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4話ーざ・名案ー

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そして時は6時間後となり、次の日の朝となった

勿論一睡もしていない

出来る訳があるはずがない

その為私の目の下には見事なクマが浮かんでいた

白米だけと言う朝ご飯を貪るように食べながらコクリコクリと睡魔と戦う

「伊織ちゃん、ちょっと話があるんだ」

賢治さんが話しかけてくる

「今は脳内戦争中だ。話しかけると火傷するぜ?」

と言いたい所だが、白米をハムスターのように頬張っていた為、悔しくも何も言えなかった

「実は僕には伊織ちゃんと同い年の1人息子が居るんだ。で、多分伊織ちゃんと同じクラスだと思うんだけど、一緒に帰って来てくれるかな?あいつまだここの場所がわかってないからね。

頼んでも良いかな?」

話は半分程聞いていたが、取り敢えず首肯いといた

良かった、と安直の笑みを浮かべている賢治さんを横目に、私はお茶碗を流しに置いてカバンを手に取り、「行ってきます」とシンプルに挨拶して家を出た

天気は少々曇り気味で私の眠気を煽る

歩いてる間もずっとあの如月賢治とやらに対する文句をぶつくさ呟いていた

はたから見たら何という不審者なのだろう

歩いている時も2人の小学生とすれ違った後、後ろからヒソヒソと影口であろう小言が聞こえてきた

何だか左胸辺りが虚しくなったので独り言は辞める事にした

それでも賢治さんに対する文句は止まらない

私は今、脳内ぶつくさ文句オンパレードなのだ、そうなのだ

そんな私の無に等しい脳に名案が浮かんだ

賢治さんは1人息子が居ると言っていた

その息子を取り込んで2人の再婚を阻止すれば良いのではないのか?

我ながら天才的な案だ

「さて、そうと決まれば息子探しだ!」



言いたい所だが…

「息子の名前聴くの忘れた…」

全く…私は天才なんだか馬鹿なんだかわからないぜ…

「え?何言ってんの?いおりんはいつだって馬鹿じゃん?」



びっくりした…

私の背後から急に話しかけてきた張本人は私の親友の桐山優葉だった

私は若干開いていた口を無理矢理閉じて優葉に向き直った

「スーちゃん…急に話しかけないでよね…
それとどうやって私の心を読んだ、それに馬鹿って…」

呆れ気味の顔で言う私の事などどうでも良い様子で続ける

「声に出てたよ、ほら行こ?遅れちゃう」

ハッとして携帯の電源を入れて時間を見る

「ヤッベ、ホント遅れる!」

言い終わったと同時に私達は学校に向かって駆け出した



>>第5話ー虐められっ子ー
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