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最終計画
最終戦へ向けての出発
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●
過去には無かった物を持って、当時からやり直したくなる。
何が言いたいかと言うと、ウイザード・アイと幻覚を使える呪文型ホムンクルスがかなり有用だったからだ。何しろスポット参戦する傭兵のデボラが、自分にも売ってくれるか、あるいは逆に売り込む先では戦いたくないからと情報共有を求めてきたくらいである。
後者は流石に都合が良過ぎるので、売ることを前提に高額設定している報酬を差し引かせた。
「しかし、これは凄いな。距離が短いのが欠点だが、改良されるとしたら脅威だぞ」
「そうっすね! いやー自分の才能が怖いっすよ!」
「エレオノーラのアイデアがあった事を忘れんなよ」
シビアな傭兵のデボラが脱帽したのでフィリッパは得意満面だ。
最大魔力の問題はあるし、ウイザードアイで騙される存在には意味がないが……自分たちは安全な位置から偵察させられるのである。斥候業務を行う傭兵たちは仕事を無くすことを恐れるか、さもなければ自分も調達したくなるだろう。
ゆっくりと移動する性質上、その索敵距離は限られている。
だが、その僅かな距離が危険地帯であることが多いのだ。たとえば隙間から向こう側が僅かに覗けることも多いのだが、希望的観測で飛び込むとそこは死地だったりする。釣り天井や落とし穴であることはよくあるし、伏兵が隠れている何てのはザラである。
「欠点としては姿隠しで隠れていると分からないとか、幻影で部屋自体を覆うとどうしようもない。だが、それは現地でも同じだ。昔の地図もあるというなら、おおよそ想像も出来る。将来はともかく、今回連中が何をやって居るか探るくらいは問題なく判るだろう」
「ならこいつの完成を待った甲斐があったってもんだ」
「ワタシも命惜しいネ。仕事奪われる、仕方ないの事ヨ」
デボラはすっぱりと全ては期待しないと口にした。
今回要求されている、大地震を起こすための時間稼ぎなどをクリア出来れば良い。交渉の為に赴いたら、大勢が待ち構えていたなんて事を避けられるだけで十分だと考えていた。そしてこのホムンクルスが居ない場合、その危険はブーが探して来ることになる。自分の仕事が減って貢献度が下がる事など気にして居ないようだった。
やはりこの辺りの判断は、リアリストな傭兵らしいところだ。
ウイザードアイという呪文を元に、その欠点を理解した上で長所を作戦に組み込んで来る。現時点での勘案としては、かなり危険度が下がったと言えるだろう。
「今のところ、気を付けるのは何だと思うよ?」
「そうだな。『眼』に気が付いた上で無視する事か。幻覚や姿隠しを後で使うとして、その場は黙って情報を渡しておく。その上で『眼』が消えた後で、ゆっくりと対処される方が困るだろうな。こちらが参照する真実を嘘に変えるんだ」
実に有意義な話だ。今以外にも後にも使える。
それはそれとして、注意は必要だろう。戦う時はそれこそ砂でも小麦の粉でも撒いてしまえば姿隠しは破れるが、交渉時なんかはどうしようもない。だが、これに付いて総合的な危険だ。相手が気が付くとも限らないし、戦って死ぬ可能性だってある。交渉する時に隠れた敵が襲って来るなんてのは、よくある事だし普通に警戒すれば良いだろう。先んじて掴める情報があれば言う事は無いからな。
そして今回は使える者は一気に使う。
本隊の強化ホムンクルスにアーバレストを用いさせ、小粒な石をばらまいて攻撃する事にした。大型の石や太い矢よりもダンジョンに与える影響が少ないし、姿隠しをするにも当る可能性があるからだ。ばらまく石のどれかが当ってくれれば問題ないだろうと思われた。数が居る場合にも有益なのはありがたいしな。
「なら、後は連中が妙な事を始める前に仕掛けるとするか」
「姿隠し対策のも含めて、基本的には本隊で呪文型を扱う」
「先遣隊は功績を立てたがってる連中と、そいつらが使う量産型」
「剣と盾で地味に戦いつつ、二か所から進軍する。土系の魔法で壁を作って居たら、そこは仕方がない。正面のみ排除して一か所から進撃しよう。本隊も似たような構成にするが、呪文型にアーバレストを装備した強化型。そして俺たちが加わることで戦力がまるで異なる」
正直な話、今までの戦闘は何だったのかと言うレベルだ。
しかし、ここまでの予算は無かったし、そもそもホムンクルスは頭が悪いので扱い切れなかった。しかしこれまでどんな風に扱えば良いかが判って来たので、その知識を教授することで、領主たちも扱えるようになってきたのだ。後はダンジョンを壊さない程度に攻め立て、暴走で俺たちごと落盤なんて馬鹿な真似が起きないようにしておけば勝てるだろう。
以前ならば裏切りが怖い所だが、この間から情報が増えている。
経営に行き詰った親族衆の領主やら、その部下たちが少しずつタレコミを行い始めたからだ。それらで待遇を良くするということで出来るだけ真実に近い情報を集めつつ、出入りの商人や村を回る行商人に尋ねたりして、多角的に情報は集めていた。
「私たちの部隊も本隊で良いのか?」
「ええ。ジャンさん達はエレオノーラのヒキで開拓村に入りましたしね。顔見知りも多くなってますし、ホムンクルスをどの程度見知っているのかも違いますよ。基本的に本隊は信用の置ける人だけ集めてます」
開拓村からジャンたちの移民を中心に集めた。
元から村に居た連中もいるが、少しずつ打ち解けてきたようだ。やはり一緒に働いたり、同じ飯を食って作業して居れば仲良くなるのだろう。勿論どうしても相性の悪い連中は居るので、その辺は前もって一緒作業させなければ良い。
どちらかと言えば気になるのはエルフのマリである。
今回から急に参戦すると言い出したのだが、妙にデボラに突っかかる。仲の良いというかォナジ生き残りのリシャールがたぶらかされるとでも思っているのだろうか? とりあえず大怪我はして欲しくないものだ。薬草からポーションを作る人材が現地に居るのはありがたいけどな。
ともあれ準備は整ったので、道々親族衆の部隊と合流しながらダンジョンへと向かった。
過去には無かった物を持って、当時からやり直したくなる。
何が言いたいかと言うと、ウイザード・アイと幻覚を使える呪文型ホムンクルスがかなり有用だったからだ。何しろスポット参戦する傭兵のデボラが、自分にも売ってくれるか、あるいは逆に売り込む先では戦いたくないからと情報共有を求めてきたくらいである。
後者は流石に都合が良過ぎるので、売ることを前提に高額設定している報酬を差し引かせた。
「しかし、これは凄いな。距離が短いのが欠点だが、改良されるとしたら脅威だぞ」
「そうっすね! いやー自分の才能が怖いっすよ!」
「エレオノーラのアイデアがあった事を忘れんなよ」
シビアな傭兵のデボラが脱帽したのでフィリッパは得意満面だ。
最大魔力の問題はあるし、ウイザードアイで騙される存在には意味がないが……自分たちは安全な位置から偵察させられるのである。斥候業務を行う傭兵たちは仕事を無くすことを恐れるか、さもなければ自分も調達したくなるだろう。
ゆっくりと移動する性質上、その索敵距離は限られている。
だが、その僅かな距離が危険地帯であることが多いのだ。たとえば隙間から向こう側が僅かに覗けることも多いのだが、希望的観測で飛び込むとそこは死地だったりする。釣り天井や落とし穴であることはよくあるし、伏兵が隠れている何てのはザラである。
「欠点としては姿隠しで隠れていると分からないとか、幻影で部屋自体を覆うとどうしようもない。だが、それは現地でも同じだ。昔の地図もあるというなら、おおよそ想像も出来る。将来はともかく、今回連中が何をやって居るか探るくらいは問題なく判るだろう」
「ならこいつの完成を待った甲斐があったってもんだ」
「ワタシも命惜しいネ。仕事奪われる、仕方ないの事ヨ」
デボラはすっぱりと全ては期待しないと口にした。
