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14 神子の力
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髪を切ってから、午後の時間をまったりと過ごすだけだったのでレイフとローリーに採寸をして貰う事になった。
今着ている服も着心地は良いし楽だからこれでいいと言ったのだが、既製品なのと俺が弱っていたから着やすい服を用意しただけにすぎないためちゃんと仕立てるべきだと言われた。
双子は何でも出来るみたいで能力の高さに驚かされる。2人で採寸すればさほど時間もかからずに終わった。ローリーは俺の採寸表をブレアナさんのところへ持っていくと嬉々として出かけて行った。
「ヒカル様の服はどんな服になるでしょうか。生地も何もかも高級品で仕立てるでしょうし楽しみですね」
レイフとランドルはにこにことしているが、高級品と聞いて俺は気が気じゃなくなった。一般庶民の俺の服だから普通でいいんだけど。そう言ったらレイフには「神子様の服を適当なものに出来るわけがないじゃないですか!」と言われ、ランドルには「華美でなくても相応の衣装は必要です! なんといっても神子様なんですから! 質は絶対に落とせません!」と力説されてしまった。
俺の顔が可愛らしい部類に入るらしくフリルが沢山あってもいいですね~、とか、宝石も付いた煌びやかな物もいい、などと2人はそんな話で盛り上がっている。
程々でいいのに、と言っても多分聞き入れてくれないだろう。短い時間だけど、ここの人達が俺のことを大切に思っているのは十分に分かったから。
2人が俺の服について話しているのを聞いているうちになんだか眠くなって来た。くありとあくびをすると、口元を手で隠していたにも関わらずそれに気づいたレイフに「少し休みますか?」と聞かれた。
「まだ本調子じゃありませんし、今日はたくさんお勉強もしましたからね。お昼寝致しましょう」
ランドルにもそう言われ眠気に負けた俺はこくりと頷いた。それを見たランドルは俺を横抱きに抱えるとベッドへと運ぶ。自分で歩けるのになぁと頭では思っていても、眠気が強くなってしまったため大人しく運ばれることにする。
「お夕食の時間になりましたらお声がけいたしますね。おやすみなさい、ヒカル様」
横になった途端瞼が上げられず、レイフの声を遠くに聞きながら俺はすぐに眠りに落ちた。
チュンチュンという音に気が付いて目が覚める。窓の方へ視線を向ければカーテンが閉め切られている。だが隙間から洩れる光が外の状況を教えてくれた。
そういえば採寸した後眠くなって寝てしまったんだった。今は何時だろう、と思って時計を確認すると7時を示していた。異世界ではあるけど時間は元の世界と変わらないから楽だった。
というか7時なのに外が明るい……? どういうことかと思ったが、サイドテーブルを見ると起きたらベルを鳴らして欲しいとレイフからのメモが置かれていた。
ちりんちりんとベルを鳴らすと、レイフが寝室へとやってくる。俺の顔を見るとにこりと微笑んで「おはようございます」と一礼し、カーテンを開けた。やはり外は明るく太陽の光が燦々と降り注いでいる。
「……レイフ、もしかして朝だったりする?」
「はい。昨夜、一度お声がけしたのですがぐっすりお休みだったのでそのままにしておりました。よく眠れたようで顔色もよろしいですね。良かったです」
なんてこった。俺はあのまま朝までぐっすりと眠ってしまったようだ。
このベッドがふかふかで寝心地が良いから、というのもあるんだろうけど、俺の体はまだ回復途中だったようだ。ちょっと勉強したくらいで疲れてしまう程、まだ弱っていたという事か。
「起きれなくてごめん」
「いえ、お気になさらないでください。ですが、夕食を召し上がっていないのでお腹が空いているのではありませんか?」
レイフにそう聞かれた途端、俺の腹はぐぅ~と盛大に音が鳴り俺の代わりに返事をしている。ここまで大きな音は流石に恥ずかしい。
「ふふ。食欲がおありのようでようございました。すぐに準備いたしますので少しだけお待ちください」
それから昨日のようにローリーがハーブティーを持ってきてくれてそれをゆっくりと飲む。昨夜は風呂にも入っていなかったから、先に入浴することにした。もちろん双子の介助付きで。
……ここまで世話をされると俺は早々にダメ人間になりそうな気がする。
