人間不信の黒鷹王子は捨てられ令嬢に手懐けられる

poi

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11 絶対に味方です

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 (コリンヌside)


 ある日の晩、眠れずにいると窓をコツコツと叩く音が聞こえる。窓を覗くと、綺麗な黒い鷹がバルコニーの柵に佇んでいた。

 「こんばんは、小さなお客様ね?」
 『お前がコリンヌか?アルベルティーヌののことを聞きたいのだが』

 ──お姉さまのことを?この鷹さん話せるのね……どんな魔法を使っているのかしら?


 「お姉さまのことね、分かった。窓を開けていると誰かに聞かれてしまうかもしれないから中に入って」
 『驚かないんだな』
 「驚いたわよ。どんな魔法で話しているのかはとっても気になる」


 ────


 「それで?黒鷹さんはどなたの命令でこちらに来たの?どこまでお姉さまのことをご存知なのかしら?」
 『お前はアルベルティーヌを慕っていると聞いてここに来た。お前はアルベルティーヌの敵か?味方か?』

 ──誰も知らないようなことを……誰に聞いたのかしら?

 「私は絶対にお姉さまの味方よ。お姉さまのことは大好き。本当よ。訳あって今はお姉さまに別邸にいていただいているの。あなたが何者か分からないけれど、微妙な立場のお姉さまに余計なことだけはして欲しくないのよ。あなたは何の目的でお姉さまのことを聞くのかしら?」

 『……そうか。味方なら協力してもらいたい、だが色々と機密の関係でな……他言しないという誓約魔法をかけてもいいか?』

 「いいわよ。誰にも言わない。お姉さまのために動いていらっしゃるのでしょう?出来ることなら協力する」



 『まず、信じてもらえるかは分からないが、俺の名前はクロヴィス・ヴァン・フォートリエ。今はマニエ家の別邸に居候している』

 ──クロヴィス……って、第二王子殿下じゃない!?他国に留学中とか、研究機関にいらっしゃると噂の?何故?

 「第二王子殿下が何故姉のことを?その姿はもしかして魔法ですか?」

 『俺とアルベルティーヌはいわゆる幼なじみだ。俺の母と伯爵夫人が親友でな。そして、別邸に居候しているのは、仕事に行った帰りに負傷した俺の手当をしてくれたのが、たまたまアルベルティーヌだったんだ。ちなみに、この姿は魔法だ。仕事の都合で鷹になっている』


 ──なるほど……この二人は運命の存在なのね。お姉さまにそんな人がいてくれて良かったわ。

 「そうなのですね。お姉さまは邸でお元気にお過ごしですか?心配はしているのですが、こちらから見に行けないのです。父にお姉さまのことを思い出させたくはないのです。お姉さまには申し訳ないのですが、父に忘れられて別邸にいていただくことが現状一番なのです」

 『どういうことだ?デボラが追い出したんじゃなかったのか?』


 ──母の演技を伝えるべき?でもきっとこの方は本当にお姉さまを思ってくれているわ……

 「お母様が追い出しました。心の病になったので別邸で監禁するという理由をつけて。正確には、父によって殺されないように別邸に匿ったのです。ですので、私たちが下手に動くと姉は父にまた狙われるのです」

 『デボラが虐めていたのではないのか?侍女も外され、拘束されてご飯をロクに与えられなかったはずでは……?』

 「お母様はお姉さまのことを考えて、悪役に徹していたのです。虐めたくて虐めていたのではなく、可哀想ですが姉を本当に怯えさせ、父の目を完全に欺くことが目的でした。侍女は父に買収されていたので解雇したそうです。そのために母が雇った侍女にご飯を持っていかせていたのです。使用人が食べる分なので、質素な食事だったみたいですが……」


 ──父は次男というだけで跡継ぎになれないことに不満を抱いていた。
 兄のローランが亡くなると、喜んで後見人になったが、次期領主のアルベルティーヌが邪魔だった。
 父は姉の持つ形見の指輪を欲していた。それは歴代の領主に伝わる秘伝の薬の製法や財産などが保管されている、地下の保管庫の鍵らしい。
 指輪は魔力で持ち主が認定されるので、持ち主以外には扱えない。

 殺すか、領地が継げる20歳になるまで待ち脅すか。

 そんな父を母は止められなかった。せめて、と父に殺されたり、あるいは洗脳されないよう姉を別邸に匿った。
 父には忘れやすくなる薬を少しずつ盛った。さすがに殺人は躊躇われたが、このまま姉のことを忘れていて欲しかった。


 「あなたがお姉さまのために動いているということは、他の方にはどうか内密にお願いします。お姉さまは狙われているのです。私の父や誰か姉に戻られては困る貴族から」

 
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