23 / 33
23 描かれたシナリオ
しおりを挟む
(クロヴィスside)
王都の外れにある、クロヴィスの仮住まいであるアパートメントの一室に三人は集まっていた。
もちろん防音魔法を厳重に掛けた上で。
「──エリク、アルノー、先日はご苦労だった。面倒をかけた。よくやってくれて感謝している」
クロヴィスは自分が除け者にされた、デボラとコリンヌとアルベルティーヌの感動の再会の日の出来事について改めて詳しく報告を受けていた。
気になってしまい待てずに軽く内容を聞いて、早速オーバン侯爵家に話をつけに行った帰りだった。
──二人はよくやってくれた。
あとは俺が父上に根回しをして、貴族裁判でセザールとアングラードを地獄に落とすだけだ……!
まず、主犯であるアルベルティーヌの叔父セザール、セザールを嗾かけ資金援助、また王宮のメイドを買収し王妃殿下の殺害を間接的に行った軍務副長官のアングラード侯爵の二名は確実に死刑、家取り潰しになるだろう。
伯爵夫妻の殺害、王妃殿下の殺害、違法植物の栽培、アルベルティーヌの殺害計画、それらの殺害を教唆、幇助した罪。
問題はデボラの処罰である。
アルベルティーヌは、義母デボラを救うため、エリクとアルノーに出来る限り減刑にもっていけるよう懇願した。
そこで、デボラを守るため、エリクはその場でシナリオを作り上げた。
「──まぁ、実話混じりとはいえ、上手いこと話を作れて良かった良かった」
エリクは満足気に大きく頷いた。
「クロヴィス、オーバン家に行ってきたんだろ?反応はどうだった?」
「まぁ、予想通り先代のクレール殿はかなり憤っていたが、現当主のシリル殿は『喜んで養女に迎える』と言ってくれた。アルベルティーヌに関しては、もう心配ないだろう」
──怒り狂ったクレール殿を宥めるのは本当に……本当に骨が折れた……!
『──なぁにぃぃぃぃぃい!!??セレスティーヌは病死じゃなかったのかね!?流行病に見せかけて毒殺だと!!??』
『──養女!?当たり前じゃろ!そんなところに置いてはおけん!!!!今すぐ孫を迎えに行くぞ!ほれ!お前、すぐに馬車を出さんか!!!!!!』
『──死刑!?そんな早くにくたばられてたまるか!セレスティーヌがじわじわと痛めつけられたように、奴らもじわじわと痛めつけてやらねば俺は気がすまん!!!!!』
『──こうしちゃおれん!陛下に磔の刑にしてもらうぞ!!!!嘆願に行くぞ!陛下も王妃殿下を亡くされたから、この怒り分かってくださるじゃろ!!!!先触れを出すぞ!ほれ便箋を持ってこい!!!!』
オーバン侯爵家での出来事を思い出し、クロヴィスは眉間に寄った皺をグリグリと揉んだ。
───クレール殿は相変わらず熱い、いや熱すぎるお方だった……
だが、磔の刑は残酷だが良い案だと思う。父上もそうするだろう……
「デボラの件は父上にも今晩伝える。きっと母の殺害が絡んでいるから、すぐに話が通るはずだ。おそらく研究結果や治療薬の功績でデボラは叙爵されるだろう」
──父上の事だ。
優秀な人材をシュメルに渡すくらいなら、国王直属の薬学研究員に任命するだろう。
デボラの研究結果は他国との外交の交渉材料にできるし、まぁデボラは無罪になるように父上が上手く揉み消すに違いない。
結局、最後は父上に頼るっていうのも情けない話だが。こればかりはアルベルティーヌの願いを叶えるためだからな……
「コリンヌ嬢も平民落ちすることなく過ごせそうで良かったですね!普通に家族思いの良い妹さんでしたし!」
「コリンヌ嬢も15歳だというのにしっかりしていて賢いからな。平民に落とすには惜しいもんなぁ」
アルノーとエリクはコリンヌ嬢の将来を心配していたようで、嬉しそうに笑った。
「──裁判で一気にケリをつけるぞ。二人が上手く纏めてくれた。あとの根回しは俺の仕事だ」
王都の外れにある、クロヴィスの仮住まいであるアパートメントの一室に三人は集まっていた。
もちろん防音魔法を厳重に掛けた上で。
「──エリク、アルノー、先日はご苦労だった。面倒をかけた。よくやってくれて感謝している」
クロヴィスは自分が除け者にされた、デボラとコリンヌとアルベルティーヌの感動の再会の日の出来事について改めて詳しく報告を受けていた。
気になってしまい待てずに軽く内容を聞いて、早速オーバン侯爵家に話をつけに行った帰りだった。
──二人はよくやってくれた。
あとは俺が父上に根回しをして、貴族裁判でセザールとアングラードを地獄に落とすだけだ……!
まず、主犯であるアルベルティーヌの叔父セザール、セザールを嗾かけ資金援助、また王宮のメイドを買収し王妃殿下の殺害を間接的に行った軍務副長官のアングラード侯爵の二名は確実に死刑、家取り潰しになるだろう。
伯爵夫妻の殺害、王妃殿下の殺害、違法植物の栽培、アルベルティーヌの殺害計画、それらの殺害を教唆、幇助した罪。
問題はデボラの処罰である。
アルベルティーヌは、義母デボラを救うため、エリクとアルノーに出来る限り減刑にもっていけるよう懇願した。
そこで、デボラを守るため、エリクはその場でシナリオを作り上げた。
「──まぁ、実話混じりとはいえ、上手いこと話を作れて良かった良かった」
エリクは満足気に大きく頷いた。
「クロヴィス、オーバン家に行ってきたんだろ?反応はどうだった?」
「まぁ、予想通り先代のクレール殿はかなり憤っていたが、現当主のシリル殿は『喜んで養女に迎える』と言ってくれた。アルベルティーヌに関しては、もう心配ないだろう」
──怒り狂ったクレール殿を宥めるのは本当に……本当に骨が折れた……!
『──なぁにぃぃぃぃぃい!!??セレスティーヌは病死じゃなかったのかね!?流行病に見せかけて毒殺だと!!??』
『──養女!?当たり前じゃろ!そんなところに置いてはおけん!!!!今すぐ孫を迎えに行くぞ!ほれ!お前、すぐに馬車を出さんか!!!!!!』
『──死刑!?そんな早くにくたばられてたまるか!セレスティーヌがじわじわと痛めつけられたように、奴らもじわじわと痛めつけてやらねば俺は気がすまん!!!!!』
『──こうしちゃおれん!陛下に磔の刑にしてもらうぞ!!!!嘆願に行くぞ!陛下も王妃殿下を亡くされたから、この怒り分かってくださるじゃろ!!!!先触れを出すぞ!ほれ便箋を持ってこい!!!!』
オーバン侯爵家での出来事を思い出し、クロヴィスは眉間に寄った皺をグリグリと揉んだ。
───クレール殿は相変わらず熱い、いや熱すぎるお方だった……
だが、磔の刑は残酷だが良い案だと思う。父上もそうするだろう……
「デボラの件は父上にも今晩伝える。きっと母の殺害が絡んでいるから、すぐに話が通るはずだ。おそらく研究結果や治療薬の功績でデボラは叙爵されるだろう」
──父上の事だ。
優秀な人材をシュメルに渡すくらいなら、国王直属の薬学研究員に任命するだろう。
デボラの研究結果は他国との外交の交渉材料にできるし、まぁデボラは無罪になるように父上が上手く揉み消すに違いない。
結局、最後は父上に頼るっていうのも情けない話だが。こればかりはアルベルティーヌの願いを叶えるためだからな……
「コリンヌ嬢も平民落ちすることなく過ごせそうで良かったですね!普通に家族思いの良い妹さんでしたし!」
「コリンヌ嬢も15歳だというのにしっかりしていて賢いからな。平民に落とすには惜しいもんなぁ」
アルノーとエリクはコリンヌ嬢の将来を心配していたようで、嬉しそうに笑った。
「──裁判で一気にケリをつけるぞ。二人が上手く纏めてくれた。あとの根回しは俺の仕事だ」
0
あなたにおすすめの小説
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
十の加護を持つ元王妃は製菓に勤しむ
水瀬 立乃
恋愛
様々な神の加護を信じ崇める国・ティーズベル王国。
訳ありの元王妃・ティアは、その身分と聖女だった過去を隠し、愛息子と共に辺境のギニギル村で暮らしていた。
恩人で親友のマロアと二人で開店した米粉の洋菓子店・ホワンは連日大盛況。
年に一度の豊穣祭の初日、ある事件がきっかけでティアの日常は一変する。
私、王宮には戻りません。王都で気ままに、お菓子を作って暮らします!
※小説家になろう様でも同作品を連載しています(https://ncode.syosetu.com/n7467hc/)
【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】
sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。
遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら
自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に
スカウトされて異世界召喚に応じる。
その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に
第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に
かまい倒されながら癒し子任務をする話。
時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。
初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。
2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる