ポンコツ女子は異世界で甘やかされる(R18ルート)

三ツ矢美咲

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第9章

第?章:奴隷のいる日常12(別視点:回想)

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 椅子に座る私の膝の上に座るネム。
 座ると言っても、私のイチモツはネムの中に収まっている。
 ネムが少し前かがみに足を広げたまま、上下に腰を何度も落とす。
 すると、逆反りになったペニスがネムのヴァギナへと飲み込まれ、ネムが腰を上げると膣壁が竿にしっかりと吸い付く画が私の目の前で繰り返される。

 ネムは発情した獣の様に、だらしなく長い舌を垂らして私の顔をチラチラと横目に見ながら腰を動かし続け、射精を誘ってくる。
 深く挿した状態で腰をグリグリとこすり付け、亀頭の先をプリプリとした子宮口がねぶり、私は我慢しきれずに射精した。

 ネムは私の膝の上から立ち上がると、正面から私に抱き着き、キスをせがんでくる。
 そのまま、舌を絡ませて私達は溶け合う様に抱き合う。



 私とネムの、この関係を知っている者は、誰もいない。
 シャリージュも、ネムを私の護衛か側女だと思っている。

 そのネムを買ってから、もう4年の月日が経った。
 ネムは、私の背を追い抜き、見た目には幼さの抜けきっている。
 だが、中身は、あまり変わっていない様だ。



 フィデーリスの奴隷解禁から、たった4年。
 大きく発展したフィデーリスで、奴隷を見ない日は無い。

 私の商会は、規模を大きくし、販売網をマルギアス全国に広げていた。
 だが、私はフィデーリスの商会連合の中で、資産の量は下から8番目にまで順位を下げていた。



 しかし、私は一目を置かれる存在のまま、むしろ周囲の尊敬を集めていた。
 商会長連中からも奴隷からも、奴隷を殺さずに長くこき使うのが上手いと。

 それ程までに、フィデーリスで奴隷は消耗品となっていた。
 これは、マルギアス全体から見ても、少々、異質であった。
 どこにでも奴隷の酷使も虐待もあるが、フィデーリスの壁の中は、壁の外とは明らかに違うのだ。

 壁の外では、奴隷を酷使するのも虐待するのも、一部の素行が悪い奴がする事に過ぎない。

 だが、フィデーリスでは見た目や普段の行いで奴隷に対する扱いがどうなのかを見分けるのは難しい。
 私は、そんな中で、誰の目にも未だにお行儀が良いのに、事業まで奴隷のおかげで結果を出している。
 それは、異質の中の異質でしかない。

 農業奴隷にしろ、荷運び奴隷にしろ、結果を求めれば限界まで使い潰して補充した方が得をすると皆は思っている。

 いや、私も思っていた。

 ただ、最低限の食事で最大限の労働をさせる方が儲かると思っていても、頬がこけ、あばらが浮く様な食事では不十分だと考えるし、日が出ている間しか働かせる事も無い。

 それに、奴隷同士の交流に関しても、監視役に見張らせてこそいるが他よりも寛容だ。

 他の奴隷農場では、男女を分けたり、子供を隔離したりとしているが、私の農園では家族を引き離す事は無いし、こじれなければ奴隷同士で誰が誰と付き合おうとも、私は気にしない。

 それだけなのに、尊敬されると言う状況は、はっきり言って気持ちが悪かった。



 私は、フィデーリスの中で、最も自分が裏では鬼畜な思考を持っていると、恥ずかしながらネムを買うまでは思っていた。
 自分が一番汚れていると。

 だが、私の中にある変態性も鬼畜さも、フィデ―リス内では、その辺にいる主婦にさえ劣る。

 それに気づくと、私は急に自分の周囲の事が、嫌いになり、恐ろしくなったのだ。

「ムウ様は素晴らしい。どうすれば無能な奴隷を殺さないで使いこなせるのですか?」

 そんな事を、様々な者達が、平然と聞いて来る。



 奴隷は、同じ人間では無い。
 家畜でも無ければ、家具でも無い。

 奴隷は、奴隷だ。

 だが、そう思っていても、私は、考えてしまう。

 ネムやシャリージュ達のせいかもしれない。

 フィデ―リスでは立場として劣っているが、奴隷も結局の所では人間に変わりはない。
 奴隷は奴隷だと割り切っている私でさえ、奴隷は人間だと、根本の部分では「理解」している。

 だから、拒否感があるのだ。
 奴隷を傷つける事に。

 なのに、周囲の皆は、家畜だ、家具だと、奴隷を平然と使い潰し、あるいは壊す事が出来る。

 理解しながらやっているのか、理解さえ出来ていないのか……

 この感覚の差は、何なのだ?

