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2章:千丈真奈(部員を5人集めよ)
非常事態
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「終わった…… さようなら、我が言遊部。ごめんなさい、先輩たち」
テーブルに突っ伏しながら千丈先輩は同じ文言を呪文のように言い続けていた。
イベントは終わり、竹中くんは無事言遊部に入ってくれることになった。
ただ、竹中くんにも言っておいたが、言遊部の現在の部員は4人であるため明後日までにもう一人入部してもらわなければ廃部となる。
「元気出して。まだ全てが終わったわけではないよ」
千丈先輩の隣に座る日和が宥めるように彼女の背中をさする。
最後の宛てであった日和は竹中くんの言葉によって入部ができなくなった。
この部活内に恋人がおらず、入部してくれそうな生徒。飯塚先輩はソフトテニス部に入っているから無理。間藤さんもバスケ部に入っているから無理。
「ここが文也さんの部屋……」
僕の隣でソファーにかけている奏さんはソワソワした様子であちらこちらに視線をやっていた。
「特に何もないよ」
声をかける。奏さんは驚いて身体をピクリと動かした。
「いきなり話しかけないでよ!」
特に悪気があったわけではないのだが、奏さんは瞳を潤わせ、ムッとした表情でこちらを睨みつけていた。
「ご、ごめん。そんなに驚くとは思ってなかったから」
「んん……私も大声を出しすぎた。ごめんなさい」
何か居た堪れない様子で奏さんは僕から視線を離す。僕の家に来てから彼女の様子はずっとおかしかった。
「それにしても、どうしたもんですかね~」
残り2日で一人を入部させる。
簡単なように見えて、実際は難しい。
「部活勧誘で私、イベント開催で竹中くん、あと一つ何か活動があればもう一人入ってくれそうな気はしますね」
「入部期間は残り2日なんだ。今から企画を考えたんじゃ、とてもじゃないけど間に合わない」
「わかってるよ。言ってみただけだから。文也さんは何か良いアイデアはないの? 私の意見を否定するなら、ちゃんと自分も考えてよ」
奏さんの言い分は尤もだ。
相手の意見を否定するなら、代替案を出さないとな。
「一番良いのは一年生の各クラスを回って未だ部活に入っていない人を直接誘うって感じかな」
「力技だね……どうやって部活に入っていない人を見つけるの? 誰が直接誘うの?」
「部活勧誘のように、昼食時間を狙ってクラス全体に問いかけるしかないね。僕と奏さんと竹中くんで自クラスと隣クラスに声をかけて、余ったところは千丈先輩に声をかけてもらう」
一年生は全8クラス。B組の奏さんがAとB組を、C組の竹中くんがCとD組を、G組の僕がGとH組を、残りのEとF組を千丈先輩がそれぞれ声をかけることになるだろう。
「明るい雰囲気の竹中くんと部活勧誘を行った千丈先輩はともかくとして、私と文也さんにできるかな? 友達もろくにできていないのに」
正論を言われ、一瞬言葉を失う。
確かに、クラス全体に響くように声をかけるのは気が引けるな。
「まあ、頑張るよ。個人的なことじゃなくて、他人のためであれば頑張れる気がする」
「……文也さんが頑張るなら、私も頑張ります。もし、言遊部がなくなっちゃったら、文也さんに会うことは叶わなくなっちゃいそうですから」
ボソッと呟くように口にした奏さんの言葉に、僕は反射的に彼女に顔を向けた。ソファーにも関わらず、足を上げ、身体を小さく丸めている。
「もし、声かけが難しそうだったら、二人とも無理せずに私を頼って良いからね」
二人で話していると、日和が僕たちに声をかける。彼女は優しい笑みを浮かべて僕たちを見つめていた。
「入部は叶わないけれど、これまでどおり協力することはできると思うから」
「ありがとう。でも、日和も他人に声かけするのは気が引けるんじゃない? 僕たちに似て友達もろくにできてないんだから」
「嫌味言わないでよ。私だって頑張ればできるから!」
日和はプクッと頬を膨らませる。その姿は愛らしかった。
「へぇ~、安藤先輩も友達が少ないんですね?」
「まあ……ね……恥ずかしい限りだけど」
「仕方ないよ。日和も僕たちと同じ境遇だからね」
「えっ……」
僕がボソッと口にした言葉に反応して、今度は奏さんが僕の方を向いた。
「うん。文也に助けられたから、今度は私が文也が困った時に助けになってあげたいの」
「なるほど。それで安藤先輩は文也さんのこと……」
一人納得した様子で頷く。
奏さんの言葉を最後に部屋には閑散とした雰囲気が漂った。
「終わった…… さようなら、我が言遊部。ごめんなさい、先輩たち。終わった…… さようなら、我が言遊部。ごめんなさい、先輩たち。終わった…… さようなら、我が言遊部。ごめんなさい、先輩たち」
静かになったことで千丈先輩の小さな叫び声が永遠と聞こえる。
「日和にはE組とF組の声かけをやってもらうかもしれない」
「ごめん。二人には頑張ってもらう必要があるかもしれない」
僕と日和は千丈先輩の呪文を聴いて同時に感想を漏らした。思っていたことは同じみたいだ。
「ふっ。ははは……」
ハモったのがおかしかったのか奏さんは静かに笑った。
それから1日経ち、部活入部期間最終日を迎えたが、言遊部に入部してくれた人は誰一人いなかった。
テーブルに突っ伏しながら千丈先輩は同じ文言を呪文のように言い続けていた。
イベントは終わり、竹中くんは無事言遊部に入ってくれることになった。
ただ、竹中くんにも言っておいたが、言遊部の現在の部員は4人であるため明後日までにもう一人入部してもらわなければ廃部となる。
「元気出して。まだ全てが終わったわけではないよ」
千丈先輩の隣に座る日和が宥めるように彼女の背中をさする。
最後の宛てであった日和は竹中くんの言葉によって入部ができなくなった。
この部活内に恋人がおらず、入部してくれそうな生徒。飯塚先輩はソフトテニス部に入っているから無理。間藤さんもバスケ部に入っているから無理。
「ここが文也さんの部屋……」
僕の隣でソファーにかけている奏さんはソワソワした様子であちらこちらに視線をやっていた。
「特に何もないよ」
声をかける。奏さんは驚いて身体をピクリと動かした。
「いきなり話しかけないでよ!」
特に悪気があったわけではないのだが、奏さんは瞳を潤わせ、ムッとした表情でこちらを睨みつけていた。
「ご、ごめん。そんなに驚くとは思ってなかったから」
「んん……私も大声を出しすぎた。ごめんなさい」
何か居た堪れない様子で奏さんは僕から視線を離す。僕の家に来てから彼女の様子はずっとおかしかった。
「それにしても、どうしたもんですかね~」
残り2日で一人を入部させる。
簡単なように見えて、実際は難しい。
「部活勧誘で私、イベント開催で竹中くん、あと一つ何か活動があればもう一人入ってくれそうな気はしますね」
「入部期間は残り2日なんだ。今から企画を考えたんじゃ、とてもじゃないけど間に合わない」
「わかってるよ。言ってみただけだから。文也さんは何か良いアイデアはないの? 私の意見を否定するなら、ちゃんと自分も考えてよ」
奏さんの言い分は尤もだ。
相手の意見を否定するなら、代替案を出さないとな。
「一番良いのは一年生の各クラスを回って未だ部活に入っていない人を直接誘うって感じかな」
「力技だね……どうやって部活に入っていない人を見つけるの? 誰が直接誘うの?」
「部活勧誘のように、昼食時間を狙ってクラス全体に問いかけるしかないね。僕と奏さんと竹中くんで自クラスと隣クラスに声をかけて、余ったところは千丈先輩に声をかけてもらう」
一年生は全8クラス。B組の奏さんがAとB組を、C組の竹中くんがCとD組を、G組の僕がGとH組を、残りのEとF組を千丈先輩がそれぞれ声をかけることになるだろう。
「明るい雰囲気の竹中くんと部活勧誘を行った千丈先輩はともかくとして、私と文也さんにできるかな? 友達もろくにできていないのに」
正論を言われ、一瞬言葉を失う。
確かに、クラス全体に響くように声をかけるのは気が引けるな。
「まあ、頑張るよ。個人的なことじゃなくて、他人のためであれば頑張れる気がする」
「……文也さんが頑張るなら、私も頑張ります。もし、言遊部がなくなっちゃったら、文也さんに会うことは叶わなくなっちゃいそうですから」
ボソッと呟くように口にした奏さんの言葉に、僕は反射的に彼女に顔を向けた。ソファーにも関わらず、足を上げ、身体を小さく丸めている。
「もし、声かけが難しそうだったら、二人とも無理せずに私を頼って良いからね」
二人で話していると、日和が僕たちに声をかける。彼女は優しい笑みを浮かべて僕たちを見つめていた。
「入部は叶わないけれど、これまでどおり協力することはできると思うから」
「ありがとう。でも、日和も他人に声かけするのは気が引けるんじゃない? 僕たちに似て友達もろくにできてないんだから」
「嫌味言わないでよ。私だって頑張ればできるから!」
日和はプクッと頬を膨らませる。その姿は愛らしかった。
「へぇ~、安藤先輩も友達が少ないんですね?」
「まあ……ね……恥ずかしい限りだけど」
「仕方ないよ。日和も僕たちと同じ境遇だからね」
「えっ……」
僕がボソッと口にした言葉に反応して、今度は奏さんが僕の方を向いた。
「うん。文也に助けられたから、今度は私が文也が困った時に助けになってあげたいの」
「なるほど。それで安藤先輩は文也さんのこと……」
一人納得した様子で頷く。
奏さんの言葉を最後に部屋には閑散とした雰囲気が漂った。
「終わった…… さようなら、我が言遊部。ごめんなさい、先輩たち。終わった…… さようなら、我が言遊部。ごめんなさい、先輩たち。終わった…… さようなら、我が言遊部。ごめんなさい、先輩たち」
静かになったことで千丈先輩の小さな叫び声が永遠と聞こえる。
「日和にはE組とF組の声かけをやってもらうかもしれない」
「ごめん。二人には頑張ってもらう必要があるかもしれない」
僕と日和は千丈先輩の呪文を聴いて同時に感想を漏らした。思っていたことは同じみたいだ。
「ふっ。ははは……」
ハモったのがおかしかったのか奏さんは静かに笑った。
それから1日経ち、部活入部期間最終日を迎えたが、言遊部に入部してくれた人は誰一人いなかった。
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