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第1章 転生と脱出編

第2話 どうやら異世界へ転生したようです

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今回、主人公視点はありませんすみませんm(_ _)m
それではお楽しみください

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地球で春人が亡くなった後、白い色で塗られたような空間に1人、ぽつんと立っている人物がいた。
立っている彼女の髪は銀髪で背中には神々しい羽衣を付けており顔は直視出来ないほど整っており胸はEはあるように見える、身体は余計な脂肪がまったく付いていない。
その姿はまるで女神のようだ、人が見たら思わず見惚れ、そしてひれ伏すだろう。
そんな女神のような彼女の手のひらの上である1つの魂が浮いていた。

「はぁ……貴方の魂を探すのにだいぶ苦労したんですよ?いくら私が女神でも特定の魂を輪廻の輪から取り出し抑えるのは簡単な事でないんですから。
今回は全知全能の全能神様に頼んで何とかなりましたが……。」

彼女の言葉に魂の塊は答えない、まるでそのまま「無」を表したようだ。
文字通り今彼は「無」の状態だ。彼女の声はもちろん喋ることさえ出来ないし、自分の存在さえ認識できない、彼は今1つの魂として存在している。

"輪廻の輪″

これは神が住んでいる世界の周りを囲むかのように出来ている一種の異空間だ。
無数にある、神が管理する世界で死んだ生物の魂はまず異空間に吸い込まれ、魂についた記憶や心を全て浄化されそして、無数にある世界の何処かの生物に直接魂が宿る。たまに神の元に魂が降りてくることがあるが、それは一種の「例外」のようなものだ。

降りてきた魂を神がどうするかは基本自由だがほとんどはその神の管理する世界に加護付で生物に宿らせるのだ。
しかしこの輪廻の輪から直接魂を取り出し抑えるのは神でさえ容易には行えない。もしそんな事をしたら異空間に裂け目ができてしまう可能性がありそんな事になると神の管理する各々の世界に多大な影響が出てしまい最悪、世界の幾つかが消滅してしまうのだ。
だが、全能神は他の神々とは違い持つ力や権限が桁違いに強いので簡単にとはいかないものの、異空間の裂け目を開かず安全に魂を確保出来る。

女神の彼女はそれを知っていた為、全能神に頼み、一緒に異空間から春人の魂を時間かけて安全に取り出し抑えた。
しかし、最初全能神に頼んだがダメだと断わられたが彼女は春人の魂について話し説得したのだ。
春人の魂についての内容は・・・。

「私の取り出し抑えようとしている魂は他の魂とは違い存在感が異常に高く異空間でも記憶と心を完全には浄化出来ず、最悪の場合異空間に直接裂け目が出来てしまいます!
手遅れになる前にどうか取り出し抑えて私の世界に導きたいのです!」

この説得により春人の魂を取り出し今現在に至るのだが、取り出し抑えた後全能神が春人の魂を見た時、この魂は神の器があると確信した、しかもそこら辺の神ではなく全能神の器だ。
春人がどうゆう経緯で全能神の器を手に入れたかは分からないが、おそらく地球で魂が生まれた際には既に器を手にしていたのだろう。しかし、春人の魂の漏れでる力に地球の気圧が耐えられる筈はなく漏れ出たままだと地球が消滅してしまうと危機的に感じた魂は無意識に自分の力を封印し漏れでないようにしていたようだ。

魂を取り押さえた後全能神は春人の魂に自分の加護を付け、女神の彼女に渡した。渡そうとした際彼女にもこの魂について話そうと思ったがあえて言わない事にした。それは全能神の少なからずの善意だった。

「この事はあまり言わない方がなにかと良いだろう、トラブルや騒ぎが起きたって良いことはあまり無いからね、でも期待してるよ未来の全能神の器を持つ者よ」

全能神はそう呟くと風に吹かれるようにすぅーとその場から消えた。
そして現在彼女は春人を自分の世界に送るため魂に自分の加護を付けている途中だ。

「善意ある神の力よ、力を求めるかの者に純粋なる巨大な加護を付けたまえ  シャイニング ゴッド ブレイズ。」

これは全能神の加護、そして・・・

「善意ある神の力よ、我純粋なる愛の力を求める、かの者に愛なる溺愛の加護を与えたまえ  ハートフルスレイン!」

女神の彼女の手から神々しい薄桃の入った光が春人の魂へと向かって放たれる。
光は魂を優しく包み込みやがて消えていった。

「いきなり私の世界に連れてきてしまった責めてもの恩賜よ、貴方がこの世界で幸せに生きて行ける事を祈っているわ……そろそろ時間ね、いつまでもここに魂を置いていたら消滅してしまうから早く送るわね……貴方の人生に女神の加護があらんことを……」

