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まずは自己紹介的なお話など
2 ハロー、鶏ガラ
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晴れて夫から真新しい愛称を賜ったわけだが、ありがたみは微塵もなかった。呼びたいのならお好きにどうぞといった具合だ。しかし、呼ばれ始めると、「どすこいとはなんぞや」という疑問が浮上した。
どすこいと聞いて思い浮かぶは、筋骨逞しいアスリートである大相撲の力士だ。だが私はアスリートとは程遠い。筋なるものは緩みきった主婦である。
親友のスー女(相撲大好き女子)に探りを入れたりと少々調べてみると、「相撲甚句の掛け声」であるということが分かった。ざっくり説明すれば「民謡の囃子言葉」と言えよう。手拍子をしながら入れる合いの手に「どすこい」をつかうのだとか。
言葉の意味を知り得たところで、これといって喜びは湧いてこなかった。手にしたのは豆知識のみである。
肥満とは、体重に占める脂肪の割合が正常以上である場合を指す。体格指数だか体脂肪率だかを割り出し、それが一定値以上であると定義されるらしい。らしいというのは、文章として理解出来るが、実際よく分かっていないからだ。
「あなたの数値は〇〇で、△△以上だから肥満ね!」
あ~、はいはい。
左様でございますかと言う他ないではないか。
文系脳である私は、数値化されてもよく分からない。体重割る身長の~と説明を受けても、計算式も数字が指し示すロジックも理解できない。どぉりゃ! と贅肉をぶった切れるものならば前のめりにもなるが、わざわざ自分が肥満体であると知るために小難しい計算をするなどノンノン。御免こうむる。
少しだけ過去を話すと、小学校中学年の時「あなたは肥満児であるので改善が必要です」と、突如学校の保健部から個人指導を賜った経験がある。
こちとら肥満とともに成長し、肥満と隣り合わせで生きてきた。
見た目で太り気味なのは分かるし、将来的に健康被害が出そうな雰囲気というのは動物的な勘で感じ取っている。わざわざ難しい言葉を並べてくださらなくてもよろしくてよ? と抵抗したい。
……と、まぁこんな強気な発言をすると、夫から「だからあなたはどすこいなんだ」と突っ込まれるのだが。
肥満歴が長い私だが、「ブヨブヨ」と表現するよりは「がっちりがっしりの大柄」タイプだと理解している。
私をイメージするには、「元女子プロレスラーで今鬼嫁」というキャラクターの女性タレントを思い浮かべて頂きたい。実際のところ筋肉質ではないのだが、がっしりとした骨格があっての「どっしり」とした雰囲気は掴んで頂けると思う。
そして夫はといえば、ジャンガジャンガでおなじみのコンビ芸人を思い浮かべて頂きたい。顔は違うが、体型は酷似している。夫に、件の芸人の持ちネタである「タカアシガニのモノマネ」のモノマネをリクエストしたことがある。煽っておいてなんだが、気持ちの悪さには度肝を抜かれたので、イメージとしては間違いがないはずだ。
新婚当時は「タカアシガニと鬼嫁」のカップルだが、付き合い始めた当初は「ノッポさんとゴン太くん」などと呼ばれていた。そう、80年代を代表する懐かしの教育番組のメインキャストである。どちらにせよ、そういうことだ。
時を経て、「どすこい」も板に付いて来た。新妻はいつしか経産婦となり、次なるステージ(勝手な愛称)へこっそり昇格している可能性が高い。
「私って、まだどすこい?」
「あなたに非どすこいな時期はない!」
質問が言葉足らずであったと反省しつつも、「どすこい」か「非どすこい」かのあまりにざっくりした仕分けにぞっとした。
私個人の認識は、「おデブちゃんは、むっちりとぽっちゃりに大きく二分される」というものだ。大柄女子の偏見ではあるが、一つの意見であり、私にとっては基準である。
それを踏まえて、夫に肥満体型を細分化させてみたところ、驚くべき回答を得られたのである。
むっちり<ぽっちゃり<おデブちゃん<デブ<どすこい
まさかである。
項目が多い。
二度言うが、まさかである。数学記号を用いて順序集合で表してくるとは思いもよらなかった。ちなみに痩せ型を含めたどすこい以外の総称を非どすこいとしているらしい。
「これだと「どすこい」は極みじゃないか」
「プププッ。 そういうことになるね」
「どう考えても『硬めぽっちゃり型』に属してんだろがぃ」
「それ! それが不思議でしょうがない!」
肥満体型の細分化が新たな火種となった瞬間である。
「なぜあなたのようなどすこいが、自分のことをぽっちゃりなどと言う?」
合コン時における前情報で言えば、年齢に次ぐ身分詐称問題だと提議されてしまった。ここまで言われては、ぽっちゃり女子として応戦する。
そもそもの話になるが、こちとら「どすこい」などというカテゴリーは設けていない。
少々肉付きの良いセクシー系を「むっちり」、そして少々肉付きの良い可愛い系を「ぽっちゃり」と定義している。経験による色気を纏いしアラフィフ世代ともなれば、否応なしに「むっちり」に分類することになる。
「性格を査定条件にいれた結果、」
なんだと?
