保健室の先生に召使にされた僕はお悩み解決を通して学校中の女子たちと仲良くなっていた

結城 刹那

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2章:千丈真奈(部員を5人集めよ)

Reポスター作成

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「デザインは分かりました。これって下駄箱に貼るんですよね?」

 各々の挨拶が終わったところで、結花から千丈先輩へのヒアリングが始まる。
 僕と日和は全員分のお茶を注ぎ、天音さんが持ってきてくれたお菓子の封を開け、さらに盛り合わせテーブルに置いた。

「もうすでに部活勧誘は始まっている気はしますが、ポスターはまだ貼ってないんですか?」

 結花には部活動のポスター作成をすることしか伝えていない。そのため、具体的な内容についてはまだ知らない。気になった点をいくつか千丈先輩に質問する。

「うんうん。ポスター自体は貼ってたよ。ただ、最上くんたちに分かりづらいって言われたから新しく作ることにしたんだ。あーっと、最上くんっていうのはお兄さんの方ね」

 話している途中で、今話している相手も最上であることに気づき、慌てて補足する。身振り手振りする様子に、結花は思わず吹き出しそうになって手で口を覆った。

「私のことは結花で、兄のことは最上と呼んでください」

「別に、僕のことを文也って呼んでくれても良いですけど?」

 僕が提案すると、結花はむすっとした表情を見せる。「少し失礼しますね」と言ってその場から立ち上がり、僕のそばにやってくる。

「内気な女子に気軽に名前呼びを勧めるのは良くないよ。気があると思われちゃうから」

 僕の耳に口を近づけ、見えないように手で覆うようにして呟く。
 ああ、なるほど。区別できるように提案したが、そんな落とし穴があったのか。

「やっぱり、僕のことは最上と呼んでください」

「了解……」

 千丈先輩は受け入れつつも、表情には不満が見られた。
 そりゃ、名前呼びで良いと言ってからやっぱり苗字呼びでお願いとなったら、何か気に障ったと思ってしまうだろう。悪手だったかもしれない。

「気を取り直して続けましょう」

 僕と千丈先輩がやりとりしている間に、結花は自分の場所に戻っていた。

「前のポスターってどんな感じなんですか?」

「それはね……」

 言葉で伝えるよりも実物を出した方がいいと考えたようだ。
 千丈先輩は鞄の中を探り、二枚の紙を取り出す。一枚は画用紙で、もう一枚はノートのように線の引かれた紙だ。

「これが前使っていたポスターだよ。そして、これが今回作ってもらうポスター」

 結花は画用紙を覗くや否や渋い表情をする。
 見にくさは一級品だ。誰がどう見ても顔に皺を寄せるだろう。

「確かに、変えるのは賢明な判断ですね。見やすさは断然、新しい方が優れています。デザインもいいですしね」

「だ、だよね……」

 千丈先輩は共感するも表情が苦かった。
 悪いとは思いつつも、先輩の思いを無碍にはできないといった様子だ。

「ポスターを貼り替える感じなんですね。ということは、他の部活はもうすでにポスターを貼っていると思っていいですか?」

「うん。大丈夫」

「なら、デザインは派手にした方がいいですね」

「派手にするんだ。何か意図があって?」

 日和が二人の会話に割り込むように尋ねる。
 言遊部は率直いえば地味な部活だ。その地味さとは対照的に、ポスターを派手にすることに違和感を覚えたのだろう。

「はい。他の部活動が貼っている中で、真奈さんの部活だけ貼り替えるということは全体的に見ると変化による違和感が発生します。下駄箱に貼っているのであれば、全生徒が違和感に駆られる可能性が高い。その違和感をデザインを派手にすることで見つけやすくするんです。見つかるということは人目についたということ。人目についたなら、ポスターとしては十分な効果を発揮したことになります」

「なるほど」

 結花の捲し立てるような発言に日和は感心を示す。

「結花ちゃんって頭良いね!」

 千丈先輩もまた感心を示しており、目を輝かせながら結花を見ていた。

「ありがとうございます。やるべきことは決まったので、今からは色のデザインを決めていきましょう。私が色の案を決めるので、真奈さんが最終的な判断を下してください」

 千丈先輩からの了解の合図を機に、二人三脚でポスターの外観を作り上げていく。僕と日和は二人の様子を見ながら笑みを浮かべあった。

 ふと、今までずっと口を開くことのなかった天音さんと飯塚先輩の存在が気になる。顔を後ろに振り向けると、二人は向かい合いながらノートに何やら書いていた。

「何してるんですか?」

 二人の方に歩み、ノートの中を覗く。
 そこには未確認生物の数々が記されていた。
 彼らは矢印によって繋がれている。進化過程でも書いているのだろうか。

「絵しりとりだよ」

 飯塚先輩が平然とした様子で答える。

「久しぶりになるけど結構楽しいね」

 天音さんが朗らかな笑みを浮かべながら言う。心の底から楽しんでいる様子だ。

 飯塚先輩は分かっていたことだが、天音さんもまた絵心がなかったのか。それにしても、絵心がない人同士は通じ合えるんだな。僕だったら、最初の時点で詰んでいる。

「最初のはロケットですか?」

 僕はノートの端に書かれた絵を見て言う。
 歪んだ二等辺三角形の下に直線がたくさん敷かれている。ロケットが空を飛ぶ様子だろうか。

「違うよ。イカだよ」

 答えたのは天音さんだ。
 イカ。言われれば見えなくもないが、何も言われずに見るととてもじゃないがイカには見えない。

「えっ! ロケットじゃなかったの!」

 飯塚先輩は驚いた様子で天音さんを見る。天音さんもまたびっくりした表情で目を合わせた。

 どうやら、絵心がない同士が通じ合うことはなかったみたいだ。
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