うさメンに噛まれてあげる!

真田 真幸

文字の大きさ
4 / 18

変な人

しおりを挟む
 夕方になりスタッフの手によって、キャンドルで飾られてたイングリッシュガーデン風の庭を、私はもう一つの控え室のバルコニーから眺めていた。

コンセプトは、“彼と過ごすサプライズな夜”

先程まで、彼は着崩したYシャツ姿でシャンパン(ノンアルコール)を振りまくり庭で大暴れしていた。

勿論、グラビアの演出の為である。

 自らもシャンパン(ノンアルコール)を浴びて、すっかりずぶ濡れになった彼は、現在入浴中。

ついでに入浴ショットも撮ろうと、キミちゃんと話していたので、女子スタッフは休憩時間となり私以外は近くのコンビニに買い出しに出掛けた。

 不意に庭に幻想的な電飾の光が灯り、更にロマンチックな空間になった。

早めにこのレンタルハウスの庭にイルミネーションを施されているのは、これからハロウィンやクリスマスを迎える為のイベントを先取りした演出なのだろう。

私は近くで眺めてみたくて、寒さ対策に持参した、チェック柄のストールを肩に羽織り庭に降りた。

暫く庭を散歩していると、茂みから赤いリボンの首輪をつけた鯖トラ柄の子猫が甘えた鳴き声を上げながらヨチヨチと歩いて出てきた。

(キャー!可愛い~~!!)

子猫がビックリしないように、私は声を最小限に潜めて子猫を見つめた。

「君はこの辺の飼い猫なの?」

子猫は私の質問に不思議そうに首を傾げていたが、急にしゃがんでいた私の膝をヨジヨジ登り、膝の上で行儀よく前足を揃え長い尻尾をくるんと巻き付けて座った。

「フフフ…お利口さんだね。」

私が頭を撫でると子猫はくすぐったそうに片目を閉じた。

「…木原さん?」

その声に振り向くと、お風呂上がりの彼が髪の毛を拭きながらバスローブ姿でウッドデッキに立っていた。

「宇佐美さん、お風呂の撮影はもう終わったんですか?」

「ええ、今、キミちゃんがお風呂に入ってます。
さっき、僕のシャンパンファイトの巻き添えを食らってましたから…」

「そうですか。」

「木原さんは?」

「この子と、お話してました。」

庭に出てきた彼は、私の隣にしゃがみ込み、すっかり私の膝の上で寛いでいる子猫の姿を除き込んだ。

「贅沢だなぁ…お前。木原さんの膝の上で毛繕いしているなんて…。」

「人懐っこくて可愛いですよね!」

「まぁ…♀みたいだし…」

彼はそっぽ向いて、ブツブツと何か言っている。

「宇佐美さん、何か言いましたか?」

「いいえ!なんでもありません!」

膝の上で子猫が抱っこをねだる仕草をしたので、抱き上げると子猫は私の口元にチョンッとキスをしてきた。

「ハハハ…キスされちゃった。君は私のことそんなに気に入ってくれたの?」

そう子猫に話しかけてると、彼は目を瞠って私と子猫を見た。

「き、キス…」

またしても彼はそっぽ向いて、ボソボソと何か呟いている。

「あの…宇佐美さん、どうかしました?」

「い、いいえ…な、何でもありま…せん。」

そのあとも、子猫から2度程キスをされたが、その度に彼の様子がおかしくなっていた。

(変な人…)

 冷たい風が吹いたので、そろそろ中に戻ろうと私は子猫を地面に下ろして中に戻ろうと立ち上がった。

「…っ」

一瞬、クラッと目の前が回り、私はバランスを崩して倒れそうになった。

「木原さん!」

寝不足と疲れから立ち眩みを起こしたことを自覚した時、私は既に逞しい彼の腕の中に抱き込まれていた。

「す、すみません!立ち眩みがしたみたいで…。もう、大丈夫ですから。」

彼に私の言葉は聞こえなかったのだろうか?

急いで離れようとした私の動きを封じるように、彼は私を横抱きすると、レンタルハウスの中へと歩き出していた。

「う、宇佐美さん!?」

「あんまり立ち眩みを甘く見ない方が良いです。バスローブで良いですから、しっかり掴まって下さい。控え室まで僕が運びます。」

「けっ、結構です!ももも、もう大丈夫ですから!」

「子猫には無防備に唇を預けたのに、貴女を心配している僕には貴女を抱き上げて運ぶことさえ許してはくれないんですか?」

彼は深い溜め息のあと、拗ねた様に眉を歪めて私を見下ろした。

間近で、その端整な顔で、そんな表情するのは止めて頂きたい。

心臓に悪すぎる。

(他の女の子なら色々勘違いを起こしそうだわ…)

私はしっかりと彼を見上げて、反論した。

「子猫と宇佐美さんは動物と人間でそもそも括りが違うじゃないですか!」

「違いませんよ?子猫も僕も同じ様に貴女に好意を持ってます。」

(そこは動物相手に張り合うところなんだろうか…?)

そう考え込んでいると廊下に出ると運悪く、キミちゃんがさっぱりした顔でバスルームから出てきた。

「なんだお前ら、いつの間にそんな仲になったんだよ?」

「そ、そんな仲って、どんな仲よ!?」

「見ようによっては…、そうだな、ベッドイン前のカップルだろう?樹はバスローブ姿だし。」

私はハクハクと言葉なく口を動かし、声は出なくとも抗議しようとキミちゃんを睨み付けた。

「28歳になってまで、本当に反応が初《うぶ》だよなぁ…お前。」

ニッと意地悪く笑ったキミちゃんに、反論しようと私は彼の腕の中でジタバタしたけど、結局下ろして貰えず、私は彼に控え室のソファーまで運ばれた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

恋と首輪

山猫
恋愛
日本屈指の名門・城聖高校には、生徒たちが逆らえない“首輪制度”が存在する。 絶対的支配者・東雲財閥の御曹司、東雲 蓮の「選んだ者」は、卒業まで彼の命令に従わなければならない――。 地味で目立たぬ存在だった月宮みゆは、なぜかその“首輪”に選ばれてしまう。 冷酷非情と思っていた蓮の、誰にも見せない孤独と優しさに触れた時、みゆの心は静かに揺れはじめる。 「おめでとう、今日から君は俺の所有物だ。」 イケメン財閥御曹司 東雲 蓮 × 「私はあなたが嫌いです。」 訳あり平凡女子 月宮 みゆ 愛とか恋なんて馬鹿らしい。 愚かな感情だ。 訳ありのふたりが、偽りだらけの学園で紡ぐカーストラブ。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

一条さん結婚したんですか⁉︎

あさとよる
恋愛
みんなの憧れハイスペックエリートサラリーマン『一条 美郷(※超イケメン)』が、結婚してしまった⁉︎ 嫁ラブの旦那様と毒舌地味嫁(花ちゃん)....とっ!その他大勢でお送りしますっ♡ ((残念なイケメンの一途過ぎる溺愛♡))のはじまりはじまり〜 ⭐︎本編は完結しております⭐︎ ⭐︎番外編更新中⭐︎

処理中です...