最強人外魔法剣士の冒険譚~ソロでクエストを受け続けていたらいつのまにか白金級になっていたらしい~

高岡玄三

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君と駆ける夏

第43話 きいてたのとちがう

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 その日の朝は今にも雨が降りそうなぐらいの曇天だった。ゼノとエルゼはいつものように五時半きっかりに起床した。エルゼもゼノに叩き起こされなくなっていった。ベッドの皺を伸ばし、身支度を整えて二人は部屋を出た。
小さな食堂に行くと女将さんが薄いチーズに薄いパンで挟んだサンドイッチ二つ差し出した。ゼノはそれを受け取ると朝食代と宿泊代を置いてドアノブに手をかけた。

エルゼはサンドイッチを食べながら地図を眺めた。新ダンジョンの地図はまだ空白の箇所があるがないよりましだと思いゼノに内緒で買ったのだ。

「お前地図買ったのか。」

「ギルドで売っていたんだ。あんたは買わなかったのか?」

「俺にはこれがあるから紙の地図はいらない。」

ゼノはカバンから巻物型の魔道具を取り出し開いた。まっさらな紙からエルゼが買ったダンジョンのマップが浮かび上がってきた。

「これはな一番近くにあるダンジョンのマップを魔法で転写するものなんだ。これはギルドの情報システムと連動しているからリアルタイムでマップを更新しているわけだ。」

「何それ超すごいものじゃん。」

そうこうしているうちに二人は新ダンジョンの前に到達した。ゼノに緊張感が走る。ゼノは入口付近にエルゼの転送石を草むらに隠すように土にはめ込んだ。いざというときに帰還できる保険だからだ。
ゼノを先頭にダンジョンへ足を踏み入れる。中は少し熱く湿っぽい。外の気温より少し高いぐらいの暑さだ。季節は夏の最盛期を迎えようとしているのでこの時点から体に汗がにじみ出していた。

ダンジョンの中は一本道であり中に住まう魔物はここの地域に根ざしているスライムやコボルトぐらいだった。ゼノが上を見た時

「エルゼ、上にトゲの罠が設置されている。対処してくれ。」

「はいはい。」

エルゼは壁に手を押し当て壁の一部を転送し罠の真下に瓦礫と化した壁を転送した。するとトゲのついた重石が反応し上から重厚感のある音を響かせながら落下してきた。重石を踏みながら二人はさらに先に進んだ。またしても

「さっきの罠で薄く闇を這わせていたのだがどうやらこの先に落とし穴があるから気をつけろ。」

「なあ、あんたの闇魔法便利すぎない?俺転送しかできないよ。」

「そこは実践と研究の結果だ。落ちるなよ。」

ゼノは一メートルほどジャンプをして先に進んだ。エルゼは転送を使おうとしたがゼノに

「魔力の無駄遣いするんじゃない」

といわれ仕方なく己の脚力で飛び越えたのだった。そのはずみですぐ後ろの床が音を立てて崩れ落ちた。
罠を抜けきった後は魔物数体がやってきたがそれも前衛のゼノによって軽く消されてしまった。ゼノはあまりにも簡単すぎるダンジョン構造に疑問を抱き始めていた。

「この程度で冒険者が心折れていったのは本当か罠もすぐ見抜けるぐらい簡単だし、魔物も近隣地域から入れ込んだような生態系だ。ダンジョン内はある程度閉鎖されているからダンジョン独自の生態系が確立されているからな。」

「この先に何かあるんじゃねえのか。ダンジョンの主がとびきりやばい奴だったり。」

「確かに地図にも最深部の構造は空白のままだったな用心しよう。」

一本道は終わり水場のある広場が見えてきた。下はピンク色のスライムに似た感じの水で上には足場の板が細い道として浮かんでいた。

「なんか・・・甘ったるい匂いしないか?」

エルゼがどこにあるか判別しづらい鼻を抑えているとゼノの様子がおかしいことに気づいた。まだ少ししか歩いていないのに妙に息が上がっているように見える。まるで熱に浮かされているような息の上がり方だ。エルゼはこの甘い香りになんとなく察しがついてしまった。

(これ・・・媚薬じゃねえか?ゼノの奴もしかして匂いに当てられたか?)

エルゼはギャング時代各地方や各国からの密輸品を取り扱っていた。その時シルベルス帝国産の媚薬の香りとなんとなく似ていたからだ。ギャング時代の知識と経験がここで生きてくるとは思わなかったようだ。エルゼがゼノの体をそっと触ると肩をビクッとさせながら反応してきた。ゼノの顔は闇で出来ているため表情などが分かりづらいが同じ亜人のエルゼから見れば媚薬の効果に耐えているゼノの表情が読み取れた。

(なんかエロく見えてきたな・・・)

