『潮が満ちたら、会いに行く』

古代の誇大妄想家

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「おーい、ダロに顔中舐めまわされたのか?」
 遠くから、ジンさんの声が響いてきた。ダロと一緒に海にいるので、顔についた唾液を洗っているのかと思われたようだ。
「違いますよ」
 僕は近寄ってきたジンさんに言い、「ただ、自分で立派な子供になるって言っておきながら、立派な子供ってなんだか、よくわからなくなったんです」と、今まで考えていたことをジンさんに話した。ジンさんは少し考えてから口を開いた。
「たぶん、カラは俺から『お前は立派な子供だ』って言われても、納得しないだろ?」
 僕はそう言われ、確かにそうだと思った。
「カラは考え事が好きだからな。例え村中の人から『立派な子供だ』と言われたとしても、自分が納得するまで考え続けるだろうな」
ジンさんは笑いながら、顔を舐めようとしているダロを抑えつけていた。
「結局は、自分で決めるしかないさ。カラは俺の事を、立派な大人だと思っているか?」
 ジンさんの問いかけに、僕はすぐさま「はい」と答えた。
「即答だな。けど、俺はまだ納得していない。兄さんの事もあるし、まだ村の発展にも十分に貢献したと思っていない。カラから言われても、俺は納得しないさ」
 ジンさんの話を聞き、僕は「じゃあ、どうすればいいんですか?」と聞き返した。
「そうだな。これは兄さんが言っていたことなんだが、兄さんは『自分が考える事を止めていたから、こんなになったんだ』って言っていたな」
「考える事を止めたから、ですか?」
「そう。自分から何も考えず、提案もしなかったから、自分は今のようになってしまったんだって言っていた。今は自分から久慈村の栗やドングリの木の維持・管理、村同士の交流をやっているから、昔の面影はないけどな」
 僕はジンさんの話を聞きながら、自分の考えをまとめようとした。
「今の僕には、何も考えも浮かびません」
 正直に言うと、ジンさんは「考えているじゃないか?」と言ってきた。
「え、何も思い浮かんでいませんよ?」
「思い浮かぶように、考えているじゃないか?」
 ジンさんは僕を揶揄しているわけでもなく、真面目に答えているようだ。
「けど、ただ考えているだけじゃ何も思い浮かばないだろうな」
ジンさんはそう言って、村の方を指した。
「イバがアワの虫取りに忙しそうにしていたんだ。暇ななら手伝ってやるといい」
 ジンさんはそう言って、顔を舐めようとしているダロと共に帰っていった。
 残された僕は『イバさんが答えを知っているのかな』と考え、その考えをすぐに否定した。
「だって、ジンさんも知らないんだし、イバさんもきっと知らない。考えているだけじゃわからないなら、何か行動してみないと駄目って、ジンさんは言っていたのかな」
 僕は呟くようにして立ち上がり、村の隅にあるアワの畑へと走っていった。
 理由はない。でも、何かがあるかもしれないからだ。

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