 私がおかしいのか?

 私は、何に囲まれて今まで生きて来たのだ?

 今までの人生、私は何の機嫌を窺い、何に好かれようと善い人間を演じて来たのだ?



 * * *



 世間が私を評価するのとは反対に、世間への私の評価は地に堕ちていた。

 私は、なんだかんだ言ってもフィデーリス王国を愛していた。
 愛していた筈なのに、私の愛したフィデーリスは、気が付けばどこにもない。

 私が望んでいたのは、奴隷が解禁されても、周囲は今まで通りで、その中で私だけが裏で欲望の限りを尽くす事だった。
 それが、今では率先して道を踏み外そうとした私が変わり損なり、周囲が欲望の限りを尽くしている。



「ネム……」

「あるじ様? なに?」

「どこか、行きたい場所はあるか?」

「行きたい、場所?」

「ああ、そうだ。南の、ここよりは暖かい土地でも、いや、別の国でも構わない」

「……ネム、あるじ様と、一緒、が、良い」

「そう、だな。私もだ……」



 私は、フィデーリスを出る事を考えていた。
 商会の拠点はマルギアス王国内なら、大きい街ならどこにでもある。

 とにかく、フィデーリスを離れたかった。

 私の事も、ネムの事も知らない土地に移り住み、これ以上フィデーリスの事を、そこに住むかつて仲間だと、好かれたいと思っていた者達を、これ以上嫌いにならない様にしたかった。

 私の中で移住の意思は、固く決まっていた。
 それ程までに、フィデ―リスには愛想が尽きていた。

 一度、嫌いになると、気持ちを戻すのは難しい。



 * * *



「移住を考えている、だと?」

「ええ、まあ」

 商会連合の会合の終わり、私はヴェンガン伯爵に事情の説明をしていた。
 フィデ―リスと、商会連合のトップである彼には、話を通す事が筋である。

「ムウ殿、出来れば考え直しては貰えないか?」

「なぜです?」

「あなたは、我々の掛け替えのない友人だ。フィデ―リスにとっては欠かせぬ存在と言って良い」

「伯爵……お気持ちは、嬉しい限りですが……」

「もう、気持ちは決まっていると?」

「はい……」

「……ムウ殿、少しこちらへ」



 私は、ヴェンガン伯爵の部屋に招かれた。
 壁にはミセーリア王の肖像画が飾られた、落ち着いた雰囲気のある部屋だ。

「お話、と言うのは?」

「ああ、それなのだが、ムウ殿。私も出来ればあなたを気持ち良く送り出したい。しかし、気持ちの良い話ではないが、そうも言っていられないものでね」

「どういう、事でしょう?」

「あなたは、フィデ―リスを支えて来た一人だ」

「うん? 何の話で?」

「どうか、ここだけの話にして欲しい。この事を知っている人間は、極わずかだ」

「秘密、ですか? ええ、誰にも漏らしません。どうぞ……」



 * * *



 何て事だ……



 私は、ヴェンガン伯爵によって語られたフィデ―リスの秘密によって、ジレンマに陥っていた。

 フィデ―リスの秘密とは、その独立自治体制にあった。

 フィデ―リスは敗戦し、マルギアス王国の属領となった元国だ。
 その独立自治体制は、戦争中にミセーリア王やヴェンガン伯爵達の交渉によって得られた物だと思っていた。

 いや、思わされていたと言った方が良い。



 本当は、終戦からずっと、ヴェンガン伯爵は毎年、毎年、マルギアス王国から独立自治権を買っていたのだ。



 今でこそフィデ―リス上級市民などと特別な扱いを受けているが、それは全てヴェンガン伯爵の庇護のもとの事である。

 私自身、気付いていなかったのだ。
 マルギアス王国の中では、フィデ―リス人と言う特殊な下級市民、奴隷に毛の生えた存在だという事に。



 壁の内にいても外にいても、公的な身分は全てフィデ―リスを基準とされる。
 つまり、フィデ―リスのムウ商会のムウであり続ける為には、フィデ―リスの独立自治権をヴェンガン伯爵に買い続けてもらわなければならない。
 独立自治権を買えなくなれば、途端に私はマルギアス王国の下級市民に身を落とし、全てをマルギアス王国に奪われる。