彼女は呟き終わると空間から現れた扉を開け春人の魂を扉の中へと入れた。入れ終わると扉を閉めた、するとそのまま扉は空間から消滅し女神の彼女もその空間から風に吹かれるかのようにすぅーと消えいったのだった。

いつか彼女が春人と会う日は来るのだろうか?それはまだ誰にもわからない…………。





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俺は今妻の料理を食べている、妻の料理はとても美味しく仕事に行く時は包などに入れ必ず持っていく程だ。
妻は今妊娠しており、腹が大きく膨らんでいるのが証拠だ。
妻に"2人、3人目″の子供が出来たとわかった時は発狂したものだ。

「ねぇ、あなた」

「ん?なんだ?」

「私、無事にこの子達を産めるかしら?」

実はもうすぐ妻の出産予定日なのだ。
なので今日は街を出て王都へ馬車で向かう予定なのだが、たぶん不安なのだろう、もし上手く産めなかったらとか、この子達に何かあったらどうしようと、俺だって不安だ。だがこのままでは出産の際に影響が出てしまうとも限らないので俺は妻の夫として不安を取り除いてあげなければならない。

「大丈夫、きっと無事に産めるさ、心配する必要はない」

「あなた……」

今は無事に子供が産まれるよう信じるしかない。
俺と妻は無事に産まれるよう心の中で声を出して念じ、不安を取り除いていた。
妻が落ち着いてきたところで俺と妻はテーブルの席を立ち、この"屋敷″の門と向かう。王都へ行く準備などはメイドや執事がしてくれているので俺達は何もしなくても問題ない。

「ジーク様、セレナ様お待ちしておりました」

彼女はこの屋敷のメイド長で名前はミリア、妻のセレナがスラム街に入った時にたまたま見つけて連れて帰って来たときは驚いたものだ。

「準備はもう出来ているか?」

「はい、既に荷物は馬車へと乗せております」

「そうかでは行こうか、王都アルカディアへ」

しかし、俺はもっと注意して行くべきだったのかもしれない。
まさかあんなことになるとは・・・・・・


屋敷から出発してから5日が経過したある日俺とセレナはセルガ村と言う村で宿を取り部屋の中にいた。

「あと2日で王都か」

「そうですね、私達の街からは一週間程かかりますから」

俺達の街と王都はこれでもそんなに遠くないほうだ、場所によってはこれ以上の期間をかけて王都へと行かなければならない。
この世界の多種族の人口は多く、大陸が4つあり1つの大陸に国が7つもある。そのせいか国同士の戦争等が度々起きていたりする。

俺はセレナに下へと行って水を貰ってくる事を伝える。

「セレナ、俺は1階に降りて女将さんから水を貰ってくるから待っていてくれ」

「わかりました、あなt……痛い!!」

「セ、セレナ!おい!しっかりしろ!大丈夫か!?」

セレナが急に床へとお腹を抑えながら倒れてしまったので俺はセレナに無事か確認しようとするがセレナはお腹を抑えうずくまったまま答えない。俺があわあわと焦っていると急に扉のドアがバン!と開かれ、誰かと振り返るとそこにはメイド長のミリアが息を切らしながら部屋に入ってきていた。

「ジーク様!いったいなにが……セレナ様!!」

入ってきたミリアに俺は状況を説明する

「すまないミリア、セレナがお腹を抑えて急に倒れてしまって……」

「なるほど……これはどうやら陣痛が始まったみたいです。すぐに回復魔法士を呼んでください!護衛だけでは足りません!至急村にいる回復魔法士を捜し出して呼んでください!!」

「わかった!ミリア後は頼んだぞ!」

「はい!」

俺はミリアにセレナを任せると急いで宿にいる護衛と使用人達を呼び出しセレナの陣痛が始まったので至急村にいる回復魔法士を捜し出すよう言うとみな村のあちこちに広がり探し始めた。
幸いこの村には上級の回復魔法魔法士が1人と中級が2人、初級が4人居たのですぐに集めることが出来た。しかし、出産中は男は部屋に入れないので女の回復魔法魔法士を合わせて6人程集めた。
早速部屋に入ってもらった。ミリアは回復魔法魔法士が全員入るとジークには出て行くよう言い、ジークが出るとすぐに扉を閉めた。

