シュヴァール国競馬伝~平民生まれの少年騎手は、貴族社会の競馬界で旋風を巻き起こす~

華世良せら

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二章:旅立ちの夏

29.領都での昼食

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 また、草原を駆け、領都へと着く。

 馬達に休憩を取らせつつ、僕らの昼食も兼ねてと、クロネ達から降り、石で囲まれた領都へと門を潜ったのだが……。

「うわぁ……」

 クロネの手綱を握ったまま、僕は感嘆の声をあげる。

 高い石壁の中、二階建ての石造りの建物がいっぱい並んでいるその発展した光景にものすごく驚いたからだ。

「ここで、そんなに驚いていると、王都を見たらどうなるだろうな」

そんな僕にシルヴァン様が笑った。

「えっ!?王都ってここより凄いんですか!?」
「もちろん。厩舎街もここ以上だぞ」

 この領都でも村と比べると、建物がいっぱいで、道も石で舗装されているのにこれ以上?全然、想像がつかない。

「驚くのもいいが、ここだと邪魔になる馬宿に行くぞ」
「え、あ……はい!」

 シルヴァン様の言葉に呆気に取られ、放心しているとシルヴァン様がエクレールを連れて、先に進みだしたので慌てて追いかける。

 道が広いとはいえ、人の多い領都で馬と一緒に歩くのは慣れなくて少し怖かったけど、クロネは落ち着いているようで僕の指示に大人しく従ってくれた。

「ここでいいか」

 シルヴァン様は、一つの馬宿に辺りを着けると、店先にいた店主へと話を着けて、エクレールとクロネを短時間預かってもらう。

「さあ、昼食にしよう」

 大人しく繋がれたエクレールを撫でた後、シルヴァン様は僕へと声をかけ、歩き出す。

「嫌いなものなどはないな?」
「はい。……食べた事の無いものはわかりませんけど」

 シルヴァン様の問いに返事をしたが、都会の食べ物に何があるかわからなくて、小さく付け加える。

「まあ、食べれなかったら無理して食べなくていい。……ここに入ろう」

 そう言って、シルヴァン様は大通りにある店に入る。村には、こういう食べ物を扱う店と言うのはないからものすごく入るのに緊張した。

「そこまで硬くならなくとも……」
「いや……だって……慣れないんです……」

 席に座り苦笑するシルヴァン様に、僕は落ちつきのないままに答える。

 店内はなんだかわからないけど、村では見たことがないくらいにキラキラしているし、なんと言うか……牧場育ちの平民が入って良いような感じがしない。料理もよくわからなくて、シルヴァン様と同じものをお願いした。

「……た、食べた気がしません」

 出てきた料理は美味しかったと思うが、味はわからなかった。まさか、旅立った初日に母さんのシチューが恋しくなるとは……。

「もう一店入るか?」
「そう言うことじゃないですー……」
「はははっ、冗談だ」

 僕の様子が面白いのか、シルヴァン様はご機嫌だ。馬と関係する粉とならいつでも楽しそうにしているが、それ以外は冷たい外見通り静かな人なので、こうやって僕の事で楽しそうに笑っているのは珍しい気がした。

「食事もしたし、エクレール達を引き取って次へ行こう」
「はい」

 せっかくの領都だし、ご実家には寄らないのかな?と、思ったけど、考えたらシルヴァン様は今朝、ここからうちの牧場に来たのだからそりゃ必要ないなと一人で納得し、先に進むシルヴァン様の後を追うのだった。
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