「あなたはどすこい!」
肥満度に限った話ではなく、人柄の指標でもあるだと?
盲点であった。
愛嬌や親しみやすさを加算しているというではないか。女性視点での二分化論法より、幾分精査されているのには驚きだ。
それにしても、彼が言うところの「図々しくて腹立たしい自称ぽっちゃり」が自分の嫁であると気付いているのだろうか。
「ぽっちゃりは可愛い。理想。それに比べ、どすこい、、、というかあなた。全ての体液または分泌液に脂が上澄んでいそう」
「私限定で上澄み液⁉」
夏の肌のベタつきの原因はもちろん、採血すれば上部に脂の層が出来るだろうと真面目な顔で言いのける。どう考えても人間の細胞がそこまで肥大化するとは思えない。これはもう細胞の話ではなく、体液が脂であるのではないか。血管に脂菅が並走している。もしくは血管は脂菅コーティングされて守られていると睨んでいる、と。
正直、夫が何を言っているのかさっぱり分からなかった。
「いや、もう。馬鹿なの? というか、私人間なの? 煮凝り作成マシーンなの?」
「しかも濁っている」
「薄汚れているとこ見たんかっ」
「あなたの入ったあとの風呂は良い出汁とれてる。豚骨チャーシューメン背脂マシって感じ」
「なんだと! この鶏ガラ野郎がぁ~っ」
ということで、「タカアシガニと鬼嫁」改め「鶏ガラとどすこい」と相成りました。
どすこいと聞いて思い浮かぶは、筋骨逞しいアスリートである大相撲の力士だ。だが私はアスリートとは程遠い。筋なるものは緩みきった主婦である。
親友のスー女(相撲大好き女子)に探りを入れたりと少々調べてみると、「相撲甚句の掛け声」であるということが分かった。ざっくり説明すれば「民謡の囃子言葉」と言えよう。手拍子をしながら入れる合いの手に「どすこい」をつかうのだとか。
言葉の意味を知り得たところで、これといって喜びは湧いてこなかった。手にしたのは豆知識のみである。
肥満とは、体重に占める脂肪の割合が正常以上である場合を指す。体格指数だか体脂肪率だかを割り出し、それが一定値以上であると定義されるらしい。らしいというのは、文章として理解出来るが、実際よく分かっていないからだ。
「あなたの数値は〇〇で、△△以上だから肥満ね!」
あ~、はいはい。
左様でございますかと言う他ないではないか。
文系脳である私は、数値化されてもよく分からない。体重割る身長の~と説明を受けても、計算式も数字が指し示すロジックも理解できない。どぉりゃ! と贅肉をぶった切れるものならば前のめりにもなるが、わざわざ自分が肥満体であると知るために小難しい計算をするなどノンノン。御免こうむる。
少しだけ過去を話すと、小学校中学年の時「あなたは肥満児であるので改善が必要です」と、突如学校の保健部から個人指導を賜った経験がある。
こちとら肥満とともに成長し、肥満と隣り合わせで生きてきた。
見た目で太り気味なのは分かるし、将来的に健康被害が出そうな雰囲気というのは動物的な勘で感じ取っている。わざわざ難しい言葉を並べてくださらなくてもよろしくてよ? と抵抗したい。
……と、まぁこんな強気な発言をすると、夫から「だからあなたはどすこいなんだ」と突っ込まれるのだが。
肥満歴が長い私だが、「ブヨブヨ」と表現するよりは「がっちりがっしりの大柄」タイプだと理解している。
私をイメージするには、「元女子プロレスラーで今鬼嫁」というキャラクターの女性タレントを思い浮かべて頂きたい。実際のところ筋肉質ではないのだが、がっしりとした骨格があっての「どっしり」とした雰囲気は掴んで頂けると思う。
そして夫はといえば、ジャンガジャンガでおなじみのコンビ芸人を思い浮かべて頂きたい。顔は違うが、体型は酷似している。夫に、件の芸人の持ちネタである「タカアシガニのモノマネ」のモノマネをリクエストしたことがある。煽っておいてなんだが、気持ちの悪さには度肝を抜かれたので、イメージとしては間違いがないはずだ。
