江ノ島の小さな人形師

sohko3

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二日目の朝

下道の入口

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 葉織の案内で、昨日は帰り道だったルートを逆に歩いていく。

 いくつか階段を上り、下がりしたところで、葉織は一軒の土産物店の側で足を止める。

 左側にひっそりある、薄暗い横道を指さす。

「ここは下道したみちっていって、島の人がよく使う裏道なんだ。

いちいち階段を上がったり下がったりするよりずっと楽だし、なんでか体感的にもずっと早く、島の外まで出られる気がする」

 別に観光客が通っちゃいけないって決まりはないけど、知らない人も多いから。

 もちろん、知ってる人は帰り道に使ってるだろうけどね。

 葉織はそう説明する。

 観光客が少ない……

それを聞いて、羽香奈は昨日のことを思い出す。

 わたしがお参りしたいって言ったから、葉織くんは神社を通り抜けて家に帰ることにして、下の宮で知らない人に頬を叩かれて……。

 葉織が言っていた、家までの近道というのはこの「下道」のことだったのだ。

 葉織の言う通りにこっちを歩いていたら、昨日、葉織は傷を受けずに済んだかもしれない。

 今度から葉織と自分が一緒の時は、なるべくこの道を歩くように促そう。

 葉織がそうしたくない時にまで強要する気はないが、少しでも観光客の少ない場所を選べば、昨日みたいな事態が起こる可能性は低くなるはずだから。



 薄暗い、木のトンネルのようになった階段を上がるとゆるやかな上り坂で、住民のためのバイク置き場がある。

「葉織ちゃんじゃないか。こんにちは」

 白いスクーターに乗った老婆がちょうどそこへ駐輪するところだったらしい。

 通りがかった葉織に気が付くと声をかけてきた。

 ハツと違って背筋も曲がっておらず足腰もしっかりした、元気そうなおばあちゃんだ。

「こんにちは、長谷川のおばあちゃん」

「こ……こんにちは」

「おや、この子が波雪ちゃんの言ってた子かねぇ」

「うん。
いとこの、羽香奈。
昨日からうちの子になったんだ」

「よろしくお願いします……」

「うんうん、波雪ちゃんのちいさい頃にそっくりだねぇ」

 おばあちゃんは羽香奈の頭を撫でてくれた。

 波雪の子供でないのは明らかだから、あえて羽香奈の母については話題を避けたのだろう。

 彼女はハツの相談相手で、娘達と孫の関係を何度も涙ながらに語ったため、詳細までは知らずともおぼろげに事情は察していた。

 あまり羽香奈の事情に触れないよう、話を変えてしまう。

「おばあちゃんとおじいちゃんは元気かい?」

「元気だよ。
ばあちゃんは最近、物忘れがひどくなってきたけど……

けっこう大切なことも平気で忘れちゃうけど、ばあちゃんがにこにこしてるからオレもあんまり気にしないようにしてる」

「そうかい……
せっかくこっち来たんだし、顔見せてもらおうかな」

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