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4―10
やって来たのは大洞村の人と、コシさんだった。
「遅いから、不安になって来てみたんだ」
大洞村から帰ったお父さんとコシさんとナホさんは、土偶造りにとイケを連れてまた大洞村に行ったそうだ。そこで、僕たちの帰りを待っていたが、あまりにも遅く、コシさんが大洞村の人に船頭を頼み、様子を見に来てくれたのだ。
「えーと、どういう状況なの?」
コシさんが困ったように、僕たちを見つめていた。
僕たちの背後には多量の土器で湯が煮立てられ、火の煙が火事の様にもくもくとしていたからだ。
「カラが、何か儀式でもしたの?」
僕がコシさんの立場なら、何かしらの儀式を行っている様に見えただろう。
「えーと、コシさんでよかったでしょうか?」
ハムさんがコシさんに駆け寄り、緊張した様に話しかけた。
「そうだけど、確かカラたちと行ったハムだっけ?」
「そうです。是川の干しキノコを頂けませんか?」
「え、取り合えず事情を説明してよ」
ハムさんは口ごもりつつも、コシさんに事情を説明し、注文をつけた。
「だいたいわかったよ。人手も必要だろうから、誰か手の空いている人がいたら連れてくるよ」
コシさんはハムさんの態度に気にすることなく、大洞村の船頭に往復を頼み、すぐに帰っていった。
「ハムさん。ちょっと荒くないですか?」
僕は今までの、仁斗田村に来てからのハムさんの態度が少し不快であった。
何故なら、自分勝手と言ってもよかったからだ。年上の大人の男性にも上から物を言い、今もコシさんに命令するように、注文をつけたからだ。
そんな僕の顔を見たのか、ロウさんが僕の頬を抓ってきた。
「はにふるんでふは?」
僕は言葉に出来ない言葉を言いつつ、ロウさんに目を向けた。
「ハムが『カラの目は狭い』と言っていたが、本当だったな」
ロウさんは僕の頬から手を話しつつ、僕に言った。
「どういう事ですか?」
「そのままさ。カラ、お前は目の前の事態が見えていないんだ」
僕はロウさんの言葉に「見えてますよ」と、即座に言い返した。
「いや、見えていないさ。鞭虫に関する『病気』は見えているが、仁斗田島の人たちの『心』は見えていないんだ」
「心、ですか?」
「そうだ。もし、ゆっくりとカラが望むように事を進めていたら、病状が悪くなり、手遅れになる人が出るかもしれない。それに、村の皆が不安になっている。そんな状態で、ゆっくりと話し合いなど出来ない。ハムが恐々と、慎重に事を進めていたら、不安がぶり返してしまうかもしれない。気分が悪くなれば、治る病気も治らなくなる。だからこそ、ハムはカラが横暴と見えるかもしれない言葉使いもとっている。自分が不安そうな顔を見せれば、皆が不安になる。自分に任せれば、必ず治ると信じさせているともいえるな。だが、それはとても重い責任を感じ、毎日が冷や汗ものだ。ハムはそれを必死に隠しながら、行動しているんだ」
ロウさんに厳しい言葉を突き付けられ、僕はしばらくの間、ハムさんの背中を見つめた。
仁斗田島のヤコさんに会ってから、ハムさんの言葉づかいは荒い。でも、仁斗田村の人に乱暴をしたり、乱雑に扱った事はない。むしろ親身に接していた。小さな子供にも、「必ず治るさ」と言いつつ、苦いヨモギの汁を飲ませていた。今も、沼津村の人からもらった栄養のある、獣の骨を煮込んだ羹を飲ませている。
「僕は、ハムさんの『言葉』しか聞いていなくて、『目』で見ていなかったんですね」
僕が反省するように言うと、ロウさんは僕の手を引いてきた。
「さあ、これ以上ハムに重圧がかからないよう、俺たちは自分の出来る事をするぞ」
ロウさんの言葉に、僕は力強く頷いた。
やって来たのは大洞村の人と、コシさんだった。
「遅いから、不安になって来てみたんだ」
大洞村から帰ったお父さんとコシさんとナホさんは、土偶造りにとイケを連れてまた大洞村に行ったそうだ。そこで、僕たちの帰りを待っていたが、あまりにも遅く、コシさんが大洞村の人に船頭を頼み、様子を見に来てくれたのだ。
「えーと、どういう状況なの?」
コシさんが困ったように、僕たちを見つめていた。
僕たちの背後には多量の土器で湯が煮立てられ、火の煙が火事の様にもくもくとしていたからだ。
「カラが、何か儀式でもしたの?」
僕がコシさんの立場なら、何かしらの儀式を行っている様に見えただろう。
「えーと、コシさんでよかったでしょうか?」
ハムさんがコシさんに駆け寄り、緊張した様に話しかけた。
「そうだけど、確かカラたちと行ったハムだっけ?」
「そうです。是川の干しキノコを頂けませんか?」
「え、取り合えず事情を説明してよ」
ハムさんは口ごもりつつも、コシさんに事情を説明し、注文をつけた。
「だいたいわかったよ。人手も必要だろうから、誰か手の空いている人がいたら連れてくるよ」
コシさんはハムさんの態度に気にすることなく、大洞村の船頭に往復を頼み、すぐに帰っていった。
「ハムさん。ちょっと荒くないですか?」
僕は今までの、仁斗田村に来てからのハムさんの態度が少し不快であった。
何故なら、自分勝手と言ってもよかったからだ。年上の大人の男性にも上から物を言い、今もコシさんに命令するように、注文をつけたからだ。
そんな僕の顔を見たのか、ロウさんが僕の頬を抓ってきた。
「はにふるんでふは?」
僕は言葉に出来ない言葉を言いつつ、ロウさんに目を向けた。
「ハムが『カラの目は狭い』と言っていたが、本当だったな」
ロウさんは僕の頬から手を話しつつ、僕に言った。
「どういう事ですか?」
「そのままさ。カラ、お前は目の前の事態が見えていないんだ」
僕はロウさんの言葉に「見えてますよ」と、即座に言い返した。
「いや、見えていないさ。鞭虫に関する『病気』は見えているが、仁斗田島の人たちの『心』は見えていないんだ」
「心、ですか?」
「そうだ。もし、ゆっくりとカラが望むように事を進めていたら、病状が悪くなり、手遅れになる人が出るかもしれない。それに、村の皆が不安になっている。そんな状態で、ゆっくりと話し合いなど出来ない。ハムが恐々と、慎重に事を進めていたら、不安がぶり返してしまうかもしれない。気分が悪くなれば、治る病気も治らなくなる。だからこそ、ハムはカラが横暴と見えるかもしれない言葉使いもとっている。自分が不安そうな顔を見せれば、皆が不安になる。自分に任せれば、必ず治ると信じさせているともいえるな。だが、それはとても重い責任を感じ、毎日が冷や汗ものだ。ハムはそれを必死に隠しながら、行動しているんだ」
ロウさんに厳しい言葉を突き付けられ、僕はしばらくの間、ハムさんの背中を見つめた。
仁斗田島のヤコさんに会ってから、ハムさんの言葉づかいは荒い。でも、仁斗田村の人に乱暴をしたり、乱雑に扱った事はない。むしろ親身に接していた。小さな子供にも、「必ず治るさ」と言いつつ、苦いヨモギの汁を飲ませていた。今も、沼津村の人からもらった栄養のある、獣の骨を煮込んだ羹を飲ませている。
「僕は、ハムさんの『言葉』しか聞いていなくて、『目』で見ていなかったんですね」
僕が反省するように言うと、ロウさんは僕の手を引いてきた。
「さあ、これ以上ハムに重圧がかからないよう、俺たちは自分の出来る事をするぞ」
ロウさんの言葉に、僕は力強く頷いた。
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