江ノ島の小さな人形師

sohko3

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空の中で暮らす

石の鳥居

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 家族としての愛情なのか、それとも同い年の少年に対しての恋心か。

 どちらにしても自分は、彼のことが心から好きだなぁ、と。

 だからこそ、「大人になるまで」という期限付きの約束が、ただ嬉しいというだけでなくどこかせつなさを感じずにはいられなかった。




 潮崎の家が建っているのは江ノ島神社本宮と目の鼻の先。ほんの少し歩いて右に折れればすぐそこに奥津宮がある。

 なるほど、本宮にお参りすればいいと思うという葉織の意見はもっともだったと羽香奈は納得した。

 こんなに身近な存在なのだから、この家で育った葉織が親しみを覚えるのは自然だろう。

 羽香奈が早起きして、短いながらも旅の疲れを感じているだろうからと、葉織は夕方になるまで家で休んであらためてお参りに出かけようと提案した。

 反対する理由もないので羽香奈も素直に甘えさせてもらうことにして、二段ベッドの下の段でひと眠りすることにした。

 二段ベッドは枕を置く側に物を置く戸棚が設置されているタイプのもので、羽香奈は眠る前、そこに葉織が作ってくれた人形を飾ってみた。

 身ひとつで家を出た羽香奈にとって、今はたったひとつの私物。

 新しい自分になって初めて手に入れたもの。

 自分自身が泣いている姿なんていう風変わりな贈り物ではあるが、それを眺めているとただただ嬉しくて、羽香奈は心地よい眠りに落ちていった。


 江ノ島に足を踏み入れて最初に見た鳥居は青銅で、海の色をしていた。

 次に見た鳥居は鮮やかな朱色。

 そして三つ目の鳥居は石造りで、ある意味最もシンプルで素朴な、自然の色をしていると羽香奈は思った。

 実際、本宮の周囲は木々に囲まれて森の中にある。

 蝉しぐれはあまりにも濃く、鼓膜を直接に叩かれるかのようだった。

 葉織が鳥居の前でぺこりと頭を下げるのでそれを真似して後に続くと、右手側にお手水がある。

 鳥居の前で一礼するくらいは羽香奈も知っているが、お手水の作法など全く知らない。

 葉織にいちから教えてもらった。

「羽香奈、家からハンカチって持たせてもらって来てる?」

「……持ってきてないの」

 さすがに羽香奈も、ハンカチくらいは自分のものを与えられていたのだけど。

 申し訳ないけれど、あの家からは何ひとつ持ちだしたくなかったからあえて持たずに出てきたのだ。

 あくまで自分の意思でしたことなので理由までは後ろめたくて言えなかったけれど、そうだと思った、と葉織は白いハンカチを渡してくれた。

 これも波雪が使っていたものだというのでありがたく使わせてもらうことにする。
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