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16 魔法を使ってみた
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授業の後は、何とも重い空気が流れてしまった。
昼食は4人で取ったものの、昨日のような明るい雰囲気ではなくなった。
俺も暗い表情を思いっきり出していたからか、気を遣ったローリーに庭へ散歩へ行こうと提案される。公爵家の庭は綺麗だから気分転換に丁度いいと。
それで皆で食後の散歩に出かけることにした。
こうやって外に出るのはこの世界へ来て初めてだ。元の世界の時と含めたら何年振りだろうか。
風の心地よさも、太陽の温かさも、緑の匂いも、鳥の鳴き声も。全部が当たり前のものなのに、何もかもが新鮮に感じる。
ただ無言でランドルの後ろをゆっくりと歩いていく。護衛の役目もあるランドルが前を歩き、右にはレイフ、少し後ろにはローリーがいる。この公爵家で何があるわけじゃないが、俺を守るような形をとることが当たり前なんだそうだ。
「気持ちが良いな……」
公爵家の屋敷もとてつもなく大きいけど、その庭も広すぎて旅行雑誌などに紹介されるような有名な観光ガーデンのようだ。全部歩いたらどれくらいの時間がかかるかわからないくらいだな。
こうやって過ごしていると、あんな酷いことを平気でやっている国にいるなんて思えない。あんな話を聞いて益々神子としての力を振るいたいとは思えなくなってしまった。
でも他の国は瘴気による魔物の暴走で苦しんでいる。自分で確認したわけじゃないけど、他の国はこの国のように神子を蔑ろにするところじゃないと言う。それが本当だったなら、他の国は助けてもいいかも、なんて少しだけ思った。
ただ俺の顔を見て、他の国の人にも同じように『化け物』だなんて言われる可能性もあるし、そう考えると……。
この火傷の跡がある限り、俺は人の目が怖い。それは一生直らないんだろう。
「ヒカル様。先ほどの話を聞いて貴方が不快に思われたことは重々承知しています」
ふいに横にいるレイフから声を掛けられた。顔を見れば俯き暗い表情をしている。
「この世界にいる者として、神子様のお力を借りたいと思っています。ですが、あのような理不尽な扱いをされたヒカル様がその力を使いたくないと思われるならそれでもいいと思っています」
「レイフ……」
「それでこの世界が滅んでしまうのならそれも運命なんでしょう。私はヒカル様がどのような選択をされても異を唱えることは致しません」
そう言って下に向いていた視線を俺に変える。その顔には暗い表情はどこにもなかった。
「貴方がしたいように選んでください」
そう言われて足が止まった。それに気づいた皆も足を止める。
「俺は、神子としての力を使いたいとは思わない」
「はい」
「でも、それは今の俺の気持ちだ。これからどうなるかはわからない。まだわからないことが多すぎるから」
「はい」
「でも少なくとも。ここの皆の為に使いたいとは思ってる。世界の為じゃなくて、皆の為に」
「ヒカル様……」
そしてレイフは「ありがとうございます」と深々と頭を下げた。ランドルもローリーも同じようにそれに倣う。
そして顔を上げたレイフもローリーもランドルも。とてもいい笑顔を見せてくれた。
それを見て、沈んだ気持ちが上向いたのが分かった。
俺もここの皆の事が大切だと思う。だからもしその気持ちが他へと向けられるようになったなら。
きっと神子の力を使おうと思えるのだろう。それがいつになるかはわからないけど。
ある程度歩いていくと東屋が見えてきた。そこに寄って休憩することにする。
椅子に腰かけるとさっとレイフが持ってきたかごから飲み物を取り出し、カップへと注いでくれた。
中身は冷たい紅茶だった。少し歩いて汗ばんだ体に染みわたるようだ。
「俺には神子の力があるのは分かったけど、その他の魔法は使えるの?」
そうランドルに聞けば「もちろん使えます」と。どうやって使うのかを聞けば、魔道具に魔力を流す要領で、イメージしながらそれを具現化するらしい。
ランドル達は魔法を使う事が出来ないから、ちゃんとした事が言えず申し訳ないと謝られた。魔力が少ないのは誰のせいでもないし謝らなくてもいいのに。
「ちょっとやってみようかな」
出来るかはわからないけど、なんとなく出来そうな気がする。魔力の扱い方も分かったしアニメや漫画なんかでイメージだけは一丁前だ。
右手に魔力を集めながら水をイメージする。そして「流れろ」と頭の中で唱えると、手のひらからドッバアアアア! っと大量の水が出て来た。
「うおっ!?」
びっくりして魔力の流れを止めた途端水はぴたりと止まる。俺達の足元は大きな水たまりが出来てびちゃびちゃになってしまった。全員の靴が水浸しだ。
「あ……ごめん」
やってしまった。まさかこんなことになるとは思わず全員が呆然としている。ただイメージするだけじゃなくて、量や勢いも合わせてイメージしないとダメなんだ、という事がわかった。今度からは気を付けよう。ここが外で本当に良かった。
「す…………」
「す?」
す、ってなんだ? 素? 巣? 酢?
