【完結】僕は『番狂い』の竜人

華抹茶

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6. 僕は生き返ってしまった…

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「カミーユっ……!」
「……あれ? ディオン……?」
 
 あれれ? ディオンがこんなに近くにいる。それに僕の名前を呼んでくれた。しかもぽろぽろ涙を流してる。

「ディオン? どうしたの? どこか痛いの? 苦しいの?」
「ち、違うっ……安心、してっ……」
「んん?」

 何がどうなってるんだろう? なんだかよくわからなかったのだけど、すぐ側に父様の姿を見つける。父様までここにいるなんて一体……って、あ! 思い出した! 僕、ディオンに竜玉を渡すことにしたんだった!
 あれ? でも僕生きてる。え? あれ? なんで僕生きてるの?

「父様……? 僕、生きてるんだけどなんで?」
「ディオンが竜玉の受け取りを拒否したからだ」
「え? 嘘っ!? ディオン!? なんで!? なんで受け取ってくれなかったの!?」
「う、受け取れるわけっ……ないだろっ……」
「あ、あ、あっ! ごめん、ごめんね! 泣かないで! ってもしかして父様が泣かせたの!? 父様のせいなの!? だから竜玉受け取らなかったの!? ちょっと父様! いくら父様だからってディオンを泣かせるなんて容赦しないからね!」

 一気に怒りが湧いた僕は、寝台から勢いよく飛び起きると魔力を解放させた。ブォンッ! と魔力の渦が巻き起こり、僕の寝室はめちゃくちゃに荒れた。ガシャンガシャン! と物が壊れる音が響いているけどそんなことどうでもいい。大切なディオンの周りには結界を張っているし、彼さえ無事ならどうでもいいのだから。
 
「落ち着け。お前が私に敵うと思っているのか」
「くっ……」

 父様が腕を一振りすると僕の解放した魔力をあっという間に鎮めてしまう。まだ未熟な僕は父様に敵わない。こんなあっさり封じられるなんて悔しい。それにディオンを泣かせた父様に何も出来ないのがもっと悔しい!

 父様に抑え込まれた魔力を介抱しようと更に力を込めていく。ぐぐぐっと内側から外に向かってとにかく放出することだけを考える。すると少しずつ父様の力を押し返し始めた。いける!
 ディオンを泣かせたこと、後悔させてやる! その体を引きちぎって骨も残さず食べてやるんだ……ツガイヲ、キズツケタコト、ユルサナイッ……!

「馬鹿者。そのままだと人に戻れなくなるぞ」
「ぎゃん!」

 父様に魔力を込めたこぶしで頭を叩かれた。その一瞬で僕が必死に解放させようとした魔力は瞬く間に消えてしまう。う~……父様が強すぎるっ……!

「自分の顔を触ってみろ」

 父様にそう言われて自分の頬に手を当てた。するといつもはないざらざらとしたものを感じる。これは、鱗……?

「竜の力を無理やり解放しようとして、竜化仕掛けていたぞ。そうなればお前は人に戻ることは出来ん。ディオンと番になることも出来なくなるが、それでいいのか?」
「よくない! やだ! ディオンと番になりたい!」

 竜化するつもりはなかったけど、もし止められず竜になってしまったらディオンとは永遠に番になれない。それだけは絶対に嫌だ! でもディオンを泣かせた父様に仕返し出来ないのも嫌! 悔しい悔しい悔しい! 僕にもっと力があればやり返せるのに!

「それとディオンを泣かせたのは私ではない。こいつが勝手に泣いたのだ」
「え? ディオン本当? 何が嫌だったの? もしかして病気が苦しいの?」
「違うっ……そうじゃ、ない」

 はっきりと理由を言ってくれないディオン。涙を流すなんてよっぽど苦しい何かがあったはずなのに。やっぱり僕にはそれを教えてもらうことは出来ないのかな。番なのに……悔しい。ディオンを守れないのが本当に悔しい。

「とりあえず私の仕事は終了だ。後は二人でよく話し合え」
「え……ちょ、父様!」

 父様は言うだけ言うとさっさと部屋を出て行ってしまった。残されたのは僕とディオンだけ。二人きりになれるなんて嬉しいことなのに、ディオンに何て声をかけていいのか迷ってしまう。

「……今までごめん」

 先に沈黙を破ったのはディオンだった。流れる涙を拭き取ると僕の目をしっかりと見てくれた。そして真剣な顔で謝ってくれたのだけど、僕には何を謝られているのかわからず首を傾げる。

「その……今までずっとお前には酷いことを言って避けてた。なのにこんな俺に命とも呼べる竜玉を渡そうとしてくれて、ありがとう」
「そんなの当たり前じゃん! ディオンは番だもの! 番を助けるのは当たり前でそのためなら僕の命くらいあげるよ!」

 ディオンに酷いことを言われたとか避けられたとか、別にそれは気にしていない。どんなディオンでも可愛いし大好きだもの。でもディオンは竜玉を受け取ってくれなかった。どうして。このままだと君は死んでしまうのに……僕にとってはそっちの方が嫌だ。

 そんな僕の気持ちを悟ったのか、ディオンはふぅ、と息を吐きだすと、今までのことをぽつりぽつりと話してくれた。
 その話は僕にとって衝撃だった。母親から虐待を受けていたとか全然知らなかったから。その辛さを女の子を相手にすることで晴らしていたとか。でも全然気持ちはすっきりしなくてずっと苦しかったとか。ディオンがずっと辛い思いを抱えていたなんて、僕は全然気付けなかった。番失格だ……

「だからカミーユのまっすぐな気持ちを受け取るのが怖かったんだ。今までこんな酷いことをしていた俺が、カミーユの竜玉を受け取る資格はない。だからカミーユに竜玉を戻してもらった」
「なんで? ディオンは全然悪いことしていないじゃないか」
「え……? いや、だって、散々女を好き勝手に抱いて捨てたんだぞ? お前にも散々酷いことを言ったんだぞ?」
「ん? それのどこが酷いことなの?」
「え……?」

 ディオンはぽかんとした顔で僕を見つめる。「俺の話聞いてたか?」って言われたから「もちろん」って答えた。ディオンが僕に話してくれてるのに聞かないなんてあるわけないじゃないか。どんな話だってディオンの話ならなんでも喜んで聞く。
 そう言ってもディオンは首を傾げたまんまで全然理解出来ないって顔してる。そんな困った顔のディオンも可愛くて胸がときめいちゃう♡

「女の子たちはディオンに抱いて欲しいって言ってたんでしょ? ディオンはその望みを叶えただけじゃないか。別に恋人になるとか番になるとか約束したわけでもないし。しかもそれでいいって女の子も言ってたんでしょ? じゃあ何も悪いことなんてないよね?」
「……そう、なのか? いや、違うと、思うんだが……」
「それに僕に酷いことを言った? 嫌われてるのはわかってたけど、ディオンだったら何を言われても何をされても別にいいもの。ディオンが僕に意識を向けてくれているだけですっごく嬉しいんだから!」
「……カミーユの父親が言っていたことはこういうことか」
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