 つまり、だ。

 今までの経歴をすべて捨てて、エルフのムウ、いや、名前さえも捨てて一般市民に成り済ます事が出来れば、私はどこにでも行く事が出来るし、フィデ―リスの独立自治権を気にする必要もなくなる。

 だが、それが出来ないならば、私はフィデ―リスに縛られ続ける事となるのだ。

 全てを捨てるなんて事は、あり得ない。

 出来ない。
 出来る筈がない。

 ここまで大きく育てた商会も、奴隷達も、シャリージュも、ネムも、手放せない。

 それに、私が手放せば、奴隷達はフィデ―リスの中で悲惨な運命を辿るだろう。



 この秘密で最も困った事は、フィデ―リスの独立自治権を買う為の資金として、ヴェンガン伯爵が私の商会からの税収や借入を大いに期待していた事だ。
 フィデ―リス上級市民の商会長達は、多かれ少なかれフィデ―リスと言う町やヴェンガン伯爵に金を貸している。

 この関係が、パワーバランスが崩れる事は、フィデ―リスの存続に係わる。

 私は、自分の自由の為にも、フィデ―リスに金を入れなければならない。
 そうしなければ、全てを失う事となる。



 何て事は無い。

 私自身、シャリージュと大して変わらない状況に身を置いていたわけだ。



 * * *



 移住が出来ない。
 いや、出来ない事は無いが、失う物が多すぎる。

 だが、金持ちでい続ける為に、金をフィデ―リスに入れなければならない。
 払うよりも、多くを稼がなければ、その先に待っているのはマルギアス下級市民と言う奴隷の様な暮らしだ。

 私は、少しばかり混乱していた。

 誰が悪いのだ?
 この状況を作り出したのは、誰だ?

 その答えが得られる事は、無いだろう。



「あるじ様?」

「ご主人様、顔色が優れませんが?」

 私が手放せば、彼女達に待つのは破滅だ。

「大丈夫だ」



 だが、手放さない為には、金が要る。
 金が無ければ、私にも破滅が待っている。

 今までは、知らなかったから平気だった。
 しかし、一度知ってしまうと、怖くてたまらない。



 私の商会は、シャリージュや他の奴隷達、それに、昔から働いてくれている従業員達のおかげで、やっていけている。
 かなり儲かってもいる。
 フィデ―リスにある他の商会も、皆、業績が伸びているし、私の商会よりも儲かっている所がいくつもある。

 それでも、毎年支払いに苦労する程、フィデーリスの独立自治権の値段は、高かった。
 私が移住し、税収が減ったり、フィデーリスへ貸している金を一気に引き上げさせたら、そこで共倒れとなる。

 払う事は出来ても、払ったら後が続かなくなる。

 むしろ、これまで継続して、誰も破産せずに買い続けて来た事が、奇跡にさえ思えた。

 マルギアス王国は、決して味方では無い。
 フィデーリスの金払いが良いから、稼ぎやすい様にと、大目に見ているだけだ。



 私は、フィデーリスの秘密を知って以来、今まで以上に仕事に打ち込んだ。
 そうしなければ、不安だったのだ。

 どれか一つでもライバルの商会が転べば、パワーバランスが崩れる。
 それで、すぐに独立自治権を買えなくなると言う事は無い。
 でも、そう言った悪いイベントが起きれば、その度に、フィデーリスは数年後の未来を買う為に、苦境に立たされる事となる。

 奴隷の逃亡事件の時も、私が知らなかっただけで、ヴェンガン伯爵や事情を知る一部の者は、フィラフット商会を失うのでは無いかと、ヒヤヒヤだっただろう。

 そんな不安、私は耐えられない。

 だからだろう。
 あの日から私は、金に五月蠅くなり、執着し、少しでも多くの金を稼ごうと躍起になって行った。



 今までは気にもしていなかった他国にまで販路を広げる為、私はネムとシャリージュを連れて隣国をまわり始めた。
 そうやって各地に商館を増やし、業務提携を結び、商談を次々とまとめて行った。

