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カラSide7-1
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カラSide
7―1
入江に行っていた人たちが帰ってきた。皆元気で、特にミイがはつらつとしていた。
「さあナホさん。小さいのも大きい物も関係なく、装飾品を造りましょう!」
二人は言い合いながら、装飾品造りをし始めた。
「これで、やっと僕の持ってきた貝殻が無駄にならなくて済むよ」
コシさんはため息をつきながらも、嬉しそうな表情で言った。マオとカオは、レイから石器を貰ってきており、小さなモリを持って帰ってきた。
「カラさんごめんなさい」
「レイさんの方が使いやすいです」
二人は僕に謝りながらも、磯で魚を突いている。僕は自分用に造ったモリを、あまり二人には使わせていなかったので、謝られる筋合いはない。でも、何となくムッとした。
「カラも、年下は全員弟にするか?」
キドさんに揶揄され、僕は「みんな公平に接します」と言い返した。
「固いな」
キドさんとコシさんが笑いつつも、僕はみなの様子を見て周った。僕の隣には、ちょうど見回りの時間だったダロも一緒だ。
僕は特に目的もなく、ただダロの歩く通りに歩いた。ダロが毎日村中を歩いて回っているのは知っていたけれど、ずっと付いて行ったことは無かった。たまに休憩したり、餌をねだったり、人の顔を舐めまわしていて、付いて行くだけで1日が終わりそうだったからだ。
でも、今日の子供たちは入江から帰ってきたマオとカオの話を聞いたり、ミイさんとナホさんと一緒に新しい装飾品について話し合っている。
大人たちは、入江に行った人たちは身体を休め、他の人たちは漁に出ている。僕が何の仕事もせず、ただダロと一緒に歩いている事を咎める人は誰もいなかった。
ダロと一緒に歩いてわかった事は、ダロは『村を一回り』しているという事だ。村の中心から各家々を回り、さらに赤ん坊や子供の墓の前で止まり、また歩き出す。村から出ると海岸に行き、適当に海に飛び込んではまた砂場や磯部を歩く。川まで行くと引き返し、今度は山の近くを歩く。最後にキノジイの家や洞窟のある所まで行き、村の中心に帰っていく。これが、ダロの毎日なのだろう。
僕はふと、ダロが羨ましいと感じた。何故なら、ダロがこの村を一番よく知っているのではないかと思ったからだ。
「ダロは、何処が一番好き?」
村の中心で一休みをしているダロに話しかけると、ダロは僕の言葉がわかったのか、「ワン」と短く鳴き、付いてこいと言わんばかりに立ち上がった。
僕がダロについて行くと、ダロは村の少し外れにある大きな穴にやって来た。ここに、僕たちは食べ終わった貝殻や骨、土器などを置いておく。お父さん曰く「みな海と山に還す」という事だ。
僕の目の前には、まだ土に還っていない物で溢れかえっている。もしここを掘っていけば、すでに土に還った何かが出てくるかもしれないと思った。
「ダロ、どうしてここが好きなの?」
ここに、ダロが食べられるような骨の欠片などはない。たまに嫌な臭いがすることもあり、木の灰を蒔くこともある。ダロは僕の言葉がわかったかわからないのか、鼻で地面を嗅いでいる。そして、何かを嗅ぎつけたかのように、尻尾を振って歩き出した。
僕がついて行くと、ダロは鼻を地面の近くにやったまま歩き、最後には海についてしまった。
「ワン」
ダロは一声無き、海を眺めた。
「もしかして、あそこから通って、何かが還っているの?」
僕の言葉にダロはうんともすんとも言わず、ただ海を眺めている。その様子は、何処となく、ダリを思い起こさせた。ダロはダリの孫か何かだと言われ、この村にやって来た。先ほどの場所には、ダリの骨も一緒に埋めてある。
「ダロのお祖父ちゃんがいたの?」
僕の問いかけにダロは反応せず、ただ海を眺めていた。僕もダロに寄りかかるようにして海を眺めた。ダリとダロの見た目は似ていないが、臭いはそっくりだ。
「ダロ、僕はちゃんとやっていけるかなぁ?」
僕のこの呟きの『ちゃんと』の意味は、自分でもよくわかっていない。自分で『立派な子供になる』とザシさんに伝言を頼んだけれど、自分が今立派な子供になっている、なろうとしていると自信が持てずにいた。
7―1
入江に行っていた人たちが帰ってきた。皆元気で、特にミイがはつらつとしていた。
「さあナホさん。小さいのも大きい物も関係なく、装飾品を造りましょう!」
二人は言い合いながら、装飾品造りをし始めた。
「これで、やっと僕の持ってきた貝殻が無駄にならなくて済むよ」
コシさんはため息をつきながらも、嬉しそうな表情で言った。マオとカオは、レイから石器を貰ってきており、小さなモリを持って帰ってきた。
「カラさんごめんなさい」
「レイさんの方が使いやすいです」
二人は僕に謝りながらも、磯で魚を突いている。僕は自分用に造ったモリを、あまり二人には使わせていなかったので、謝られる筋合いはない。でも、何となくムッとした。
「カラも、年下は全員弟にするか?」
キドさんに揶揄され、僕は「みんな公平に接します」と言い返した。
「固いな」
キドさんとコシさんが笑いつつも、僕はみなの様子を見て周った。僕の隣には、ちょうど見回りの時間だったダロも一緒だ。
僕は特に目的もなく、ただダロの歩く通りに歩いた。ダロが毎日村中を歩いて回っているのは知っていたけれど、ずっと付いて行ったことは無かった。たまに休憩したり、餌をねだったり、人の顔を舐めまわしていて、付いて行くだけで1日が終わりそうだったからだ。
でも、今日の子供たちは入江から帰ってきたマオとカオの話を聞いたり、ミイさんとナホさんと一緒に新しい装飾品について話し合っている。
大人たちは、入江に行った人たちは身体を休め、他の人たちは漁に出ている。僕が何の仕事もせず、ただダロと一緒に歩いている事を咎める人は誰もいなかった。
ダロと一緒に歩いてわかった事は、ダロは『村を一回り』しているという事だ。村の中心から各家々を回り、さらに赤ん坊や子供の墓の前で止まり、また歩き出す。村から出ると海岸に行き、適当に海に飛び込んではまた砂場や磯部を歩く。川まで行くと引き返し、今度は山の近くを歩く。最後にキノジイの家や洞窟のある所まで行き、村の中心に帰っていく。これが、ダロの毎日なのだろう。
僕はふと、ダロが羨ましいと感じた。何故なら、ダロがこの村を一番よく知っているのではないかと思ったからだ。
「ダロは、何処が一番好き?」
村の中心で一休みをしているダロに話しかけると、ダロは僕の言葉がわかったのか、「ワン」と短く鳴き、付いてこいと言わんばかりに立ち上がった。
僕がダロについて行くと、ダロは村の少し外れにある大きな穴にやって来た。ここに、僕たちは食べ終わった貝殻や骨、土器などを置いておく。お父さん曰く「みな海と山に還す」という事だ。
僕の目の前には、まだ土に還っていない物で溢れかえっている。もしここを掘っていけば、すでに土に還った何かが出てくるかもしれないと思った。
「ダロ、どうしてここが好きなの?」
ここに、ダロが食べられるような骨の欠片などはない。たまに嫌な臭いがすることもあり、木の灰を蒔くこともある。ダロは僕の言葉がわかったかわからないのか、鼻で地面を嗅いでいる。そして、何かを嗅ぎつけたかのように、尻尾を振って歩き出した。
僕がついて行くと、ダロは鼻を地面の近くにやったまま歩き、最後には海についてしまった。
「ワン」
ダロは一声無き、海を眺めた。
「もしかして、あそこから通って、何かが還っているの?」
僕の言葉にダロはうんともすんとも言わず、ただ海を眺めている。その様子は、何処となく、ダリを思い起こさせた。ダロはダリの孫か何かだと言われ、この村にやって来た。先ほどの場所には、ダリの骨も一緒に埋めてある。
「ダロのお祖父ちゃんがいたの?」
僕の問いかけにダロは反応せず、ただ海を眺めていた。僕もダロに寄りかかるようにして海を眺めた。ダリとダロの見た目は似ていないが、臭いはそっくりだ。
「ダロ、僕はちゃんとやっていけるかなぁ?」
僕のこの呟きの『ちゃんと』の意味は、自分でもよくわかっていない。自分で『立派な子供になる』とザシさんに伝言を頼んだけれど、自分が今立派な子供になっている、なろうとしていると自信が持てずにいた。
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