5 / 18
過保護な人柄
しおりを挟む
スタッフや編集の私たちの控え室は客室。
主寝室はブラウンを基調としたアーバンな落ち着いた雰囲気だが、こちらの客室は白と淡いピンクを貴重としたアンティーク調にまとめられた部屋になっている。
女性スタッフに受けが良く“ここに住みたい!”と言い出す子もいた。
28歳の私には…ちょっぴり気恥ずかしい色合いの空間。
そんな空間にバスローブ姿の彼が居るのも、また違和感なんだけど…。
当の本人は気にしてないのか?
私をソファーに下ろしたあと、備え付けのティーセットを使い、彼は温かいお茶をマグカップに入れて私に差し出した。
「有り難うございます。」
私が有り難く受け取ると、彼は私の前に跪いて心配そうに見上げた。
「撮影の方は、あとワンポーズだけですし木原さんはここで少し休んでて下さい。」
「あとワンポーズなら大丈夫です。ちゃんと宇佐美さんの仕事を見届けます。」
「この後も、仕事もあるんでしょう?」
「平気です。貧血性の立ち眩みじゃありませんし。」
彼は私の目を見つめる。
私の真意を図ろうとしている目だ。
(なんていうか…赤の他人の私に随分と過保護な人だなぁ…。)
「もう4年、この業界で働いているんです。立ち眩み一つで仕事を投げ出すほど、そんなに柔に出来てません。宇佐美さんの心配して下さるお気持ちは嬉しいですが、私の仕事をさせてください。」
彼は私の目をジーッと見て、そのあと諦めた様に深く息を吐き出した。
「…木原さんは意外と強情なんですね。」
「フフフ…可愛げないほど強情なんです、私。」
私の言葉に彼は眉を歪めた。
「…可愛げないなんて、誰かに言われたことあるんですか?」
サラッと流してくれればいいのに、真剣な表情になってしまった。
(困ったなぁ…私もしかして、なんか地雷踏んだ?)
あくまでもライトに笑って誤魔化そうと、私は明るい口調で話す。
「ええ…まぁ…。実際、可愛げないことは自分でも自覚してますから、気にしてません。」
「…そんなこと…そんなことを自分でも言ってはいけません!」
そんな私を彼は叱る。
「こんなは貴女は頑張り屋なのに…可愛げない訳ないじゃないですか!他人からの意見は聞き入れるべきですが、貴女を侮辱する言葉を受け入れる必要はありません!」
「う、宇佐美さん落ち着いて下さい!そんなに、怒らなくても…。」
「怒りますよ!僕は貴女を可愛い人だと思ってます!そんな可愛い貴女を侮辱する人を許せません!例えそれが、貴女自身でも!」
「うっ…すみません…。」
私は彼の勢いに圧されて、気が付くと謝っていた。
(この人は他の女性にも、いつもこんな対応なんだろうか?)
私はマグカップのお茶を一口飲んでから、おずおずと彼に聞いた
「…宇佐美さんは優し過ぎますよ。一々女性にこんな対応していたら、勘違いしちゃう人とかいませんか?」
「勘違い?」
「その…宇佐美さんに好かれているとか…相思相愛なんだとか…」
「いつもはそうでもないですよ。でも…貴女になら、僕は勘違いされたいです、相思相愛だって。」
「はぁ!?」
慌てる私を見て、彼は笑みを浮かべた。
(何がそうでもないですのだろうか?なんか私、からかわれてる?)
なんて言葉を返せば良いのかと、考えあぐねているとノックの音が聞こえた。
「はい!」
「木原さん、撮影の準備が出来ました!」
「分かりました、すぐに行きます!」
私はマグカップをテーブルに置いて立ち上がろうとしたところを、さっき納得してくれた筈の彼が私の両手を掴んで止めた。
「やっぱり、ダメです。木原さんは、ここに居てください。」
「宇佐美さん!」
「木原さんはここで仕事していてください。」
「え?」
「体を休めるのも仕事です。」
「…宇佐美さん、頑固だって言われません?」
「どうでしょうね?まぁ…少なくとも…今、貴女が無理に現場に来ると言うなら、頑固な僕らしく撮影をボイコットして貴女の側から離れませんよ?いいんですか?」
私は目を瞠って彼を見た。
なんでだか艶っぽく笑って彼は私を見上げている。
「どうします?僕は撮影をボイコットしても、貴女と二人っきりで居られるので嬉しいですけど?」
(はっ!!そう言えば、不可抗力とはいえ今、私は彼と二人っきりになってる!!)
二人っきりを自覚した途端に、嫌な汗が背中から出始めていた。
これは、八方塞がりだ。
両手を拘束されている上に、二人っきりだし、撮影ボイコットを盾に取られては、彼の言うことを聞くしかない。
「分かりました…。おとなしくここで仕事してます…。」
渋々返事をすると、彼は両手を放して私の頭を軽く撫でた。
「…イイ子です。」
控え室を出ていく彼の背中を見送ったあと、私は大きく息を吐き出して、ソファーに寝転がった。
主寝室はブラウンを基調としたアーバンな落ち着いた雰囲気だが、こちらの客室は白と淡いピンクを貴重としたアンティーク調にまとめられた部屋になっている。
女性スタッフに受けが良く“ここに住みたい!”と言い出す子もいた。
28歳の私には…ちょっぴり気恥ずかしい色合いの空間。
そんな空間にバスローブ姿の彼が居るのも、また違和感なんだけど…。
当の本人は気にしてないのか?
