二歳となり、子供ではあるが自立できる歳になった。

 とは、言っても……うちのように、領主様から牧場を任されている様な家は、自立どころか、結婚しても離れに住んで家業を手伝う事がほとんどだったりする。離れに住む叔父家族がそうだし。

 僕は上に兄三人、姉二人の末っ子だから結婚できるかも怪しいけど、あんな感じで家業を手伝いながら暮らすのが、普通だと思っていた。

 でも、最近はシルヴァン様の元で働いてみたいとも思う。

 最初は、馬に乗れないと言うのが寂しかったけど、年に数回、競馬のオフシーズンである夏と冬に訪れるシルヴァン様と話すのは楽しかったのだ。

 初めて会った時に僕が乗っていたあの子は、牧場での呼称であったリラの520……母馬リラから520年に生まれた子馬。という名前から、ヴァロワラファールという立派な名前をつけてもらい、競走馬として活躍しているらしい。

 初めて会った日から数日後、シルヴァン様と共に来た領主様がシルヴァン様の進めるままに、競走馬にする事を許可し、シルヴァン様の元で調教される事になったのだ。

 その時、僕は年若い他の兄弟と共に家で待つように言われたから、実際に見ては居なかったんだけど……。

 身分の高い人間の前に出るには、当時の僕らでは言葉があまりにもお粗末だったから仕方ないとは思うんだけどね。

 シルヴァン様と会うにも、綺麗な言葉が喋れるようになってくれと父さんから頼まれて、必死になって覚えたから、翌年には六人兄弟の中で三番目に末っ子の僕が領主様の前に出られるようになったのだからやれば、出きるんだな。と、と思った。

 それからは、シルヴァン様が来たら、僕が案内に付けられるようになったし、ヴァロワラファールの話もたくさん聞けるようになったからすごく嬉しかった。

 競走馬になってからのヴァロワラファールは、強くて、競走馬としての中では上位に居るらしい。

 僕の想像した一番速いのあの子。と言うわけにはいかなかったけど、それでも、七百から八百はいる競走馬の中で五十の中に入ると言うのだから、凄い。

 レースで勝ち上がれるのはほんの一部。その中でも重賞と呼ばれるレースに出れる馬は一レースにつき最大十八頭。もちろん、勝つのは一頭だけだ。

 そんな重賞レースはいくつか格式があり、その中でも最も格式高いレースがG1と呼ばれる。

 G1は、G2やG3と言った重賞を勝ち上がった馬やそれらに出走できる実力のある馬しか走ることができないレースだ。 

 G1を走れるというだけで、その馬は凄い馬ということになり、そんな馬だけが走るG1はとびきり凄い馬が集まるレースというわけだ。

 そんなG1の中でも、三歳馬限定のクラシック路線や四歳からの古馬王道路線、古馬短距離路線などがあって、路線ごとにいくつかのレースがある。

 一番人気があるのは牡馬クラシック路線でその次が牝馬クラシック。そして、古馬王道、古馬短距離と続く。

 同じG1でも差があれど、その中で勝てるのはほんの一握りだから、どれを勝っても凄い事に変わりはない。

 ヴァロワラファールは、牡馬クラシックでは、いまいち活躍できなかったが、古馬に入り、短距離を走るようになってからは、G2、G3の重賞を制覇。そして、G1でも健闘を重ねているらしい。

 可愛かったあの子が速さを認められているという事実が喜ばしく、毎回シルヴァン様に話をねだってしまうのだが……それを許してくれるシルヴァン様は優しかった。
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