 金が要る。
 安心する為には、もっと多くの金が要る。

 それこそ、私のムウ商会だけでもフィデーリスを何年か支えられるぐらいまで、規模を大きくし無ければ、きっと、この不安が治まる事は無い。

 がむしゃらに働く私の努力の甲斐あってか、商会の規模はフィデーリス内で3位にまで浮上して行った。

 奴隷達は今まで以上に規則正しく、せわしなく働き、そちらの方も順当に利益を伸ばしていた。
 フィデーリス内で業績の悪い商店や、小商会を積極的に傘下に収め、私の商会は規模を大きくし続けた。



 * * *



 それから、早くも1年の時が流れた。

 あっという間であった。



 フィラフット商会は、商会長がフィラフットの息子に交代した後で経営が迷走し、私の商会が吸収する事となり、これのよって私の商会は、再びフィデーリス内で1位に返り咲き、マルギアス王国内でも4番目の規模を誇るまでに成長していた。



 金は稼いでいる。
 稼ぎまくっていると言ってもいい。

 独立自治権を単一の商会で何年も買うなんて事は、土台難し過ぎる話だが、それでもムウ商会がフィデーリスの独立自治を最も多くの割合で支えている事に変わりはない。

 1年が経過する事で、私の中にあった不安は、時の経過によって落ち着きを取り戻しつつあったが、それでも稼ぐ事止められないでいた。

 根本的な不安の種が消えない以上、金がいくらあっても無駄になる事はない。

 シャリージュのあげて来る業務報告を聞きながら、私は次はどうやって金を稼ごうかと強迫観念の様になったまま、ひたすら考えていた。

 稼ぎ続けなければ、何かあった時に対応できない。
 畑が不作になっても、商船が沈んでも、荷馬車が盗賊に襲われても、金が入り続ける状態にしなければならない。

 私が、多角化経営の手を目一杯伸ばしているこの時、私は、自分の変化に気付いていなかった。



 それ程に、視界が狭まり、何も見えていなかったのだろう。

「あるじ様、休んでください」

 それが、ネムの最近の口癖であった。



 私を支えようと、ネムは算術を覚え、シャリージュから経営の基本も自分の意思で習っている。

 以前ほど、二人きりになっても甘える事も無くなり、そう言えば、セックスの数も減っている。

 それに、前程、笑わなくなっていた。

 私を不安そうな目で、寂しそうに見ている事が多い。



 その理由を、私は分かっていなかった。



 * * *



 私の額が広くなり始めたのは、独立自治権の話を聞いた後だ。

 がむしゃらに働く中で、私は眠らない日が多くなり、目の下にはクマが出来ていた。

 太目だった体形は、全体的に痩せてきていたが、下っ腹にばかり運動不足から醜く脂肪が溜まり、中年太りの様な体型になっていた。

 誰の目にも、異常だった事だろう。



 私の商会も規模が大きくなり、管理をする人員が増えた事で、シャリージュの目が行き届かなくなっていった。

 すると、私の商会の中でも、他と同じ様な奴隷への虐待の噂が流れ始めた。
 実態は掴めず、監視役達も一様に口をつぐむので対処の仕様が無いが、稼ぐ為に規模を広げ過ぎた弊害だ。



 管理者達は、奴隷や他の管理者の不満を口にし、奴隷達の中には逃亡を企てる者や、犯罪に手を染める者まで現れた。

 問題が内から湧き、吹き出し、その止血に奔走すると、別の場所から問題噴出と言う出血を繰り返す。

 問題を解決する為に、管理者や監視者、従業員から奴隷に至るまで、破れば制裁を受けるルールを敷くが、それでも別の問題が噴出し、新しい規則ばかりが増え、すぐにルール事態を把握できなくなり、酷い物だとルール同士に矛盾が生じる事さえあった。

 それでも、ムウ商会全体の利益は着実に伸び、これを繰り返せば、いつか本心から安心できる日が来ると思う事が出来そうな希望が、私の目の前には常にあった。



 しかし、どうして物事は思い通りに進まないのだろう。



「あるじ様!? カファス! シャリージュ! 誰か!」

 私は、倒れた。
 仕事中に、何の前触れも、痛みも、苦しみも無く、執務室の机の上に頭を打ち付けて、パタンと倒れたのだ。

 まるで、操り人形の糸が切れたかのように。

 意識は、あった。

 朦朧とし、近くにいる筈のネムの声が遠くの方で聞こえる気がした。

 ただ身体が、動かなかった。
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