ゼノの思わぬ一面を見たエルゼが足を滑らせかけた時だった。下の水もといスライムが触手を生やしてエルゼに襲い掛かってきた。

「うわっ!なんだコイツ!」

「えっエルゼ!」

媚薬のせいか一歩遅れたゼノは刀を構える。触手はエルゼの体を纏わりつくようにからめとる。四肢は一本一本太い触手に螺旋状に絡み手首と足首をしっかり固定してきた。胴体の方は触手の先が乳首のあたりに来るように絡められ下半身は下腹部に触手が当てられ、成人したての体に淫らな気持ちにさせた。しかもその触手は催淫性の香りと綿と皮を溶かす粘液が分泌され、エルゼの服を溶かしていく。

「ヤバいヤバいヤバい!俺喰われる!助けて!」

流石のエルゼも媚薬の効果が出てきたのか身体の自由が利かなくなってきた。露出している皮膚の部分も痒くなってきた。ゼノも触手に襲われそうになったが媚薬が効いているのかいつものパフォーマンスが出せずにいたがそこは白金、周りに纏わりつく触手を斬っていった。しかしスライム系のモンスターは核を破壊しない限り倒れることはない。触手だけ斬っても再度生えてくる。ゼノはエルゼの救出を後回しにして背中から「法の女王」戦で使った光剣を一つ出現させた。

光剣はスライムの体を焼きながら水中に入り込んでいった。触手は膝をついているゼノの方にも纏わりついてきた。触手はゼノの首に纏わりつき闇の口へと先端を入れていった。勿論乳首や下腹部など他人が勝手に触れたらいけないところに触手が伸ばされ催淫性の高い香りと粘液が多く出していった。それでもゼノは光剣を操り剣からいくつもの魔方陣を展開しレーザーを出し曲がりながら焼いていき核を破壊した。核を失ったスライムは電池切れのような挙動をし動かなくなった。触手も緩み、ゼノは自身に纏わりついた触手を振りほどき、エルゼを救出した。

「た・・・助かった・・・」

ゼノにお姫様抱っこの形で抱きかかえられたエルゼは安心したようにため息をついた。ゼノが助けに行かなければ催淫性スライムの死骸の中に溺れ死ぬところだったのだ。スライムの溶解速度は極めて遅い。エルゼの服もゼノの服も粘液に濡れた程度で済んだからだ。ゼノはエルゼを抱きかかえたままスライムの水場を離れた。

ゼノ達は魔物に出くわすことなくある小部屋に着いた。そこにエルゼを下ろすとゼノは部屋の隅に寄ってしまった。

「これがダンジョン・・・?きいてたのとちがう・・・」

「体に異常はないか?呼吸は安定しているか?具合はどうか?」

ゼノはエルゼに再度近づき襟のボタンや袖のボタンをはずしていった。

「な・・・なにすんだよ・・・!」

「次のエリアに行く前に体の熱は取っておいた方がいい。手伝うか?」

「いやいい!俺一人でできるから!」

エルゼはゼノのいる前で体の熱を取ることに躊躇いがあった。知識はある実践もしてきた。しかしこの男の前でソレをすることには恥じらいというものがあった。
エルゼが頭を回転させているうちにあることが浮かんできたのだ。

「アンタは大丈夫なのか・・・?お前も・・・触手にセクハラされたんだろ?」

「俺は一人ででき・・・で・・・できる・・・」

エルゼの目から見てゼノの状態は明らかに異常の領域だった。目は虚ろで息も荒く明らかに媚薬が体を回っている証拠でもあった。見たくはないが下腹部に膨らみがあり対処しなければいけないのはゼノの方であった。

「あんた・・・もしかして状態異常に弱いのか・・・?」

「う・・・うるさい。さっさとやれ・・・」

エルゼは身体の疼きよりも心配が勝ってきたような気がしてきた。確かに男二人狭い室内でいつ襲われるかわからない状況で無防備になるのは危険が過ぎる。痺れを切らしたようにゼノは闇魔法を展開した。

『母なる闇よ。どうか我らに安息の帳を下ろすことをお許しください。』

ゼノの周りに黒い闇が半球状になって包み込んだ。完全に包み込まれる寸前、

「これは俺に敵意を持つ者が近づいたら自動的に攻撃できるようになっている。俺の傍にいろよ。」

エルゼはさすがにゼノのいうことに従うことにした。ダンジョン攻略で前衛のゼノは必須なのだ。ここで折れられても困るのでエルゼは闇の卵の傍で本能のまま熱を走らせた。エルゼの若い体が何度も白い欲を吐き出した。
何度か吐き出し終えると闇の卵が解けゼノが現れた。心なしか疲れているように見えた。

「大丈夫か・・・?」

「問題ない・・・ポーションを飲めばいいだけの話だ。」

カバンからポーションを取り出すと勢いよく飲んでいった。エルゼの分も手渡されたので一本飲んだ。

あるところでゼノとエルゼが他人に見られたら恥ずかしい姿を水晶で覗き見る人物がいた。

「こんなところに亜人がいるなんてね~無事ここまでやってこれるかな?」

その者は妖しく微笑みながら水晶の映像を切るのであった。
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