【完結】異世界で、家政夫(と聖人)始めました!

華抹茶

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4.俺が聖女?

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「……重ね重ね申し訳ございません!」

 うわぁぁぁぁぁ! 俺のバカバカバカバカ! 一体何やってんだよ昨日の俺!
 ユリウスさんの話を聞けば聞くほど、恥ずかしくて穴があったら入りたい。泥酔していたとはいえ、見ず知らずな初対面の人に「俺のこと抱いてくれない?」なんて言ってキスするとか、浮気していた流星のことを何も言えないじゃないか! っていうか朧げだが、浮気されたしし返してやれ! って思ってそうやったんだろうと思い出したけど。けども! やっていいことと悪いことがあるだろ、俺!
 そんでその気になったユリウスさんに抱かれたはいいけど、そのことを一切合切覚えてなくて「あんた誰?」とか言っちゃったなんて。お前が誰だよって話だよ! あー! 今まで酔っ払ってもこんな失敗したことなかったのに、異世界初日が朝チュン事件とか洒落にならんて!
 ユリウスさんが優しい人で本当によかった。これがもし犯罪集団に属する人だったら今頃俺は売られているか薬漬けにされているか、最悪殺されていてもおかしくない。運がいいんだか悪いんだかわからないが、とにかく拾ってくれたのがユリウスさんで本当によかった……精一杯の謝罪も今は土下座しか出来ない。何とかお金を稼いだら迷惑料を支払わねば……

「昨日は驚いたしこんなことになってしまったが、お陰で俺は救われたんだ。だからそこまで気に病む必要はない」
「……え? 救われた?」
「……俺は魔法騎士だと言っただろう? 一昨日、仕事で魔物討伐に行ったんだがそこでヘマをしてな」

 なんとこの世界は魔法があり、ユリウスさんは魔法と剣などの武器を使って戦う魔法騎士という職に就いているそうだ。
 それで一昨日、いつものように魔物を討伐しに出かけたが現れたのが変異種? といういつもの魔物とは違っていたらしい。強さも耐久力も桁違いで討伐するのに手こずったものの、なんとか力を合わせて討伐に成功。だが最後の悪あがきなのか、変異種の魔物に右胸から太ももまでざっくりと傷をつけられたそうだ。

「しかも呪いまで付与されていて、回復薬の効きもかなり悪かったんだ。治療するには呪いを解呪しなければならないが、それが出来る人間が誰一人としていなかった」

 それで昨日はその呪いを解呪するために王宮へ行っていた。だが何も手がかりを掴めないまま帰宅。その道中で俺が路地で寝ているところを発見し声をかけたところ、俺がとんちんかんなことを言ってキスをした。
 するとユリウスさんが負っていた傷の痛みがほんの少し和らいだらしい。

「まさかと思ったがもう一度お前と口づけをし、舌を絡ませると更に痛みが引いた。そこで気付いたんだ。以前来訪した聖女と同じ力を持っていると」

 今から約五百年程昔、俺と同じように異世界からの来訪者がいた。その人は浄化と治癒の能力を持っており、それで当時の王太子の命を救ったことがあったそうだ。その王太子もユリウスさんのように深い傷と呪いを受けてしまったが、来訪者の力によって生還したらしい。今もおとぎ話の一つとして残っていて、とても有名な話だそうだ。
 そういったことからその来訪者は『聖女』として崇められることになった。因みに浄化や治癒といった能力は、この世界の人間には扱えない力らしい。魔法があるとはいえ、その力は異世界からの来訪者だけが持つ特別な力だそうだ。

 ユリウスさんは王宮の筆頭宮廷魔導士ですら解呪出来なかった呪いが、俺の唾液で和らいだことで俺が異世界からの来訪者で聖女と同じ力を持っていると確信したそうだ。因みに日本人によくある黒い髪と目の色は、この世界にはない色だということも確信した要因の一つだったそう。
 そして俺を家へと連れ帰り、俺の体液を摂取。因みにこれは俺の精液を摂取したらしい……

「通常、唾液や血液、精液などの体液には魔力が多く含まれている。ハルトの場合は体液に浄化と治癒能力が備わっていて、お前に魔法を使わせるより俺が直接摂取した方が早いと判断した」

 ディープなキスで唾液を摂取したところ、呪いや痛みは軽減されたが完全な解呪や回復にまで至らなかった。そこで泥酔している俺に魔法を使えと言うよりも、もっと濃い体液を摂取した方が早いと思ったユリウスさんは、つまり……その、俺にフェラをして直接精液を飲んだというのだ。
 すると誰も解呪出来なかった呪いが解け、深く付けられた傷も綺麗に完治。傷跡も残さずきれいさっぱり消え去ったそうだ。
 そして肝心の俺は既に酔っ払って眠っていながらも、フェラされたことであんあん喘ぎ、射精したことと泥酔していたことで深い眠りに落ちたそうだ。

