江ノ島の小さな人形師

sohko3

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自由研究

完成!

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 羽香奈の希望は、普段、葉織が見ている景色を知りたいということなのだから。

 考えてみれば、今、目の前に見えているものを完全に再現する必要はないのではないかと思う。

 今日たまたまこういう色の組み合わせなだけであって、毎日、見える色は変わるのだから……なんて、言い訳をしながら。


 腕時計もしていないし、目に見える範囲に時計もないので、どれくらい描いていたのかわからない。

 作業がひと段落する頃にはかなり疲れていた。

 出来たよ、と、羽香奈に画板を渡す。

「砂浜いっぱいがたくさんの色で埋め尽くされてて、こっちまで海みたいになってるんだね。
本当に、きれいなんだろうなぁ……」

 こういう場所で、こういう時期なら、安心して見ていられる。

 楽しむために来ている場所で黒い靄を出している人がいないから。

 本当に、いつでも「きれいなだけ」だったらいいのになぁというのが葉織にとって本音なのだが……。

「そういえば、葉織くん自身の色は見えないの?」

「自分の色は見えないよ。鏡とかで映してもね」

「そっかぁ。知りたかったな、葉織くんの色」


 背景を色鉛筆で塗る作業も、すでにヘトヘトではあったが別の日に改めて出直すというのも大変そうなので、そのまま続行した。

「で、出来たぁ……つっかれたぁ」

「お疲れ様でしたぁ」

 階段上のコンクリートの地面に長時間腰を下ろしての、集中的な作業。

 実際に描いていた葉織自身はもちろん、付き合っていた羽香奈も疲れ果てていた。

 たった一枚の風景画という、小学六年生の自由研究としては些か地味なものなのだが、労力はそれなりにかかっているのだから堂々とこれを提出しよう。

 せっかく羽香奈が考えてくれたのだし。

 天国の波雪にも自信を持って見せられる、と、葉織は満足だった。
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