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13 髪を切ることにした
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「少々長くなってしまいましたね。今日はここまでに致しましょう」
ランドルはそう言って本をぱたんと閉じた。時間を見れば既に昼を過ぎていた。双子は慌てて食事の用意をすると言い、部屋を出て行ってしまった。昼食はこのままこの部屋で取るそうだ。
「ランドル、ありがとう。神子が一体何なのか、ちゃんと知ることが出来た」
「いえいえ。本来なら召喚された時に聞かされることなのですがね。ヒカル様こそかなり集中されていらっしゃったのでお疲れではありませんか?」
そう言われればかなり疲労感を感じる。まだ本調子じゃないからだろうか。元から引き籠りだったからな。体力もあまりないし、ちょっと色々と考えないといけないかもしれない。
双子が戻り食事の用意をしていく。が、どうやら俺1人分だけのようだ。確認すればそうだと言う。
俺は今まで火傷の跡があったから1人でいることを選んだ。家族とすら会わないようにしていたけど、ここに来てからの皆の様子と今日のランドルの話を聞いて、1人で食事をすることが寂しいと思ってしまった。
それで皆に一緒に食事を取りたいと言ったところ、はっきりと全力で断られてしまった。正直断られると思っていなかったから何気にショックだった。
「ヒカル様勘違いしないで! 僕達は使用人で、神子様はこの世界で最も尊い人なんだ。そんな人と一緒に食事をするなんて許されないんだよ」
「ヒカル様のそのお気持ちはとても嬉しいのですが、立場を考えるとどうしても……」
双子の言葉にランドルも頷く。皆が言ってることは理解した。でも理解することと納得することは別だ。
俺は元々一般庶民の家で育っているしこうやってかしこまられたり世話をされることに慣れていない。皆の事を考えれば1人で食事する方が良いんだと思う。
だけど俺はそれが物凄く寂しいと思ってしまった。
「でも俺は皆と一緒に食事がしたい。もちろん食堂でブレアナさんオースティンさんと一緒の時は別でもいい。だけどこの部屋で食事をする時くらいは一緒に食べたいんだ。もしそれで何かを言われても俺に命令されたってことにしてよ。俺は最も尊い人なんでしょ? じゃあ俺にそうしてって言われて断れなかったって言っても誰も怒れないよね? だから俺と一緒に食事することが嫌じゃないのなら一緒がいい」
立場上同席出来ないと言うのであれば、断れなかった状況にしてしまえばいいのだ。なんてったって俺はこの世界で最も尊い人で、この国の王族よりも立場は上だって言ってたし。そんな人から命令されたら断れないはずだ。
自分でも強引だなとは思うけど、どうしても1人は嫌だと思ったからごり押しさせてもらう。
元々こんな事言えなかったんだけど、ここにきて皆と関わったことで俺も変わったんだと思う。この人たちなら大丈夫だって思えたから。
「……ヒカル様にそう言われたら断れないよね?」
「……そうですね。ヒカル様たっての希望ですし?」
「……神子様が希望されたことを叶えるのも俺達の仕事ですし?」
3人がそれぞれ顔を見合わせながら一つ一つ確認を取っている。
そうそう。仕方ない状況だしね。納得して欲しい。
「良かった。誰かと食事するってここ数年なかったんだ。だから誰かと一緒に食べれるって嬉しい」
こんな風に思えたのも皆のお陰だ。1人で過ごすことは苦ではなかったけど、寂しくないかと言われたら……。
でも火傷の跡があったから人の目が怖くて避けていた。でも皆はそうじゃない。なら一緒にいたいと思うのも普通だよな。
「ヒカル様っ……僕皆の分準備してくるね! ちょっとだけ待ってて!」
「あ、ローリー! 私も手伝います!」
双子は駆け足で部屋を飛び出して行った。残された俺とランドルさんは顔を見合わせて「はは」っと笑ってしまった。こうやって笑うのも随分と久しぶりだ。本当にここは居心地がいい。こんな風に過ごせることに感謝しないとな。
それからしばらくして双子も戻り、4人で昼食を取ることになった。こうやって誰かと会話しながらの食事は、不思議ともっと美味しく感じるし凄く楽しい。
双子もランドルも「神子様と一緒に食事が出来るなんて、皆に自慢しないと!」なんて言ってくれた。
楽しい食事が終わってから、俺は髪を切ることに決めた。
ここにいるなら俺を蔑んだり化け物だなんて言われることはない。それに俺を理不尽に扱った人たちに気を遣う必要もない。ここに来てたったの2日間で俺は随分と前向きになれた。
もし俺が何かを言われても俺の事を大切にしてくれる人たちがいる。それが分かったからもう怖くない。だから髪で隠さなくても大丈夫。
でも一応公爵家とは関係のない人と会わなきゃいけなくなったら、初対面だとびっくりさせてしまうだろうし仮面か何かで顔を隠そう。そう言ったらランドルは「会いたくなければ会わなきゃいいんです」と。それもそうだと皆で笑った。
レイフがゆっくりと俺の髪を切っていく。俺の髪は肩を越す長さになっていた。それをバッサリと切り落とす。でもローリーみたいな短さになるかと思いきや、ショートボブくらいの長さが残された。
「ヒカル様は可愛らしいお顔立ちですしね。ローリーみたいに短くするより、こちらの方がお似合いです」
「うん、いいですね。似合っていますよヒカル様」
ローリーにもランドルにも好評のようで良かった。首筋がすーすーして落ち着かないけど、なんだか新しい自分になったような気持ちになる。
この世界で神子としての力を使いたいとは思えないけど、ここの皆の為には使いたいと思う。だから早く神子の力を使えるようになろう。
ここの人達が俺の事を大切にしてくれるように、俺もここの人達が大切だから。
ランドルはそう言って本をぱたんと閉じた。時間を見れば既に昼を過ぎていた。双子は慌てて食事の用意をすると言い、部屋を出て行ってしまった。昼食はこのままこの部屋で取るそうだ。
「ランドル、ありがとう。神子が一体何なのか、ちゃんと知ることが出来た」
「いえいえ。本来なら召喚された時に聞かされることなのですがね。ヒカル様こそかなり集中されていらっしゃったのでお疲れではありませんか?」
そう言われればかなり疲労感を感じる。まだ本調子じゃないからだろうか。元から引き籠りだったからな。体力もあまりないし、ちょっと色々と考えないといけないかもしれない。
双子が戻り食事の用意をしていく。が、どうやら俺1人分だけのようだ。確認すればそうだと言う。
俺は今まで火傷の跡があったから1人でいることを選んだ。家族とすら会わないようにしていたけど、ここに来てからの皆の様子と今日のランドルの話を聞いて、1人で食事をすることが寂しいと思ってしまった。
それで皆に一緒に食事を取りたいと言ったところ、はっきりと全力で断られてしまった。正直断られると思っていなかったから何気にショックだった。
「ヒカル様勘違いしないで! 僕達は使用人で、神子様はこの世界で最も尊い人なんだ。そんな人と一緒に食事をするなんて許されないんだよ」
「ヒカル様のそのお気持ちはとても嬉しいのですが、立場を考えるとどうしても……」
双子の言葉にランドルも頷く。皆が言ってることは理解した。でも理解することと納得することは別だ。
俺は元々一般庶民の家で育っているしこうやってかしこまられたり世話をされることに慣れていない。皆の事を考えれば1人で食事する方が良いんだと思う。
だけど俺はそれが物凄く寂しいと思ってしまった。
「でも俺は皆と一緒に食事がしたい。もちろん食堂でブレアナさんオースティンさんと一緒の時は別でもいい。だけどこの部屋で食事をする時くらいは一緒に食べたいんだ。もしそれで何かを言われても俺に命令されたってことにしてよ。俺は最も尊い人なんでしょ? じゃあ俺にそうしてって言われて断れなかったって言っても誰も怒れないよね? だから俺と一緒に食事することが嫌じゃないのなら一緒がいい」
立場上同席出来ないと言うのであれば、断れなかった状況にしてしまえばいいのだ。なんてったって俺はこの世界で最も尊い人で、この国の王族よりも立場は上だって言ってたし。そんな人から命令されたら断れないはずだ。
自分でも強引だなとは思うけど、どうしても1人は嫌だと思ったからごり押しさせてもらう。
元々こんな事言えなかったんだけど、ここにきて皆と関わったことで俺も変わったんだと思う。この人たちなら大丈夫だって思えたから。
「……ヒカル様にそう言われたら断れないよね?」
「……そうですね。ヒカル様たっての希望ですし?」
「……神子様が希望されたことを叶えるのも俺達の仕事ですし?」
3人がそれぞれ顔を見合わせながら一つ一つ確認を取っている。
そうそう。仕方ない状況だしね。納得して欲しい。
「良かった。誰かと食事するってここ数年なかったんだ。だから誰かと一緒に食べれるって嬉しい」
こんな風に思えたのも皆のお陰だ。1人で過ごすことは苦ではなかったけど、寂しくないかと言われたら……。
でも火傷の跡があったから人の目が怖くて避けていた。でも皆はそうじゃない。なら一緒にいたいと思うのも普通だよな。
「ヒカル様っ……僕皆の分準備してくるね! ちょっとだけ待ってて!」
「あ、ローリー! 私も手伝います!」
双子は駆け足で部屋を飛び出して行った。残された俺とランドルさんは顔を見合わせて「はは」っと笑ってしまった。こうやって笑うのも随分と久しぶりだ。本当にここは居心地がいい。こんな風に過ごせることに感謝しないとな。
それからしばらくして双子も戻り、4人で昼食を取ることになった。こうやって誰かと会話しながらの食事は、不思議ともっと美味しく感じるし凄く楽しい。
双子もランドルも「神子様と一緒に食事が出来るなんて、皆に自慢しないと!」なんて言ってくれた。
楽しい食事が終わってから、俺は髪を切ることに決めた。
ここにいるなら俺を蔑んだり化け物だなんて言われることはない。それに俺を理不尽に扱った人たちに気を遣う必要もない。ここに来てたったの2日間で俺は随分と前向きになれた。
もし俺が何かを言われても俺の事を大切にしてくれる人たちがいる。それが分かったからもう怖くない。だから髪で隠さなくても大丈夫。
でも一応公爵家とは関係のない人と会わなきゃいけなくなったら、初対面だとびっくりさせてしまうだろうし仮面か何かで顔を隠そう。そう言ったらランドルは「会いたくなければ会わなきゃいいんです」と。それもそうだと皆で笑った。
レイフがゆっくりと俺の髪を切っていく。俺の髪は肩を越す長さになっていた。それをバッサリと切り落とす。でもローリーみたいな短さになるかと思いきや、ショートボブくらいの長さが残された。
「ヒカル様は可愛らしいお顔立ちですしね。ローリーみたいに短くするより、こちらの方がお似合いです」
「うん、いいですね。似合っていますよヒカル様」
ローリーにもランドルにも好評のようで良かった。首筋がすーすーして落ち着かないけど、なんだか新しい自分になったような気持ちになる。
この世界で神子としての力を使いたいとは思えないけど、ここの皆の為には使いたいと思う。だから早く神子の力を使えるようになろう。
ここの人達が俺の事を大切にしてくれるように、俺もここの人達が大切だから。
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