「俺は別にあのまま死んでもよかったんだが、ハルトとこうして出会い解呪出来たということは、まだ死ぬ時ではないということなのだろう。それにあのまま傷も治らずいれば、その痛みをずっと背負わなければならないからな。だからお前には感謝している」

 胸から太ももまでざっくりと斬られた傷がずっとそのままなんて、痛すぎて考えたくもない。そんな傷も変な呪いも解けたのならよかった。
 っていうか俺って『聖女』の再来なんだ……実感なんて何もないけど。

「あれ。そういえば昨日あれだけ酒を飲んでいたのに二日酔いになってない」
「恐らくだが、浄化と治癒で抑えられたんだろう」
「なるほど」

 お酒を飲んで酔いはするが、二日酔いにまでならないということか。凄い。なんだか得した気分だな。
 なんて二日酔いになってないことを喜んだところで、現状は何も変わらないし解決していない。
 いきなり身一つで異世界に来て、しかも帰れない。まだはっきりそうと決まったわけじゃないけど、その可能性は限りなく低いらしい。じゃあ俺はこれからどうすれば……
 言葉が通じるのは救いだが、こんな何もわからない異世界に放り出されても俺に何が出来るというんだ。まさか――

「あの……もしかして、俺って魔王退治とか行かなきゃいけないんでしょうか?」
「魔王……? なんだそれは。そんなものいないし、お前に何かを退治しろとかそういったことはないだろう」
「よかった……」

 漫画やアニメによくある魔王退治とかしなくていいんだ。俺は普通の社会人だし戦えなんて言われて出来るわけがない。とりあえずいきなりそういったことにならなそうでひとまずは安心だ。
 とはいえ、これからの身の振り方が決まったわけじゃない。

「あの、その……俺ってこれからどうすればいいんでしょうか」
「さぁな。それもヴォルテルに話をしてから決まるだろう」
「ヴォルテルさん、ってどなたです?」
「この国の王太子だ」
「おうたいし……」

 おうたいしってなんだろう……聞きなれない言葉ですぐに理解が出来ない。おうたいし、おうたいし……ってまさか王太子!?

「え、あのっ……王太子ってこの国の王子様ってことですか!?」
「そうだ。なんだ? お前の世界に王太子はいないのか?」
「いやっ、いないってことはないんですけど、あまり聞きなじみがなかったので……そっか、王子様に会わなきゃいけないんだ……」

 いやいやいや、一般市民だった俺にハードル高すぎだろ!? 一国の王子様どころか、会社の社長以上の上役の人なんて会ったことないっての! いきなり国のトップに近い人に会わなきゃいけないなんてっ……! 想像しただけで胃がキリキリする……

「そこまで緊張する必要はない。あいつはそんな堅苦しい人間じゃないし、異世界からの来訪者であるお前をぞんざいに扱うこともないはずだ」
「……そう、ですか」
「とりあえずしばらくはこの家にいればいい」
「え……? いいんですか!? でも、ご迷惑じゃっ……」
「一人暮らしだから気にするな。それに異世界からの来訪者であるお前を放り出すわけにもいかない。この先のことが決まるまでここにいればいい。その方が俺も安心だ」
「あ、ありがとうございます!」

 よ、よかったぁ……とりあえずいきなり放り出されて路頭に迷うことはなさそうだ。それが決まっただけで気持ちが随分と楽になる。
 それからユリウスさんはズボンも貸してくれて、それを身に着けた。俺のサイズに会った服をこれから買いに行ってくれるそうだ。何から何まで本当に申し訳ない。今度、ちゃんと稼げるようになったら返済しよう。
 
「じゃあとりあえず家の中を案内しよう。……だが驚かないでくれ」
「へ?」

 家の中に何かとんでもないものがいるんだろうか。異世界だから地球じゃあり得ないとんでも生物とかとんでも植物とか、何かそういった危険な物でもあるのかと不安になる。でもユリウスさんと一緒にいれば大丈夫だろう。襲われても守ってもらえるはずだ。……多分。
 ユリウスさんの後に続き、寝室から外に出る扉を開けた。どうやら寝室は二階のようで、一階へと続く階段を下りると信じられない光景が広がっていた。

「え……え?」
「……だから驚かないでくれと言った……」

 そこには何とゴミの山が。一階部分の床という床がゴミで埋め尽くされ足の踏み場もない状態だった。まさかこんなの想像できるわけがない。俺はそこで呆然とするほかなかった。
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