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僕は今日も祈りを捧げる
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繋いだ手に痛いくらい力が加わっている。ダラスは必死で怒りを抑えて言葉で伝えようとしている。ごめんね、こんなややこしくてめんどくさいことになってるのは僕が原因なのに。
「なんで……? なんでなんでなんでなんで!? 周りの皆もキアン様の事をそう思ってます! だってそうでしょう!? こんなつまらない人間がダラス様の隣にいるなんて僕は許せません! こんなのおかしい! 間違ってる! 間違ってるんだ! 存在が間違ったお前なんて、消えてしまえーー!!」
ブラント君の体から一気に魔力が迸りうねりだした。突風が吹き荒れ、物も人も吹き飛ばされ食堂内はめちゃくちゃだ。魔力量の多い彼の暴走は周りに大きな被害を生んでいく。まずい、手遅れになる前に何とかしなければ。
だけど膨れ上がったブラント君の魔力は一つに纏まると、僕を目掛けて一直線に向かってきた。魔導師としての素質がある彼の力は凄まじい。このまま喰らってしまえば怪我を負っただけではすまないだろう。
「キアンっ!」
「え……」
僕に向かってくる魔力の塊を止めなきゃと思ったその直後、ダラスに正面から抱き込まれる。まずい、このままだとダラスに当たってしまう!
すぐさま僕たち二人に防御結界を張り巡らせた。ドンッ! という大きな音が響き渡るが防御結界のお陰で衝撃はない。
「ダラス…ありがとう。もう大丈夫だよ」
「……キアン。無事でよかった」
そっとダラスの顔を伺えば安堵の表情を浮かべていた。ダラスだってあれくらいの攻撃なら簡単に防げるだろうに、僕が襲われたと思ってかなり焦ったみたいだ。防御結界が間に合って本当に良かった。
「な…んで。なんでなんでなんで! なんであんたがアレを止められるんだよ!? なんで死んでないの! 何で生きてるんだよ!!」
「ブラント君。流石に今回の事は看過できない。君はやってはいけないことをやってしまったんだ」
感情が抑えられなくて暴走してしまっただけ、というならば僕も事を大きくするつもりはなかった。だけどはっきりと殺意を持って攻撃したことが明らかとなった以上、このままにしておくことは出来ない。
「うるさいうるさいうるさい! お前みたいな奴がダラス様の恋人だなんて間違ってるんだよ! おかしいんだ! 皆そう思ってるんだよ! お前だってわかってるだろ!」
「…そうだね。今の僕がこんな姿だから皆そう思うんでしょう? じゃあこの姿じゃなかったら君も、皆も認めてくれるんだよね」
「キアンっ……」
ダラスは僕がやろうとしていることに気が付いて止めようとするけど、僕もここまでされて大人しくしているわけにはいかない。一つ間違ってしまえば、ダラスが死んだかもしれないんだ。
そっと左手首に嵌めたお守りのブレスレットに触れる。留め具に魔力を通せばかしゃりと音を立ててそれは外れる。ブレスレットが外れたその瞬間、僕の髪はこげ茶のもっさりとした髪型から、薄い水色の艶やかな髪に変わり背中の中ほどまでの長さになった。瞳はよくアクアマリンのようだと言われるし、日焼けしても白いままの肌に、ほんのり色づいた唇。僕の姿を見た人は揃って僕の容姿を褒め称えてくれる。
抑えていた魔力もふわりと溢れ、きらきらとした光が僕を包み込む。その光はやがて落ち着き、僕の中へと収まっていった。
「嘘……神子様…!?」
この国は水神ティアートの加護を受けた国で、この世界の国は色々な神の加護を受けている。そして僕は国教であるティアート教、ティアート神の神子。
神子とは神の神託を受けることのできる、その国でただ一人の存在。必ず国民の誰かにその特徴が現れる。その特徴とは、この国では清流を思わせる髪色と瞳の色。今代は僕にその特徴が現れた。
「ブラント君、今回の事は枢機卿に一部始終話さなければならない。きっと厳しい沙汰が下りると思うけど、自業自得だと思って諦めてね」
「………はい。申し訳、ございませんでした」
がっくりと力なく崩れ落ちたブラント君。枢機卿の息子だからこそ、自分のしでかしたことの大きさがより身に染みて理解しているのだろう。
「そんな……キアン様が神子様……ルキアン様だったなんて」
僕の姿が変わったことで、周りの動揺はかなり大きいみたいだ。
本来なら僕はこの学園に通う事はなかった。神子としての務めを果たすことが与えられた役割であり、最優先事項だからだ。だけど僕は大好きなダラスと共にこの学園にどうしても通いたかった。だけどこのままこの姿で通えば学園に要らぬ混乱を招くことになる。
だから姿と魔力量を抑えるブレスレットを身に着けて姿を偽り、ルキアン・イステール公爵子息からキアン・マーティン子爵子息と名前も身分も変えた。親戚に子爵家の人がいたからそこの息子、という形をとったんだ。お陰で誰も『キアン』が『神子のルキアン』だとは思わなかった。
ブラント君の父親である枢機卿にも協力してもらって、今回の僕の我儘を叶えて貰っていた。だからブラント君があれほどしつこくダラスに迫って来ていても、ある程度は許していたんだ。僕の我儘を叶えるために、枢機卿の手を借りていることをダラスも知っていたから。
「なんで……? なんでなんでなんでなんで!? 周りの皆もキアン様の事をそう思ってます! だってそうでしょう!? こんなつまらない人間がダラス様の隣にいるなんて僕は許せません! こんなのおかしい! 間違ってる! 間違ってるんだ! 存在が間違ったお前なんて、消えてしまえーー!!」
ブラント君の体から一気に魔力が迸りうねりだした。突風が吹き荒れ、物も人も吹き飛ばされ食堂内はめちゃくちゃだ。魔力量の多い彼の暴走は周りに大きな被害を生んでいく。まずい、手遅れになる前に何とかしなければ。
だけど膨れ上がったブラント君の魔力は一つに纏まると、僕を目掛けて一直線に向かってきた。魔導師としての素質がある彼の力は凄まじい。このまま喰らってしまえば怪我を負っただけではすまないだろう。
「キアンっ!」
「え……」
僕に向かってくる魔力の塊を止めなきゃと思ったその直後、ダラスに正面から抱き込まれる。まずい、このままだとダラスに当たってしまう!