この世界では医療は存在しない、怪我等や病気は全て魔法で治るため元々必要ないのだ。その為出産の際も回復魔法魔法士が回復魔法をかけながらおこなうのだ。しかし回復魔法魔法士になるには適正が必要で、男は回復魔法の適正者が極端に少ないのだが女性の回復魔法適正者は多く、なぜ女性に回復魔法適正者が多いのかは未だわかっていない。それでも回復魔法適正者はこの世界では1番少ないので回復魔法の魔法士は重宝されるのだ。

セレナの陣痛から既に5時間経過していた。ジークは相変わらずそわそわしており落ち着きが全く見られない。メイドや執事が落ち着かせようとするのだが全然収まらないようだ。

そして更に1時間経過した時だった、「おぎゃーおぎゃー」と部屋の中から赤子の泣き声が聞こえてきたのだ。
ミリアが扉を開け無事産まれた事を告げるとジークは真っ先にセレナと我が子を見ようと部屋の中に入っていった。

部屋の中には2人の赤子を抱くように持ち上げているセレナの姿があった。

「セレナ!産まれたのか!」

「はい無事産まれました、男の子と女の子です」

ジークはセレナからそう聞くと自分の子をまじまじと見た、まだ2人は将来どんな容姿になるのか分からないほど身体全体がまだ小さかった。
自分の我が子を見ているとジークはある事に気付く。

「なぁ、娘の方は大丈夫として息子の方は目を閉じたままで全然泣いてないが大丈夫なのか?」

そう、実はさっきほどから娘の方は元気よくオギャーオギャーと泣いているのだが、息子の方は目を閉じたまま全く泣かないのだ。息はしているようだがやはり産まれてから泣かないことはおかしくついセレナへ聞いてしまう。
その事については周りにいる者も知っているので殆どの人が不安げに息子の方へ視線を向けている。

「……私も最初はおかしいと思って鑑定眼をかけたんだけど状態は良好なのよ、だからまだ不安は残るけど一応大丈夫だと思うわ」

セレナから結果を聞き不安が残るものの取り敢えず状態については問題ないようなのでジークや周りにいる者はほっとする。だが……

「……問題はここからだわ」

セレナの一言で周りにいる者全てがぎょっとする。

「……問題?なにか問題があるのか?」

恐る恐るジークはセレナに問う。
そして少し間が空いた後セレナが口を開く。

「・・・名前 種族 状態以外のステータスが全く見えないのよ……」

「「「「「「え!?」」」」」」

部屋に居る人みんなが思わず驚愕する。それはそうだろう、彼女の鑑定眼はこの世界でもトップクラスに高いと評判なのだから。
そんな彼女でも見れないと言うのだ、そりゃあ驚く。

「セレナ、今のお前の鑑定眼のレベルって……」

「9よ、だけど見れなかった。」

「「「「「「・・・・・・」」」」」」

しばらくの間沈黙が続く。

この世界ではスキルに幾つか種類があり、一般的な、そこそこの努力をすれば基本誰でも取得できるスキルをノーマルスキル。
産まれた時、又は後々にかなり才能があれば取得できるスキルをユニークスキル。
産まれた際に超低確率でしか取得出来ず、その人専用のスキルで後々には絶対に取得されないとされているのがオリジナルスキル。
いつ取得するかわからない又は条件をクリアしたら手に入るスキルを特殊スキルと言う。
以上がこの世界でスキルの種類として認識されているものだ。

しばらく沈黙が続いていたが、それをセレナが打ち砕く。

「……ステータスを見れない原因はこの子が隠蔽を持っていて私よりもレベルが同かそれ以上なのかそれともユニークスキルかオリジナルスキルをこの子が持っているのかもしれないわね」

「なるほどな、それならセレナが鑑定眼で息子のステータスが見れないのも頷ける」

セレナの言葉に周りの人達も「それなら」「なるほど」「一理ある」などと口にしていて、無理矢理に納得しているみたいだ。本人達は気付いていないがちょっと現実逃避しているようだ。

「そういえばまだこの子達の名前を決めてませんでしたね」

「ん?あぁ、確かにそうだな、名前……名前か……」

ジークは名前については全く考えて居なかったのでしばらく考え込む。

「……そうだな、娘の方はアイリで息子の方はレイでどうだ?」

「いい名前ですね、この子達も喜ぶと思いますよ」

「そうか!、よし!今日からは娘はアイリで息子はレイだ!」

ジークがそう宣言すると周りからはパチパチと歓声が沸き起こった。
それから使用人と護衛達は自分達の部屋へと戻り、来てくれた回復魔法魔法士には幾らか手伝いを含め感謝料を渡し帰した。
ジークは妻と産まれたばかりの子供と一緒に一晩を過ごした。

