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サキSide 3
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サキSide 3
村は獲れる魚の多さで賑わいを見せていた。
「夏に現れる魚までこんなに獲れるなんて、春前の風は何だったんだろうな?」
グエさんが喜びの声をあげながら、女性や子供たちに魚の干物を作るよう指示を出していた。
「ふむ、たくさん獲れるのはいい事じゃが」
一人だけ浮かない顔をしていたのは、ヌイさんだった。
「どういう事ですか?」
私は魚の内臓を取り出しながら尋ねた。
「いや。この魚たちは、どこから来たのだろうと思ってな」
ヌイさんの言葉に、小さな子供たちから「海からでしょ?」という、不思議そうな声が聞こえてきた。
そう言えば、父から聞いたことがあった。魚は海を回遊しているのだ。春に獲れる魚は、夏には北か南に移動する。通年して獲れる魚はほとんどいない。季節によって獲れる種類が違うのが魚であり、夏に入江で獲れない魚が、春に三内よりも南で獲れると聞いた事もある。
つまり、春に北か南で獲れるはずの魚が、今入江で獲れているのだ。という事は、どこかの村では今の季節に獲れるはずの魚が獲れず、食料不足に陥っているかもしれないのだ。
「是川の村は、大丈夫なのかしら?」
私は魚を網に置いて、日の当たる所に並べながら呟いた。
「サキ、レイの弓矢のおかげでこんな大物が獲れたぞ」
リウさんら山に入った大人たちが、大きなエゾシカを担いでやって来た。この時期、エゾシカがこの村周辺に現れることはほとんど無い。
「ほら、レイに渡してくれ」
山に入った大人が、私に小さな赤い果実を手渡した。
「ありがとうございます」
私は彼にお礼を言ったが、彼はどういう意味で、この果実を弟に渡すように頼んだのだろう。
リウさんを筆頭に、数人の大人たちが弟の造った石器や釣り具を愛用し、奉っている様に私には見えた。
私がサンおばさんの家に戻ると、弟が家の外にいて、海を眺めていた。
「何か見える?」
私が尋ねると、弟は「海鳥がたくさんいる」と、短く答えた。
「海鳥なら、いつでもいるじゃない」
私は弟の隣に座りながら言うと、弟は「多すぎるほどいるんだ」と、言葉を続けた。
私も弟の目線と同じ場所で、海を眺めた。確かに、海鳥の数が例年よりも多い気がした。
「そういえば、カラのいる村に海鳥の言葉がわかる子供がいたよね?」
「ええ、海鳥の鳴き声で天気を予測しているって聞いているわよ」
私が思い出すように言うと、しばらく弟は黙り込み、やがて口を開いた。
「もしお姉ちゃんが是川に行くことになったら、その子に聞いて欲しいんだ。是川の海鳥の様子を」
弟の言葉に、私は「わかったわ」と言いつつも、弟の真意が分からなかった。
「どうして聞いて欲しいの?」
「うん、海鳥の中に、僕の知らない鳴き声のする海鳥がいるし、風が南から吹いているんだ。もしかすると、カラの村にいる海鳥が入江に来ているのかもしれない」
私は弟の言葉に、是非がつけられなかった。
弟は石器や釣り具を作る時以外はなるべく外に出て、海や山、空を眺めている。時には動物や海鳥も観察している様だ。
「レイは、カラのいる村の魚や海鳥が、入江に来ていると思っているの?」
私の言葉に、弟は「僕の勘違いならいいけど」と、言葉を濁した。
村は獲れる魚の多さで賑わいを見せていた。
「夏に現れる魚までこんなに獲れるなんて、春前の風は何だったんだろうな?」
グエさんが喜びの声をあげながら、女性や子供たちに魚の干物を作るよう指示を出していた。
「ふむ、たくさん獲れるのはいい事じゃが」
一人だけ浮かない顔をしていたのは、ヌイさんだった。
「どういう事ですか?」
私は魚の内臓を取り出しながら尋ねた。
「いや。この魚たちは、どこから来たのだろうと思ってな」
ヌイさんの言葉に、小さな子供たちから「海からでしょ?」という、不思議そうな声が聞こえてきた。
そう言えば、父から聞いたことがあった。魚は海を回遊しているのだ。春に獲れる魚は、夏には北か南に移動する。通年して獲れる魚はほとんどいない。季節によって獲れる種類が違うのが魚であり、夏に入江で獲れない魚が、春に三内よりも南で獲れると聞いた事もある。
つまり、春に北か南で獲れるはずの魚が、今入江で獲れているのだ。という事は、どこかの村では今の季節に獲れるはずの魚が獲れず、食料不足に陥っているかもしれないのだ。
「是川の村は、大丈夫なのかしら?」
私は魚を網に置いて、日の当たる所に並べながら呟いた。
「サキ、レイの弓矢のおかげでこんな大物が獲れたぞ」
リウさんら山に入った大人たちが、大きなエゾシカを担いでやって来た。この時期、エゾシカがこの村周辺に現れることはほとんど無い。
「ほら、レイに渡してくれ」
山に入った大人が、私に小さな赤い果実を手渡した。
「ありがとうございます」
私は彼にお礼を言ったが、彼はどういう意味で、この果実を弟に渡すように頼んだのだろう。
リウさんを筆頭に、数人の大人たちが弟の造った石器や釣り具を愛用し、奉っている様に私には見えた。
私がサンおばさんの家に戻ると、弟が家の外にいて、海を眺めていた。
「何か見える?」
私が尋ねると、弟は「海鳥がたくさんいる」と、短く答えた。
「海鳥なら、いつでもいるじゃない」
私は弟の隣に座りながら言うと、弟は「多すぎるほどいるんだ」と、言葉を続けた。
私も弟の目線と同じ場所で、海を眺めた。確かに、海鳥の数が例年よりも多い気がした。
「そういえば、カラのいる村に海鳥の言葉がわかる子供がいたよね?」
「ええ、海鳥の鳴き声で天気を予測しているって聞いているわよ」
私が思い出すように言うと、しばらく弟は黙り込み、やがて口を開いた。
「もしお姉ちゃんが是川に行くことになったら、その子に聞いて欲しいんだ。是川の海鳥の様子を」
弟の言葉に、私は「わかったわ」と言いつつも、弟の真意が分からなかった。
「どうして聞いて欲しいの?」
「うん、海鳥の中に、僕の知らない鳴き声のする海鳥がいるし、風が南から吹いているんだ。もしかすると、カラの村にいる海鳥が入江に来ているのかもしれない」
私は弟の言葉に、是非がつけられなかった。
弟は石器や釣り具を作る時以外はなるべく外に出て、海や山、空を眺めている。時には動物や海鳥も観察している様だ。
「レイは、カラのいる村の魚や海鳥が、入江に来ていると思っているの?」
私の言葉に、弟は「僕の勘違いならいいけど」と、言葉を濁した。
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