「凄いです! ヒカル様何ですかあれ! いきなり水がドパ! ってドパ! って! あんなに勢いよく水が出せるなんて凄いです!」
「オースティン様が使ったのを見た事ありましたが、今では魔法を見る機会はほとんどありません! 凄いものを見せていただきました! ありがとうございます!」
「しかもたった1回で成功させちゃうなんてヒカル様ってば天才すぎる! ちょっと僕興奮が収まんないんだけど!」
いきなり3人が3人共、頬を高揚させて勢いよく喋り出した。その勢いに飲まれた俺はびっくりして何も返事を返せない。だが誰も俺の返事を求めていないのか、3人で今の魔法について興奮気味にやいのやいのと騒いでいる。
まさか魔法のある世界で、魔法でここまで喜ばれるとは思わなかった……。
イメージが物凄く大切だという事が分かったし、他にも何かできないかとやってみることにする。今度は風を出してみようと思い、そよ風をイメージ。右手から「優しい風を」と頭で念じるとふわっとした柔らかい風が吹き抜けていった。
それを感じた3人がまたまた興奮するから凄い。
楽しくなってきた俺は東屋から出て、まだ蕾の状態の花に近づいた。そっと手をかざし魔力を集める。「開け」と念じるとふわりと花が開き見事に咲いた。
じゃあ今度は光だ。空に手を向けて蛍をイメージする。「輝け」と念じると小さな光がぴかぴかと舞った。
「ヒカル様……! なんと美しい光景でしょう!」
「あああああ! もう僕興奮しすぎて頭おかしくなりそう! ヒカル様が凄すぎてどうしたらいい!?」
「これは書き記し後世に伝えなければッ! あああああ! この美しい情景を絵に残せないのが悔しいッ!」
「あはっ……あははははは!」
皆の姿が面白くて声を上げて笑ってしまった。こんなに大笑いしたのはいつぶりだろう。楽しい! 面白い!
イメージすれば何でも出来るみたいだから、いつものお礼に何か渡したい。そう思って小さな石を作ることにする。
レイフとローリーには髪色に合わせた深い青の石を。ランドルには瞳の色に合わせた明るい緑の石を。
小さくてころころと丸いその石をそれぞれに手渡す。
「いつもありがとう。お礼に受け取って欲しい」
「「「家宝にします!!」」」
それを3人共震える手で受け取ると声を揃えてそう叫んだ。それを聞いて俺はまた声を上げて笑った。
昼食は4人で取ったものの、昨日のような明るい雰囲気ではなくなった。
俺も暗い表情を思いっきり出していたからか、気を遣ったローリーに庭へ散歩へ行こうと提案される。公爵家の庭は綺麗だから気分転換に丁度いいと。
それで皆で食後の散歩に出かけることにした。
こうやって外に出るのはこの世界へ来て初めてだ。元の世界の時と含めたら何年振りだろうか。
風の心地よさも、太陽の温かさも、緑の匂いも、鳥の鳴き声も。全部が当たり前のものなのに、何もかもが新鮮に感じる。
ただ無言でランドルの後ろをゆっくりと歩いていく。護衛の役目もあるランドルが前を歩き、右にはレイフ、少し後ろにはローリーがいる。この公爵家で何があるわけじゃないが、俺を守るような形をとることが当たり前なんだそうだ。
「気持ちが良いな……」
公爵家の屋敷もとてつもなく大きいけど、その庭も広すぎて旅行雑誌などに紹介されるような有名な観光ガーデンのようだ。全部歩いたらどれくらいの時間がかかるかわからないくらいだな。
こうやって過ごしていると、あんな酷いことを平気でやっている国にいるなんて思えない。あんな話を聞いて益々神子としての力を振るいたいとは思えなくなってしまった。
でも他の国は瘴気による魔物の暴走で苦しんでいる。自分で確認したわけじゃないけど、他の国はこの国のように神子を蔑ろにするところじゃないと言う。それが本当だったなら、他の国は助けてもいいかも、なんて少しだけ思った。
ただ俺の顔を見て、他の国の人にも同じように『化け物』だなんて言われる可能性もあるし、そう考えると……。
この火傷の跡がある限り、俺は人の目が怖い。それは一生直らないんだろう。
「ヒカル様。先ほどの話を聞いて貴方が不快に思われたことは重々承知しています」
ふいに横にいるレイフから声を掛けられた。顔を見れば俯き暗い表情をしている。
「この世界にいる者として、神子様のお力を借りたいと思っています。ですが、あのような理不尽な扱いをされたヒカル様がその力を使いたくないと思われるならそれでもいいと思っています」
「レイフ……」
「それでこの世界が滅んでしまうのならそれも運命なんでしょう。私はヒカル様がどのような選択をされても異を唱えることは致しません」
そう言って下に向いていた視線を俺に変える。その顔には暗い表情はどこにもなかった。
「貴方がしたいように選んでください」
そう言われて足が止まった。それに気づいた皆も足を止める。