すぐさま僕たち二人に防御結界を張り巡らせた。ドンッ! という大きな音が響き渡るが防御結界のお陰で衝撃はない。
「ダラス…ありがとう。もう大丈夫だよ」
「……キアン。無事でよかった」
そっとダラスの顔を伺えば安堵の表情を浮かべていた。ダラスだってあれくらいの攻撃なら簡単に防げるだろうに、僕が襲われたと思ってかなり焦ったみたいだ。防御結界が間に合って本当に良かった。
「な…んで。なんでなんでなんで! なんであんたがアレを止められるんだよ!? なんで死んでないの! 何で生きてるんだよ!!」
「ブラント君。流石に今回の事は看過できない。君はやってはいけないことをやってしまったんだ」
感情が抑えられなくて暴走してしまっただけ、というならば僕も事を大きくするつもりはなかった。だけどはっきりと殺意を持って攻撃したことが明らかとなった以上、このままにしておくことは出来ない。
「うるさいうるさいうるさい! お前みたいな奴がダラス様の恋人だなんて間違ってるんだよ! おかしいんだ! 皆そう思ってるんだよ! お前だってわかってるだろ!」
「…そうだね。今の僕がこんな姿だから皆そう思うんでしょう? じゃあこの姿じゃなかったら君も、皆も認めてくれるんだよね」
「キアンっ……」
ダラスは僕がやろうとしていることに気が付いて止めようとするけど、僕もここまでされて大人しくしているわけにはいかない。一つ間違ってしまえば、ダラスが死んだかもしれないんだ。
そっと左手首に嵌めたお守りのブレスレットに触れる。留め具に魔力を通せばかしゃりと音を立ててそれは外れる。ブレスレットが外れたその瞬間、僕の髪はこげ茶のもっさりとした髪型から、薄い水色の艶やかな髪に変わり背中の中ほどまでの長さになった。瞳はよくアクアマリンのようだと言われるし、日焼けしても白いままの肌に、ほんのり色づいた唇。僕の姿を見た人は揃って僕の容姿を褒め称えてくれる。
抑えていた魔力もふわりと溢れ、きらきらとした光が僕を包み込む。その光はやがて落ち着き、僕の中へと収まっていった。
「嘘……神子様…!?」
この国は水神ティアートの加護を受けた国で、この世界の国は色々な神の加護を受けている。そして僕は国教であるティアート教、ティアート神の神子。
神子とは神の神託を受けることのできる、その国でただ一人の存在。必ず国民の誰かにその特徴が現れる。その特徴とは、この国では清流を思わせる髪色と瞳の色。今代は僕にその特徴が現れた。
「ブラント君、今回の事は枢機卿に一部始終話さなければならない。きっと厳しい沙汰が下りると思うけど、自業自得だと思って諦めてね」
「………はい。申し訳、ございませんでした」
がっくりと力なく崩れ落ちたブラント君。枢機卿の息子だからこそ、自分のしでかしたことの大きさがより身に染みて理解しているのだろう。
「そんな……キアン様が神子様……ルキアン様だったなんて」
僕の姿が変わったことで、周りの動揺はかなり大きいみたいだ。
本来なら僕はこの学園に通う事はなかった。神子としての務めを果たすことが与えられた役割であり、最優先事項だからだ。だけど僕は大好きなダラスと共にこの学園にどうしても通いたかった。だけどこのままこの姿で通えば学園に要らぬ混乱を招くことになる。
だから姿と魔力量を抑えるブレスレットを身に着けて姿を偽り、ルキアン・イステール公爵子息からキアン・マーティン子爵子息と名前も身分も変えた。親戚に子爵家の人がいたからそこの息子、という形をとったんだ。お陰で誰も『キアン』が『神子のルキアン』だとは思わなかった。
ブラント君の父親である枢機卿にも協力してもらって、今回の僕の我儘を叶えて貰っていた。だからブラント君があれほどしつこくダラスに迫って来ていても、ある程度は許していたんだ。僕の我儘を叶えるために、枢機卿の手を借りていることをダラスも知っていたから。
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