シュヴァール国競馬伝~平民生まれの少年騎手は、貴族社会の競馬界で旋風を巻き起こす~

華世良せら

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一章:出会い

10.クロネの524

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「親父、叔父さん。どんな感じだ?」
「今のところは大丈夫そうだ」

 ダミアン兄ちゃんが父さんに声をかければ、大丈夫だと返ってきて安心する。

 父さんと叔父さんの邪魔にならないように馬房を覗き込めば、馬房の中で横になっている母馬から覗く足は、さっきより出てきている感じがした。

 生まれるまでにはもう少しかかりそうだけど、パッと見は問題無さそうに分娩しているように見える。

 四人で分娩を見守っていると、徐々に子馬の姿が見えてきた。

 羊膜に包まれた顔が産道から覗き、父さんが呼吸をさせる為に羊膜を破る。

 そこからまた少し時間がかかって、母馬が産みやすい位置を探して、立ち上がり、体勢を変えたりするのを見守っていると、ずるりと産道から子馬の体が生まれ落ち、その全貌が露になった。

「最初聞いた時はヒヤリとしたが安産で良かったな」

 ほとんど介助することなく、産み落とされた子馬に父さんが安堵したような声を出す。

 僕としても、なんの事故もなく産み落とされた事にホッとした。

「タオルとって来るね!」

 そう言って、僕は仮眠室の隣にある物置へと走る。

 しばらくは母馬、子馬共にゆっくりさせるんだけど、母親がへその緒を切ったら、羊水を拭いてあげなければならない。まだ夜明け前で寒いから、早く乾かしてあげた方がいいからだ。

 物置へと駆け込み、腕いっぱいのタオルを抱えて、馬房の前へ戻る。

「父さん!タオル!」
「ああ、ありがとう」

 腕に抱えたタオルを差し出せば、父さんは僕の頭を撫でてからタオルを受け取った。

 ダミアン兄ちゃんや叔父さんにもタオルを渡し、母馬が子馬と胎盤がつながるへその緒を切ったのを見て、みんなで子馬の体を拭く。

 気の強い母馬だと、子馬に近づくのを嫌がる子もいるけど、この子は僕より年上の十五歳で、お産にも慣れているからこうやって僕達に任せてくれるのは助かる。

「はじめまして」

 拭かれて綺麗になった子馬の顔を覗き込みながら、声をかければ、子馬は僕の声に反応するかのように顔をあげた。

 まだ、立ち上がれない産まれたばかりの子馬だけど、よく見る鹿毛のこの子は、顔立ちが整っていて、顔の真ん中……額から鼻筋にかけてに走る細い白斑と呼ばれる白い模様がかっこよく、そしてなぜだか賢さを感じる顔をしている。

 僕の気のせいかも知れないけど……この子は……クロネの524は強い馬になる気がした。
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