さよならトイトイ~魔法のおもちゃ屋さん~

sohko3

文字の大きさ
14 / 21

神竜像の特別拝観

しおりを挟む
 開店直後。お客さんの姿もまだない、静かな朝。ティッサは作業台の横に座って朝刊を読んでいた。ぼくはその近くで、作業台の上のおもちゃ達を、午後に遊びに来るであろう子供達が遊びやすいように並べている。

 今日は誰が、どんな風にぼくやおもちゃ達と遊んでくれるかなぁ。そんなわくわくを感じながら作業していた。

「シェーラザードの寺院で、五十年振りに白銀竜様の神像が御開帳されるんだぁ……」

 この世界の宗教。世界を創造した十一の神竜様、それぞれの役割を「思想」として、人間達は伝えてきた。例えば夢幻竜様だったら「安息」、天空竜様だったら「自由」。自分の人生にとって何より大事なものが「安息」だと思う人だったら、信仰の対象は夢幻竜様ってことになる。


 三大陸で信者数が最も多いのは最高神の太陽竜様と、大地を司る神竜「白銀竜様」。聖夜は太陽竜様の、雪まつりは白銀竜様の生まれた日として伝わっていて、それぞれの宗派の一番大切な日。ミモリ様が「子供達におもちゃを配る日」としてその日を選んだのも、それだけ特別に思ってる人が多いからこそだ。


 神竜像は世界最古の絵付き物語に描かれていた神竜様の絵を模して彫られることが多い。一部の神竜様、巨神竜様や断罪竜様などは偶像崇拝を禁止されている。ていうか巨神竜様に関してはG大陸グランティスで現在もご存命だから、

「自分の像を好き勝手に使われるなんて気味が悪いわ! ていうかあたしはふっつーに生きてるんだから像なんか作るくらいなら直で会いに来なさいよ!」

っておっしゃってるんだとか。前に新聞でそんな話を読んだ。



「御開帳は五十年に一度。今回を逃したら、私が生きてる間に次の機会はないでしょうね」

 ティッサも、もうすぐ四十歳。人生五十年って言われているけど、だいたいの人は六十歳前後までは生きてる印象。だけど、ティッサもそろそろ、先行きが気になる年代にはなってきたんだろう。

「見に行きたいからトイトイ、またお店番していてくれる?」
「……話せなくても見えなくてもいいから、ぼくも一緒に行きたいなぁ」

 ぼくが残ってお店を開けていれば、僅かでもティッサの収入に繋がる。わかっているんだけど、何故だか今回はそんな気持ちになった。

 ちょうど、フィオ君からの手紙が届いて、あっちのトイトイとG大陸に旅行してみたんだって書いてあったからかな。ちょっとだけ、ぼくもそういう思い出が欲しいような気がしたのかも。なーんの意味もなくても、一度だけでも。ティッサにとって特別な旅を、一緒に行ったんだって思い出が。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

【総集編】アリとキリギリスパロディ集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。 1分で読める! 各話読切 アリとキリギリスのパロディ集

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

未来スコープ  ―この学園、裏ありすぎなんですけど!? ―

米田悠由
児童書・童話
「やばっ!これ、やっぱ未来見れるんだ!」 平凡な女子高生・白石藍が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。 それは、未来を“見る”だけでなく、“触れたものの行く末を映す”装置だった。 好奇心旺盛な藍は、未来スコープを通して、学園に潜む都市伝説や不可解な出来事の真相に迫っていく。 旧校舎の謎、転校生・蓮の正体、そして学園の奥深くに潜む秘密。 見えた未来が、藍たちの運命を大きく揺るがしていく。 未来スコープが映し出すのは、甘く切ないだけではない未来。 誰かを信じる気持ち、誰かを疑う勇気、そして真実を暴く覚悟。 藍は「信じるとはどういうことか」を問われていく。 この物語は、好奇心と正義感、友情と疑念の狭間で揺れながら、自分の軸を見つけていく少女の記録です。 感情の揺らぎと、未来への探究心が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第3作。 読後、きっと「誰かを信じるとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

雪の降る山荘で

主道 学
児童書・童話
正体は秘密です。 表紙画像はフリー素材をお借りしました。 ぱくたそ様。素敵な表紙をありがとうございました。

ふしぎなえんぴつ

八神真哉
児童書・童話
テストが返ってきた。40点だった。 お父さんに見つかったらげんこつだ。 ぼくは、神さまにお願いした。 おさいせんをふんぱつして、「100点取らせてください」と。

処理中です...