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36.僕たちの起こした奇跡
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久しぶりに訪れる陛下の執務室。重厚な扉を開け中へと入る。
かなり仕事に追われているのだろう。机の上には山積みの書類が乗っていた。
執務室には陛下と王配殿下だけではなく、アルの弟たち、そして文官の人達も一緒にそこにいた。
「ジェフリー君! 意識が戻ってよかった。まずはお礼を言わせてほしい。本当にありがとう。君のお陰で被害が最小限に抑えられた。感謝してもしきれないほどだ」
仕事の手を止め、僕の側へと来ると深々と頭を下げ感謝の言葉を述べた。王配殿下もアルも、そして他の王子たちに文官の人達も一緒に頭を下げる。
「や、やめてください! 陛下が頭を下げるなんて! それに皆さんも! 王族が僕に軽々しく頭を下げるなんて…っ」
僕は驚いて止めようとするも、誰も頭を上げてくれない。
「僕は僕に出来ることをやっただけで、こんな……」
「君の働きは聞いている。あの状況で危険な魔物を一手に引き受けてくれたおかげで、死者は最小限に抑えられたんだ。民は国の財産だ。君がいなければその大切な財産をどれほど失っていたか」
「ええ、王配殿下の仰る通りです。あの加勢してくれたドラゴンにフェンリル。彼らはジェフリー殿がいたからこそ協力してくれた。この国はジェフリー殿のお陰で生き残れたんです」
王配殿下にアルのすぐ下の弟、サミュエル殿下にまでそう言われ、周りの文官の人達もうんうんと首を縦に振っている。
「でもアルが…いえ、王太子殿下が張られた結界のお陰です。僕はあの結界が無ければ早々に命を落としていました」
「その結界もジェフリーが教えてくれたからでしょう? 君がいなければ妖精が結界を張ってくれることなんて知らなかった。あれは本当に奇跡だとしか思えない。
そんな奇跡を起こした君が残した功績は、とてつもないほど大きいんだよ」
「アル……ありがとう。だけどあの結界はアルがいたから出来た事なんだ。妖精にとても好かれるアルだから、気まぐれな妖精が自分たちから力を貸したんだよ。妖精が視える僕でも、あの結界を張ってもらう事は流石に出来なかったと思う」
簡単な祈りを込めて貰う事は出来ても、あんな大掛かりな結界を張ってもらうなんて僕がお願いしてもしてくれなかっただろう。
妖精は気まぐれで本当に気に入った人にしか力を貸すことはない。妖精の基準は好きか嫌いかで、好きでもどれくらい好きなのか、だから。
僕は妖精に好かれている自覚はある。だけど妖精がアルに向ける気持ちには敵わない。
「じゃあ、ジェフリー君とアルフレッドが協力して奇跡を起こしたってことだよな」
「陛下……」
僕とアルが協力して奇跡を起こした……。そういう事になる、のかな。
「ジェフリー君。君はこの国にとっての英雄だ。そして神獣を従え、ドラゴンを呼ぶ君は英雄という言葉には収まらない。
君をこの国では『神の御使い』という事にするよ」
「え…っ!? 神の御使い!?」
ちょ…『英雄』でさえ凄い事なのに、『神の御使い』だなんて行き過ぎてませんか!?
「『神の愛し子』の子供である王太子と『神の御使い』が共に手を取り奇跡を起こした。そしてその目撃者も多数いる。これで誰にも文句は言わせない」
陛下がアルと共にすっと前に出てきた。
「ジェフリー君。君をアルフレッドの婚約者として迎えたい。応えてくれるか?」
「………え?」
なんて…? 婚約者? アルの、婚約者に迎えたい。そう、言ったよね?
「ジェフリー。君が起こした奇跡は誰にも超えることは出来ない。そんな人を私の婚約者として迎えられるなら、きっと国中が祝福してくれるだろう。
私は君と婚約するために、今まで送られてきた打診は全て断って来た。でも理由をはっきり言う事は出来ず、ずっと濁してきたんだ。でもそれも終わりだ。大好きだよ、ジェフリー。愛してる。君を。君自身を。
だから――私と婚約してほしい」
「アル………」
どうしよう。嬉しい。嬉しすぎて涙が止まらない。
初めてアルに会ったあの時に誓った『アルの隣に立てる男になる』っていう目標を達成することが出来たんだ。
『アルに認めて貰える人間になろう』っていう夢を叶えることが出来たんだ。
「アルぅ……お願い、しますっ……うぅっ…ひっく…」
「ジェフリー! 私の可愛い人。これからもどうぞよろしくね」
そのまま僕たちは強く強く抱きしめ合って、僕はひたすら涙を零した。
周りから温かい拍手が送られる。アルの温もりと、周りからの祝福と。幸せな時間を僕は貰った。
「さて。俺はライリーさんとヴィンセントさんに、ジェフリー君の婚約の件を伝える準備をしないとな」
「ヴォル、その事なら既に用意はしてありますよ」
「お。さっすがディルク! 仕事が出来る王配で俺は鼻が高いよ」
「陛下、王配殿下。ありがとうございます。僕は今後アルと共に、この国を更に大きくしていけるよう、幸せな国に出来るよう邁進して参ります」
アルと手を取り合って陛下達に頭を下げた。
「ジェフリー殿。いえ、お義兄様。僕たちもいますから。これからよろしくお願いいたします」
アルの弟王子たちもにこやかにそう言ってくれる。僕に弟が一気に3人増えた。凄い。家族が増えた。嬉しい。
「やっとこう呼べますね。お義母様、お義父様」
「はは。懐かしいな。一番初めにそう言われたときは『まだ認めていないぞ!』なんて言ってたのに」
「そうでしたね。あの時はあまりの事に驚きましたからね」
「それ、私がまだ赤子の時の話でしょう? ねぇジェフリー。その時の話、ちゃんと聞かせて」
「うん、いいよ。僕が暴走した時の話、聞かせてあげる。ちょっと恥ずかしいんだけどね」
「え、僕たちも聞きたいです! 兄上、いいですよね?」
「うん。皆で一緒に話をしよう。新しい家族になるジェフリーと一緒に」
それから今までの忙しさや戦いの疲れを癒すように、柔らかくて暖かい時間を皆で過ごした。
隣にはアルがいて、笑ってくれて、そしてそのアルの隣に僕がいられることを認めて貰えて。
ああ、本当にあのスタンピードで戦ってた時は凄く辛かったけど、こんなに嬉しい結果がもたらされるなんて。
僕が今までしてきたことが認められて、夢が叶って。頑張ってきて良かったなって。諦めなくて良かったなって。
僕にこの『魔眼』があって本当に良かった。世界が混乱に陥る合図だって言われて、この金色の目が魔物みたいだって言われても。
この『金の双眸』があったから今の僕がある。今の結果がある。
これでゴールなんかじゃない。これからも僕はアルの為に努力を怠ることはしないよ。
君がずっと笑っていてくれるように。君がずっと幸せであるように。
その隣にずっと、僕をいさせてね。
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