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上層までのモラトリアム
暇な間にやっておくこと
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中層の攻略が終わり、エレオノーラの当主継承が本決まりになった。
此処から細部がどうなるかは親族会議の決定に寄るので、俺が出来ることは殆どない。予め立てておいた予測と許可の範疇でやるだけの残務処理期間と言うべきか。
なので魔力を沢山消費したりはあまりできない。
基本的な繰り越し作業を除けば、教育とか相談とかを多めにするしかないだろう。もちろんオークの兄弟は様子見だけでも待機料が掛かるので、さっさと次の仕事を入れているようだ。
「せっかくなのでリシャール達にダンジョンマスターの心を教えとこう」
「森での魔力運用を覚えたら、希少な薬草は取れ易くなるし、火災も起き難くなる」
「もし精霊使いやゴーレムニストに成れば、一応は召喚も可能になるしな」
「基本形としては、コアになる存在と相性の良い魔力を集めるというのが基礎的な管理だ。森林エルフならば霊木、洞穴エルフなら霊石ってな」
別に教える必要などないのだが、義理はあるし他人から聞くと歪む。
もしエレオノーラの親族であったり他の土地の貴族が妙な事を吹き込んでも困るからな。情報と言うのは歪めて伝達できるし、一部を誇張したり、逆に省くことで事件性を持たせることも出来る訳だ。俺たちが嘘をついて誤魔化してるとかな。
さて、ここで重要なのはダンジョンコアの相性である。
判り易いランドマークであると同時に、儀式魔法的な要素を組み込むときの相性が変化するのだ。
「お前たちの場合は当然ながら霊木だな」
「残念ながら燃えてしまったが、霊石と違って育てることも出来る」
「次点の木を育てる成り、少々劣っても育て易い木を意図的に育てても良い」
「霊木にとって相性が良いのは日射しと暗闇のバランス、風と水、そして勿論土壌になる。木の種類によってはこれらの重要性は前後するし、人口のダンジョンと違って魔物や獣を倒しても効率が悪い」
この辺りは基礎の中でも外れ気味で、人工ダンジョンではまず考慮しない。
だがエルフ達にとっては関心事だし、魔物や獣を倒しても効率悪いと教えることは重要だ。決して魔力として回収出来ない訳ではないが、効率悪いから取引が可能だとか共存が可能だとか説明しておくと後が楽になる。他の土地のエルフは森から得られるものは全てエルフの物だとか言ってお堅いからな。先に説明すればリシャール達は反感を抱かないだろう。
その辺りを先に説明することで他者から反感を植え付けられないようにしつつ、質問には適宜答えて行く。
「それは良いのですが、どうしてフィリッパさんが?」
「そうっすよ。自分は此処で勉強する必要ないであります」
「それはお前から目が離せんからだ。目を離すと妙な物を作るだろう? こないだの鼠を本に、何もかも食う代わりに自分で増えるホムンクルスとか作られてみろ。この森は一瞬で丸裸だぞ。その上あんまり強くないとかな」
前回の四足歩行で学習したがフィリッパはやらかすタイプだ。
思い付くままに色々と研究し始めるので、気が付いたら妙な物を作っている感じだな。それが事故になって居ないのは、単純に行動派では無いからだ。もし研究したホムンクルスで勝手に何処かに出かける場合は、きっとそこで死んでいるだろう。あくまで研究して実用化するまでが好きなので、行動しないだけ救いがある。
それはそれとして、役目を与えておけば無茶もすまい。
「ひとまずフィリッパは普通のと四つ足を使ってリシャール達の霊木化に付き合え。まずは候補を探すことになるだろうが、その間の護衛は必要だし、もし日射しが重要ならば伐採を、豊かな土が必要ならば盛り上げる」
「了解っす。でも植物を育てるみたいで時間掛かりそうっすねえ」
「その通りだよ。しかし霊木は地味に生産性が高いからな」
栄養を適切に増やして行くだけなので、とても時間が掛かる。
しかし霊木は結界を張りながら、同時に薬草を沢山育てて行くとか普通にできるのが大きい。生産性が高いというよりは、植物を育てるために使った魔力の回収効率が良いというべきか。
ちなみに霊石は抜き出す魔力がとても効率が良い。
僅かな魔力を織り込むだけで、儀式魔法とか簡単に出来るからな。エルフの少女たちを起こした解呪くらいならば簡単に実行できるし、効果の拡大も少し使用魔力を増やすだけで簡単に実行できるだろう。
「暫くは霊木候補を探すとして、知っての通りホムンクルスは場を荒らす。あまり連れ動かさずに、安全地帯として適宜に離して使え。フィリッパ自体は森の外か、研究室で旧来のホムンクルスを創造させておくこと」
「ダンジョンでの拠点と同じですね? 判りました」
「ひどいっすよ。自分はただの研究者なのに信用がないっす」
俺とリシャールはフィリッパの戯言を無視しておくことにした。
やらかした人間はまたやらかす物なので、出来る限り余計な事はさせたくない。目を離すと危険だが、戦闘力は低いので出来れば連れまわしたくないというジレンマがある。リシャールもいわば弟分であって強くは言えないだろうしな、何か目的を与えた方が良いのかもしれない。
合ったら良い物として、何があるだろうか?
