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恋人編 遅かれ早かれの第一歩
Fast Impact 1
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初の連続お泊まりから数日後、一哉は本格的に私の最寄り駅近辺で、新しい引っ越し先を探し始めた。
どうやら2日間のお泊まりのあと、自宅アパートに帰った一哉は孤独感の半端なさに相当に滅入ったらしく、所謂“スープの冷めない距離”に引っ越しすることを強く決意したらしい。
「実家から出て初めて独り暮らし始めた時よりもキツかった…」
「そんなに?」
思えば水曜日、お互いに残業なく退社出来たので、いつも通り駅で待ち合わせた、その時から一哉の目の下の隈が気になっていたけど…。
「…理彩は寂しくないの?」
いつもと代わりない私を見て、少し拗ねた様に一哉が言う。
「ん…まぁ…ね…」
独り暮らしも長くなれば慣れてしまうもので、可愛く“私も寂しかった!”と言えない私は苦笑いするしかなかった。
お一人様上等!と、吹っ切って生きてきたせいもあって、私は一哉ほどの打撃は受けていなかった。
まぁ…一哉には申し訳ないけど、抱き潰された体力回復に大半の時間を費やさなくてはいけなかった私としては、寂しがる暇がなかったとも言える。
腰・膝ガクガクな状態で、大久保さんの結婚披露のピアノのリハに行かなければならなかったし…。
ただ、ちょっと一人のベッドに温もり不足を感じて寝付きがいつもより悪かったことは、一哉には内緒にしようと思う。
それを口にしてしまえば、ポロッと行ってしまいそうな言葉が喉元にいつも待機しているから…。
言ってしまうのは簡単だけど、それはもしかしたら一哉のプライドを傷付けてしまうかも知れない。
私にとっては、寂しさよりも頭を悩ませる問題であった。
「なかなか良い物件が無いんだよなぁ…」
「この辺は再開発に伴って、どちらかというと分譲マンションの方が多いからね…。一哉が住んでいるところって大学とか多いから、賃貸には困らなかったんじゃない?」
「まぁね…夏場に引っ越しする奴はあんまり居ないし、時期的な問題もあるかもなぁ…。まだ時間あるからのんびり探すしかないけど。」
「私も少しチェックしてみるわ。知り合いに不動産屋さんもいるし。」
「うん、ありがとう!」
そう言いながら一哉はいつも通り、私の手を握って歩き出した。
付き合い始めから当たり前の様に手を繋ぐ一哉に、最初は恥ずかしくてソワソワしたものだけど、最近は慣れた…と思うようにしている。
若い頃なら「幾つになっても手を繋いで歩くカップルや夫婦って素敵!」なんて思ったものだけど、年下の彼氏とのソレは結構勇気もいるし、何処かこそばゆくもある。
何度かそっと一哉の手から逃げようと試みたこともあったけど、笑顔でそれを嗜められたら何も言えなくなってしまったのも大きい。
だから、どんなに頑張っても、年齢差は誤魔化せないし堂々と歩くしかない!と思うことにしたのだ。
周囲の目線を気にしない訳ではないけど…とりあえず
、私のビジョンは野菜人間の街を歩いていることになっている。
今日は単館でしかやってない古い映画を観に行くことにした。
いつもと違ったデートに、一哉も楽しそうだ。
…だがしかし、若者の街を横切り歩いていたせいもあるけど、何となく何時もより居心地が悪い。
わざと囃し立てるヤンチャな若者がいたりするしね…。
「兄様!?」
オマケに、なんだか時代錯誤な呼び方をする女の子の声が聞こえてくるし…。
「彩未香?」
それに答える我が彼氏…って、え!?
い、妹さん???
見れば黒髪ぱっつん、清楚で可愛い制服でも有名な私立高校の制服を着た女の子が本屋さんの前で立っていた。
「なんだ彩未香、寄り道か?」
「兄様こそ、どうしてこちらへ?」
「見れば分かるだろう?デートだよ。」
「…デート!?」
ふと、妹さんと思われるその女の子と私の目があった。
(なんか目許が一哉に少し似てるなぁ…)
なんて思いながら会釈をした。
が、いきなり一哉に似たその目許に涙が溜まり始めた。
(え!?)
いきなりの彼女の涙に当惑していると、一哉から溜め息が聞こえた。
「兄様、太一様との久遠の契りはどうなさいましたの?まさか、このご婦人と爛れた御関係ではございませんわよね?」
(太一くんと…久遠の契り??)
何の事?かと考えていると、彼女は泣き始めた。
「酷いですわ!彩未香は…彩未香は…道々ならぬ兄様の清い菫の恋を応援しておりましたのに…!!」
何を言っているのか分からず、さめざめと泣く美少女にオロオロしていると、一哉は眉間に深く皺を寄せながらハァ…と黒い息を吐き出し、彩未香さんの脳天に手刀を喰らわした。
「あうっ!!」
「黙れ、この腐れBL脳娘!公衆の面前で、実の兄貴を有り得ん妄想で汚すな!」
「…」
一哉の妹、彩未香さんは…所謂、腐女子だった。
どうやら2日間のお泊まりのあと、自宅アパートに帰った一哉は孤独感の半端なさに相当に滅入ったらしく、所謂“スープの冷めない距離”に引っ越しすることを強く決意したらしい。
「実家から出て初めて独り暮らし始めた時よりもキツかった…」
「そんなに?」
思えば水曜日、お互いに残業なく退社出来たので、いつも通り駅で待ち合わせた、その時から一哉の目の下の隈が気になっていたけど…。
「…理彩は寂しくないの?」
いつもと代わりない私を見て、少し拗ねた様に一哉が言う。
「ん…まぁ…ね…」
独り暮らしも長くなれば慣れてしまうもので、可愛く“私も寂しかった!”と言えない私は苦笑いするしかなかった。
お一人様上等!と、吹っ切って生きてきたせいもあって、私は一哉ほどの打撃は受けていなかった。
まぁ…一哉には申し訳ないけど、抱き潰された体力回復に大半の時間を費やさなくてはいけなかった私としては、寂しがる暇がなかったとも言える。
腰・膝ガクガクな状態で、大久保さんの結婚披露のピアノのリハに行かなければならなかったし…。
ただ、ちょっと一人のベッドに温もり不足を感じて寝付きがいつもより悪かったことは、一哉には内緒にしようと思う。
それを口にしてしまえば、ポロッと行ってしまいそうな言葉が喉元にいつも待機しているから…。
言ってしまうのは簡単だけど、それはもしかしたら一哉のプライドを傷付けてしまうかも知れない。
私にとっては、寂しさよりも頭を悩ませる問題であった。
「なかなか良い物件が無いんだよなぁ…」
「この辺は再開発に伴って、どちらかというと分譲マンションの方が多いからね…。一哉が住んでいるところって大学とか多いから、賃貸には困らなかったんじゃない?」
「まぁね…夏場に引っ越しする奴はあんまり居ないし、時期的な問題もあるかもなぁ…。まだ時間あるからのんびり探すしかないけど。」
「私も少しチェックしてみるわ。知り合いに不動産屋さんもいるし。」
「うん、ありがとう!」
そう言いながら一哉はいつも通り、私の手を握って歩き出した。
付き合い始めから当たり前の様に手を繋ぐ一哉に、最初は恥ずかしくてソワソワしたものだけど、最近は慣れた…と思うようにしている。
若い頃なら「幾つになっても手を繋いで歩くカップルや夫婦って素敵!」なんて思ったものだけど、年下の彼氏とのソレは結構勇気もいるし、何処かこそばゆくもある。
何度かそっと一哉の手から逃げようと試みたこともあったけど、笑顔でそれを嗜められたら何も言えなくなってしまったのも大きい。
だから、どんなに頑張っても、年齢差は誤魔化せないし堂々と歩くしかない!と思うことにしたのだ。
周囲の目線を気にしない訳ではないけど…とりあえず
、私のビジョンは野菜人間の街を歩いていることになっている。
今日は単館でしかやってない古い映画を観に行くことにした。
いつもと違ったデートに、一哉も楽しそうだ。
…だがしかし、若者の街を横切り歩いていたせいもあるけど、何となく何時もより居心地が悪い。
わざと囃し立てるヤンチャな若者がいたりするしね…。
「兄様!?」
オマケに、なんだか時代錯誤な呼び方をする女の子の声が聞こえてくるし…。
「彩未香?」
それに答える我が彼氏…って、え!?
い、妹さん???
見れば黒髪ぱっつん、清楚で可愛い制服でも有名な私立高校の制服を着た女の子が本屋さんの前で立っていた。
「なんだ彩未香、寄り道か?」
「兄様こそ、どうしてこちらへ?」
「見れば分かるだろう?デートだよ。」
「…デート!?」
ふと、妹さんと思われるその女の子と私の目があった。
(なんか目許が一哉に少し似てるなぁ…)
なんて思いながら会釈をした。
が、いきなり一哉に似たその目許に涙が溜まり始めた。
(え!?)
いきなりの彼女の涙に当惑していると、一哉から溜め息が聞こえた。
「兄様、太一様との久遠の契りはどうなさいましたの?まさか、このご婦人と爛れた御関係ではございませんわよね?」
(太一くんと…久遠の契り??)
何の事?かと考えていると、彼女は泣き始めた。
「酷いですわ!彩未香は…彩未香は…道々ならぬ兄様の清い菫の恋を応援しておりましたのに…!!」
何を言っているのか分からず、さめざめと泣く美少女にオロオロしていると、一哉は眉間に深く皺を寄せながらハァ…と黒い息を吐き出し、彩未香さんの脳天に手刀を喰らわした。
「あうっ!!」
「黙れ、この腐れBL脳娘!公衆の面前で、実の兄貴を有り得ん妄想で汚すな!」
「…」
一哉の妹、彩未香さんは…所謂、腐女子だった。
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