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コンラートside
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「この私が……2位!? 1位は、ベティーナ・アルタマン……?」
学院へ入学して初めての試験。私はまさかの2位という、信じられないことを経験した。
私を抜き1位を取ったベティーナ・アルタマン。確か彼女は男爵家の令嬢で、身なりが良いとは言えない地味な令嬢。私と同じクラスだから成績が良いのは間違いないが、まさか私を追い抜く存在が、ましてやそれが女性だったとは……。
この出来事で関わるようになった彼女が、後の私の妻になる人だとその時は夢にも思わなかった。
非常に頭の切れる宰相である父を持つ私は、その血の影響か器用で幼い時から割と何でも出来る方だった。
勉学はもちろん、ピアノ、乗馬、剣術など、やればすぐにある程度は出来るようになった。
我が家は文官の家系だ。兄も非常に優秀だが、それは勉学においての話だ。私のようにあれもこれもなんでも出来るという訳ではなかった。
それで当時から調子に乗っていたんだろうと、今ならばわかる。
幼い時に王宮で開かれた茶会に参加した時の事だ。茶会とはいうがその実、第二王子の側近候補として歳の近い子息を集めての面接だ。幅広く集まった令息は男爵家から公爵家まで集められ、それぞれ数人ずつのテーブルに別れて座ることになった。
そして第二王子であるテオドール殿下がそれぞれのテーブルへ回り会話をされる。そしてその中である程度ふるいにかけられ、後に選ばれたものが茶会へと呼ばれ、最終的に5人ほど側近候補として絞られる。
その茶会で私が座ったテーブルは6人の令息で固められた。1人1人顔を伺えば緊張しているのか、顔色はあまりよくない様だった。
王宮など初めて訪れただろうから緊張するのもわからなくもない。だが、これくらいの事でそこまで緊張してるようでは側近候補として認められないだろうな、と私は1人冷めた目で見ていた。
言葉数は少ないが、それぞれが自己紹介などを交え会話をし始める。
「緊張していて…」
「僕もです…良かった」
などお互いの傷をなめ合うような会話で、私は正直情けないと思っていた。私も声を掛けれれば返答する。だが自ら話しかけるという事はしなかった。ここで会話をしたところで実になることなどないと思っていた。
こんな令息たちばかりならば、側近候補として私が選ばれるのは間違いないだろう。私の方がずっと優秀なのは目に見えている。
やがてテオドール殿下がお見えになる。皆緊張した面持ちで自己紹介をした。
「ブランディス侯爵家次男のコンラート・ブランディスと申します。本日はお招きいただき、また殿下に拝謁出来ましたこと恐悦至極に存じます」
「ブランディス侯爵家、といえば、君の父君は現宰相だったね。君が宰相の次男か。よろしく」
殿下は緊張してたどたどしくでしか挨拶の出来ない令息でも優しく微笑み、挨拶を交わしている。そして一人一人名前を聞き、その家の領地であれば特産品を、私のように父が王宮に勤めていたりすればそのことを、それぞれに一言付けたし応えていた。
この茶会で殿下とお会いしたのは10歳だ。その時既に殿下の頭の中は、茶会に招かれた令息の背景を頭に叩き込んでいたのだ。
この人ならば、側近として将来仕えてもいい。
当時の私は生意気にもそんなことを思っていた。
殿下とは短い時間だったが言葉を交わし、ほどなくして茶会はお開きとなった。そして後日、私の家に王宮からの茶会の招待状が届く。
「まぁ当たり前でしょうね。あの席にいた令息と私を比べれば」
「コンラート。確かに貴方は優秀だけど、そのままだといつかは痛い目に遭うわよ」
「母上。それは私以上の人がいれば、ですよね。もしそうならば早くそんな人に出会いたいものですよ」
「はぁ…そういうことじゃないのよ、全く。私は忠告したわよ」
母上はこうやって私にその傲慢な態度を改めるようにと戒める。だが、私以上の、私が認める人など先日お会いした殿下ぐらいだった。愚かな私は母上の忠告の意味を正しく理解していなかったのだ。
「やあコンラート。今日も来てくれて嬉しいよ」
「ご機嫌麗しゅう、殿下」
前回の茶会から三分の一ほどに減った令息たち。今回は2つのテーブルに別れて集まることになった。その分殿下との会話は以前よりも長く取られた。
「以前も思っていたけど君はとても優秀なんだね」
「とんでもございません。殿下の足元にも及びません」
本心ではそんなことを思ってもいないが、相手は王族。失礼があってはいけない。へりくだり、嘘を付くのは当たり前だ。
今回も特に何も起こらず殿下との時間は終わった。殿下が席を立ち、もう一つのテーブルへと移られる際私の側へと来られ耳元で囁いた。
「君はとても優秀だけど、とても高慢なところが目立つね。そんな君が苦汁を嘗める姿を見てみたいよ」
私の肩をぽんぽんと叩き、他のテーブルへと移られた殿下。
私はその言葉を言われてどきりとした。自分が殿下にそのように映っていたとは。
もしかして、まさかこの私が側近候補から外れるのでは……。他の誰よりも優秀だという自覚があるのに。
初めて私はそんな不安に襲われることになる。
だが杞憂なことにその不安は現実になることはなかった。後日、正式に側近候補として取り立てると王宮からの知らせが届く。
それからの私は時々王宮へと赴き、殿下と時間を過ごすことになった。
「コンラート。これからよろしくね。君がどう変わっていくのかとても楽しみだよ」
「……殿下。よろしくお願いいたします」
顔は笑っているが腹の中では何を考えているのかわからない。幼くとも王族。その辺りの教育は、一貴族とは違いしっかりとなされているようだった。