盗賊探索やダンジョン探索で苦労した内容を何とか出来ること?
「そこまでいうなら……監視用のホムンクルスとか作れないか? ウイザード・アイみたいなやつとか、音源探査とかみたいな。戦闘力は無くてもいい」
「それこそウイザード・アイを唱える子を作った方が早いっすよ? 説明が大変っすけど」
ウイザード・アイというのは、探査用の呪文である。
自分の視覚を飛ばす呪文で、おおよそ立っている位置くらいの座標から、徐々に位置を動かして術者の代わりに見ることができる。しかしフィリッパが言うにはそんな都合が良い物を作れないらしい。
なお、この説明が大変と言うのは良くあることである。
ホムンクルスは人間と価値観が違うので、何が起きているかを説明できないのだ。誰かがソコに居ると言うのが判ったとして、居るという事しか分からない。怪我をして居れば血を流すというのを教えれば、血を流して居たら説明するくらいだ。武装することをすれば戦闘できる奴が何人いるかは判るだろうが、詳細なんか無理である。
ひとまずはフィリッパの関心を移せただけで良しとしておこうか。
中層の攻略が終わり、エレオノーラの当主継承が本決まりになった。
此処から細部がどうなるかは親族会議の決定に寄るので、俺が出来ることは殆どない。予め立てておいた予測と許可の範疇でやるだけの残務処理期間と言うべきか。
なので魔力を沢山消費したりはあまりできない。
基本的な繰り越し作業を除けば、教育とか相談とかを多めにするしかないだろう。もちろんオークの兄弟は様子見だけでも待機料が掛かるので、さっさと次の仕事を入れているようだ。
「せっかくなのでリシャール達にダンジョンマスターの心を教えとこう」
「森での魔力運用を覚えたら、希少な薬草は取れ易くなるし、火災も起き難くなる」
「もし精霊使いやゴーレムニストに成れば、一応は召喚も可能になるしな」
「基本形としては、コアになる存在と相性の良い魔力を集めるというのが基礎的な管理だ。森林エルフならば霊木、洞穴エルフなら霊石ってな」
別に教える必要などないのだが、義理はあるし他人から聞くと歪む。
もしエレオノーラの親族であったり他の土地の貴族が妙な事を吹き込んでも困るからな。情報と言うのは歪めて伝達できるし、一部を誇張したり、逆に省くことで事件性を持たせることも出来る訳だ。俺たちが嘘をついて誤魔化してるとかな。
さて、ここで重要なのはダンジョンコアの相性である。
判り易いランドマークであると同時に、儀式魔法的な要素を組み込むときの相性が変化するのだ。
「お前たちの場合は当然ながら霊木だな」
「残念ながら燃えてしまったが、霊石と違って育てることも出来る」
「次点の木を育てる成り、少々劣っても育て易い木を意図的に育てても良い」
「霊木にとって相性が良いのは日射しと暗闇のバランス、風と水、そして勿論土壌になる。木の種類によってはこれらの重要性は前後するし、人口のダンジョンと違って魔物や獣を倒しても効率が悪い」
この辺りは基礎の中でも外れ気味で、人工ダンジョンではまず考慮しない。
だがエルフ達にとっては関心事だし、魔物や獣を倒しても効率悪いと教えることは重要だ。決して魔力として回収出来ない訳ではないが、効率悪いから取引が可能だとか共存が可能だとか説明しておくと後が楽になる。他の土地のエルフは森から得られるものは全てエルフの物だとか言ってお堅いからな。先に説明すればリシャール達は反感を抱かないだろう。
その辺りを先に説明することで他者から反感を植え付けられないようにしつつ、質問には適宜答えて行く。
「それは良いのですが、どうしてフィリッパさんが?」
「そうっすよ。自分は此処で勉強する必要ないであります」
「それはお前から目が離せんからだ。目を離すと妙な物を作るだろう? こないだの鼠を本に、何もかも食う代わりに自分で増えるホムンクルスとか作られてみろ。この森は一瞬で丸裸だぞ。その上あんまり強くないとかな」
前回の四足歩行で学習したがフィリッパはやらかすタイプだ。
思い付くままに色々と研究し始めるので、気が付いたら妙な物を作っている感じだな。それが事故になって居ないのは、単純に行動派では無いからだ。もし研究したホムンクルスで勝手に何処かに出かける場合は、きっとそこで死んでいるだろう。あくまで研究して実用化するまでが好きなので、行動しないだけ救いがある。
それはそれとして、役目を与えておけば無茶もすまい。
「ひとまずフィリッパは普通のと四つ足を使ってリシャール達の霊木化に付き合え。まずは候補を探すことになるだろうが、その間の護衛は必要だし、もし日射しが重要ならば伐採を、豊かな土が必要ならば盛り上げる」
「了解っす。でも植物を育てるみたいで時間掛かりそうっすねえ」
「その通りだよ。しかし霊木は地味に生産性が高いからな」
栄養を適切に増やして行くだけなので、とても時間が掛かる。
しかし霊木は結界を張りながら、同時に薬草を沢山育てて行くとか普通にできるのが大きい。生産性が高いというよりは、植物を育てるために使った魔力の回収効率が良いというべきか。
ちなみに霊石は抜き出す魔力がとても効率が良い。
僅かな魔力を織り込むだけで、儀式魔法とか簡単に出来るからな。エルフの少女たちを起こした解呪くらいならば簡単に実行できるし、効果の拡大も少し使用魔力を増やすだけで簡単に実行できるだろう。
「暫くは霊木候補を探すとして、知っての通りホムンクルスは場を荒らす。あまり連れ動かさずに、安全地帯として適宜に離して使え。フィリッパ自体は森の外か、研究室で旧来のホムンクルスを創造させておくこと」
「ダンジョンでの拠点と同じですね? 判りました」
「ひどいっすよ。自分はただの研究者なのに信用がないっす」
俺とリシャールはフィリッパの戯言を無視しておくことにした。
やらかした人間はまたやらかす物なので、出来る限り余計な事はさせたくない。目を離すと危険だが、戦闘力は低いので出来れば連れまわしたくないというジレンマがある。リシャールもいわば弟分であって強くは言えないだろうしな、何か目的を与えた方が良いのかもしれない。
合ったら良い物として、何があるだろうか?
盗賊探索やダンジョン探索で苦労した内容を何とか出来ること?
「そこまでいうなら……監視用のホムンクルスとか作れないか? ウイザード・アイみたいなやつとか、音源探査とかみたいな。戦闘力は無くてもいい」
「それこそウイザード・アイを唱える子を作った方が早いっすよ? 説明が大変っすけど」
ウイザード・アイというのは、探査用の呪文である。
自分の視覚を飛ばす呪文で、おおよそ立っている位置くらいの座標から、徐々に位置を動かして術者の代わりに見ることができる。しかしフィリッパが言うにはそんな都合が良い物を作れないらしい。
なお、この説明が大変と言うのは良くあることである。
ホムンクルスは人間と価値観が違うので、何が起きているかを説明できないのだ。誰かがソコに居ると言うのが判ったとして、居るという事しか分からない。怪我をして居れば血を流すというのを教えれば、血を流して居たら説明するくらいだ。武装することをすれば戦闘できる奴が何人いるかは判るだろうが、詳細なんか無理である。
ひとまずはフィリッパの関心を移せただけで良しとしておこうか。
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