保健室の先生に召使にされた僕はお悩み解決を通して学校中の女子たちと仲良くなっていた

結城 刹那

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1章:安藤日和(クラスの友達を一人作れ)

姉妹の訪問2

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「何にもないね」

 結花は僕の部屋を見回しながら感想を漏らす。

「まだ引っ越して二週間だからね。仕送りも多いわけではないから、そんなに物を買うことはできないしね」

 生活費を差し引いたお金は、日和先輩との付き合いで使うので他に浪費はできない。

「あれ? ゲームハードって持ってきてなかったっけ?」

「持ってきたよ。ただ、今は隣に住む人に貸してるんだ」

「貸す? もしかして、隣人にいじめられているんじゃないだろうな?」

 桐花姉さんは鋭い眼光で僕を見る。ゲームソフトはともかく、ゲームハードを貸すとなると相応の理由があるように思えるだろう。もし、いじめられているのなら、私がやり返そうという思惑だろう。獲物を見つけて喜んでいる様子だ。

「いじめではないよ。僕と一緒にプレイした『モリオカート』にどっぷりハマってしまってね。暇があればプレイしたいっていうから貸したんだ」

 真実と嘘を織り交ぜながら話す。完全な嘘では、桐花姉さんなら見抜きかねない。真実を織り交ぜ、嘘に対する罪悪感を消すことで、バレにくくする。

「ゲームハードくらい買えばいいのに。その人の職業は?」

「大学生。バイトしてるけどお金はないみたい。詳しくは聞いてないけど、生活費とかに使ってるんじゃないかな」

「それは大変だ。私らは恵まれている方なんだから助けてあげなさい」

 高校二年生が大学二年生に偉そうにするなよ。とは言っても、へり下る桐花姉さんの姿は想像できないが。誰に対しても、上からだからな。

 そういえば、桐花姉さんと四宮先生はどこか似ている。
 四宮先生と仲良くなれたのは、桐花姉さんによって強気な女性に馴染みがあったからかもしれないな。

 仲良くなれたのかは定かではないが。まあ、秘密を共有するくらいだから仲が良いのだろう。

「あー、見た感じ、食事はまともに取れてなさそうだね」

 二人でやりとりをしていると、結花が冷蔵庫を開けながら独り言を呟く。いつの間にキッチンに移動したのだろう。

「よしっ! 今日は私が夕食を作ってあげよう!」

 冷蔵庫を閉め、気合を入れるように両手でグーを握る。

「別に無理しなくてもいいのに。てか、いつまでいる気なの? 二人とも明日は学校でしょ?」

「なーに。電車で一、二時間だ。そんなに遠いわけではない。夕食を食べてからでも帰れるさ。それに、結花の料理は美味いんだから、せっかく作ってくれるというのなら甘えた方が良いじゃないか?」

「そりゃ……まあ……結花はいいのか?」

「もちろん! 任せて! とびっきり美味しいの作るから!」

 結花は決まったらすぐに行動と言わんばかりに玄関に向かうと、「じゃあ、買い出しに行ってきます」と言って部屋を後にした。

「元気だね」

「久しぶりに文也に会えて嬉しんだろ。毎食、椅子に一つ空きがあるのを見ているしな」

「それは……なんだか申し訳ないな……」

「もちろん、私も嬉しいぞ」

 桐花姉さんはそう言ってにっこり笑った。

 二人には色々迷惑をかけた。
 中学時代、僕は今以上に睡眠障害等の症状がひどく、学校では保健室で過ごすことが多かった。

 中学一、二年の時は桐花姉さんが、中学三年の時は結花が、僕に何かある度に呼ばれていた。病気だから仕方がないとはいえ、二人に迷惑をかけ続けることは正直申し訳なかった。

 きっと、それが影響して今日ここにやってきたのだろう。
 散々迷惑かけたのに、今もまだ気を遣ってくれたり、会えることに嬉しさを感じてくれるなんて。二人には頭が上がらない。

「久々にサンドバッグに会えたのだから嬉しいに決まっている!」

 目を光らせ、桐花姉さんは片方の拳を握って、他方の手のひらにパンチを繰り出す。

 訂正。
 桐花姉さんだけは来ないでほしかった。

「さてと、結花がいなくなったことだし、物色でも始めますか?」

 不敵な笑みを浮かべ、テレビの下にある棚の引き出しを開ける。
 おそらくアダルトグッズを探すという名の『物色』だろう。僕が一人暮らしを始めたのを良いことに買っているに違いないと判断したのだろう。

 だが、残念。
 僕の部屋には何もない。大事なものはスマホの中に全てしまってある。バレるはずがない。

「んー、何も入っていないな。つまらん」

 桐花姉さんは幻滅しながら毒を吐く。

 一生探してろ。
 僕は姉の様子を見ながら昼食の残りを食べる。
 食べ終えると、食器をキッチンに持っていって洗い物を始めた。結花が帰ってきたら使うだろうから、今のうちに綺麗にしておこう。

 食器の音が流れる間に、引き出しを引く音が聞こえる。
 どんなに探しても何も出まい。最悪なのは、出なかったことに苛立ち、理不尽に殴ってくることだ。

 それだけは勘弁願いたい。

「文也くーん」

 洗い物を終え、蛇口を閉める。
 そのタイミングで桐花姉さんが僕の方へとやってきた。
 魔女のような笑みを浮かべながら、こちらに視線を送る彼女を訝しむ。

「何かあった? 別に疾しいものは隠していないけど」

「ほほぉー、自信満々な様子ですね。では、これは何でしょうか?」

 姉さんはそういうと、組んでいた腕を外して、手に持ったものをこちらに見せる。

 それが何であったか。僕は一瞬分からなかった。
 正方形の銀袋。中からは丸いものが浮き出ている。薬を入れてある袋にしてはデカすぎる。

「こんなものを高校生が持ってはいけませんよ」

「高校生が持っていけないって……あっ……」

 ようやく桐花姉さんの持っているものの正体が分かった。
 でも、なぜそんなものが僕の部屋に。流石に買った覚えはない。

「まさかクローゼットの天井に貼り付けるとは。隠す場所としては良い所を選んだ。しかし、バレないようにするんだったら、ちゃんと物を入れて視線を下に向けるようにしないと」

「クローゼットの天井?」

 まさか、僕が引っ越してくる前の人が隠したのを忘れて出ていったんじゃないだろうな。

 どうしたものか迷っていると、インターホンが鳴った。

「あっ? 結花か? 両手に荷物を持ってるからドアを開けれないのか? しょうがない。私が開けてあげよう!」

 桐花姉さんはそう言って走る。
 手に銀袋を握りしめてだ。慌てて牽制するも、片手で頭を弾かれ、逃れられる。
 流石に結花に見られるのはまずい。

 そう思いはするも、桐花姉さんはすでに玄関に足を運んでいた。

「ほーい!」

 勢いよく扉を開ける。
 大きく開かれたことで、僕の位置からも外にいる人物が見えた。

「んっ? どちら様?」

「え、えと……えと……」

 そこにいたのは地元の友達と遊んでいたはずの『日和先輩』だった。
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