それからは、あの茶会のようなことを言われることはなかった。私はまだ、そのままで変わることはなかった。
学院へ入学して初めての試験。私はまさかの2位という、信じられないことを経験した。
私を抜き1位を取ったベティーナ・アルタマン。確か彼女は男爵家の令嬢で、身なりが良いとは言えない地味な令嬢。私と同じクラスだから成績が良いのは間違いないが、まさか私を追い抜く存在が、ましてやそれが女性だったとは……。
この出来事で関わるようになった彼女が、後の私の妻になる人だとその時は夢にも思わなかった。
非常に頭の切れる宰相である父を持つ私は、その血の影響か器用で幼い時から割と何でも出来る方だった。
勉学はもちろん、ピアノ、乗馬、剣術など、やればすぐにある程度は出来るようになった。
我が家は文官の家系だ。兄も非常に優秀だが、それは勉学においての話だ。私のようにあれもこれもなんでも出来るという訳ではなかった。
それで当時から調子に乗っていたんだろうと、今ならばわかる。
幼い時に王宮で開かれた茶会に参加した時の事だ。茶会とはいうがその実、第二王子の側近候補として歳の近い子息を集めての面接だ。幅広く集まった令息は男爵家から公爵家まで集められ、それぞれ数人ずつのテーブルに別れて座ることになった。
そして第二王子であるテオドール殿下がそれぞれのテーブルへ回り会話をされる。そしてその中である程度ふるいにかけられ、後に選ばれたものが茶会へと呼ばれ、最終的に5人ほど側近候補として絞られる。
その茶会で私が座ったテーブルは6人の令息で固められた。1人1人顔を伺えば緊張しているのか、顔色はあまりよくない様だった。
王宮など初めて訪れただろうから緊張するのもわからなくもない。だが、これくらいの事でそこまで緊張してるようでは側近候補として認められないだろうな、と私は1人冷めた目で見ていた。
言葉数は少ないが、それぞれが自己紹介などを交え会話をし始める。
「緊張していて…」
「僕もです…良かった」
などお互いの傷をなめ合うような会話で、私は正直情けないと思っていた。私も声を掛けれれば返答する。だが自ら話しかけるという事はしなかった。ここで会話をしたところで実になることなどないと思っていた。
こんな令息たちばかりならば、側近候補として私が選ばれるのは間違いないだろう。私の方がずっと優秀なのは目に見えている。
やがてテオドール殿下がお見えになる。皆緊張した面持ちで自己紹介をした。
「ブランディス侯爵家次男のコンラート・ブランディスと申します。本日はお招きいただき、また殿下に拝謁出来ましたこと恐悦至極に存じます」
「ブランディス侯爵家、といえば、君の父君は現宰相だったね。君が宰相の次男か。よろしく」
殿下は緊張してたどたどしくでしか挨拶の出来ない令息でも優しく微笑み、挨拶を交わしている。そして一人一人名前を聞き、その家の領地であれば特産品を、私のように父が王宮に勤めていたりすればそのことを、それぞれに一言付けたし応えていた。
この茶会で殿下とお会いしたのは10歳だ。その時既に殿下の頭の中は、茶会に招かれた令息の背景を頭に叩き込んでいたのだ。
この人ならば、側近として将来仕えてもいい。
当時の私は生意気にもそんなことを思っていた。
殿下とは短い時間だったが言葉を交わし、ほどなくして茶会はお開きとなった。そして後日、私の家に王宮からの茶会の招待状が届く。
「まぁ当たり前でしょうね。あの席にいた令息と私を比べれば」
「コンラート。確かに貴方は優秀だけど、そのままだといつかは痛い目に遭うわよ」
「母上。それは私以上の人がいれば、ですよね。もしそうならば早くそんな人に出会いたいものですよ」
「はぁ…そういうことじゃないのよ、全く。私は忠告したわよ」
母上はこうやって私にその傲慢な態度を改めるようにと戒める。だが、私以上の、私が認める人など先日お会いした殿下ぐらいだった。愚かな私は母上の忠告の意味を正しく理解していなかったのだ。
「やあコンラート。今日も来てくれて嬉しいよ」
「ご機嫌麗しゅう、殿下」
前回の茶会から三分の一ほどに減った令息たち。今回は2つのテーブルに別れて集まることになった。その分殿下との会話は以前よりも長く取られた。
「以前も思っていたけど君はとても優秀なんだね」
「とんでもございません。殿下の足元にも及びません」
本心ではそんなことを思ってもいないが、相手は王族。失礼があってはいけない。へりくだり、嘘を付くのは当たり前だ。
今回も特に何も起こらず殿下との時間は終わった。殿下が席を立ち、もう一つのテーブルへと移られる際私の側へと来られ耳元で囁いた。
「君はとても優秀だけど、とても高慢なところが目立つね。そんな君が苦汁を嘗める姿を見てみたいよ」
私の肩をぽんぽんと叩き、他のテーブルへと移られた殿下。
私はその言葉を言われてどきりとした。自分が殿下にそのように映っていたとは。
もしかして、まさかこの私が側近候補から外れるのでは……。他の誰よりも優秀だという自覚があるのに。
初めて私はそんな不安に襲われることになる。
だが杞憂なことにその不安は現実になることはなかった。後日、正式に側近候補として取り立てると王宮からの知らせが届く。
それからの私は時々王宮へと赴き、殿下と時間を過ごすことになった。
「コンラート。これからよろしくね。君がどう変わっていくのかとても楽しみだよ」
「……殿下。よろしくお願いいたします」
顔は笑っているが腹の中では何を考えているのかわからない。幼くとも王族。その辺りの教育は、一貴族とは違いしっかりとなされているようだった。
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