新婚当時は「タカアシガニと鬼嫁」のカップルだが、付き合い始めた当初は「ノッポさんとゴン太くん」などと呼ばれていた。そう、80年代を代表する懐かしの教育番組のメインキャストである。どちらにせよ、そういうことだ。
時を経て、「どすこい」も板に付いて来た。新妻はいつしか経産婦となり、次なるステージ(勝手な愛称)へこっそり昇格している可能性が高い。
「私って、まだどすこい?」
「あなたに非どすこいな時期はない!」
質問が言葉足らずであったと反省しつつも、「どすこい」か「非どすこい」かのあまりにざっくりした仕分けにぞっとした。
私個人の認識は、「おデブちゃんは、むっちりとぽっちゃりに大きく二分される」というものだ。大柄女子の偏見ではあるが、一つの意見であり、私にとっては基準である。
それを踏まえて、夫に肥満体型を細分化させてみたところ、驚くべき回答を得られたのである。
むっちり<ぽっちゃり<おデブちゃん<デブ<どすこい
まさかである。
項目が多い。
二度言うが、まさかである。数学記号を用いて順序集合で表してくるとは思いもよらなかった。ちなみに痩せ型を含めたどすこい以外の総称を非どすこいとしているらしい。
「これだと「どすこい」は極みじゃないか」
「プププッ。 そういうことになるね」
「どう考えても『硬めぽっちゃり型』に属してんだろがぃ」
「それ! それが不思議でしょうがない!」
肥満体型の細分化が新たな火種となった瞬間である。
「なぜあなたのようなどすこいが、自分のことをぽっちゃりなどと言う?」
合コン時における前情報で言えば、年齢に次ぐ身分詐称問題だと提議されてしまった。ここまで言われては、ぽっちゃり女子として応戦する。
そもそもの話になるが、こちとら「どすこい」などというカテゴリーは設けていない。
少々肉付きの良いセクシー系を「むっちり」、そして少々肉付きの良い可愛い系を「ぽっちゃり」と定義している。経験による色気を纏いしアラフィフ世代ともなれば、否応なしに「むっちり」に分類することになる。
「性格を査定条件にいれた結果、」
なんだと?
「あなたはどすこい!」
肥満度に限った話ではなく、人柄の指標でもあるだと?
盲点であった。
愛嬌や親しみやすさを加算しているというではないか。女性視点での二分化論法より、幾分精査されているのには驚きだ。
それにしても、彼が言うところの「図々しくて腹立たしい自称ぽっちゃり」が自分の嫁であると気付いているのだろうか。
「ぽっちゃりは可愛い。理想。それに比べ、どすこい、、、というかあなた。全ての体液または分泌液に脂が上澄んでいそう」
「私限定で上澄み液⁉」
夏の肌のベタつきの原因はもちろん、採血すれば上部に脂の層が出来るだろうと真面目な顔で言いのける。どう考えても人間の細胞がそこまで肥大化するとは思えない。これはもう細胞の話ではなく、体液が脂であるのではないか。血管に脂菅が並走している。もしくは血管は脂菅コーティングされて守られていると睨んでいる、と。
正直、夫が何を言っているのかさっぱり分からなかった。
「いや、もう。馬鹿なの? というか、私人間なの? 煮凝り作成マシーンなの?」
「しかも濁っている」
「薄汚れているとこ見たんかっ」
「あなたの入ったあとの風呂は良い出汁とれてる。豚骨チャーシューメン背脂マシって感じ」
「なんだと! この鶏ガラ野郎がぁ~っ」
ということで、「タカアシガニと鬼嫁」改め「鶏ガラとどすこい」と相成りました。
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