私をソファーに下ろしたあと、備え付けのティーセットを使い、彼は温かいお茶をマグカップに入れて私に差し出した。
「有り難うございます。」
私が有り難く受け取ると、彼は私の前に跪いて心配そうに見上げた。
「撮影の方は、あとワンポーズだけですし木原さんはここで少し休んでて下さい。」
「あとワンポーズなら大丈夫です。ちゃんと宇佐美さんの仕事を見届けます。」
「この後も、仕事もあるんでしょう?」
「平気です。貧血性の立ち眩みじゃありませんし。」
彼は私の目を見つめる。
私の真意を図ろうとしている目だ。
(なんていうか…赤の他人の私に随分と過保護な人だなぁ…。)
「もう4年、この業界で働いているんです。立ち眩み一つで仕事を投げ出すほど、そんなに柔に出来てません。宇佐美さんの心配して下さるお気持ちは嬉しいですが、私の仕事をさせてください。」
彼は私の目をジーッと見て、そのあと諦めた様に深く息を吐き出した。
「…木原さんは意外と強情なんですね。」
「フフフ…可愛げないほど強情なんです、私。」
私の言葉に彼は眉を歪めた。
「…可愛げないなんて、誰かに言われたことあるんですか?」
サラッと流してくれればいいのに、真剣な表情になってしまった。
(困ったなぁ…私もしかして、なんか地雷踏んだ?)
あくまでもライトに笑って誤魔化そうと、私は明るい口調で話す。
「ええ…まぁ…。実際、可愛げないことは自分でも自覚してますから、気にしてません。」
「…そんなこと…そんなことを自分でも言ってはいけません!」
そんな私を彼は叱る。
「こんなは貴女は頑張り屋なのに…可愛げない訳ないじゃないですか!他人からの意見は聞き入れるべきですが、貴女を侮辱する言葉を受け入れる必要はありません!」
「う、宇佐美さん落ち着いて下さい!そんなに、怒らなくても…。」
「怒りますよ!僕は貴女を可愛い人だと思ってます!そんな可愛い貴女を侮辱する人を許せません!例えそれが、貴女自身でも!」
「うっ…すみません…。」
私は彼の勢いに圧されて、気が付くと謝っていた。
(この人は他の女性にも、いつもこんな対応なんだろうか?)
私はマグカップのお茶を一口飲んでから、おずおずと彼に聞いた
「…宇佐美さんは優し過ぎますよ。一々女性にこんな対応していたら、勘違いしちゃう人とかいませんか?」
「勘違い?」
「その…宇佐美さんに好かれているとか…相思相愛なんだとか…」
「いつもはそうでもないですよ。でも…貴女になら、僕は勘違いされたいです、相思相愛だって。」
「はぁ!?」
慌てる私を見て、彼は笑みを浮かべた。
(何がそうでもないですのだろうか?なんか私、からかわれてる?)
なんて言葉を返せば良いのかと、考えあぐねているとノックの音が聞こえた。
「はい!」
「木原さん、撮影の準備が出来ました!」
「分かりました、すぐに行きます!」
私はマグカップをテーブルに置いて立ち上がろうとしたところを、さっき納得してくれた筈の彼が私の両手を掴んで止めた。
「やっぱり、ダメです。木原さんは、ここに居てください。」
「宇佐美さん!」
「木原さんはここで仕事していてください。」
「え?」
「体を休めるのも仕事です。」
「…宇佐美さん、頑固だって言われません?」
「どうでしょうね?まぁ…少なくとも…今、貴女が無理に現場に来ると言うなら、頑固な僕らしく撮影をボイコットして貴女の側から離れませんよ?いいんですか?」
私は目を瞠って彼を見た。
なんでだか艶っぽく笑って彼は私を見上げている。
「どうします?僕は撮影をボイコットしても、貴女と二人っきりで居られるので嬉しいですけど?」
(はっ!!そう言えば、不可抗力とはいえ今、私は彼と二人っきりになってる!!)
二人っきりを自覚した途端に、嫌な汗が背中から出始めていた。
これは、八方塞がりだ。
両手を拘束されている上に、二人っきりだし、撮影ボイコットを盾に取られては、彼の言うことを聞くしかない。
「分かりました…。おとなしくここで仕事してます…。」
渋々返事をすると、彼は両手を放して私の頭を軽く撫でた。
「…イイ子です。」
控え室を出ていく彼の背中を見送ったあと、私は大きく息を吐き出して、ソファーに寝転がった。
0
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
恋と首輪
山猫
恋愛
日本屈指の名門・城聖高校には、生徒たちが逆らえない“首輪制度”が存在する。
絶対的支配者・東雲財閥の御曹司、東雲 蓮の「選んだ者」は、卒業まで彼の命令に従わなければならない――。
地味で目立たぬ存在だった月宮みゆは、なぜかその“首輪”に選ばれてしまう。
冷酷非情と思っていた蓮の、誰にも見せない孤独と優しさに触れた時、みゆの心は静かに揺れはじめる。
「おめでとう、今日から君は俺の所有物だ。」
イケメン財閥御曹司
東雲 蓮
×
「私はあなたが嫌いです。」
訳あり平凡女子
月宮 みゆ
愛とか恋なんて馬鹿らしい。 愚かな感情だ。
訳ありのふたりが、偽りだらけの学園で紡ぐカーストラブ。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
一条さん結婚したんですか⁉︎
あさとよる
恋愛
みんなの憧れハイスペックエリートサラリーマン『一条 美郷(※超イケメン)』が、結婚してしまった⁉︎
嫁ラブの旦那様と毒舌地味嫁(花ちゃん)....とっ!その他大勢でお送りしますっ♡
((残念なイケメンの一途過ぎる溺愛♡))のはじまりはじまり〜
⭐︎本編は完結しております⭐︎
⭐︎番外編更新中⭐︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる