人間不信の黒鷹王子は捨てられ令嬢に手懐けられる

poi

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30 全て君の望むままに

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 (アルベルティーヌside)


 「まぁ未婚の男女が完全に二人っきりも不味いし……この辺でいいか。防音魔法と意識を逸らして見えづらくなる視覚魔法でも掛けておこう」

 ──こうして、広間に連なる開け放たれたバルコニーに出た私たちは、不思議な再会を果たした。


 「本当に……あなたがクロちゃんだったのね……どうりで……ずっと似てると思っていたんです……!」
 「裁判のあと、バレたのかと思ってヒヤヒヤした」

 クロヴィス殿下は肩を竦めて言った。

 「好きな肉は兎肉、好きなペレットは穀物とシードと果物を混ぜたもの。好きな子に魔法を褒めてもらえて調子に乗って怪我が悪化して、手ずから餌を食べさせられた情けない男……どう?」

 「──っクロヴィス殿下だとは思っていなくて……!大変失礼致しました……っ!」

 「鷹の姿だったから仕方がないが、すぐに抱きしめられるから複雑だったんだぞ。餌を食べる時もずっと見られているから恥ずかしかった……」


 クロヴィス殿下は思い出し笑いを堪えているようだったが、すぐに真剣な顔つきに変わった。

 「──君のことを気にしつつ、自分のことで精一杯で気付いてやれなかった。調べようと思えば、鷹の姿ですぐに調べられたのに。──本当にすまなかった。そして、助けてくれてありがとう」
 「いえ!クロちゃんにも癒されていましたし、殿下には助けていただきました!デボラ様のこともありがとうございました……!」


 ──聞いてもいいのかしら?

 「あの……何故鷹の姿に?」


 クロヴィス殿下は少し悩んだ様子で困った顔で言った。

 「その前に。君のことが8歳の頃から好きだった。初恋なんだ。──で、こんな情けない俺だけど……求婚したら受けてくれますか?」
 「──球根……?」
 「求婚。俺と結婚して欲しい」

 ──結婚……!?


 「でも、王子殿下とだなんて……」
 「王子って言っても二番目のスペアだしな?俺は実は元々近衛騎士団の情報部にいたから、もうそのまま騎士になろうと思って。モルヴァド領から通うよ。父上が転移魔法陣使っていいって言うから」

 「──っっ!」

 「もう一人にさせないし、不自由にさせない。鳥たちも一緒だ。──あの綺麗なモルヴァド領と君を守らせてくれないか?俺と結婚して欲しい」


 嬉しい……!
 でも、私なんかボロボロで……こんな素敵な人の隣には相応しくないわ……!

 「──はい。でも私ボロボロで、痩せてますし……」
 「それ以上言うなよ。ベルは昔から可愛い。俺はベルに二回救ってもらって、二回恋をした。一回目は幼少期のお茶会で。二回目はマニエ家の別邸で」


 クロヴィス殿下が語った幼少期の出来事は、想像するだけでとても辛いものだった。

 「あの怪我をしていた鳥さんは殿下だったのですね……!先祖返り……ですか……まるでおとぎ話のようですわね……」

 私も辛かったけれど、殿下は12年間ずっと人間に戻れず、苦労していらっしゃったのだわ……!

 「──殿下は私に気付いてやれなかったとおっしゃいましたが、私だって殿下の辛さを知らなかった……よく12年間鷹の姿で頑張りましたね……!」
 

 クロヴィス殿下は照れたように笑いながら言った。

 「ずっと人間への戻り方を探していたが、こうして人間の姿に戻れたのも何でなのかは分からない。でも、きっとベルのおかげだと思う。本当に感謝してもしきれない」


 ──でも、少し残念だわ……
 あの素敵な鷹の姿がもう見られないなんて……

 「殿下はもうになることは出来ないのですか?……私、あの姿も好きだったのでちょっと残念です。また鷹の姿も見られたらいいですのに……!」

 ──ぽんっ!!


 クロヴィス殿下の騎士服の中からちょこんとのぞく鷹の姿……!

 「く……クロヴィス殿下……!?も……もしかして私が鷹の姿を見たい、と言ったから!?」

 『ベル!ちょっと人間に戻って欲しいと願ってみてくれ!!ちょっと待て、向こうを向いた状態で頼む!』

 「話せるのですね!?はっ……はいっ!!」


 ──人間に……

 「クロヴィス殿下、人間の姿に戻ってくださいませ……!」


 ──ぽんっ!!

 「──ベル、まだ後ろを向くなよ」


 ────


 「──戻る鍵はもしかして、人間の姿だったらいいのにって願い……?言葉だったのか……?」
 「ということは、私、またクロちゃんとも会いたいです!クロちゃんの姿を望めば、またたまに一緒に過ごせるのですね!?」


 クロヴィス殿下は私を強く抱きしめると満面の笑みで甘やかに微笑んだ。

 「──ああ、全てベルの望むままに。俺はもう君に手懐けられてしまったから」





《おわり》








拙い文章にお付き合いいただきありがとうございました('ω'○)
ちょっとした裏話や小話、後日談を少しずつ書き足す予定です。
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