着替えも済ませ食堂へ行けばブレアナさん達が待っていた。俺の体調を心配されたが、問題ない事を告げ一緒に朝食を取る。
そしてその後はまたランドルによる勉強会の始まりだ。
「昨日は神子とは何か、というお話でした。本日は神子の力についてお話ししましょう」
神子はこの世界に呼ばれたときに女神テラから加護を授かることで、この世界の人々には扱えない特別な力に目覚める。
その力が治癒魔法や浄化、豊穣の祈りと結界だ。
治癒魔法はよくラノベやファンタジーものならよく出てくる魔法だ。だが魔法があるこの世界には治癒魔法はない。女神テラの力の一つとされていて、それを扱えるのは神子だけだ。
豊穣の祈りは、土地が実り豊かになる様魔法を掛ける事。過去の神子は蔓延する瘴気を浄化した後、その祈りを捧げて回っていたらしい。
そして瘴気の浄化と結界は、召喚された神子の一番の仕事らしい。
まず瘴気が蔓延したことで魔物が凶暴化する。その為人々を魔物の脅威から守るために各所で結界が張られている。
世界各国に『結界石』というものが置かれていて、この結界石は大昔に女神テラが置いていった物らしい。その結界石に魔力を注ぐとその国の町や村に結界が張られる。
これは魔力を持っている人なら誰でもできる事らしい。だが神子はその能力がずば抜けている。力いっぱい神子の魔力を注ぐと50年は何もしなくてもいいらしい。神子の力はチートだな。
結界があることで魔物は人が住む場所へ入ることが出来ない。だが結界は何度も攻撃されると脆くなり壊れる。そうなる前に結界石に魔力を注ぎ結界を維持する。神子が他界するなどして不在となった時は、この世界の人々が結界石に魔力を注ぎ結界を維持していくことになる。
「ですのでまずは神子は結界石に魔力を注ぎ結界を強化。その後、各地へと移動し瘴気の浄化をして回ります。それをこの国だけではなく、世界中へ移動しながら行われていきます」
それってずっと旅をし続けるってことだよな。瘴気の浄化に結界の強化。移動中は魔物に襲われることもあるらしい。護衛が沢山いるとはいえ、そんな危険な旅をずっと何年もし続けないといけない。過酷すぎる。
しかも瘴気の浄化をした後は、豊穣の祈りまで捧げないといけない。神子というか便利屋だ。昨日ランドルが言っていた『神子は世界を守るための道具になった』って意味がよくわかる。
今着ている服も着心地は良いし楽だからこれでいいと言ったのだが、既製品なのと俺が弱っていたから着やすい服を用意しただけにすぎないためちゃんと仕立てるべきだと言われた。
双子は何でも出来るみたいで能力の高さに驚かされる。2人で採寸すればさほど時間もかからずに終わった。ローリーは俺の採寸表をブレアナさんのところへ持っていくと嬉々として出かけて行った。
「ヒカル様の服はどんな服になるでしょうか。生地も何もかも高級品で仕立てるでしょうし楽しみですね」
レイフとランドルはにこにことしているが、高級品と聞いて俺は気が気じゃなくなった。一般庶民の俺の服だから普通でいいんだけど。そう言ったらレイフには「神子様の服を適当なものに出来るわけがないじゃないですか!」と言われ、ランドルには「華美でなくても相応の衣装は必要です! なんといっても神子様なんですから! 質は絶対に落とせません!」と力説されてしまった。
俺の顔が可愛らしい部類に入るらしくフリルが沢山あってもいいですね~、とか、宝石も付いた煌びやかな物もいい、などと2人はそんな話で盛り上がっている。
程々でいいのに、と言っても多分聞き入れてくれないだろう。短い時間だけど、ここの人達が俺のことを大切に思っているのは十分に分かったから。
2人が俺の服について話しているのを聞いているうちになんだか眠くなって来た。くありとあくびをすると、口元を手で隠していたにも関わらずそれに気づいたレイフに「少し休みますか?」と聞かれた。
「まだ本調子じゃありませんし、今日はたくさんお勉強もしましたからね。お昼寝致しましょう」
ランドルにもそう言われ眠気に負けた俺はこくりと頷いた。それを見たランドルは俺を横抱きに抱えるとベッドへと運ぶ。自分で歩けるのになぁと頭では思っていても、眠気が強くなってしまったため大人しく運ばれることにする。
「お夕食の時間になりましたらお声がけいたしますね。おやすみなさい、ヒカル様」
横になった途端瞼が上げられず、レイフの声を遠くに聞きながら俺はすぐに眠りに落ちた。
チュンチュンという音に気が付いて目が覚める。窓の方へ視線を向ければカーテンが閉め切られている。だが隙間から洩れる光が外の状況を教えてくれた。
そういえば採寸した後眠くなって寝てしまったんだった。今は何時だろう、と思って時計を確認すると7時を示していた。異世界ではあるけど時間は元の世界と変わらないから楽だった。
というか7時なのに外が明るい……? どういうことかと思ったが、サイドテーブルを見ると起きたらベルを鳴らして欲しいとレイフからのメモが置かれていた。
ちりんちりんとベルを鳴らすと、レイフが寝室へとやってくる。俺の顔を見るとにこりと微笑んで「おはようございます」と一礼し、カーテンを開けた。やはり外は明るく太陽の光が燦々と降り注いでいる。
「……レイフ、もしかして朝だったりする?」
「はい。昨夜、一度お声がけしたのですがぐっすりお休みだったのでそのままにしておりました。よく眠れたようで顔色もよろしいですね。良かったです」
なんてこった。俺はあのまま朝までぐっすりと眠ってしまったようだ。
このベッドがふかふかで寝心地が良いから、というのもあるんだろうけど、俺の体はまだ回復途中だったようだ。ちょっと勉強したくらいで疲れてしまう程、まだ弱っていたという事か。
「起きれなくてごめん」
「いえ、お気になさらないでください。ですが、夕食を召し上がっていないのでお腹が空いているのではありませんか?」
レイフにそう聞かれた途端、俺の腹はぐぅ~と盛大に音が鳴り俺の代わりに返事をしている。ここまで大きな音は流石に恥ずかしい。
「ふふ。食欲がおありのようでようございました。すぐに準備いたしますので少しだけお待ちください」
それから昨日のようにローリーがハーブティーを持ってきてくれてそれをゆっくりと飲む。昨夜は風呂にも入っていなかったから、先に入浴することにした。もちろん双子の介助付きで。
……ここまで世話をされると俺は早々にダメ人間になりそうな気がする。
着替えも済ませ食堂へ行けばブレアナさん達が待っていた。俺の体調を心配されたが、問題ない事を告げ一緒に朝食を取る。
そしてその後はまたランドルによる勉強会の始まりだ。
「昨日は神子とは何か、というお話でした。本日は神子の力についてお話ししましょう」
神子はこの世界に呼ばれたときに女神テラから加護を授かることで、この世界の人々には扱えない特別な力に目覚める。
その力が治癒魔法や浄化、豊穣の祈りと結界だ。
治癒魔法はよくラノベやファンタジーものならよく出てくる魔法だ。だが魔法があるこの世界には治癒魔法はない。女神テラの力の一つとされていて、それを扱えるのは神子だけだ。
豊穣の祈りは、土地が実り豊かになる様魔法を掛ける事。過去の神子は蔓延する瘴気を浄化した後、その祈りを捧げて回っていたらしい。
そして瘴気の浄化と結界は、召喚された神子の一番の仕事らしい。
まず瘴気が蔓延したことで魔物が凶暴化する。その為人々を魔物の脅威から守るために各所で結界が張られている。
世界各国に『結界石』というものが置かれていて、この結界石は大昔に女神テラが置いていった物らしい。その結界石に魔力を注ぐとその国の町や村に結界が張られる。
これは魔力を持っている人なら誰でもできる事らしい。だが神子はその能力がずば抜けている。力いっぱい神子の魔力を注ぐと50年は何もしなくてもいいらしい。神子の力はチートだな。
結界があることで魔物は人が住む場所へ入ることが出来ない。だが結界は何度も攻撃されると脆くなり壊れる。そうなる前に結界石に魔力を注ぎ結界を維持する。神子が他界するなどして不在となった時は、この世界の人々が結界石に魔力を注ぎ結界を維持していくことになる。
「ですのでまずは神子は結界石に魔力を注ぎ結界を強化。その後、各地へと移動し瘴気の浄化をして回ります。それをこの国だけではなく、世界中へ移動しながら行われていきます」
それってずっと旅をし続けるってことだよな。瘴気の浄化に結界の強化。移動中は魔物に襲われることもあるらしい。護衛が沢山いるとはいえ、そんな危険な旅をずっと何年もし続けないといけない。過酷すぎる。
しかも瘴気の浄化をした後は、豊穣の祈りまで捧げないといけない。神子というか便利屋だ。昨日ランドルが言っていた『神子は世界を守るための道具になった』って意味がよくわかる。
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