ジークは朝になり起きると1人宿の庭へと出て日課の剣振りを1時間程し、部屋と戻った。部屋に戻ると既にセレナは起きており、ジークはセレナに朝のキスをすると部屋を出て1階の食堂へと行きセレナはまだ出産したばかりで無理に身体を動かすとまだ危ないのでジークとセレナの朝食を貰いまた部屋へと戻る。

俺達は朝食を取ると、今後の方針を決め、解散した。
今後の方針としては明日になればセレナも女神の加護のおかげでだいぶ楽になるはずなので明日の朝には馬車の準備をしてこの村出て街へ戻るつもりだ。

ジークは今日一日中はセレナに付きっきりになるので部屋へと戻る。買い出しなどは使用人達に任せ、護衛には自由行動を取ってもらっている。

ジークは部屋に戻った後セレナとずっと昼まで一緒に過ごし、時折挟んでミリアから菓子や紅茶を貰い飲みながら静かな時間を夫婦同様堪能していた。
しかし次のジークの一言で思わぬ死亡フラグを建てることになってしまう。

「……なんか平和だな、今日一日何事も無く終われば良いが」

「…もうあなたったら心配しすぎよ、ふふふ」

セレナがそう言い終えた途端、急に荒々しく部屋の扉のドアが開けられ護衛の1人が入ってきたのだ。

「た、大変です!!はぁ、はぁ、」

「どうした!?」

「そ、それが、ここから北東方面の方から大量の魔物の大軍がこのセルガ村へと進行中との報告が!」

「な、なんだと!?数は!数はいくつだ!?」

「じゅ、10万です……」

ジークとセレナ、そしてミリアはその報告を聞いた瞬間絶句した。
本来、魔物の大軍は多くて5万程なのだが今回はそれの2倍だと言うのだ。さらに追い討ちのようにとんでもない報告が入る。

「そ、それと魔物10万の後方には下級魔族が3人と上級魔族が1人いるようで…………」

それを聞いた瞬間ミリアは気絶し、ジークとセレナは顔を更に青くさせた。
魔族は知性を持ち、人に近い形をしている種族の事を言う。
魔族は自分の種族以外との交流を拒否しており更には敵対意識を持っているため、魔族の以外の種族からは嫌われており、又は敵対意識を持たれているため、戦争等や争いが頻繁に起こっていたのだ。
ここ数年は大人しかったが、今回のように魔族は急に作戦を練り戦いを仕掛けてくるのだ。
また、魔族と言う種族はどの種族よりも数が少ないが、身体能力や魔法が他の種族と比べて段違いに強く、光属性又は聖属性でないとあまりダメージを稼げないという厄介な耐性を持つ。
下級魔族でも魔物ランクで言うとBランクからA+ランク並にはあり、中級クラスでSからS+、上級クラスにもなるとSSからSS+だ。

それに加えて今回の魔物大軍には低ランクから災害級までいるらしいのではこの村に勝ち目がないことは一目瞭然だ。
いくらジークでも上級クラスの魔族には勝てない。前に1度勝った事があるらしいがその魔族は上級魔族の中で最弱らしくギリギリSSランクだったそうだ。

ジークはすぐに使用人達と護衛を呼び出し、馬車の用意をさせる。
本当はこの村を救いたいが、あきらかに戦力が違い、勝つのはもはや不可能であった。ジークにとって村の人は大事だがプライドを捨ててでもセレナと子供を守りたかったのだ。
馬車を用意した後セレナをジークが背中に背負い子供達をミリアに任せ馬車に乗る。
全員居ることを確認し、ジークは出発するよう声をかけ馬車を走らせる。
街方面から来ているので王都方面には行かず反対側の南方面へと走らせる。

「……すまない、本当にすまない……私は人として失格だ……」


ジークの呟きを最後に、馬車はセルガ村を後にした。











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いかがでしたでしょうか?
思わずこれ以上書いてしまいそうで危なかったです(・∀・;)
今回はなかったですが次回は主人公視点が出てくる可能性もあるかもしれません。かもですよ?
1話5千字を目指してるのですが思わずそれ以上書いてしまうのが悩みですノω・、) ウゥ・・・
ちなみにジークは剣聖、セレナは聖女と呼ばれています。
魔族の説明で全部説明する事はありませんでしたが、種族には上位種族等が存在します!
主人公の強さが分かるまでまだまだ長そうですね







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