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1章:安藤日和(クラスの友達を一人作れ)
思わぬきっかけ
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高校の周りで時間をつぶし、二、三年生の下校時間になったところで校門前を訪れた。
下校中の安藤さんを尾行し、何かきっかけとなる手がかりを探そうと考えた。趣味や食べ物などの好みが分かれば、それを餌に知り合えるかもしれない。
来た。
校門近くでスマホを操作しながら、周りに目を向けていると安藤さんの姿を発見した。一緒に帰る生徒はいないようで、ひとり淡々と歩いている。
スマホを顔の近くに持っていくことで彼女から顔を見られないようにする。昼にあった手前、また姿を見られたりでもしたら怪しまれるに違いない。
安藤さんが通り過ぎたのを見計らって僕もまた歩き始める。
校門を出ると、安藤さんは近くにあるバス停で止まった。僕と彼女の間に数人の生徒を挟むことで自然に紛れ込む。
下校ラッシュだからかバスは程なくしてやってくる。
ICカードを使って乗車する。尾行に使ったお金は四宮先生に言えばもらえるだろうか。
安藤さんは後方にある二席セットの座席に足を運んだ。
僕は彼女の動向がわかるように、彼女よりも後ろの席に座る。
バスはもう入り切らんばかりの乗客を乗せて動き出した。安藤さん含め乗客が降りることなく終点である駅に辿り着く。
それからも電車、再びバスと乗り換えを行っていく。
どうやら安藤さんは遠方から高校にやってきているみたいだ。
二回目に乗ったバスは人はほとんどおらず過疎化状態だった。
安藤さんは相変わらず後ろの席を陣取っていた。僕はできる限り気づかれないように前の方に乗る。乗客がほとんどいないため、彼女が下車する様子を前の席でも見ることができるだろう。
バスが動き始める。
現在乗っているバスの料金は一定料金ではなく、距離が離れれば離れるほど料金も上がっていく。
帰ることを考えると、これは本格的に四宮先生から徴収する必要がありそうだ。 あの人、くれるかなぁ。いや~、くれなさそうだなぁ。土下座したら……くれないだろうなぁ。
四宮先生からどう徴収しようか考えていると、バスが再び止まる。
後ろから歩く音が聞こえてきた。チラッと見ると安藤さんが真ん中の階段を降りて出て行こうとしていた。
慌てて立ち上がる。
僕も続くようにバスを降り、彼女の歩いていった方を探る。
安藤さんの姿が目に入る。
彼女は背中を向けて歩いているわけではなく、こちら側に体を向けていた。自然に彼女と目が合う。
「さっきから付けてきている感じがするですけど、あなたの家もこの辺にあるんですか?」
答えにくい嫌な質問をされる。
尾行に確信があって質問してきたのか。はたまた、分かっておらず確認のために質問をしてきたのか。表情からは分からない。
「は、はい。この辺にあります」
一度惚けてみせることで、安藤さんの出方を確認する。
「今まで同じ高校でこのバス停で降りた生徒は見たことないんですけど」
「高校には今年度から通い始めたんです。日が浅いため、まだ会ったことがなかっただけかと思います」
「後輩くんだったんだ」
よしっ。うまく切り抜けたか。
「出身中学校はどこなの?」
終わった……この辺にある中学校の名前なんて知るはずもない。バスに乗っている最中に、地図アプリで確認しておくべきだった。
「どうして答えないの?」
答えないでいると、安藤さんは眉を顰めて答えをせかしてくる。
適当に言ってみるか。でも、自分の近所の中学校なんて流石に覚えているか。僕みたいに引っ越してきたならまだしも。引っ越す?
「えっと……高校入学と同時に引っ越してきたので、この辺の中学じゃないんですよね」
引っ越してきたことにすれば、何も関係ないのだ。
人というのは危機的状況であればあるほど、画期的なアイデアを生み出すらしい。火事場の馬鹿力を舐めてはいけないな。
「ああ、そうなの。てか、なんでこんな遠いところに引っ越してきたの。物件は安いかもだけど、もっと近くに同じくらいの物件があるでしょ」
おっしゃる通りだ。
僕は自ら墓穴を掘ってしまったらしい。
「えっとですね……」
ここしかなかったなんて嘘にもほどがある。
完全に詰んでるな。なにが画期的なアイデアだ。全然効果ねえじゃねえか。次回から火事場の馬鹿力のことは舐めることにする。
カシャッ。
考えている最中、前からシャッターを切る音が聞こえてきた。
見ると、安藤さんがスマホを僕に掲げている。
「やっぱり、怪しい。この写真を持って警察に行かせていただきます」
「ちょっと待ってください!」
まさか警察沙汰にまで発展してしまうとは。
なにかこの場を打開できる言い訳はないか。火事場の馬鹿力よ。挽回のチャンスを与えてやろう。
「じゃあ、あなたは一体なんなんですか?」
「僕は……」
頭をこねくり回して考える。
僕は一体なんなんだ。これまでの経緯から彼女の何になれば良いんだ。
ふと、頭に閃光が走る。導き出した答えを熟考する前に、口に出していた。
「好きです! 付き合ってください!」
周囲に響き渡る愛の告白。
