173 / 375
7-2
しおりを挟む
7―2
「おーい、ダロに顔中舐めまわされたのか?」
遠くから、ジンさんの声が響いてきた。ダロと一緒に海にいるので、顔についた唾液を洗っているのかと思われたようだ。
「違いますよ」
僕は近寄ってきたジンさんに言い、「ただ、自分で立派な子供になるって言っておきながら、立派な子供ってなんだか、よくわからなくなったんです」と、今まで考えていたことをジンさんに話した。ジンさんは少し考えてから口を開いた。
「たぶん、カラは俺から『お前は立派な子供だ』って言われても、納得しないだろ?」
僕はそう言われ、確かにそうだと思った。
「カラは考え事が好きだからな。例え村中の人から『立派な子供だ』と言われたとしても、自分が納得するまで考え続けるだろうな」
ジンさんは笑いながら、顔を舐めようとしているダロを抑えつけていた。
「結局は、自分で決めるしかないさ。カラは俺の事を、立派な大人だと思っているか?」
ジンさんの問いかけに、僕はすぐさま「はい」と答えた。
「即答だな。けど、俺はまだ納得していない。兄さんの事もあるし、まだ村の発展にも十分に貢献したと思っていない。カラから言われても、俺は納得しないさ」
ジンさんの話を聞き、僕は「じゃあ、どうすればいいんですか?」と聞き返した。
「そうだな。これは兄さんが言っていたことなんだが、兄さんは『自分が考える事を止めていたから、こんなになったんだ』って言っていたな」
「考える事を止めたから、ですか?」
「そう。自分から何も考えず、提案もしなかったから、自分は今のようになってしまったんだって言っていた。今は自分から久慈村の栗やドングリの木の維持・管理、村同士の交流をやっているから、昔の面影はないけどな」
僕はジンさんの話を聞きながら、自分の考えをまとめようとした。
「今の僕には、何も考えも浮かびません」
正直に言うと、ジンさんは「考えているじゃないか?」と言ってきた。
「え、何も思い浮かんでいませんよ?」
「思い浮かぶように、考えているじゃないか?」
ジンさんは僕を揶揄しているわけでもなく、真面目に答えているようだ。
「けど、ただ考えているだけじゃ何も思い浮かばないだろうな」
ジンさんはそう言って、村の方を指した。
「イバがアワの虫取りに忙しそうにしていたんだ。暇ななら手伝ってやるといい」
ジンさんはそう言って、顔を舐めようとしているダロと共に帰っていった。
残された僕は『イバさんが答えを知っているのかな』と考え、その考えをすぐに否定した。
「だって、ジンさんも知らないんだし、イバさんもきっと知らない。考えているだけじゃわからないなら、何か行動してみないと駄目って、ジンさんは言っていたのかな」
僕は呟くようにして立ち上がり、村の隅にあるアワの畑へと走っていった。
理由はない。でも、何かがあるかもしれないからだ。
「おーい、ダロに顔中舐めまわされたのか?」
遠くから、ジンさんの声が響いてきた。ダロと一緒に海にいるので、顔についた唾液を洗っているのかと思われたようだ。
「違いますよ」
僕は近寄ってきたジンさんに言い、「ただ、自分で立派な子供になるって言っておきながら、立派な子供ってなんだか、よくわからなくなったんです」と、今まで考えていたことをジンさんに話した。ジンさんは少し考えてから口を開いた。
「たぶん、カラは俺から『お前は立派な子供だ』って言われても、納得しないだろ?」
僕はそう言われ、確かにそうだと思った。
「カラは考え事が好きだからな。例え村中の人から『立派な子供だ』と言われたとしても、自分が納得するまで考え続けるだろうな」
ジンさんは笑いながら、顔を舐めようとしているダロを抑えつけていた。
「結局は、自分で決めるしかないさ。カラは俺の事を、立派な大人だと思っているか?」
ジンさんの問いかけに、僕はすぐさま「はい」と答えた。
「即答だな。けど、俺はまだ納得していない。兄さんの事もあるし、まだ村の発展にも十分に貢献したと思っていない。カラから言われても、俺は納得しないさ」
ジンさんの話を聞き、僕は「じゃあ、どうすればいいんですか?」と聞き返した。
「そうだな。これは兄さんが言っていたことなんだが、兄さんは『自分が考える事を止めていたから、こんなになったんだ』って言っていたな」
「考える事を止めたから、ですか?」
「そう。自分から何も考えず、提案もしなかったから、自分は今のようになってしまったんだって言っていた。今は自分から久慈村の栗やドングリの木の維持・管理、村同士の交流をやっているから、昔の面影はないけどな」
僕はジンさんの話を聞きながら、自分の考えをまとめようとした。
「今の僕には、何も考えも浮かびません」
正直に言うと、ジンさんは「考えているじゃないか?」と言ってきた。
「え、何も思い浮かんでいませんよ?」
「思い浮かぶように、考えているじゃないか?」
ジンさんは僕を揶揄しているわけでもなく、真面目に答えているようだ。
「けど、ただ考えているだけじゃ何も思い浮かばないだろうな」
ジンさんはそう言って、村の方を指した。
「イバがアワの虫取りに忙しそうにしていたんだ。暇ななら手伝ってやるといい」
ジンさんはそう言って、顔を舐めようとしているダロと共に帰っていった。
残された僕は『イバさんが答えを知っているのかな』と考え、その考えをすぐに否定した。
「だって、ジンさんも知らないんだし、イバさんもきっと知らない。考えているだけじゃわからないなら、何か行動してみないと駄目って、ジンさんは言っていたのかな」
僕は呟くようにして立ち上がり、村の隅にあるアワの畑へと走っていった。
理由はない。でも、何かがあるかもしれないからだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる