14 / 33
14 そんな顔はそんな顔だよ
しおりを挟む
(エリクSide)
「──エリク、お前ニヤニヤしすぎだろ……」
馬車の向かいには完全に拗ねている親友の姿。いじりすぎたか。
うん、やっぱり人間に戻っても鷹みたいな顔つきなんだよな。黒髪で、眼光鋭い金の瞳。コワモテクール系イケメン、ってやつだな。
背もすっかり高くなったし、なんていうかすっかり大人になったな~って、お兄さんちょっと感激しているよ。
「だってお前完全にアルベルティーヌ嬢のペットなんだもん。人間不信の王子様がすっかり手懐けられちゃって……裸にリボンで、ねぇ?」
「……うるさい」
全裸に首に結ばれた緑のリボン……という変態な格好で座り込むクロヴィスに気付いた俺は、悲鳴を上げるのを何とか堪えて、急いで市で服を一通り揃えた。
クロヴィスが人間に戻ったことは嬉しかったが、その異様な光景に笑いを抑えることが出来なかった。
王宮に戻る馬車の中で一通り経緯を聞いたが、親友はなかなか濃厚な一ヶ月を過ごしたようだった。
まさか、初恋相手にまた拾われるとはねえ。まさにこういうのを『運命』って呼ぶのかねえ……
「──で、どーすんの?アルベルティーヌ嬢とマニエ家。上手くやらないとアルベルティーヌ嬢と味方っぽいコリンヌ嬢も巻き込まれるだろ?」
「まず調べないことにはどうするもこうするもないがな……一応、一週間で別邸と本邸を少し調べてきた」
「なんかめぼしいのはあった?」
「調べたいと思って持ち出してきたのは、別邸と本邸の管理帳簿を昨年度分まで三年分。今年分は無くなってたらさすがに騒がれそうだからな。あとは別邸の森の研究施設と違法植物の栽培、隣国の隠蔽魔法、叔父のセザールと繋がりのある貴族……が気になるな」
──隣国の違法植物に関する偵察に行った帰りに、国内で違法植物の栽培を見つけるとか……こいつもなかなか引きが良いよな。
「そうだね。コリンヌ嬢も15歳の割に大人びててしっかりしていたようだけど、さすがに知らないことも多いかあ。もうデボラに直接会うか?」
「デボラにも話を聞きたいが……コリンヌ嬢の話だけで、まだ完全に信用しきれていない。もう少し調べてある程度分かったら、だな」
「──ただ、調べるにしても、協力関係にありそうな貴族をまず絞り込まないと、下手に情報部や魔術分析官にも頼めないだろ?コリンヌ嬢の話では軍閥の高位の貴族家、と言っていたが……」
──軍閥ねぇ……公爵とか侯爵とか色々いるなあ。近衛騎士団の活動としては……動きづらいことこの上ないねぇ……
「まぁなんにせよ、しばらくはお前が人間に戻った、というか国内にいることは伏せといた方が動きやすそうだな。お前と俺だけじゃ情報集めるのに……そうだな、アルノーくらいには事情説明したらどうだ?」
「ああ、アルノーなら信用できる。シュメルの内情にも詳しいしな。そうするよ。叔父セザールやデボラについて何か出ればいいんだが」
──何か出るも何も、話聞いてる限り出る要素しかなくね???叩けば埃がバンバンだろ。
「まぁ……最悪、アルベルティーヌ嬢は先代のオーバン侯爵の孫娘に当たるわけだし?あの方なら可愛い娘と孫娘について調べるってなったらどんな手も使いそうだよな。それどころか喜んで養女にするだろ」
「オーバン侯爵家か……クレール殿か……それは最終手段だな……」
「『アルベルティーヌ嬢を下さいっ!』って気軽に言える相手じゃねえよな。あの爺さん。ま、その前に初恋のお嬢様にかっこいいとこ見せて思い出してもらわねぇとな。まぁ頑張れ」
「……早く気付いてやれなかった男に求婚する資格なんてない。ベルが愛してくれたのは俺じゃなくクロだ」
──あーあーあー……もうすっかり恋する男の顔だよ。哀愁と色気ダダ漏れ。三週間でこんなメロメロに手懐けられちゃって……
「……お前、他の女の前でそんな顔するなよ?」
「そんな顔ってどんな顔だ」
「そんな顔はそんな顔だよ!捨てられた子犬みたいな顔な!」
──なんせ顔もいいし、身分もいい。国内の独身貴族で一番優良物件だからな。
そんな捨てられた子犬みたいな……庇護欲を掻き立てる顔してたら、狼のような令嬢たちに食われちまうぞ……?
「──エリク、お前ニヤニヤしすぎだろ……」
馬車の向かいには完全に拗ねている親友の姿。いじりすぎたか。
うん、やっぱり人間に戻っても鷹みたいな顔つきなんだよな。黒髪で、眼光鋭い金の瞳。コワモテクール系イケメン、ってやつだな。
背もすっかり高くなったし、なんていうかすっかり大人になったな~って、お兄さんちょっと感激しているよ。
「だってお前完全にアルベルティーヌ嬢のペットなんだもん。人間不信の王子様がすっかり手懐けられちゃって……裸にリボンで、ねぇ?」
「……うるさい」
全裸に首に結ばれた緑のリボン……という変態な格好で座り込むクロヴィスに気付いた俺は、悲鳴を上げるのを何とか堪えて、急いで市で服を一通り揃えた。
クロヴィスが人間に戻ったことは嬉しかったが、その異様な光景に笑いを抑えることが出来なかった。
王宮に戻る馬車の中で一通り経緯を聞いたが、親友はなかなか濃厚な一ヶ月を過ごしたようだった。
まさか、初恋相手にまた拾われるとはねえ。まさにこういうのを『運命』って呼ぶのかねえ……
「──で、どーすんの?アルベルティーヌ嬢とマニエ家。上手くやらないとアルベルティーヌ嬢と味方っぽいコリンヌ嬢も巻き込まれるだろ?」
「まず調べないことにはどうするもこうするもないがな……一応、一週間で別邸と本邸を少し調べてきた」
「なんかめぼしいのはあった?」
「調べたいと思って持ち出してきたのは、別邸と本邸の管理帳簿を昨年度分まで三年分。今年分は無くなってたらさすがに騒がれそうだからな。あとは別邸の森の研究施設と違法植物の栽培、隣国の隠蔽魔法、叔父のセザールと繋がりのある貴族……が気になるな」
──隣国の違法植物に関する偵察に行った帰りに、国内で違法植物の栽培を見つけるとか……こいつもなかなか引きが良いよな。
「そうだね。コリンヌ嬢も15歳の割に大人びててしっかりしていたようだけど、さすがに知らないことも多いかあ。もうデボラに直接会うか?」
「デボラにも話を聞きたいが……コリンヌ嬢の話だけで、まだ完全に信用しきれていない。もう少し調べてある程度分かったら、だな」
「──ただ、調べるにしても、協力関係にありそうな貴族をまず絞り込まないと、下手に情報部や魔術分析官にも頼めないだろ?コリンヌ嬢の話では軍閥の高位の貴族家、と言っていたが……」
──軍閥ねぇ……公爵とか侯爵とか色々いるなあ。近衛騎士団の活動としては……動きづらいことこの上ないねぇ……
「まぁなんにせよ、しばらくはお前が人間に戻った、というか国内にいることは伏せといた方が動きやすそうだな。お前と俺だけじゃ情報集めるのに……そうだな、アルノーくらいには事情説明したらどうだ?」
「ああ、アルノーなら信用できる。シュメルの内情にも詳しいしな。そうするよ。叔父セザールやデボラについて何か出ればいいんだが」
──何か出るも何も、話聞いてる限り出る要素しかなくね???叩けば埃がバンバンだろ。
「まぁ……最悪、アルベルティーヌ嬢は先代のオーバン侯爵の孫娘に当たるわけだし?あの方なら可愛い娘と孫娘について調べるってなったらどんな手も使いそうだよな。それどころか喜んで養女にするだろ」
「オーバン侯爵家か……クレール殿か……それは最終手段だな……」
「『アルベルティーヌ嬢を下さいっ!』って気軽に言える相手じゃねえよな。あの爺さん。ま、その前に初恋のお嬢様にかっこいいとこ見せて思い出してもらわねぇとな。まぁ頑張れ」
「……早く気付いてやれなかった男に求婚する資格なんてない。ベルが愛してくれたのは俺じゃなくクロだ」
──あーあーあー……もうすっかり恋する男の顔だよ。哀愁と色気ダダ漏れ。三週間でこんなメロメロに手懐けられちゃって……
「……お前、他の女の前でそんな顔するなよ?」
「そんな顔ってどんな顔だ」
「そんな顔はそんな顔だよ!捨てられた子犬みたいな顔な!」
──なんせ顔もいいし、身分もいい。国内の独身貴族で一番優良物件だからな。
そんな捨てられた子犬みたいな……庇護欲を掻き立てる顔してたら、狼のような令嬢たちに食われちまうぞ……?
0
あなたにおすすめの小説
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
十の加護を持つ元王妃は製菓に勤しむ
水瀬 立乃
恋愛
様々な神の加護を信じ崇める国・ティーズベル王国。
訳ありの元王妃・ティアは、その身分と聖女だった過去を隠し、愛息子と共に辺境のギニギル村で暮らしていた。
恩人で親友のマロアと二人で開店した米粉の洋菓子店・ホワンは連日大盛況。
年に一度の豊穣祭の初日、ある事件がきっかけでティアの日常は一変する。
私、王宮には戻りません。王都で気ままに、お菓子を作って暮らします!
※小説家になろう様でも同作品を連載しています(https://ncode.syosetu.com/n7467hc/)
【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】
sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。
遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら
自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に
スカウトされて異世界召喚に応じる。
その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に
第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に
かまい倒されながら癒し子任務をする話。
時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。
初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。
2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる