Over the Forty ー夢を見れないお年頃ー

真田 真幸

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逃亡編 

初めての二人の夜

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最寄り駅から徒歩10分。

12階建てのマンションの7階。

この分譲マンションを私が買ったのは4年前。

一人で生きていくと決めて購入した、3LDKの私のお城にまさか、男を…しかも彼氏を入れることになろうとは、思ってもみなかった。

鍵を開けて、靴箱の上の貝殻型のトレーに鍵を投げ入れ、靴を脱いで一哉を招き入れた。

部屋の証明のスイッチを入れると、アジアンリゾート風の間接照明が優しい光を放ち、12畳の ブラウンを基調としたリビングを照らし出した。
 
一哉は物珍しそうに、私の部屋を眺めながらソファーにビジネスバックを置く。

私は買い物袋から一哉用に買った衣服を取り出して、タグを外して一哉に渡す。

「時間も遅いし、先にお風呂入ってきたら?」

「うん、そうさせて貰おうかな。」

キッチンに近いドアを開けて、着替えを持たせて一哉をバスルームに案内する。

使い方を一通り教えて、ピアスを外しながら戻ろうとすると一哉に抱きすくめられた。

「一緒に入らない?」

一瞬、私の心臓が大きく跳ねた。

が、何でもない風に返事をした。

「…却下。」

「えー?」

元々、ダメ元だったらしく、直ぐに一哉は離れた。

どうやら、ダメ元でも素直に言葉にしてしまうのが、一哉の癖らしい。

(心臓に悪い…)

 リビングに戻り、バタバタとシーツを替えたり、明日の準備をしながら、一哉が出てくるのを待っていると下にスエット履いて、上半身裸のまま髪の毛を拭きながら一哉が出てきた。

(まぁ…見事な肩幅で…)

着痩せするタイプなのか、白い肌の細マッチョな一哉の肉体美を凝視してしまった。

(コレに抱きつかれているのか、私…)

そう思うと一気に恥ずかしくなるものである。

ん?なんて言いながら首をかしげる一哉の視線から逃げるように、明日の資料を片付け始めた。

「飲み物、冷蔵庫の中にあるから、適当に飲んで。オーディオ使うならどうぞ?」

そう言いながら着替えを持って、私はバスルームに駆け込んだ。





リンパマッサージをしながら、湯船に浸かり自分の身体を眺める。

女の身体と言うのは、男性よりも皮下脂肪が多いし柔らかい構造上、年齢を重ねる毎に地球の重力に負けていく。

それなりにケアしているものの、若い頃に比べれば胸のそねっているし、お尻も…。

こんな身体を一哉に晒すのか…。

しかも…致すのは14年ぶりである。

セカンドバージン期間が長すぎて、完全にバージン状態に戻っていると思われ…色々ハードル高い状況に泣きそうになる。

買い物袋の中にアレが入っていたということは…言葉ではしなくていいと言っていたものの、やっぱりあわよくば致す気なんだろうなぁ…。

一応、それなりにそうならない様に、策は講じたけど…。

まぁ…女は度胸!

なるようにしかならない。

考え込みすぎて逆上せる前に、私はお風呂を出た。




 シルクのパジャマに着替えて、髪の毛をタオルで拭きながら、リビングに戻ると紺色のTシャツを着てリビングのソファーの上に寝転がりうたた寝していた。

「一哉、起きて?」

返事がない…。

軽く腕をタップしてみるが…動かない…。

これは私が自力で運ぶしかない感じだろうか?

なるべくならそれは避けたい。

もう一度強めに揺さぶりながら、一哉を起こしてみる。

「一哉、客間のベッド使えるようにしてあるから、そっちで寝よう?このままじゃ、風邪引いちゃうっ…うわぁ!!」

急に腕を掴まれ引っ張られて、私は前のめりになり、気が付けば一哉の腕の中にダイブしていた。

「なんで客間?」

不機嫌そうに口調で一哉は、生乾きの私の髪の毛を撫でる。

(起きとったんかい!)

騙されかけたことに、ムッとしながら私は説明を始めた。

「…明日は10時出勤だけど…ランチミーティングがあるから色ボケした頭で出勤したくないの。…それに…。」

「それに?」

「その…エッチすること自体…14年ぶりぐらいで…時間がかかると思うの…。ほぼ…バージン状態に戻っていると申しますか…。」

言ってて凄く恥ずかしくなり、私は一哉の胸に顔を埋めた。

「俺、エッチしなくても良いって言ったと思うけど?」

その言葉に、私は顔を上げて一哉をムッと睨む。

「その割りに避妊具を買ったのは、何処のどいつ?」

「…バレてた?」

「バレたくなければ、あんな大きな箱で買わないことね。」

「まぁ…もしかしたらもしかした時の為にと思って…。でもね、エッチしなくても良いって言ったのは本気だよ。出来れば…」

「出来れば?」

「もう少しロマンティックに…」

少し上半身を起こして、啄むような口づけを2~3回、一哉は繰り返す。

「一哉って、意外と乙女?」

「ロマンチストなのは否定しないけど、乙女は心外だな。」

ちょっと嫌そうな顔をしたのも一瞬で、一哉は私の耳元に唇を寄せた。

“一緒に寝よう?”

そう囁かれると甘い目眩がする。

私を立ち上がらせて、一哉は手を繋いだ。

最初は普通に…でも少し躊躇しながら指を絡ませて手を握り直す。

「理彩の寝室は?」

私はリビングに面した一つのドアを指さす。

ゆっくりとした歩幅で私の手を引きながら、そのドアの前にたどり着き、ドアを開けて中に入る。

証明のスイッチを入れると、リビングと同じアジアンリゾート風の天外つきのクインサイズのベッドが光に浮かび上がる。

「理彩の部屋は落ち着くね。」

ベッドの端に腰を掛けながら、一哉は言う。

「そう?」

私がドレッサーに座って髪の毛をブラシで解かしながら返事をする。

ドライヤーを手に取り、スイッチを入れようとしてそれを一哉に取られた。

「俺にやらせて?」

「…いきなり下僕モードですか?」

「ただ、理彩の髪の毛を触りたいだけ。いいでしょ?」

ここで自分でやると言いたかったが、有無を言わせぬ様に、ニコニコしている一哉の笑顔に従うことにした。

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