今回要求されている、大地震を起こすための時間稼ぎなどをクリア出来れば良い。交渉の為に赴いたら、大勢が待ち構えていたなんて事を避けられるだけで十分だと考えていた。そしてこのホムンクルスが居ない場合、その危険はブーが探して来ることになる。自分の仕事が減って貢献度が下がる事など気にして居ないようだった。
やはりこの辺りの判断は、リアリストな傭兵らしいところだ。
ウイザードアイという呪文を元に、その欠点を理解した上で長所を作戦に組み込んで来る。現時点での勘案としては、かなり危険度が下がったと言えるだろう。
「今のところ、気を付けるのは何だと思うよ?」
「そうだな。『眼』に気が付いた上で無視する事か。幻覚や姿隠しを後で使うとして、その場は黙って情報を渡しておく。その上で『眼』が消えた後で、ゆっくりと対処される方が困るだろうな。こちらが参照する真実を嘘に変えるんだ」
実に有意義な話だ。今以外にも後にも使える。
それはそれとして、注意は必要だろう。戦う時はそれこそ砂でも小麦の粉でも撒いてしまえば姿隠しは破れるが、交渉時なんかはどうしようもない。だが、これに付いて総合的な危険だ。相手が気が付くとも限らないし、戦って死ぬ可能性だってある。交渉する時に隠れた敵が襲って来るなんてのは、よくある事だし普通に警戒すれば良いだろう。先んじて掴める情報があれば言う事は無いからな。
そして今回は使える者は一気に使う。
本隊の強化ホムンクルスにアーバレストを用いさせ、小粒な石をばらまいて攻撃する事にした。大型の石や太い矢よりもダンジョンに与える影響が少ないし、姿隠しをするにも当る可能性があるからだ。ばらまく石のどれかが当ってくれれば問題ないだろうと思われた。数が居る場合にも有益なのはありがたいしな。
「なら、後は連中が妙な事を始める前に仕掛けるとするか」
「姿隠し対策のも含めて、基本的には本隊で呪文型を扱う」
「先遣隊は功績を立てたがってる連中と、そいつらが使う量産型」
「剣と盾で地味に戦いつつ、二か所から進軍する。土系の魔法で壁を作って居たら、そこは仕方がない。正面のみ排除して一か所から進撃しよう。本隊も似たような構成にするが、呪文型にアーバレストを装備した強化型。そして俺たちが加わることで戦力がまるで異なる」
正直な話、今までの戦闘は何だったのかと言うレベルだ。
しかし、ここまでの予算は無かったし、そもそもホムンクルスは頭が悪いので扱い切れなかった。しかしこれまでどんな風に扱えば良いかが判って来たので、その知識を教授することで、領主たちも扱えるようになってきたのだ。後はダンジョンを壊さない程度に攻め立て、暴走で俺たちごと落盤なんて馬鹿な真似が起きないようにしておけば勝てるだろう。
以前ならば裏切りが怖い所だが、この間から情報が増えている。
経営に行き詰った親族衆の領主やら、その部下たちが少しずつタレコミを行い始めたからだ。それらで待遇を良くするということで出来るだけ真実に近い情報を集めつつ、出入りの商人や村を回る行商人に尋ねたりして、多角的に情報は集めていた。
「私たちの部隊も本隊で良いのか?」
「ええ。ジャンさん達はエレオノーラのヒキで開拓村に入りましたしね。顔見知りも多くなってますし、ホムンクルスをどの程度見知っているのかも違いますよ。基本的に本隊は信用の置ける人だけ集めてます」
開拓村からジャンたちの移民を中心に集めた。
元から村に居た連中もいるが、少しずつ打ち解けてきたようだ。やはり一緒に働いたり、同じ飯を食って作業して居れば仲良くなるのだろう。勿論どうしても相性の悪い連中は居るので、その辺は前もって一緒作業させなければ良い。
どちらかと言えば気になるのはエルフのマリである。
今回から急に参戦すると言い出したのだが、妙にデボラに突っかかる。仲の良いというかォナジ生き残りのリシャールがたぶらかされるとでも思っているのだろうか? とりあえず大怪我はして欲しくないものだ。薬草からポーションを作る人材が現地に居るのはありがたいけどな。
ともあれ準備は整ったので、道々親族衆の部隊と合流しながらダンジョンへと向かった。
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