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もうひとりのトイトイ
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それから、十年以上は経っただろうか。
「トイトイ! ひさしぶり!」
黄緑色の髪の青年が店を訪ねてきた。成長して声も変わっていても、物腰の柔らかさや優しげな人柄が滲んでいそうな声の響きだけで、すぐわかる。
「フィオ君、おっきくなったね~」
もちろん、ぼくにとってフィオ君が「大きな人間」であったのはあの頃だってそうだったんだから、言葉通りの意味じゃなく。すっかりたくましい大人になっているってこと。
子供の頃に体が弱くたって、大人になってもそのままとは限らない。幸い、フィオ君の体は成長するにつれて徐々に平均並みになっていく体質だったみたい。
「あの頃のお礼と、もう体もすっかり人並みの大人になったよって、君とティッサさんに伝えたくて来たんだ」
「そうなんだ。遠いのにわざわざありがとう」
「トイトイもほら、今でもいつも一緒なんだよ」
フィオ君は旅の荷物を入れる背負い鞄とは別に、腰にベルトで固定するタイプの四角い鞄を装着していた。ぷちぷちと音を立てて前面についたボタンを外し、中を見せてくれる。ぼくと全く同じ姿をした人形が、布団代わりみたいなタオルに包まれて眠っている。
「旅行する時もこうやって一緒に出るんだけど、やっぱり喋ってくれないと寂しくてね。大人になっても、ノエリアックの中で勤められる仕事に就こうかなって考えてるんだ」
「大事にしてくれるのは嬉しいんだけど、トイトイのせいでフィオ君が地元を離れられない人生になるの? って思うとちょっと心配だな~」
「トイトイは相変わらず優しいねぇ」
だから僕は、あの頃から君のことが大好きだったんだ。フィオ君はそう言って頭を撫でてくれた。
ぼくらの暮らす三大陸では、ティッサやフィオ君みたいな名前の人と、例えば「リオ・オシモトさん」みたいな、大別すると二種類の名前がある。前者は「過去に平均より多い魔力を宿した人間が生まれたことのある家系」を意味していて、後者より魔法を使える才能を持つ可能性があるって、名前を見ただけでわかるようにするための制度だ。
髪色に魔力がバッチリ表れているし、名前だってそうだし。フィオ君も大人になってから、魔法の研究に関わる仕事をすることになった。お勤めはP大陸の王都ペルノの王立魔法研究所だった。
そこで暮らすとなったらトイトイが喋ってくれないのが寂しいからって、フィオ君は今度はティッサを頼らず、自分でペルノの地脈を解析して自分のトイトイに追加で魔法紋を刻んだ。そうしてペルノでも喋れるようになったトイトイと一緒に暮らしているんだって。ぼくとティッサのその後の人生で彼に会える機会はなかったけど、手紙だけは何度も送ってくれてそうした近況を教えてくれた。
「トイトイ! ひさしぶり!」
黄緑色の髪の青年が店を訪ねてきた。成長して声も変わっていても、物腰の柔らかさや優しげな人柄が滲んでいそうな声の響きだけで、すぐわかる。
「フィオ君、おっきくなったね~」
もちろん、ぼくにとってフィオ君が「大きな人間」であったのはあの頃だってそうだったんだから、言葉通りの意味じゃなく。すっかりたくましい大人になっているってこと。
子供の頃に体が弱くたって、大人になってもそのままとは限らない。幸い、フィオ君の体は成長するにつれて徐々に平均並みになっていく体質だったみたい。
「あの頃のお礼と、もう体もすっかり人並みの大人になったよって、君とティッサさんに伝えたくて来たんだ」
「そうなんだ。遠いのにわざわざありがとう」
「トイトイもほら、今でもいつも一緒なんだよ」
フィオ君は旅の荷物を入れる背負い鞄とは別に、腰にベルトで固定するタイプの四角い鞄を装着していた。ぷちぷちと音を立てて前面についたボタンを外し、中を見せてくれる。ぼくと全く同じ姿をした人形が、布団代わりみたいなタオルに包まれて眠っている。
「旅行する時もこうやって一緒に出るんだけど、やっぱり喋ってくれないと寂しくてね。大人になっても、ノエリアックの中で勤められる仕事に就こうかなって考えてるんだ」
「大事にしてくれるのは嬉しいんだけど、トイトイのせいでフィオ君が地元を離れられない人生になるの? って思うとちょっと心配だな~」
「トイトイは相変わらず優しいねぇ」
だから僕は、あの頃から君のことが大好きだったんだ。フィオ君はそう言って頭を撫でてくれた。
ぼくらの暮らす三大陸では、ティッサやフィオ君みたいな名前の人と、例えば「リオ・オシモトさん」みたいな、大別すると二種類の名前がある。前者は「過去に平均より多い魔力を宿した人間が生まれたことのある家系」を意味していて、後者より魔法を使える才能を持つ可能性があるって、名前を見ただけでわかるようにするための制度だ。
髪色に魔力がバッチリ表れているし、名前だってそうだし。フィオ君も大人になってから、魔法の研究に関わる仕事をすることになった。お勤めはP大陸の王都ペルノの王立魔法研究所だった。
そこで暮らすとなったらトイトイが喋ってくれないのが寂しいからって、フィオ君は今度はティッサを頼らず、自分でペルノの地脈を解析して自分のトイトイに追加で魔法紋を刻んだ。そうしてペルノでも喋れるようになったトイトイと一緒に暮らしているんだって。ぼくとティッサのその後の人生で彼に会える機会はなかったけど、手紙だけは何度も送ってくれてそうした近況を教えてくれた。
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