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番外編
裏ストーリー② エレンside
それからはいつも通り、賑やかに食事をしてヴィンセントとライリーは部屋へと向かい俺とライアスが残された。ライアスがお茶を淹れてくれてそれをゆっくりと味わう。やっぱりライアスの淹れたお茶が一番美味いな。
「エレン、あの王子の事ですがもしかして…」
「ああ、俺と同じ前世の記憶を持ってる。それも俺と同じ地球のな」
ライアスは俺が前世の記憶を持っていることを知っている。俺がこの国へ来た時、それを明かした。ライアス以外このことを知る人はいない。
「やはりそうでしたか。ところで、それには何が書かれているんです?」
「これか? ただの挨拶だよ。向こうの言葉の2種類だな。国が違えば言葉も違うからな。こっちは英語、こっちは日本語。日本は俺の前世の時に生まれ育った国だよ。もしかしたら、この王子様も前世は日本人だったのかもしれない」
「なぜそう言えるんです?」
「日本語って基本日本でしか使われない言葉なんだ。外国人がわざわざ日本語で書くなんて考えられないからな」
もし王子様が日本人だったら。前世の記憶を持ってるってだけでも凄い事なのに、それがまさか異世界、地球でそれも同じ日本。この巡り合わせには何か意味があるのかもしれない。
ここリッヒハイムとガンドヴァはもうすぐ全面戦争が起こるだろうと言っていた。
そしてその王子様は今現在は保護されているが、ここと向こうが戦争してここが勝ったら。ガンドヴァの国民の命と尊厳を守るためにその命を交渉材料とすることを約束しているらしい。
だからあと何日しか生きられないという事だ。
まだ会ったこともないけど。同じ地球の転生者というだけでかなり親近感がわいてしまっている。なんとかしてあげられないんだろうか…。ま、それも会ってみてからの話だな。その時は宰相様と相談してみよう。
それからヴィンセントが宰相様から面会の許可を貰って王子に会うことになった。
「はぁ~…。緊張する…」
「エレン、大丈夫ですか?」
大丈夫、と答えはしたものの。まさか前世の記憶持ち、しかも日本人かもしれない人に会うだなんてかなりドキドキしてしまう。例の王子様の部屋の前ですーはーと深呼吸。
俺が頷きを一つするとヴィンセントはコンコンとノックをして扉を開けた。
ライリーとヴィンセントが先に部屋へ入り、その後を追いかけてライアスと俺が続く。ライアスの横からスッと前へ出て挨拶をする。相手はガンドヴァの国といえど、れっきとした王族だ。敬意を払って挨拶をした。
「お初にお目にかかります。通話の魔道具考案者のエレン・フィンバーと申します。ガンドヴァ第五王子殿下に面会を希望いただき、参りましてございます。そしてこちらは私の夫のライアス・フィンバーでございます。どうぞよしなによろしくお願いいたします」
「あ、ご多忙のところ、私の我儘をお聞き届けいただきましてありがとうございます。ガンドヴァの第五王子、ヴォルテル・セド・ガンドヴァです。こちらこそどうぞよろしくお願いいたします」
どうやら王子様も緊張していたようだ。少したどたどしくも礼節を持って挨拶を返してくれた。
見たところ、まだ10代だろうか。こんな若さで残り短い命だなんて…。
彼の状況をどうするかを考えるのはまだ後だ。まずは彼の事を知らなければ。
『日本人、ですか?』
だけど俺ははやる気持ちが抑えられなくて日本語で話しかけてしまった。するとそれを聞いた王子様、ヴォルテル君も目をこれでもかという程見開き驚いていた。
『日本語…マジかよ』
やっぱり! 彼は日本人だった。すげぇ! こんな奇跡みたいなことってあるんだな! やっぱり何かの巡り合わせなのかもしれない!
だけど、ここでこのまま彼と話をするわけにはいかない。俺に前世の記憶があるってことはライアスしか知らないことだから。
悪いけど、ライリーとヴィンセントには外してもらった。ライリーは不服だったからあとでちゃんとフォローしとかないとな。ま、ヴィンセントがいるから大丈夫だとは思うけど。
よし。2人が出ていったところでやっと話が出来る! さっきは王族相手だったから敬意を払って挨拶したけど日本人だとわかったのなら遠慮はしない!
『日本人だったんだな! 会えてうれしいよ! 前世の名前は覚えてないからエレンって呼んでくれ。これからよろしく!』
嬉しくて嬉しくて思わず駆け寄ってヴォルテル君の手をぶんぶん振り回してしまった。あっけにとられたヴォルテル君の顔が可愛かったと言っておく。
お茶を淹れてくれたのでゆっくりと腰を落ち着けて話を始めた。
ヴォルテル君は俺の容姿に驚いたらしい。そして結婚していて子供まで産んでいることも。家族の事を話したりドラゴン討伐の事を話したり。それを聞いてヴォルテル君はしきりに「凄い! カッコいい! 最高!」と喜んでくれた。それを聞いてライアスもまんざらでもない顔をしている。もうこれだけで素直でいい子だとわかる。可愛いなぁ! 俺に弟はいないからもう彼を俺の弟認定してしまおう!
それからはもう俺もヴォルテル君もテンションが上がって日本語で会話をし始めてしまった。好きだったアニメやゲーム、アイドルだったりラノベだったり。転生してこんなにも前世のことについて話が出来るなんて思ってもみなかった! 楽しすぎる!
「エレン。申し訳ないのですが、前世の言葉で話されると何を言っているのか理解できません。こちらの言葉で話してくれませんか?」
「あ…。ごめんライアス。ディルクさんもわからないよな」
「…そう、ですね。ですが、こんなにも楽しそうに殿下が話しているのを見て俺はとても嬉しいんです。エレン殿ありがとうございます。…ですが、ライアス殿の仰るようにこちらの言葉で話してくださると助かります」
ああ、ディルクさんもめちゃくちゃ良い人じゃん! こんな人達だったらガンドヴァでは生き辛かっただろうな。
「あの、変なこと聞くけどエレンさんはもともと同性愛者だったの?」
ふとおもむろにヴォルテル君からそんな質問が飛び出した。そりゃそうか。俺は前世も男だって言ったし気になるよな。この世界は男しかいない摩訶不思議な世界だし。
「いや、俺は異性愛者だったよ。だけどライアスだけ特別だったんだ。こいつ以外はどうあっても無理。こいつだったから結婚したし子供もできたんだ。ヴォルテル君は? ヴィンセントに聞いたけど2人は恋仲なんだって?」
確かヴィンセントから聞いた事前情報によると、ライリーとヴィンセントの前でディルクさんが熱烈な告白をしたって言ってたな。しかも、ヴォルテル君の魔力がディルクさんの中にかすかだけど視えたって言ってたし。
「ぶはっ! ごほっごほっ!」
「殿下! 大丈夫ですか!?」
「いや、あの! 俺とディルクは、まだそんなんじゃっ! 恋仲とか、そんな、そんな…」
「あ、ごめん。…そういうことか。なるほどね」
まだ、ね。ふ~ん。ヴォルテル君もディルクさんを好きだという自覚はあるんだ。そっかそっか。ああもう可愛いなぁ!
ヴォルテル君が可愛すぎてにやにやするのを抑えられない。
「…俺は誰とも付き合えない。聞いてると思うけど、もうすぐガンドヴァとリッヒハイムの全面戦争が起こる。そしてリッヒハイムが勝利して戦争は終わる。その後は俺は俺の命を持ってガンドヴァの国民の命と尊厳を守ることになってる。…だから俺にそんな人は出来ちゃいけないんだ」
「ヴォルテル君…」
「ごめん、せっかくの場なのにこんな話をして。だから今日はすごく嬉しかったんだ。同じ転生者に会えて久しぶりに日本語で話が出来て。
通話の魔道具の存在を知った時にもしかして、ってずっと思ってたから。子供の時からの夢が叶って本当に嬉しい。エレンさん、ありがとう」
…無理して笑って俺に気を遣って。それにこんな若さでまだまだやりたいことだってあるだろうし、ディルクさんとの未来だって諦めたくないだろうに。
死ぬ運命にあるだなんて…。
「そっか。…でも後悔しないようにした方がいいと思う。ディルクさんは告白したんだよな? 気持ちを伝えてどうだった? 後悔した?」
「…いえ。元々言うつもりはありませんでした。ですが、今は伝えることが出来て良かったと思っています。それに神の愛し子である殿下と恋仲になるなど恐れ多く。今のこの関係で俺は十分です」
「神の愛し子??」
なんかすごいパワーワードが飛び出してきたぞ。何それ面白そう!
「それどういう事? その辺詳しく!」
続きを促せば嬉々としてディルクさんが語ってくれた。隣でヴォルテル君は真っ赤になって俯いている。可愛いかよ!
もうディルクさんの話にはヴォルテル君への愛が溢れてる。めちゃくちゃ良い人じゃないか! もうくっついちゃえよ! 君たちなら全力で応援するから!
「――ですからこのようなお人であれば神の愛し子だと思ったわけです。殿下が即位されればきっとガンドヴァは良き方向へ行くと思っています。その為に遣わされたお方ですから。
ですからそんな尊き方と恋仲になるなど恐れ多いのです」
「なるほどな~。ふむ…」
『神の愛し子』ねぇ…。これは使えるんじゃないか? 実際俺もヴォルテル君との出会いは、何かの力が働いているんじゃないかと思うくらいの奇跡的なことだと思う。
前世の記憶を持っていて、かつそれが地球のしかも日本。こんなドンピシャでハマる事ってあり得るか?
異世界があるのなら、それは色んな異世界があるってことだ。きっと無数にあるんだろう。宇宙に散らばる星のように。なのに、数ある異世界で同郷の俺たちがこうして出会うなんて宝くじが当たるよりもっと確率は低いはずだ。
この出会いが実は神様のお導きだった…。神様がいるのかどうかはわからないけど、もしかしたら本当にそうなのかもしれない。
「エレン? どうしました?」
おっと。考え込んでいたらライアスに声を掛けられた。
「…んー。ま、今はいいや。じゃあディルクさんはそんなヴォルテル君が可愛くて可愛くて仕方がないってことか」
「はい。とても愛らしく、そんな方のお側にいられることが幸せです」
ああもう! 2人とも可愛すぎかよ! ヴォルテル君なんて更に真っ赤になってるし。
だけど今はそれを素直に喜んでもいられない状況。それはわかるけど、でもそれで諦めて死んでしまって、気持ちを伝えればよかったって後悔だけはしてほしくない。
「そっか。…じゃあ後はヴォルテル君次第だな。さっきも言ったけど後悔だけはしないようにな。人生一度きり。また転生したとしてもその時はまた違う人生だ。ちゃんと言えるときに言った方がいいよ」
「…はい。わかりました」
そう。俺たちは転生している。だけど、それはまた別の人間となっての人生となる。今のこの人生は、今しかない。それをヴォルテル君もわかってくれたみたいだ。うん。気持ちを伝えられるなら伝えた方がいい。2人が想い合ってるならなおさら。
それから後の話は笑い声が絶えない楽しい話になった。俺も久々に前世の事を思いっきり話せて楽しかった。
そしてヴォルテル君とディルクさんは本当に良い人なんだと思う。きっとガンドヴァの事で心を痛めているんだろう。
ヴォルテル君は王族としての責務を果たそうとしている。自分の命を使って。
『――ですからこのようなお人であれば神の愛し子だと思ったわけです。殿下が即位されればきっとガンドヴァは良き方向へ行くと思っています。その為に遣わされたお方ですから』
ディルクさんが言っていたことを思い出す。うん。俺もそう思う。きっとヴォルテル君が王様になったら、ガンドヴァはきっととってもいい国になると思う。それを実現できないだろうか…。
神の愛し子。
ヴォルテル君も神様には会ったことも声を聞いたこともないって言っていた。だけど、俺も本当はそうなんじゃないかと思う。
うん、決めた。ヴォルテル君を助けられるか考えよう。
「エレン、あの王子の事ですがもしかして…」
「ああ、俺と同じ前世の記憶を持ってる。それも俺と同じ地球のな」
ライアスは俺が前世の記憶を持っていることを知っている。俺がこの国へ来た時、それを明かした。ライアス以外このことを知る人はいない。
「やはりそうでしたか。ところで、それには何が書かれているんです?」
「これか? ただの挨拶だよ。向こうの言葉の2種類だな。国が違えば言葉も違うからな。こっちは英語、こっちは日本語。日本は俺の前世の時に生まれ育った国だよ。もしかしたら、この王子様も前世は日本人だったのかもしれない」
「なぜそう言えるんです?」
「日本語って基本日本でしか使われない言葉なんだ。外国人がわざわざ日本語で書くなんて考えられないからな」
もし王子様が日本人だったら。前世の記憶を持ってるってだけでも凄い事なのに、それがまさか異世界、地球でそれも同じ日本。この巡り合わせには何か意味があるのかもしれない。
ここリッヒハイムとガンドヴァはもうすぐ全面戦争が起こるだろうと言っていた。
そしてその王子様は今現在は保護されているが、ここと向こうが戦争してここが勝ったら。ガンドヴァの国民の命と尊厳を守るためにその命を交渉材料とすることを約束しているらしい。
だからあと何日しか生きられないという事だ。
まだ会ったこともないけど。同じ地球の転生者というだけでかなり親近感がわいてしまっている。なんとかしてあげられないんだろうか…。ま、それも会ってみてからの話だな。その時は宰相様と相談してみよう。
それからヴィンセントが宰相様から面会の許可を貰って王子に会うことになった。
「はぁ~…。緊張する…」
「エレン、大丈夫ですか?」
大丈夫、と答えはしたものの。まさか前世の記憶持ち、しかも日本人かもしれない人に会うだなんてかなりドキドキしてしまう。例の王子様の部屋の前ですーはーと深呼吸。
俺が頷きを一つするとヴィンセントはコンコンとノックをして扉を開けた。
ライリーとヴィンセントが先に部屋へ入り、その後を追いかけてライアスと俺が続く。ライアスの横からスッと前へ出て挨拶をする。相手はガンドヴァの国といえど、れっきとした王族だ。敬意を払って挨拶をした。
「お初にお目にかかります。通話の魔道具考案者のエレン・フィンバーと申します。ガンドヴァ第五王子殿下に面会を希望いただき、参りましてございます。そしてこちらは私の夫のライアス・フィンバーでございます。どうぞよしなによろしくお願いいたします」
「あ、ご多忙のところ、私の我儘をお聞き届けいただきましてありがとうございます。ガンドヴァの第五王子、ヴォルテル・セド・ガンドヴァです。こちらこそどうぞよろしくお願いいたします」
どうやら王子様も緊張していたようだ。少したどたどしくも礼節を持って挨拶を返してくれた。
見たところ、まだ10代だろうか。こんな若さで残り短い命だなんて…。
彼の状況をどうするかを考えるのはまだ後だ。まずは彼の事を知らなければ。
『日本人、ですか?』
だけど俺ははやる気持ちが抑えられなくて日本語で話しかけてしまった。するとそれを聞いた王子様、ヴォルテル君も目をこれでもかという程見開き驚いていた。
『日本語…マジかよ』
やっぱり! 彼は日本人だった。すげぇ! こんな奇跡みたいなことってあるんだな! やっぱり何かの巡り合わせなのかもしれない!
だけど、ここでこのまま彼と話をするわけにはいかない。俺に前世の記憶があるってことはライアスしか知らないことだから。
悪いけど、ライリーとヴィンセントには外してもらった。ライリーは不服だったからあとでちゃんとフォローしとかないとな。ま、ヴィンセントがいるから大丈夫だとは思うけど。
よし。2人が出ていったところでやっと話が出来る! さっきは王族相手だったから敬意を払って挨拶したけど日本人だとわかったのなら遠慮はしない!
『日本人だったんだな! 会えてうれしいよ! 前世の名前は覚えてないからエレンって呼んでくれ。これからよろしく!』
嬉しくて嬉しくて思わず駆け寄ってヴォルテル君の手をぶんぶん振り回してしまった。あっけにとられたヴォルテル君の顔が可愛かったと言っておく。
お茶を淹れてくれたのでゆっくりと腰を落ち着けて話を始めた。
ヴォルテル君は俺の容姿に驚いたらしい。そして結婚していて子供まで産んでいることも。家族の事を話したりドラゴン討伐の事を話したり。それを聞いてヴォルテル君はしきりに「凄い! カッコいい! 最高!」と喜んでくれた。それを聞いてライアスもまんざらでもない顔をしている。もうこれだけで素直でいい子だとわかる。可愛いなぁ! 俺に弟はいないからもう彼を俺の弟認定してしまおう!
それからはもう俺もヴォルテル君もテンションが上がって日本語で会話をし始めてしまった。好きだったアニメやゲーム、アイドルだったりラノベだったり。転生してこんなにも前世のことについて話が出来るなんて思ってもみなかった! 楽しすぎる!
「エレン。申し訳ないのですが、前世の言葉で話されると何を言っているのか理解できません。こちらの言葉で話してくれませんか?」
「あ…。ごめんライアス。ディルクさんもわからないよな」
「…そう、ですね。ですが、こんなにも楽しそうに殿下が話しているのを見て俺はとても嬉しいんです。エレン殿ありがとうございます。…ですが、ライアス殿の仰るようにこちらの言葉で話してくださると助かります」
ああ、ディルクさんもめちゃくちゃ良い人じゃん! こんな人達だったらガンドヴァでは生き辛かっただろうな。
「あの、変なこと聞くけどエレンさんはもともと同性愛者だったの?」
ふとおもむろにヴォルテル君からそんな質問が飛び出した。そりゃそうか。俺は前世も男だって言ったし気になるよな。この世界は男しかいない摩訶不思議な世界だし。
「いや、俺は異性愛者だったよ。だけどライアスだけ特別だったんだ。こいつ以外はどうあっても無理。こいつだったから結婚したし子供もできたんだ。ヴォルテル君は? ヴィンセントに聞いたけど2人は恋仲なんだって?」
確かヴィンセントから聞いた事前情報によると、ライリーとヴィンセントの前でディルクさんが熱烈な告白をしたって言ってたな。しかも、ヴォルテル君の魔力がディルクさんの中にかすかだけど視えたって言ってたし。
「ぶはっ! ごほっごほっ!」
「殿下! 大丈夫ですか!?」
「いや、あの! 俺とディルクは、まだそんなんじゃっ! 恋仲とか、そんな、そんな…」
「あ、ごめん。…そういうことか。なるほどね」
まだ、ね。ふ~ん。ヴォルテル君もディルクさんを好きだという自覚はあるんだ。そっかそっか。ああもう可愛いなぁ!
ヴォルテル君が可愛すぎてにやにやするのを抑えられない。
「…俺は誰とも付き合えない。聞いてると思うけど、もうすぐガンドヴァとリッヒハイムの全面戦争が起こる。そしてリッヒハイムが勝利して戦争は終わる。その後は俺は俺の命を持ってガンドヴァの国民の命と尊厳を守ることになってる。…だから俺にそんな人は出来ちゃいけないんだ」
「ヴォルテル君…」
「ごめん、せっかくの場なのにこんな話をして。だから今日はすごく嬉しかったんだ。同じ転生者に会えて久しぶりに日本語で話が出来て。
通話の魔道具の存在を知った時にもしかして、ってずっと思ってたから。子供の時からの夢が叶って本当に嬉しい。エレンさん、ありがとう」
…無理して笑って俺に気を遣って。それにこんな若さでまだまだやりたいことだってあるだろうし、ディルクさんとの未来だって諦めたくないだろうに。
死ぬ運命にあるだなんて…。
「そっか。…でも後悔しないようにした方がいいと思う。ディルクさんは告白したんだよな? 気持ちを伝えてどうだった? 後悔した?」
「…いえ。元々言うつもりはありませんでした。ですが、今は伝えることが出来て良かったと思っています。それに神の愛し子である殿下と恋仲になるなど恐れ多く。今のこの関係で俺は十分です」
「神の愛し子??」
なんかすごいパワーワードが飛び出してきたぞ。何それ面白そう!
「それどういう事? その辺詳しく!」
続きを促せば嬉々としてディルクさんが語ってくれた。隣でヴォルテル君は真っ赤になって俯いている。可愛いかよ!
もうディルクさんの話にはヴォルテル君への愛が溢れてる。めちゃくちゃ良い人じゃないか! もうくっついちゃえよ! 君たちなら全力で応援するから!
「――ですからこのようなお人であれば神の愛し子だと思ったわけです。殿下が即位されればきっとガンドヴァは良き方向へ行くと思っています。その為に遣わされたお方ですから。
ですからそんな尊き方と恋仲になるなど恐れ多いのです」
「なるほどな~。ふむ…」
『神の愛し子』ねぇ…。これは使えるんじゃないか? 実際俺もヴォルテル君との出会いは、何かの力が働いているんじゃないかと思うくらいの奇跡的なことだと思う。
前世の記憶を持っていて、かつそれが地球のしかも日本。こんなドンピシャでハマる事ってあり得るか?
異世界があるのなら、それは色んな異世界があるってことだ。きっと無数にあるんだろう。宇宙に散らばる星のように。なのに、数ある異世界で同郷の俺たちがこうして出会うなんて宝くじが当たるよりもっと確率は低いはずだ。
この出会いが実は神様のお導きだった…。神様がいるのかどうかはわからないけど、もしかしたら本当にそうなのかもしれない。
「エレン? どうしました?」
おっと。考え込んでいたらライアスに声を掛けられた。
「…んー。ま、今はいいや。じゃあディルクさんはそんなヴォルテル君が可愛くて可愛くて仕方がないってことか」
「はい。とても愛らしく、そんな方のお側にいられることが幸せです」
ああもう! 2人とも可愛すぎかよ! ヴォルテル君なんて更に真っ赤になってるし。
だけど今はそれを素直に喜んでもいられない状況。それはわかるけど、でもそれで諦めて死んでしまって、気持ちを伝えればよかったって後悔だけはしてほしくない。
「そっか。…じゃあ後はヴォルテル君次第だな。さっきも言ったけど後悔だけはしないようにな。人生一度きり。また転生したとしてもその時はまた違う人生だ。ちゃんと言えるときに言った方がいいよ」
「…はい。わかりました」
そう。俺たちは転生している。だけど、それはまた別の人間となっての人生となる。今のこの人生は、今しかない。それをヴォルテル君もわかってくれたみたいだ。うん。気持ちを伝えられるなら伝えた方がいい。2人が想い合ってるならなおさら。
それから後の話は笑い声が絶えない楽しい話になった。俺も久々に前世の事を思いっきり話せて楽しかった。
そしてヴォルテル君とディルクさんは本当に良い人なんだと思う。きっとガンドヴァの事で心を痛めているんだろう。
ヴォルテル君は王族としての責務を果たそうとしている。自分の命を使って。
『――ですからこのようなお人であれば神の愛し子だと思ったわけです。殿下が即位されればきっとガンドヴァは良き方向へ行くと思っています。その為に遣わされたお方ですから』
ディルクさんが言っていたことを思い出す。うん。俺もそう思う。きっとヴォルテル君が王様になったら、ガンドヴァはきっととってもいい国になると思う。それを実現できないだろうか…。
神の愛し子。
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うん、決めた。ヴォルテル君を助けられるか考えよう。
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