「俺は、神子としての力を使いたいとは思わない」
「はい」
「でも、それは今の俺の気持ちだ。これからどうなるかはわからない。まだわからないことが多すぎるから」
「はい」
「でも少なくとも。ここの皆の為に使いたいとは思ってる。世界の為じゃなくて、皆の為に」
「ヒカル様……」
そしてレイフは「ありがとうございます」と深々と頭を下げた。ランドルもローリーも同じようにそれに倣う。
そして顔を上げたレイフもローリーもランドルも。とてもいい笑顔を見せてくれた。
それを見て、沈んだ気持ちが上向いたのが分かった。
俺もここの皆の事が大切だと思う。だからもしその気持ちが他へと向けられるようになったなら。
きっと神子の力を使おうと思えるのだろう。それがいつになるかはわからないけど。
ある程度歩いていくと東屋が見えてきた。そこに寄って休憩することにする。
椅子に腰かけるとさっとレイフが持ってきたかごから飲み物を取り出し、カップへと注いでくれた。
中身は冷たい紅茶だった。少し歩いて汗ばんだ体に染みわたるようだ。
「俺には神子の力があるのは分かったけど、その他の魔法は使えるの?」
そうランドルに聞けば「もちろん使えます」と。どうやって使うのかを聞けば、魔道具に魔力を流す要領で、イメージしながらそれを具現化するらしい。
ランドル達は魔法を使う事が出来ないから、ちゃんとした事が言えず申し訳ないと謝られた。魔力が少ないのは誰のせいでもないし謝らなくてもいいのに。
「ちょっとやってみようかな」
出来るかはわからないけど、なんとなく出来そうな気がする。魔力の扱い方も分かったしアニメや漫画なんかでイメージだけは一丁前だ。
右手に魔力を集めながら水をイメージする。そして「流れろ」と頭の中で唱えると、手のひらからドッバアアアア! っと大量の水が出て来た。
「うおっ!?」
びっくりして魔力の流れを止めた途端水はぴたりと止まる。俺達の足元は大きな水たまりが出来てびちゃびちゃになってしまった。全員の靴が水浸しだ。
「あ……ごめん」
やってしまった。まさかこんなことになるとは思わず全員が呆然としている。ただイメージするだけじゃなくて、量や勢いも合わせてイメージしないとダメなんだ、という事がわかった。今度からは気を付けよう。ここが外で本当に良かった。
「す…………」
「す?」
す、ってなんだ? 素? 巣? 酢?
「凄いです! ヒカル様何ですかあれ! いきなり水がドパ! ってドパ! って! あんなに勢いよく水が出せるなんて凄いです!」
「オースティン様が使ったのを見た事ありましたが、今では魔法を見る機会はほとんどありません! 凄いものを見せていただきました! ありがとうございます!」
「しかもたった1回で成功させちゃうなんてヒカル様ってば天才すぎる! ちょっと僕興奮が収まんないんだけど!」
いきなり3人が3人共、頬を高揚させて勢いよく喋り出した。その勢いに飲まれた俺はびっくりして何も返事を返せない。だが誰も俺の返事を求めていないのか、3人で今の魔法について興奮気味にやいのやいのと騒いでいる。
まさか魔法のある世界で、魔法でここまで喜ばれるとは思わなかった……。
イメージが物凄く大切だという事が分かったし、他にも何かできないかとやってみることにする。今度は風を出してみようと思い、そよ風をイメージ。右手から「優しい風を」と頭で念じるとふわっとした柔らかい風が吹き抜けていった。
それを感じた3人がまたまた興奮するから凄い。
楽しくなってきた俺は東屋から出て、まだ蕾の状態の花に近づいた。そっと手をかざし魔力を集める。「開け」と念じるとふわりと花が開き見事に咲いた。
じゃあ今度は光だ。空に手を向けて蛍をイメージする。「輝け」と念じると小さな光がぴかぴかと舞った。
「ヒカル様……! なんと美しい光景でしょう!」
「あああああ! もう僕興奮しすぎて頭おかしくなりそう! ヒカル様が凄すぎてどうしたらいい!?」
「これは書き記し後世に伝えなければッ! あああああ! この美しい情景を絵に残せないのが悔しいッ!」
「あはっ……あははははは!」
皆の姿が面白くて声を上げて笑ってしまった。こんなに大笑いしたのはいつぶりだろう。楽しい! 面白い!
イメージすれば何でも出来るみたいだから、いつものお礼に何か渡したい。そう思って小さな石を作ることにする。
レイフとローリーには髪色に合わせた深い青の石を。ランドルには瞳の色に合わせた明るい緑の石を。
小さくてころころと丸いその石をそれぞれに手渡す。
「いつもありがとう。お礼に受け取って欲しい」
「「「家宝にします!!」」」
それを3人共震える手で受け取ると声を揃えてそう叫んだ。それを聞いて俺はまた声を上げて笑った。
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