電柱に止まっていた鳥たちが燦々と空高く飛んでいった。
「へっ?」
その後しばらくして、安藤さんは惚けた声を上げた。
下校中の安藤さんを尾行し、何かきっかけとなる手がかりを探そうと考えた。趣味や食べ物などの好みが分かれば、それを餌に知り合えるかもしれない。
来た。
校門近くでスマホを操作しながら、周りに目を向けていると安藤さんの姿を発見した。一緒に帰る生徒はいないようで、ひとり淡々と歩いている。
スマホを顔の近くに持っていくことで彼女から顔を見られないようにする。昼にあった手前、また姿を見られたりでもしたら怪しまれるに違いない。
安藤さんが通り過ぎたのを見計らって僕もまた歩き始める。
校門を出ると、安藤さんは近くにあるバス停で止まった。僕と彼女の間に数人の生徒を挟むことで自然に紛れ込む。
下校ラッシュだからかバスは程なくしてやってくる。
ICカードを使って乗車する。尾行に使ったお金は四宮先生に言えばもらえるだろうか。
安藤さんは後方にある二席セットの座席に足を運んだ。
僕は彼女の動向がわかるように、彼女よりも後ろの席に座る。
バスはもう入り切らんばかりの乗客を乗せて動き出した。安藤さん含め乗客が降りることなく終点である駅に辿り着く。
それからも電車、再びバスと乗り換えを行っていく。
どうやら安藤さんは遠方から高校にやってきているみたいだ。
二回目に乗ったバスは人はほとんどおらず過疎化状態だった。
安藤さんは相変わらず後ろの席を陣取っていた。僕はできる限り気づかれないように前の方に乗る。乗客がほとんどいないため、彼女が下車する様子を前の席でも見ることができるだろう。
バスが動き始める。
現在乗っているバスの料金は一定料金ではなく、距離が離れれば離れるほど料金も上がっていく。
帰ることを考えると、これは本格的に四宮先生から徴収する必要がありそうだ。 あの人、くれるかなぁ。いや~、くれなさそうだなぁ。土下座したら……くれないだろうなぁ。
四宮先生からどう徴収しようか考えていると、バスが再び止まる。
後ろから歩く音が聞こえてきた。チラッと見ると安藤さんが真ん中の階段を降りて出て行こうとしていた。
慌てて立ち上がる。
僕も続くようにバスを降り、彼女の歩いていった方を探る。
安藤さんの姿が目に入る。
彼女は背中を向けて歩いているわけではなく、こちら側に体を向けていた。自然に彼女と目が合う。
「さっきから付けてきている感じがするですけど、あなたの家もこの辺にあるんですか?」
答えにくい嫌な質問をされる。
尾行に確信があって質問してきたのか。はたまた、分かっておらず確認のために質問をしてきたのか。表情からは分からない。
「は、はい。この辺にあります」
一度惚けてみせることで、安藤さんの出方を確認する。
「今まで同じ高校でこのバス停で降りた生徒は見たことないんですけど」
「高校には今年度から通い始めたんです。日が浅いため、まだ会ったことがなかっただけかと思います」
「後輩くんだったんだ」
よしっ。うまく切り抜けたか。
「出身中学校はどこなの?」
終わった……この辺にある中学校の名前なんて知るはずもない。バスに乗っている最中に、地図アプリで確認しておくべきだった。
「どうして答えないの?」
答えないでいると、安藤さんは眉を顰めて答えをせかしてくる。
適当に言ってみるか。でも、自分の近所の中学校なんて流石に覚えているか。僕みたいに引っ越してきたならまだしも。引っ越す?
「えっと……高校入学と同時に引っ越してきたので、この辺の中学じゃないんですよね」
引っ越してきたことにすれば、何も関係ないのだ。
人というのは危機的状況であればあるほど、画期的なアイデアを生み出すらしい。火事場の馬鹿力を舐めてはいけないな。
「ああ、そうなの。てか、なんでこんな遠いところに引っ越してきたの。物件は安いかもだけど、もっと近くに同じくらいの物件があるでしょ」
おっしゃる通りだ。
僕は自ら墓穴を掘ってしまったらしい。
「えっとですね……」
ここしかなかったなんて嘘にもほどがある。
完全に詰んでるな。なにが画期的なアイデアだ。全然効果ねえじゃねえか。次回から火事場の馬鹿力のことは舐めることにする。
カシャッ。
考えている最中、前からシャッターを切る音が聞こえてきた。
見ると、安藤さんがスマホを僕に掲げている。
「やっぱり、怪しい。この写真を持って警察に行かせていただきます」
「ちょっと待ってください!」
まさか警察沙汰にまで発展してしまうとは。
なにかこの場を打開できる言い訳はないか。火事場の馬鹿力よ。挽回のチャンスを与えてやろう。
「じゃあ、あなたは一体なんなんですか?」
「僕は……」
頭をこねくり回して考える。
僕は一体なんなんだ。これまでの経緯から彼女の何になれば良いんだ。
ふと、頭に閃光が走る。導き出した答えを熟考する前に、口に出していた。
「好きです! 付き合ってください!」
周囲に響き渡る愛の告白。
電柱に止まっていた鳥たちが燦々と空高く飛んでいった。
「へっ?」
その後しばらくして、安藤さんは惚けた声を上げた。
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